アンドレス・サンタナにエリアス・ケレヘタ賞*サンセバスチャン映画祭2023 ⑳ ― 2023年09月30日 09:58
第1回受賞者はアンドレス・サンタナ・キンタナに
(受賞者アンドレス・サンタナ・キンタナ、9月25日)
★9月25日、今年のゴヤ賞2023で新設がアナウンスされていたエリアス・ケレヘタ賞の授与式が本日のハイライトの一つでした。第1回の受賞者は予告通り製作者アンドレス・サンタナ・キンタナに贈られました。選考母体はスペイン映画アカデミー、従ってプレゼンターはフェルナンド・メンデス=レイテ会長でした。ケレヘタ没後10周年を記念して設けられた賞です。エリアス・ケレヘタ(1934~2013、享年78歳)は、20世紀の名プロデューサーとして、多くの才能を育てた製作者、脚本家、ドキュメンタリー監督でした。
(エリアス・ケレヘタ)
★例えば、29日にドノスティア栄誉賞を受賞するビクトル・エリセ、まだ国立映画研究所の学生だったエリセの才能を見いだし、サンセバスチャン映画祭1969にオムニバス映画『挑戦』で新人監督3人に監督賞をもたらしたプロデューサーです。次いで1973年『ミツバチのささやき』、10年後の『エル・スール』と、寡作な映画作家の名作を世に送り出した。他に1987年スペイン映画国民賞、1998年ゴヤ栄誉賞、2004年ホセ・マリア・フォルケ賞などを受賞している。
(フェルナンド・メンデス≂レイテ、アンドレス・サンタナ・キンタナ)
★また無名に近かったカルロス・サウラとの出会いは象徴的でした。それは『狩り』(65)がベルリン映画祭監督賞受賞作品である以上に、サウラのシンボリックなリアリズムというスタイルを確立した作品でもあったからです。以来サウラの代表作と言われる『ペパ―ミント・フラッペ』、『従妹アンヘリカ』、『カラスの飼育』、『愛しのエリサ』、『ママは百歳』と快進撃を続けたが、ベルリン映画祭1980の『急げ、急げ』を最後に、金熊賞を受賞しながら袂を分かつことになった。路線の違いもあったようですが、主役の青年二人が隠れてヘロインを摂取していたことを監督が黙認していたこともコンビ解消の一つとされています。勿論監督は否定していましたが真相は闇の中ですが、若者たちのその後をみれば一目瞭然でしょう。
(左から、サウラ、ケレヘタ、エリセ)
★その後、モンチョ・アルメンダリス(『タシオ』『27時間』『アロウの手紙』「Historias del Kronen」)、フェルナンド・レオン・デ・アラノア(『カット!(ファミリア)』『バリオBarrio』、ゴヤ作品賞『月曜日にひなたぼっこ』)、一人娘のグラシア・ケレヘタの諸作品(「Una estación de paso」「Siete mesas de biller francés」、リカルド・フランコの『パスクアル・ドゥアルテ』、マヌエル・グティエレス・アラゴンの『激しい』などの話題作を手掛け、監督たちをカンヌやベルリン、ベネチアなどの国際舞台に連れ出すことに貢献した。
(ケレヘタ、ハビエル・バルデム、レオン・デ・アラノア、ゴヤ賞2003ガラ)
★アンドレス・サンタナ・キンタナは、1940年カナリア諸島のグランカナリア生れの製作者、ケレヘタ同様、製作者というのは縁の下の力持ちということもあって、監督や俳優と比較すると知名度は高くない。しかし公開、映画祭、DVDなどで紹介された作品をみればその凄さが納得できます。例えばケレヘタと重なるモンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』(97)、マリオ・カムスの『無垢なる聖者』(84)、ペドロ・アルモドバルの『セクシリア』(82)、特筆すべきはバスクの監督イマノル・ウリベの「El rey pasmado」(92)、『キャロルの初恋』(02)、ゴヤ作品賞の『時間切れの愛』(94)、「Plenilunio / Full Moon」(99)などです。サンタナは南スペイン出身ですが北の映像作家とのタッグが特徴的です。
(ゴヤ賞1995作品賞『時間切れの愛』のポスター)
★カミロ・ホセ・セラの同名小説『パスクアル・ドゥアルテの家族』を映画化したことで有名なリカルド・フランコのドキュメンタリー「Después de tantos años」(94)、東京国際映画祭1998のコンペティション入りを果たしたカナリア諸島の火山島ランサロテを舞台にしたアントニオ・ベタンコルの『マラリア』、21世紀に入ってからは、マヌエル・グティエレス・アラゴンの「Visionarios」(01)、マテオ・ヒルの『ブッチ・キャシディ 最後のガンマン』(10)、イサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」(15)など、字幕入りで鑑賞できた作品を多数手掛けています。
★授賞式には、モンチョ・アルメンダリス、エンリケ・ゴンサレス・マチョ、プイ・オリア、マリアノ・バロッソ、クリスティナ・スマラガ、マルタ・ミロなどが登壇、イマノル・ウリベ、マヌエル・グティエレス・アラゴン、グラシア・ケレヘタ、イサベル・コイシェ、マテオ・ヒル、『マラリア』の主役ゴヤ・トレドなどは、ビデオで祝辞を述べました。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2023/09/30/9621736/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。