セクション・オフィシアル追加発表*サンセバスチャン映画祭2022 ④2022年08月06日 16:34

           コンペティション部門の追加12作品を発表、全16作が出揃った

    

      

 

★去る82日、セクション・オフィシアルの追加発表があり、アルゼンチンのディエゴ・レルマン、フランスのクリストフ・オノレ、チリのセバスティアン・レリオのベテランから、デビュー作2編を含む12作、スペイン映画の4作を加えて全16作が出揃いました。うちアニメーション『バケモノの子』(15El niño y la bestia)の製作者として本祭に参加した経験のあるゲンキ・カワムラ川村元気の『百花』と、アメリカのマリアン・マティアスの「Runner」がデビュー作です。前回アップしたミケル・グレアを含めて、3人の新人が金貝賞を競う展開になりました。ラテンアメリカ諸国の監督映画4作があり、別途紹介を予定しております。3回に分けてアップします。

 

 

             ◎70回セクション・オフィシアル追加12作品

 

5)「Pornomelancolía / Pornomelancolia」アルゼンチンWIP Latam 2021作品

監督マヌエル・アブラモヴィッチ(ブエノスアイレス1987)、監督、脚本家。長編4作目、本祭との関りでは、サバルテギ-タバカレラ部門に数作選出されている。脚本は監督とフェルナンド・クラップ。製作者はヘマ・フアレス・アジェン、クラリサ・オリベリほか、編集アナ・レモン、プロダクション・マネージメントはマルセラ・アレナス。

 

データ:製作国アルゼンチン=フランス=ブラジル=メキシコ、スペイン語、ドラマ、98分、製作Gema Filmsアルゼンチン / Desvia Productionsブラジル / Dublin Films フランス / Mart Filmsメキシコ、撮影地メキシコ、201910月、20211月。サンセバスチャン映画祭のIkusmira Berriak 2018、タバカレラ現代文化国際センター、エリアス・ケレヘタ映画学校の支援を受けている。

キャスト:ラロ・サントス

 

解説31歳になるラロはメキシコ南部の山間の町オアハカに住んでいる。工場で働いており、彼の両親は彼がセックス・インフルエンサーなのも、HIVなのも知らない。自身のヌード写真を撮り、自家製のポルノビデオを、ソーシャルメディアの何千人ものフォロアーに投稿している。ラロは自身の人生を統制していたが、実際の私生活では長いあいだ鬱でふさぎ込んでいた。彼はメキシコ革命に関するポルノ映画でエミリアノ・サパタ役のオーディションに合格する。ポルノグラフィーを出発点として、ハイパーコネクテッドな世界における私的なものと公的なもの、現実と仮想との境界を考察している。

    

     

 

 

 

6)「Le Lycréen / Winter Boy」フランス

監督クリストフ・オノレChristophe Honore(カレ=プルゲール1970)は、監督、脚本家、作家。本祭の関りでは、2008年「La belle personne / The Beautiful Person」(『美しいひと』)、キアラ・マストロヤンニに主役した2009年「Non ma fille,tu n/iras pas danser / Making Plans for Lena」がセクション・オフィシアルにノミネートされている。前者は未公開だがフランス映画祭2009で上映され、DVDが発売された。今回は父親の死で危機に陥った少年についてのフィルム「Le Lycreen / Winter Boy」で戻ってきました。ドノスティア栄誉賞を受賞するジュリエット・ビノシュが共演している。

 

データ:製作国フランス、フランス語、2022年、ドラマ、122分。製作者フィリップ・マルタン、デビット・シオン、撮影レミー・シェヴラン、公開フランス20221123

キャスト:ポール・キルヒャー(ルカス)、ヴィンセント・ラコステ、ジュリエット・ビノシュ、クリストフ・オノレ、アドリアン・カッセ、パスカル・セルボ、ザビエル・ジャンノリ、ヴィルフリート・カペ―、イザベル・テヴヌー、ジャン=フィリップ・サレリオ

 

     

   (ポール・キルヒャー、フレームから)

   

    

   (主演のポール・キルヒャー、ヴィンセント・ラコステ、ジュリエット・ビノシュ)

  

解説17歳の高校生ルカスは、父親の死にあって粉々になっている。彼の人生は手なずけねばならない凶暴な獣のようだと感じている。パリに住んでいる兄と今は一人暮らしの母親のあいだで、希望と愛を征服するために闘わねばならない。

 

  

7)『百花 / A Hundred Flowers』 日本

監督ゲンキ・カワムラ 川村元気(横浜1979)は、製作者、監督、作家。デビュー作。本祭との関りは製作者として、2015年セクション・オフィシアルにノミネートの細田守のアニメーション『バケモノの子』、新海誠の『君の名は。』が2016年にコンペティション部門で特別上映されている。今回は監督としてアルツハイマーの母親をめぐる実写映画で金貝賞を競うことになった。

   

     

 

データ:製作国日本、日本語、2022年、ドラマ、104分。監督の同名小説の映画化。脚本は監督と平瀬謙太朗、音楽は網守将平、撮影は今村圭佑、製作はAOI Pro. 配給TOHO(日本)、GAGA.(海外)、日本公開は映画祭開催前の202299

キャスト:菅田将暉(葛西泉)、原田美枝子(母・葛西百合子)、長澤まさみ(妻・葛西香織)、永瀬正敏(浅葉洋平)、北村有起哉(大澤哲也)、岡山天音(永井翔太郎)、他

 

     

        (泉役の菅田将暉と母百合子役の原田美枝子、フレームから)

    

ストーリー:レコード会社に勤務する泉と、ピアノ教室を営む母親は、過去のある事件をきっかけに、互いの心の溝を埋められないまま過ごしてきた。そんななか、突然、母親が不可解な言葉を発するようになる。「半分の花火が見たい・・・」それは、母が息子を忘れていく日々の始りだった。母の記憶が消えゆくなか、息子は封印された記憶に手を伸ばす。「半分の花火」とはなにか、謎が解けたとき、息子は母の本当の愛を知ることになる。(公式サイトの抜粋から)

 

 

8)「The Wonder」チリ

監督セバスティアン・レリオ(アルゼンチン、メンドサ1974)、監督、脚本家、フィルム編集者。本祭との関りでは、2013年の『グローリアの青春』がペルラス部門、2017年の『ナチュラルウーマン』がホライズンズ・ラティノ部門、そして今回の「The Wonder」がコンペティション部門に選出された。19世紀後半のアイルランドの寒村を舞台にした、エマ・ドナヒューの同名小説に着想を得て映画化した。脚本をアリス・バーチ、原作者、監督が共同執筆している。前2作はチリを舞台にしたスペイン語映画でしたが、新作の言語は英語とアイルランド語です。


原作者エマ・ドナヒュー(ダブリン1969)は、アイルランド系カナダ人の作家、文学史家、脚本家。2010年のベストセラー Room はレニー・アブラハムソンが映画化し、作家が脚本を手掛けた。第88回アカデミー賞2016作品賞にノミネートされている。また『部屋』として翻訳書も出ている。

    

      

           (エマ・ドナヒューの原作 The Wonder の表紙)

 

データ:製作国イギリス=アイルランド、英語・アイルランド語、サイコスリラー、103分、製作 Element Pictures / Element / House Productions / Screen Ireland (プロダクション・マネージメント)LSG Productions、撮影地アイルランド、20218月クランクイン、配給 Netflix

キャスト:フローレンス・ピュー(英国人看護師エリザベス・ライト/リブ)、キラ・ロード・キャシディ(アナ・オドネル)、キアラン・ハインズ(神父)、トム・バーク(ジャーナリスト)、トビー・ジョーンズ(アナの主治医)、エレイン・キャシディ(アナの母)、ニアフ・アルガー(キティ・オドネル)、ほか

  

ストーリー:舞台は1862年、アイルランドのミッドランド地方の小さな村、イギリス人の看護師リブ・ライトは、11歳の誕生日以来何ヵ月も食べていないという少女アナ・オドネルの真否を観察するために村に派遣されてくる。アナを一目見ようと巡礼者や観光客が殺到し、新聞記者もやってくる。アンナの背後にある真相を突き止めるための委員会が結成され、リブ・ライトは、一部の人が宗教上の奇跡と見なしている医学的驚異を理解するには、誰が信頼できるのかを判断しなければならない。もしかすると天の恵みで生きている聖女として村人が囲っているのではないか、あるいはもっと邪悪な動機があるのだろうか。19世紀に典型的だった断食少女の奇怪な出来事にインスパイアされたサイコスリラー。オドネル家の秘密、宗教的ヒステリー、医学的仮説(科学と信仰の衝突)、イギリスとアイルランドの対立(リブ・ライトは故国に敵対的なアイルランドの村に唯一人でいる)、何が起こっているのかではなく、なぜ起こっているのかが語られる。

 

  

   

       

      (リブ・ライト役フローレンス・ピュー、アナの主治医役トビー・ジョーンズ)

   

 

    

 (マヌエル・アブラモヴィッチ、クリストフ・オノレ、川村元気、セバスティアン・レリオ)

  

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