オリソンテス・ラティノ部門14作ノミネート発表*サンセバスチャン映画祭2024 ⑫2024年08月20日 15:14

        オリソンテス・ラティノス部門14作、最多はアルゼンチンの5

   

       

 

88日、オリソンテス・ラティノス部門のノミネート14作が一挙発表になりました。スペイン語、ポルトガル語に特化した部門、例年だと1012作くらいなので多い印象です。ラテンアメリカの映画先進国アルゼンチンの監督が5人と最多、チリ、メキシコ、ブラジル、パナマ、ベネズエラ、ペルーと満遍なく選ばれています。3回ぐらいに分けてアップします。オープニングはチリのホセ・ルイス・トーレス・レイバの「Cuando las nubes esconden las sombras」、クロージングはアルゼンチンのセリナ・ムルガの「El aroma del pasto recién cortado」です。新人登竜門の立ち位置にある部門ですが、「Pelo malo」で2013年の金貝賞を受賞したマリアナ・ロンドンの新作もノミネートされております。作品賞にあたるオリソンテス賞には副賞として35.000ユーロが与えられます。 

 

            オリソンテス・ラティノス部門

 

1)Cuando las nubes esconden las sombras / When Clouds Hide The Shadow

チリ=アルゼンチン=韓国

 オープニング作品 2024年、スペイン語、ドラマ、70

監督ホセ・ルイス・トーレス・レイバ(サンティアゴ1975)は、監督、脚本家、編集者。「El cielo, la tierra, la lluvia」がロッテルダムFF2008FIPRESCI賞、ヒホン、ナント、サンタ・バルバラ、トライベッカ、全州チョンジュFFほか多くの国際映画祭にノミネートされている。「Verano」はベネチアFF2011オリゾンティ部門でプレミアされている。本祭関連ではSSIFF2019の「Vendrá la muerte y tendrá tus ojos」で金貝賞やセバスティアン賞を争った他、マル・デル・プラタ映画祭でスペシャル・メンションを受賞している。サバルテギ-タバカレア部門には、「El viento sepa que vuervo a casa」(16、カルタヘナFFドキュメンタリー賞)、短編「El Sueño de Ana」(17)、「Sobre cosas que me han happens」(18)が紹介されている。新作でセクション・オフィシアルに戻ってきた。

映画祭・受賞歴:全州チョンジュ市映画祭プレミア、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門

 

キャスト:マリア・アルチェ

ストーリー:マリア・アルチェは、映画で主人公を演じるために世界最南端の港町プエルト・ウィリアムズを訪れている女優です。激しい暴風雨が予定通りの撮影クルーの到着を阻んでおり、一人で待つしかありません。背中のひどい痛みの手当てを探しに、彼女は世界南端の村々を歩き回ることになるでしょう。彼女の人生で気がかりな物語の一つ、と同時に希望の物語であり、マリアと大陸の最南端の自然とその村人たちの間に起きる思いがけない出会いの物語である。

   

       

 

2)El aroma del pasto recién cortado / The Freshly Cut Grass

アルゼンチン=ウルグアイ=米国=メキシコ=ドイツ

 クロージング作品 2024年、ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同製作フォーラム 2020

 ドラマ、114分、脚本ガブリエラ・ララルデ、セリナ・ムルガ、ルシア・オソリオ、他

映画祭・受賞歴:トライベッカFF 2024脚本賞受賞(6月)、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門

監督セリナ・ムルガ(アルゼンチンのパラナ1973)は監督、脚本家、製作者。1996年映画大学で映画監督の学位を取得、制作会社「Tresmilmundos Cine」の共同設立者、映画研究センターで後進の指導に当たっている。本祭との関連では、話題のデビュー作「Ana y los otros」がオリソンテス2003、ボゴタFF作品賞、リオデジャネイロFFFIPRESCI賞、ほか国際映画祭での受賞歴多数、「Una semana solos」がシネ・エン・コンストルクション2007、ミュンヘンFF2009 ARRI/OSRAM賞を受賞している。「The Side of The River」がオリソンテス・ラティノス2014にノミネートされている。

 

キャスト:ホアキン・フリエル(パブロ)、マリナ・デ・タビラ(ナタリア)、ルチアナ・グラッソ(ベレン)、アルフォンソ・トルト、ベロニカ・ヘレス(ルチアナ)、ロミナ・ペルフォ(カルラ)、オラシオ・マラッシ(ロベルト)、クリスティアン・フォント(マルセロ)、ロミナ・ベンタンクール(ソニア)、ほか多数

   

ストーリー:ブエノスアイレス大学の教授であるパブロは結婚していて2人の息子がいる。彼の学生であるルチアナと不倫関係にある。浮気が発覚すると仕事と家族を失うと脅されます。ここから同じ大学の教授であるナタリアの物語が始まります。彼女も結婚していて2人の娘がいる。彼女も生徒のゴンサロと不倫関係を始めます。二つの物語は、同じコインのウラオモテであり、男女間で確立された力関係と、事前に確立された性別の解体に向けた新たな道を問いかけることになる。ありきたりの倦怠期夫婦の危機が語られるが、新味がないのにパブロとナタリアの不倫が交差することはなく、その独創的な構成と達者な演技で上質のドラマになっている。

 

   

    

 

     (左から、ホアキン・フリエル、ムルガ監督、マリナ・デ・タビラ)

 

 

3)「Reas」アルゼンチン=ドイツ=スイス

 WIP Latam 2023 作品 ドキュメンタリー、ミュージカル、82分、 

映画祭・受賞歴:ベルリンFF2024フォーラム部門ドキュメンタリーでプレミア、テッサロニキ・ドキュメンタリーFF金のアレクサンダー賞&マーメイド賞、ルクセンブルク市FFドキュメンタリー賞、シネラティノ・トゥールーズ2024ドキュメンタリー部門観客賞受賞、ほかノミネート多数、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門

 

監督ロラ・アリアス(ブエノスアイレス1976)は、監督、脚本家、戯曲家、シンガーソングライター、舞台女優、演出家と多才、キャリア&フィルモグラフィーはドキュメンタリーのデビュー作「Teatro de guerra」(18)がサバルテギ-タバカレア部門にエントリーされた折、作品紹介とキャリアを紹介しています。新作は長編2作目で昨年のWIP Latamに選出され完成が待たれていた。

監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20180805

 

キャスト:ヨセリ・アリアス、イグナシオ・ロドリゲス(ナチョ)、カルラ・カンテロス、ノエリア・ラディオサ、エステフィー・ハーキャッスル、パウラ・アストゥライメ、シンティア・アギーレ、パト・アギーレ、ハデ・デ・ラ・クルス・ロメロ、フリエタ・フェルナンデス、ラウラ・アマト、ダニエラ・ボルダ、ほか多数

 

ストーリー:麻薬密売が発覚して空港で逮捕された若いヨセリは、背中にエッフェル塔のタトゥーをしている。ヨーロッパ旅行を夢見ていたからだが、規則、制約、友情、連帯、愛で構成されたチームに参加することにした。ナチョは詐欺罪で逮捕されたニューハーフでロックバンドを結成している。もう使用されなくなっているブエノスアイレスの刑務所の敷地が、ドキュメンタリー、ミュージカル、ドラマを組み合わせた本作の舞台となる。過去に収監されていた人々が刑務所での記憶をフィクション化して再現します。控え目な人も荒っぽい人も、ブロンドも剃毛も、長期囚も最近入所した人も、シスもトランスも、ここには自分の居場所があります。このハイブリットなミュージカルでは踊り、歌い、フィクション化して自分の人生を追体験し、自身の可能性のある未来を創造します。

   

   


 

  

4)Querido Trópico / Beloved Tropic」パナマ=コロンビア

 2024年、スペイン語、ドラマ、108分、脚本アナ・エンダラ、ピラール・モレノ

映画祭・受賞歴:トロントFF2024「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門でプレミア(97日)、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門

監督アナ・エンダラ・ミスロフ(パナマシティ1976)は、ドキュメンタリーを専門とする監督、脚本家、製作者。フロリダ州立大学で社会学を専攻、キューバの国際映画テレビ学校で映画を学んでいる。2001年、ドイツのケルンにある芸術メディア・アカデミーの奨学金を得る。広告代理店のプロとして、ドキュメンタリーやオーディオビジュアルのプロジェクトを制作している。2013年コメディ・ドキュメンタリー「Reinas」でトロントFFグロールシュ・ディスカバリー賞、2016年「La Felicidad de Sonido」でコスタリカFFの審査員賞、イカロFF2017のドキュメンタリー賞を受賞している。マドリード女性映画祭2023の審査員を務めている。本作が最初のフィクションです。

 

キャスト:パウリナ・ガルシア、ジェニー・ナバレテ、フリエタ・ロイ

ストーリー:トロピカルな庭園は、時を共にすることになる二つの孤独の出会いの舞台になります。過去のすべてが奪われていく裕福だが認知症を患う女性、その介護者はたった一人で怖ろしい秘密から逃れてパナマに移民してきた女性、監督は二人の孤独を痛烈に解き明かします。

    

   

(コロンビア女優ジェニー・ナバレテ、チリのベテラン女優パウリナ・ガルシア)

   

 

    

     

(左から、ホセ・ルイス・トーレス・レイバ、セリナ・ムルガ、ロラ・アリアス、

 アナ・エンダラ・ミスロフ)


★トロント映画祭2024は、95日から15日までとSSIFFに先行して開催されます。


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