第35回ゴヤ賞ノミネーション発表*ゴヤ賞2021 ⑤ ― 2021年01月21日 10:24
予定通り28部門のノミネーション発表がありました
★去る1月18日、第35回ゴヤ賞2021ノミネーション発表がスペイン映画アカデミー本部でありました。マリアノ・バロッソ会長の挨拶に続いて、司会のアナ・ベレンとダニ・ロビラが登場、カテゴリー28部門を代わるがわる淡々と候補者を読み上げ、拍手は最後だけという静かなものでした。全員マスクは勿論のこと、机上に置いてある消毒液で手を消毒してから読み上げていました。
(左から、スペイン映画アカデミー書記長フェデリコ・ガラヤルデ・ニーニョ、
ダニ・ロビラ、アナ・ベレン、スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
★多くの予想を覆したのが、作品賞以下13回も読み上げられたサルバドール・カルボの「Adú」でした。フォルケ賞はノミネーションに終わり、フェロス賞(2月8日発表)にいたってはノミネートさえありません。しかし公開されたことやNetflixで配信されていることなどが有利に働いたのかもしれません(日本語字幕はなく、スペイン語や英語などで鑑賞できます)。昨年の興行成績が桁外れのナンバーワンだったサンチャゴ・セグラの「Padre no hay más que uno 2」は、ついに最後まで一度も読み上げられることはありませんでした。長編アニメーションのノミネートは1作だけなので、ガラを待たずに受賞が決定、今までになかったのではないか。
★司会者のダニ・ロビラは、難しい癌を克服して初めて公衆の前に姿を現しました。元気そうでしたが不安を抱えての再出発ではないでしょうか。アナ・ベレンは抑制力のある声でしたが、いつもの笑顔は最後だけでした。ノミネーションの数については初出に挿入しています。本番のガラ会場はメインがマラガ、サブがバレンシアで、総合司会者はアントニオ・バンデラスとマリア・カサド、3月6日開催の予定、現在のコロナ時代ではあくまで予定です。
*第35回ゴヤ賞2021ノミネーション*
◎作品賞(5作ノミネーション)
Adú (ノミネーション13個) *
Ane (ノミネーション5個) *
La boda de Rosa (ノミネーション8個) *
Las niñas (ノミネーション9個) *
Sentimental (ノミネーション5個) *
◎監督賞
サルバドール・カルボ (Adú)
フアンマ・バホ・ウジョア (Baby) 2個 *
イシアル・ボリャイン (La boda de Rosa)
イサベル・コイシェ (Nieva en Benidorm) 2個 *
◎新人監督賞
ダビ・ペレス・サニュド (Adú)
ベルナベ・リコ (El inconveniente) 3個
ピラール・パロメロ (Las niñas)
ヌリア・ヒメネス(My Mexican Bretzel)『メキシカン・プレッツェル』なら国際FF、2個 *
◎オリジナル脚本賞
アレハンドロ・エルナンデス (Adú)
クラロ・ガルシア&ハビエル・フェセル(Historias lamentables)監督ハビエル・フェセル、3個
アリシア・ルナ&イシアル・ボリャイン (La boda de Rosa)
ピラール・パロメロ (Las niñas)
◎脚色賞
ダビ・ペレス・サニュド&マリナ・パレス (Ane)
ベルナルド・サンチェス&マルタ・リベルタ・カスティーリョ (Los europeos)
監督ビクトル・ガルシア・レオン 3個
ダビ・ガラン・ガリンド&フェルナンド・ナバロ(Origenes secretos)
監督ダビ・ガラン・ガリンド、『秘密の起源』Netflix 3個
セスク・ゲイ (Sentimental)
◎オリジナル作曲賞
ロケ・バニョス (Adú)
アランサス・カジェハ&マイテ・アロイタハウレギ(Akelarre)監督パブロ・アグエロ、9個 *
Bingen Mendizabal &コルド・ウリアルテ (Baby)
フェデリコ・フシド (El verano que vivimos) 監督カリオス・セデス、 3個
◎オリジナル歌曲賞
ロケ・バニョス& Cherif Badua (Adú)
アレハンドロ・サンス&アルフォンソ・ぺレス・アリアス (El verano que vivimos)
マリア・ロサレン (La boda de Rosa)
カルロス・ナヤ (Las niñas)
◎主演男優賞
マリオ・カサス (No matarás) 監督ダビ・ビクトリ、3個 *
ハビエル・カマラ (Sentimental)
エルネスト・アルテリオ (Un mundo noemal) 監督アチェロ・マニャス、1個 *
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos) 監督ダビ・イルンダイン、1個 *
◎主演女優賞
アマイア・アベラスツリ (Akelarre)
パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane)
キティ・マンベール (El inconveniente)
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa)
◎助演男優賞
アルバロ・セルバンテス (Adú)
セルジ・ロペス (La boda de Rosa)
フアン・ディエゴ・ボトー (Los europeos)
アルベルト・サン・フアン (Sentimental)
◎助演女優賞
フアナ・アコスタ (El inconveniente)
ベロニカ・エチェギ (Explota explota) 監督ナチョ・アルバレス、 3個
ナタリエ・ポサ (La boda de Rosa)
ナタリア・デ・モリーナ (Las niñas)
◎新人男優賞
アダム・ヌルー (Adú)
チェマ・デル・バルコ (El plan) 監督ポロ・メナルゲス、2個 *
マティアス・ジャニックJanick (Historias lamentables)
フェルナンド・バルディビエルソ (No matarás)
◎新人女優賞
ホネ・ラスピウル (Ane)
パウラ・ウセロ (La boda de Rosa)
ミレナ・スミット (No matarás)
グリセルダ・シチリアニ (Sentimental)
◎ドキュメンタリー賞
Anatomía de un dandy (監督アルベルト・オルテガ&チャーリー・アルナイス) 1個
Cartas mojadas (監督パウラ・パラシオス) 1個
El año del descubrimiento (監督ルイス・ロペス・カラスコ) 2個
My Mexican Bretzel
◎プロダクション賞
アナ・パラ&ルイス・フェルナンデス・ラゴ (Adú)
グアダルーペ・バラゲル・トレリェスTrellez (Akelarre)
カルメン・マルティネス・ムニョス (Black Beach) 監督エステバン・クレスポ、6個 *
トニ・ノベリャ (Nieva en Benidorm)
◎撮影賞
セルジ・ビラノバ (Adú)
ハビエル・アギーレ (Akelarre)
アンヘル・アモロス (Black Beach)
ダニエラ・カヒアス (Las niñas)
◎編集賞
ハイメ・コリス (Adú)
フェルナンド・フランコ&ミゲル・ドブラド (Black Beach)
セルジ・ヒメネス (El año del descubrimiento)
ソフィ・エスクデ (Las niñas)
◎美術賞
セサル・マカロン(Adú)
ミケル・セラーノ (Akelarre)
モンセ・サンス (Black Beach)
モニカ・ベルヌイ (Las niñas)
◎衣装デザイン賞
ネレア・トリホスTorrijos (Akelarre)
クリスティナ・ロドリゲス (Explota explota)
アランチャ・エスケロ (Las niñas)
レナ・モッスム/モスンMossum (Los europeos)
◎メイク&ヘアー賞
エレナ・クエバス、マラ・コリャソ、セルヒオ・ロペス (Adú)
Beata Wotjowicz、リカルド・モリーナ (Akelarre)
ミル・カブレル、ベンハミン・ぺレス (Explota explota)
パウラ・クルス、ヘスス・ゲーラ、ナチョ・ディアス (Origenes secretos)
◎録音賞
エドゥアルド・エスキデ、ハマイカ・ルイス・ガルシア、他 (Adú)
ウルコ・ガライ、ホセフィナ・ロドリゲス、他 (Akelarre)
コケ・ラエラ、ナチョ・ロヨ=ビリャノバ、他 (Black Beach)
マル・ゴンサレス、フランセスコ・ルカレリィ、他 (El plan)
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ、アナ・ルビオ (Akelarre)
ラウル・ロマニリョス、ジャン=ルイ・ビリヤード (Black Beach)
ラウル・ロマニリョス、ミリアム・ピケル (Historias lamentables)
リュイス・リベラ・ホベ、ヘルムス・バーナートHelmuth Barnert (Origenes secretos)
◎アニメーション賞(異例の1作のみ)
La gallinas Túruleca (監督ビクトル・モニゴテ、Brown Films / Groriamundi Producciones他) *
◎イベロアメリカ映画賞
El agente topo(チリ)『老人スパイ』 監督マイテ・アルベルディ *
El olvido que seremos (コロンビア) 監督フェルナンド・トゥルエバ *
La llorona (グアテマラ)『ラ・ヨローナ伝説』 監督ハイロ・ブスタマンテ *
Ya no estoy aquí (メキシコ)2019、監督フェルナンド・フリアス・デ・ラ・パラ
『そして俺は、ここにいない』「I'm no longer here」で Netflix 配信 *
◎ヨーロッパ映画賞
Corpus Christi (原題「Boze Cialo」ポーランド) 監督ヤン・コマサ
El oficial y el espia (原題「J'accuse」フランス=イタリア) 監督ロマン・ポランスキー
El padre (The Father)(イギリス=フランス) 監督フローリアン・ゼレール
Falling (カナダ=イギリス) 監督ヴィゴ・モーテンセン *
◎短編映画賞
16 de decembro 監督アルバロ・ガゴ
A la cara 監督ハビエル・マルコ・リコ
Beef 監督イングリデ・サントス
Gastos incluidos 監督ハビエル・マシぺ
Lo efímero 監督ホルヘ・ムリ得る
◎短編ドキュメンタリー賞
Biografía del cadáver de una mujer 監督マベル・ロサノ
Paraíso en llamas 監督ホセ・アントニオ・エルゲタ
Paraíso 監督マテオ・カベサ
Sólo son peces 監督アナ・セルナ&パウラ・オラツ
◎短編アニメーション賞
Blue & Malone: Casos imposibles 監督アブラハム・ロペス・ゲレーロ
Homeless Home 監督アルベルト・バスケス
Metamorphosis 監督かリア・ペレイラ&フアンフラン・ハシント
Vuela 監督カリオス・ゴメス=ミラ・サグラド
(以上28部門、*は当ブログ紹介作品)
★ノミネーションの多寡では予想できないのが映画賞、例年なら2作品ぐらいに絞れるのですが、今回の作品賞は全く分かりません。投票権のある会員に若いシネアストが増えたこともあって予想が難しい。なかで主演女優賞はフォルケ賞を受賞した「Ane」のパトリシア・ロペス・アルナイス、または「La boda de Rosa」のカンデラ・ペーニャ、主演男優賞は同じく「Sentimental」のハビエル・カマラ、または「No matarás」のマリオ・カサスのどちらかを予想しています。長編ドキュメンタリーは、ルイス・ロペス・カラスコの「El año del descubrimiento」か、ヌリア・ヒメネスの「My Mexican Bretzel」のどちらか、後者はなら国際映画祭2020で『メキシカン・プレッツェル』の邦題で上映されました。
★サンチャゴ・セグラの新作コメディが無視されたほかに、グラシア・ケレヘタのコメディ「Invisibles」がノミネートされなかったことを意外に思う人がいたようです。主演のエンマ・スアレスとナタリエ・ポサはケレヘタとは初タッグ、もう一人のアドリアナ・オソレスという豪華キャスト、恋に見放され、美貌の衰えに不安を抱く3人の熟女がセリフの面白さで勝負している。他にペドロ・カサブランクやブランカ・ポルティールオもカメオ出演している。コロナ禍の初期3月公開は不利にはたらいたかもしれない。エル・ムンド紙の2020年ベスト20の第1位は「El año del descubrimiento」、意外や「Adú」は選外でしたが、選考母体によって評価は分かれます。
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