コロンビアから短編 『15の夏』*ラテンビート2020 ⑨ ― 2020年11月04日 16:57
ベネチア映画祭オリゾンティ短編映画賞受賞作品――マリアナ・サフォン監督

★ラテンビート2020上映最後の作品は、コロンビアはボゴタ生れでメデジン育ちの若手監督マリアナ・サフォンの短編第3作「Entre tú y Milagros」(「Between You and Milagros」)、『15の夏』の邦題でオンライン上映されます。今年のベネチア映画祭(9月2日~12日)でコロンビアから唯一ノミネートされた作品として、コロンビアでは話題になっていました。まだ母親の愛情と関心を求めている15歳のミラグロスと母との関係、対立ではない緊張などが綴られていますが、ママが母親だけでなく一人の女性であることも語られているようです。デジタルではない16mmで撮影されておりますが、何故高額な16mmで撮ったかは、監督の映画への情熱が始まったときに見た映画がセルロイドで撮られていたことに関係があるようです。

(短編映画賞のトロフィーを手にしたマリアナ・サフォン、ベネチアFF2020、9月12日)
『15の夏』(「Entre tú y Milagros」短編20分)2020年
監督:マリアナ・サフォン
脚本:マリアナ・サフォン、ナタリエ・アルバレス・メセン
撮影:アルフォンソ・エレーラ・サルセド
編集:アンドリュー・ステファン・リー
音楽:ジェームス・ケニー
美術:ディエゴ・ガルシア
メイクアップ:カロリナ・ウリベ
製作者:ディアナ・パティーニョ・マルティネス、マリアナ・サフォン、ホルヘ・グラナドス・ロス(メキシコ)、他
データ:製作国コロンビア、スペイン語、2020年、短編ドラマ、20分、撮影地アンティオキア県シウダ・ボリバルとラ・ピンタダ、撮影期間2019年5月の5日間、アメリカのミロス・フォルマン奨学基金ほかを獲得。
映画祭・受賞歴:ベネチア映画祭2020オリゾンティ短編部門、作品賞受賞、レイキャビック映画祭(9月)短編部門スペシャル・メンション、ハンプトンズ映画祭(10月、バーチャル・シネマ)ゴールデン・スターフィッシュ賞、ピーター・マクレガー・スコット・メモリアル賞受賞など
キャスト:ソフィア・パス(ミラグロス)、マルセラ・マル(母ロレンサ)、オルガ・ルシア・タボルダ(バシリア)、マリア・フェルナンダ・ヒラルド(ラウラ)、アレハンドロ・ハラミーリョ(ミゲル)、ペドロ・フェルナンデス(バイロン)、他多数
ストーリー:ミラグロスはまだ母親の愛情と関心を求めている15歳。今夏、予期せぬ死との出会いがミラグロスの中でカタルシスを引き起こし、母との関係と自分自身の存在に疑問を抱くようになる。「映画の世界は私の世界であり、自身が持っている特権の解体を明白に探求しています」と語るサフォン監督、かなり個人色の強い作品。


(母ロレンサ役のマルセラ・マル、ミラグロス役のソフィア・パス)


(16mmで撮影中のマリアナ・サフォン)
女性監督作品が44パーセント――活躍の目立った第77回ベネチア映画祭
★監督紹介:マリアナ・サフォンは、ボゴタ生れの監督、脚本家、製作者。ハベリアナ大学で情報学とオーディオビジュアル制作を専攻する。その後映画のスクリプトとして2年間働いたのち、ニューヨークに渡る。コロンビア大学の映画科で演出と脚本の修士号を取得、学位論文が本作「Entre tú y Milagros」だった。2014年、短編デビュー作「Al otro lado de la montaña」(18分)は、ダニエラ・カマチョとの共同監督、共同執筆、第2作「Bajo el agua」(英題「Submerged」、14分)は、脚本を第3作同様ナタリエ・アルバレス・メセンと共同執筆した。コロンビア、メキシコ、米国でコマーシャルを制作、現在は長編デビュー作「La Botero」をメデジンで撮るための準備をしている。

(短編第2作「Bajo el agua」のポスター)
★監督によると「自分の母親との関係に基づいているわけではないが、1年半前30歳になったとき気づいたのは、私の母は2歳の女の子を抱えて既に離婚しており、その女の子というのが私です。それまで私は母を母以外の存在として認識していなかったことに気づいたのです。女性に子供ができると社会は唯一の役割が母親であることを要求します。彼女たちに母性以外にやりたいものが他にあるとは考えない。それで母との関係や過去全体を再考するようになった」と語っている。これは世界共通で日本社会にも少なからず当てはまります。
★ベネチアFFノミネートの報せはニューヨーク滞在中に知ったという監督は、「自分の作品が認められるだけでなく、ベネチア映画祭に参加することは夢でした」と。映画祭では「ベネチアのような伝統ある重要な映画祭は、非常に厳しいキュレーターシップがあります」と。今年は44パーセントが女性監督作品が選ばれていますが、これは強力なメッセージでしょう。「短編映画を撮るのは長編を作る資金がないからですが、短編映画をスクリーンで上映してくれる映画祭の存在」も理由の一つのようです。
★製作者のディアナ・パティーニョ・マルティネスは、当ブログでアップしたシモン・メサ・ソトの「Leidi」(14)を手掛けています。これはカンヌ映画祭2014「短編映画」部門のパルムドールを受賞した作品、その後国際映画祭巡りをして幾つもの受賞を手にした。
*「Leidi」の作品紹介は、コチラ⇒2014年05月30日


(撮影中のディアナとサフォン監督)
★母親ロレンザを演じたマルセラ・マルは、1979年ボゴタ生れ、女優。最近はTVシリーズ出演が多く、Netflixで配信された『エル・チャボ』(18、12話出演)にベルタ・アビラ役で出演、映画ではラテンビート2013上映のアンドレス・バイスのデビュー作『ある殺人者の記録』(07「Satanás」)に出演しています。実話をもとにした同名小説の映画化、こちらでキャリア紹介しております。
*『ある殺人者の記録』の紹介記事は、コチラ⇒2013年10月07日


(アンドレス・バイスの『ある殺人者の記録』ポスター、中央がマルセラ)
★一方、娘ミラグロスにソフィア・パス、ルベン・メンドサの「Niña errante」(18「Wandering Girl」)で12歳になる主役アンヘラを演じた。アンヘラと3人の異母姉妹の物語。マラガ映画祭2019に出品され、ソフィアは賞を逃したが共演者の長女役を演じたカロリナ・ラミレスが銀のビスナガ助演女優賞を受賞した。評価はこれからです。コロンビアは南米随一の美人国と言われますがキャストだけでなくスタッフも美人揃いです。

(ルベン・メンドサの「Niña errante」出演のソフィア・パス)

(右からカロリナ・ラミレス、ソフィア・パスの4人姉妹をあしらったポスター)
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