スペイン語映画はコンペにゼロ*カンヌ映画祭2015 ①2015年05月16日 12:44

                何とも寂しいスペイン語映画「開店休業」

 

★何回見直してもスペイン語映画はコンペに見当たらない()。メキシコの監督マイケル・フランコの第3作“Chronic”は、残念ながら言語は英語です。第2作『父の秘密』が劇場公開され、当ブログでもアップしたが20131120)、今回はどうしたものか思案中。スペインのメディアも「カンヌのカルティエが武装した4人の強盗団に襲われる。損害額は1750万ユーロ」などと映画祭とは直接関係のないニュースを伝えている。円に換算するといくらになるか考えるのも面倒だと八つ当たり。 


★今年は513日から24日まで。第68回カンヌ映画祭のポスターは、2015年生誕100周年を迎えるイングリッド・バーグマンに捧げられている。撮影はポーランド生れ、米国籍の写真家デヴィッド・シーモア(ダヴィド・シミン191156)が撮ったもの。第二次中東戦争(スエズ危機のほうが通りがよいか)の取材中スエズ運河で銃弾に倒れた戦場の写真家。バーグマンとは親しい友人関係、管理人の記憶が正しければ恋人同士だった。彼女がロッセリーニの元に走ったあとも一家のポートレートを専属に撮っていた。かつての銀幕の女王と戦場に散った写真家へのオマージュが込められているのだろうか。シンプルで近年にない出色の出来栄えじゃないか。「ある視点」部門の審査員長を務める娘イザベラ・ロッセリーニは「大女優のママと一緒に赤絨毯を歩いて感無量」と語っている。つまり会場と言わず通りと言わずママのポスターだらけだからです。

 

        

              (審査委員長のコーエン兄弟、左が兄ジョエル、弟イーサン)

 

★スペイン語映画はゼロでも審査員にはギジェルモ・デル・トロ監督、女優のロッシ・デ・パルマの名前があった。デル・トロは背広を新調しなければならなかった。「どうしてかって? 減量に失敗して前のが着られなかったからさ」と。ロッシ・デ・パルマは来年にはアルモドバル監督と一緒に来カンヌかな。新作“Silencio”に出演、こちらはクランクイン前から2016318日公開が決定している。因縁めくがバーグマンの孫娘とは大学で知り合ったという。凄い美人だったが映画には興味がなかったようです。

 

             

               (左から、ギレンホール、デル・トロ、イーサン・コーエン)

 

★審査員長はジョエル&イーサン・コーエン兄弟、2007年からカンヌの総指揮をしているティエリー・フレモーから打診があったとき、「一度にまとめて世界の良作が見られるなんて、何とラッキーなんだ、と兄弟一致して引き受けた」と兄。二人は審査員を二つのグループに分けて議論する予定だそうです。まだ先の話ですが、ジョエル・コーエンの奥さんというか、『ファーゴ』の妊娠8カ月のガンダーソン署長役フランシス・マクドーマンドが、サンセバスチャン映画祭の審査員として来西するようです。

 

★二つに分けられる審査員には他に、俳優のシエラ・ミラーソフィー・マルソー、ジェイク・ギレンホール、作曲家のロキア・トラオル(マリ共和国出身、パリ在住)、監督枠としてグザヴィエ・ドランの名前もあったのには(!)。以上で分かるように何とも異質な船頭さんの審査員団、デル・トロとドランだなんて「船頭多くして舟、山に登」らなければいいけど。ジェイク・ギレンホールの父親はバーグマンと同じスウェーデン出身、「彼女とウチの家族が何か繋がりがあればよかったのにぃ」だそうです。

 

                  

                       (ロッシ・デ・パルマ、ソフィー・マルソー)

 

アルモドバル新作“Silencio”の記事はコチラ⇒2015315日/45

 

★カンヌは映画を見るのではなくビジネスが目的でやってくる世界最大の映画マーケット。スペイン語映画はなくても、自作の売り込み、新作のプロモーションと大賑わい。スペインからはナチョ・ビガロンドが次回作のColossalの宣伝に馳せつけている。ヒロインはアン・ハサウェイ、ということは『ブラック・ハッカー』同様、主要言語は英語かな。

 


★次はパブロ・ラライン、ベルリン映画祭の審査員賞グランプリを受賞したEl Clubのプロモーションと、次回作Nerudaの売り込みにやってきている。前者はベルリン映画祭2015で紹介済み2015222)、新作はチリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの1946年から1948年の間に焦点を絞った伝記映画。キャストはネルーダにルイス・ニエッコ1962年サンチャゴ生れ)、ネルーダを追いまわす刑事にガエル・ガルシア・ベルナル、二人ともNOに出演している。撮影は6月の予定。他にフェルナンド・レオンも現地入りしておりますが、「監督賞間」で触れます。(写真上は詩人ネルーダ)