ビクトル・エリセ、30年ぶりに商業映画に復帰*「Cerrar los ojos」2022年07月15日 12:10

          カンヌ映画祭2023プレミアを視野に新作「Cerrar los ojos」に着手

   

  

       (ビクトル・エリセ、201911月、ビルバオ美術館にて)

   

★先日、75日にビクトル・エリセ(ビスカヤ県カランサ、1940)が4作目となる長編映画Cerrar los ojosを準備中というニュースが駆けめぐった。プロダクションの正式なプレス会見での発表ではなく、アンダルシア州の公共テレビのカナル・スールが資金提供する11本のフィクションと18本のドキュメンタリーのなかにエリセの新作も含まれており、「ホセ・コロナドとマリア・レオンが主演します」というアナウンスをした。続いて制作会社はタンデム・フィルムズTandem Filmsのほか、マラガの制作会社ペカド・フィルムズPecado Films、エリセ自身の制作会社ノーチラスNautilusであることが明らかになった。ただし本作の準備を秘密裏に進めてきたタンデムの製作者クリスティナ・スマラガは、この報道の取材に応じなかったようです。というわけでウラがとれておらず全体像が見えておりませんが、脚本の執筆は昨年の秋から着手、共同執筆者はミシェル・ガスタンビデということも分った。今年の10月にクランクインの予定なら、2023年のカンヌ映画祭上映の可能性もゼロではないか。

     

   

               (新作を準備中のビクトル・エリセ)

    

710日付のエル・パイス紙の記事によると、物語は20124月、「Quién sabe dónde」というスタイルのテレビ番組から始まり、今は引退して漁業をしているベテラン監督、作家でもあった人物を探しあてます。家族の不幸と2作目となるはずだった大作の頓挫で沈黙していた監督役にヒネス・ガルシア・ミリャンが扮します。この監督の兵役時代からの友人であり、2作目の主人公であった俳優が姿を消してしまったことで映画は未完成になっていた。この46歳でゴヤ賞を受賞したガラン俳優役にホセ・コロナドが扮します。このカップルはガールフレンドたちも共有しており、この切っても切れない二人の友情とアバンチュールを中心に展開するようです。マリア・レオンはそのガールフレンドの一人ということでしょうか。以上の3人以外は未発表、まだIMDbがアップされておらず、本格的なキャスティングはスクリプト完成後になるのでしょうか。

 

★肝心のスクリプトは目下推敲中だそうですが、読んだ関係者は「大幅な変更はない」と保証していますので、4作目となるエリセの商業映画への復帰作は、ベテラン監督と彼の映画の主演俳優間の友情についてのノスタルジックなドラマとなりそうです。ビクトル・エリセの紹介など今更の感がありますが、1992年のドキュメンタリー『マルメロの陽光』以来、30年間長編を撮っておりません。1999年、フアン・マルセの小説 El embrujo de Shanghai の映画化の脚本に3年間費やしましたが、最終的に撮影に至りませんでした。2002年、別バージョンの脚本でフェルナンド・トゥルエバが完成させました。

     

   

               (画家アントニオ・ロペス、『マルメロの陽光』から)

  

★しかし今回は上述しましたようにミシェル・ガスタンビデが共同執筆者、予断は許しませんが大いに期待できます。彼はフリオ・メデムの『バカス』(92)でシネマ・ライターズ・サークル賞、エンリケ・ウルビス『悪人に平穏なし』ではゴヤ賞2012オリジナル脚本賞を監督と受賞しています。ウルビスとはホセ・コロナドが主演した『貸し金庫507』(02)でも共同執筆しています。1958年プロヴァンス生れ、主に監督との共同執筆がもっぱらですが、相手によって仕事のやり方を選んでいる。気難しいエリセとの共同執筆はうまくいってるのでしょうか。詩人、監督、脚本の指導教官と多才な人です。

 

           冬眠していたわけではないビクトル・エリセ

 

★ビクトル・エリセのキャリア&フィルモグラフィーは後日にアップしますが、エリセは結構短編を撮っているほか、イランのアッバス・キアロスタミとのオーディオビジュアルによる書簡をやりとりしています。また2002年には、7人の監督による10分間ずつのオムニバス映画10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』に、「ライフライン」で参加した。本作の舞台はエリセが生まれた年と同じ1940年、スペインの片田舎で一つの生命が誕生する自伝的なモノクロ作品。アキ・カウリスマキ、ヴェルナー・ヘルツォークなどをおさえて7作中では最も印象深い秀作、批評家からも観客からも絶賛されました。

 

2006年、「La morte rouge」(32分)は、5歳のとき初めて見た映画を語る短編、映画とはロイ・ウィリアム・ニールのミステリー『シャーロック・ホームズ 緋色の爪』(1944)を指し、後年の自作に大きなインパクトを与えたという。2007年「Sea-Mail」(4分)と「Víctor EriceAbbas KiarostamiCorrespondencias」(96分)は、バルセロナの現代文化センターの依頼によるアッバス・キアロスタミとのビデオ往復書簡、2011年、21人の監督からなる共同作業「311 Sense of Home」は、河瀨直美の呼びかけで2011311日に起きた東日本大震災の犠牲者に捧げられた各311秒の短編でした。エリセはアナ・トレントと再びタッグを組んで参加した。

 

   

           (短編「La morte rouge」のポスター)

   

   

 (ビデオレター「Víctor EriceAbbas KiarostamiCorrespondencias」のポスター)

 

2012年、「Centro Histórico」は、ポルトガルの世界遺産ギマランイス歴史地区を題材にしたオムニバス映画。エリセの「Vidrios partidos」(「割れたガラス」)のほか、アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタマノエル・ド・オリヴェイラ4監督が参加している。本作は第13回東京フィルメックス映画祭2012の特別招待作品として上映され、翌年『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』の邦題で公開された。

  

    

      (ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、バジャドリード映画祭、201310月)

 

★そのほか、昨年11月にエリセは、バスクの彫刻家ホルヘ・オテイサに関するエッセイ「Piedra y cielo」を発表しました。その折りのマスメディアとの会談で、90年代から業界は根本的に変化して、リュミエール兄弟以来の映画は映画館のスクリーンで見る体験がなくなり、映画館が残骸として残った。テレビやタブレットで見ることを否定しないが、映画を見る理想の場所は映画館であると語っている。

  

★「問題は映画を製作することではなく、それが映しだされる場所なのですが、これが難問です。1992年以来、私は長編ではありませんがかなりの仕事をしてきましたが、ほとんど知られていません。私の最後の商業映画のリリースは、アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラと一緒に作った「Centro Histórico」ですが、映画を上映する場所を確保するためにお金を払わねばならず、監督たちの知名度にもかかわらず、スペインではほとんど誰も見ていません。これがこの国で起こっている現実です」とも語っている。しかし新作「Cerrar los ojos」のニュースは駆けめぐり、映画界はエリセの新作を熱心に待っています。

    

★キャスト紹介は気が早いと思いますが、主役の監督役に決定しているヒネス・ガルシア・ミリャンを簡単に紹介しておきます。1964年ムルシア州プエルト・ルンブレラス生れ、映画、TV、舞台俳優、1992年デビュー。当ブログでの紹介記事は初めて、主にTVシリーズに出演、2008年「Herederos」でスペイン俳優組合TVシリーズ部門の助演男優賞を受賞している。イサベル女王の生涯を描いた「Isabel」(141113)のフアン・パチェコ役、「Matadero」(1019)のパスクアル役、直近では Netflix  初出演のメキシコを舞台にした『そしてサラは殺された』(3シーズン25話、2122)で主役のセサル・ラスカノを演じている。他に字幕入りで見られる『海のカテドラル』(8話、2018)も Netflix で配信された。

   

   

             (ヒネス・ガルシア・ミリャン)


★映画では、主に脇役ですが、チェマ・デ・ラ・ペーニャの1981223日に起きた軍部のクーデタを描いた「23-F: la pelicula」(11)でアドルフォ・スアレス首相を演じた。グラシア・ケレヘタのコメディ「Felices 140」(15)、エンリケ・ウルビスの歴史物「Libertad」(21)ほか、脇役が多いので出演数は多い。主役を演じるのは今回が初めてでしょうか。

Felices 140」の作品紹介は、コチラ20150107

Libertad」の作品紹介は、コチラ20210406

 

ホセ・コロナド(マドリード1957)については、Netflix で配信されたミゲル・アンヘル・ビバスの『息子のしたこと』(18)、TVシリーズ『麻薬王の後継者』(1820)など、最近の出演作はアップしておりませんが、既にキャリア紹介をしています。マリア・レオン(セビーリャ1984)については、ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』(11)他でキャリア紹介をしています。いずれキャスティングが確定してからアップします。

 

ホセ・コロナド関連記事は、コチラ2014032020170417

                 /20180729

『貸し金庫507』の紹介記事は、コチラ20140325

 

マリア・レオンの紹介記事は、コチラ2014041320150202

『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』の作品紹介は、コチラ20150509

 

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