ヴィゴ・モーテンセンにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2020 ⑭ ― 2020年09月26日 18:14
プレゼンターは『アラトリステ』のアグスティン・ディアス・ヤネス
★9月24日、メイン会場クルサールで初監督、主演作品「Falling」の上映後、本映画祭のハイライトの一つであるドノスティア栄誉賞の授与式がありました。今年の受賞者ヴィゴ・モーテンセンは、登場したばかりは若干緊張して動揺しているようでしたが、以下のように素晴らしい授与式になりました。1986年から始まった栄誉賞受賞者の68人目、奇しくも本映画祭回数と同じでした。プレゼンターは『アラトリステ』の大物プロデューサーで監督のアグスティン・ディアス・ヤネスがトロフィーを手渡しました。「Falling」(カナダ=英、字幕スペイン語入り上映)のフォトコールでは、コロナ禍でヤジウマが制限されていましたが、あちこちから「ヴィゴ、ヴィゴ!」と声がかかり、その人気ぶりがうかがえました。第1回目上映後のプレス会見も彼一人で応対していた。
*「Falling」の作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2020年07月08日
(アグスティン・ディアス・ヤネスからトロフィーを受け取るヴィゴ)
★ガラの司会者エドゥルネ・オルマサバル(タバカレラ理事会ディレクター)によるヴィゴ・モーテンセンのキャリア紹介がバスク語とスペイン語で始り、彼のようにどんなタイプの役柄でも演じ分けられる <ジャンボな俳優> は多くないと、その35年間にわたるキャリアを称賛した。代表的な出演映画『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役に触れ、次々とコンパクトにモンタージュされた映像で『アラトリステ』『G.I.ジェーン』『イースタン・プロミス』『インディアン・ランナー』『ザ・ロード』『グリーンブック』などが紹介された。
★受賞スピーチは、素晴らしいアーティストに贈られるドノスティア賞受賞者の一員になれたことに感動していること、このように伝統のある賞を手にできた幸運に感謝していること、これからも精進して良い仕事をしていきたい、と述べた。最後のスピーチは「人生とは不確実なものだが、贈り物であることも忘れないようにしたい。孤独な人々に寄り添い、もうここにはいない人々に敬意を払って、できる限りの精進をし続けたい」、そしてバスク語で「ドノスティア映画万歳!」、よく響くスペイン語で「ビバ・エル・シネ!」と締めくくって退場した。
(会場の歓声に感動するヴィゴ・モーテンセン)
★モーテンセンの友人3人のビデオメッセージ、イギリスの製作者ジェレミー・トーマス、アルゼンチンの元サッカー選手ベト・アコスタ、シネアストのデヴィッド・クローネンバーグがビデオで祝福を送った。製作者は彼の俳優だけでなく詩人やミュージシャン、監督のような分野での活躍に触れ、彼と一緒に仕事をする素晴らしさを語った。元サッカー選手は彼がサッカーチーム <サンロレンソ・デ・アルマグロ> の熱狂的なサポーターであることを紹介、ユニホームを贈りたいと(ベトは現役時代にサンロレンソでもプレイした)。その後、サンセバスティアンが本拠地のサッカークラブ、レアル・ソシエダのミッドフィルダーのアシエル・イジャラメンディの手から、青と白のレアル・ソシエダと濃紺のサンロレンソのユニホーム2着が贈られた(サンロレンソといえば赤と青が有名だが、新しいデザインでしょうか)。
(アシエル・イジャラメンディから2着のユニホームを受け取るヴィゴ)
(VIGGOとネームの入ったレアル・ソシエダのユニホームを来場者に披露するヴィゴ)
★最後に『イースタン・プロミス』の監督が彼とコラボできたのは非常に光栄なことで、「君は素敵な俳優というだけでなく、製作、脚本、美術、撮影、小道具にまで通じていた。もし君が望むなら、また一緒に仕事をしたい。映画のどんな分野にも精通し、いつも愉快で、思いやりのある愛すべき協力者、これがヴィゴという人間だ」と最大級の祝辞を送った。
(映画祭参加者の署名をするヴィゴ)
(カメラマンの要望に気軽に応えるヴィゴ、9月24日、フォトコール)
金貝賞はジョージア映画「Dasatskisi / Beginning」が受賞*サンセバスチャン映画祭2020 ⑮ ― 2020年09月28日 10:58
フランス合作のジョージア映画が金貝賞以下4冠の快挙
★9月26日、第68回サンセバスチャン映画祭の結果発表がありました。進行役の総合司会はエドゥルネ・オルマサバル(バスク語)とフアン・ディエゴ・ボト(スペイン語)のコンビでした。作品賞に当たる金貝賞は、フランス合作のジョージア映画「Dasatskisi / Beginning」が受賞、その他、監督賞にデア・クルムベガシュビリ、女優賞イア・スクヒタシュビリ、脚本賞デア・クルムベガシュビリとラティ・オネリの2人と、主要7部門の4冠をゲット、これは本映画祭の作品賞(金貝賞)と監督賞(銀貝賞)はダブらせないという基本ルールを逸脱しています。よほど素晴らしかったのか、あるいは他作品がよほど見劣りしていたのかどちらでしょうか。
(金貝賞受賞の「Dasatskisi / Beginning」のプロデューサー)
(両手でも4個はさすがに重いとデア・クルムベガシュビリ)
★68回開催された本映画祭でも、作品賞と監督賞がダブルで受賞したのは2014年以来、それはカルロス・ベルムトのオタク映画『マジカル・ガール』が受賞したとき以来です。その際は会場がざわめき、結果を疑問視する声が聞かれるほどでしたが、ダブル受賞3度目となる今回はどうだったのでしょう。映画賞ではなく国際映画祭の賞なのですから腑に落ちません。審査員はオープニング・セレモニーでアップ済みですが、審査委員長ルカ・グァダニーノ、ミシェル・フランコ、ジョー・アルウィン、マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、レナ・Mossumの5名でした。
*セクション・オフィシアルの審査員については、コチラ⇒2020年09月21日
★既に報道されているようですが、最優秀撮影賞に佐藤快磨監督のデビュー作『泣く子はいねぇが』の月永雄太が受賞、2人とも来サンセバスティアンできず、動画で感謝のメッセージを送りました。デビュー作がセクション・オフィシアルにノミネートされること自体が珍しく受賞は尚更のこと、是枝監督企画が功を奏しているか。公開が11月20日に決定しています。
★審査員特別賞には、ジュリアン・テンプルの音楽ドキュメンタリー「Crock of Gold: A Few Rounds With Shane MacGowan」が受賞しました。製作者と出演者を兼ねたジョニー・デップは既に帰国、登壇しませんでした。残る男優賞には、カンヌ映画祭にノミネートされていたトマス・ヴィンターベアの「Druk / Another Round」出演の、マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグヌス・ミラング、ラース・ランゼの4名が受賞しましたが、4人とも動画出演でした。以上がシェル賞と作品賞に次ぐ大賞審査員特別賞を含めた主要7部門の受賞者です。
◎金貝賞(作品賞)
「Dasatskisi / Beginning」(フランス=ジョージア)
製作:FIRST PICTURE(Ilan Amouyal, David Zerat)/ O. F. A.(ラティ・オネリ)
*プレゼンターは、審査委員長ルカ・グァダニーノ
(ルカ・グァダニーノからトロフィーを受け取るDavid Zerat)
◎審査員特別賞
「Crock of Gold: A Few Rounds With Shane MacGowan」(ドキュメンタリー、イギリス)
監督:ジュリアン・テンプル
*プレゼンターは、審査委員長ルカ・グァダニーノ
(製作者ジョニー・デップは帰国して欠席)
◎監督賞(銀貝賞)
デア・クルムベガシュビリ Dea Kulumbegashvili
(ジョージア映画「Dasatskisi / Beginning」)
*プレゼンターは、審査員ミシェル・フランコ
(ミシェル・フランコからトロフィーを受け取るデア・クルムベガシュビリ)
◎女優賞(銀貝賞)
イア・スクヒタシュビリ Ia Sukhitashvili
(ジョージア映画「Dasatskisi / Beginning」)
*プレゼンターは、審査員イギリスの俳優ジョー・アルウィン
(受賞後のプレス会見のイア・スクヒタシュビリ、トロフィーは代理が受け取った)
(イア・スクヒタシュビリ、映画から)
◎男優賞(銀貝賞)
マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグヌス・ミラング、ラース・ランゼ
(デンマーク映画「Druk / Another Round」(トマス・ヴィンターベア監督、デンマーク=スウェーデン=オランダ)。動画出演のため、ポスター。
*プレゼンターは、審査員レナ・Mossum
(カンヌ映画祭のマークが入ったポスター)
◎脚本賞(審査員賞)
デア・クルムベガシュビリ&ラティ・オネリ
(ジョージア映画「Dasatskisi / Beginning」)
*プレゼンターは、審査員マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス
(ラティ・オネリは欠席、マスク姿のクルムベガシュビリ)
◎撮影賞(審査員賞)
月永雄太
(日本映画、佐藤快磨『泣く子はいねぇが』)
(撮影賞受賞後に作成されたポスター)
★4冠受賞のデア・クルムベガシュビリ監督の「Dasatskisi / Beginning」を製作し、今回脚本賞も受賞したラティ・オネリは、「ジョージア映画祭2018」で上映されたドキュメンタリー『陽のあたる町』(17)の監督、翌年公開もされた。先述したように男優賞受賞のトマス・ヴィンターベアの「Druk / Another Round」は、カンヌ映画祭2020のコンペティション部門ノミネートされていた作品でした。カンヌFFのディレクター、ティリー・フレモーも現地入りした甲斐がありました。
*金貝賞の発表後、クロージング作品「El olvido que seremos / Forgotten We’ll Be」(コロンビア)のフェルナンド・トゥルエバ監督と主役エクトル・アバド・ファシオリンセを演じたハビエル・カマラが登壇してお行儀良かった会場も少し盛り上がりました。座席も半分ほどに制限され、例年とは違う寂しい授賞式でした。最後に受賞者全員と審査員たちが登壇して幕となりました。まだ適当なフォトが入手できませんが、後ほど追加します。
(ハビエル、白いワイシャツがトゥルエバ監督)
受賞結果落穂ひろい*サンセバスチャン映画祭2020 ⑯ ― 2020年09月29日 15:16
ホライズンズ・ラティノ部門の受賞者はメキシコのフェルナンダ・バラデス
★セクション・オフィシアル部門以外のホライズンズ・ラティノ部門、ニューディレクターズ部門、サバルテギ-タバカレラ部門などの受賞者は全員女性監督、メイド・イン・スペイン部門でも触れましたが元気な若い女性たちの受賞が目立ちました。今年はラテンビートもないことだしと勝手に決め、作品紹介が手薄でしたが、なかには受賞作をアップしているのもありました。以下スペイン語映画を中心に受賞結果を羅列しておきました。
◎オリソンテス賞(ホライズンズ・ラティノ部門)
「Sin señas palticulares / Identifying Features」(メキシコ=スペイン)
監督フェルナンダ・バラデス
*他にスペイン協力賞も受賞した。
*作品紹介は、コチラ⇒2020年09月09日
(賞状を披露するフェルナンダ・バラデス)
(英題のポスター)
◎クチャバンク賞(ニューディレクターズ部門)
「La última primavera / Last Days of Spring」(オランダ=スペイン)
監督イサベル・ランベルティ
(トロフィーを手にしたイサベル・ランベルティ)
◎サバルテギ-タバカレラ賞
「A metamorfose dos pássaros / The Metamorphosis of Birds」(ポルトガル)
*ドキュメンター・ドラマ、伝記
監督カタリナ・ヴァスコンセロス
(カタリナ・ヴァスコンセロス)
◎イリサル賞(バスク映画賞)
「Ane / Ane is Missing」(スペイン)
監督ダビ・ペレス・サニュド
*他にバスク脚本賞受賞(マリナ・パレス・プリド、ダビ・ペレス・サニュド)
(賞状を披露するダビ・ペレス・サニュド)
(主役のパトリシア・ロペス・アルナイス)
★他にメイド・イン・スペイン部門で上映されたパウラ・パロメロの「Las niñas / School Giris」がSGAE財団のドゥニア・アヤソ賞、ヴィゴ・モーテンセンのデビュー作「Falling」がセバスティアン観客賞を受賞した。
◎特別栄誉賞シネミラ
★特別賞のシネミラ栄誉賞には、キャスティング・ディレクターのサラ・ビルバトゥア(ギプスコア1958)が受賞した。1990年代から手掛けた映画は、本邦で公開された作品も含めて相当の数にのぼる。例えば、フリオ・メデムの『ルシアとSEX』『アナとオットー』、フアン・カルロス・フレスナディジョの『1億分の1の男』、アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』、ギレルモ・デル・トロの『デビルス・バックボーン』『パンズ・ラビリンス』、カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』『シークレット・ヴォイス』、しばらくTVシリーズに専念していたが映画に戻り、最近カルロス・セデスの「El verano que vivimos」を手掛けた。次回作はイサベル・コイシェの「It Snows in Benidorm」で、イギリスとスペインの個性派をキャスティングしている。プロデューサー同様、縁の下の力持ちのキャスティング・ディレクターに光が当たった。既にマラガ映画祭2013でリカルド・フランコ賞を受賞している。
(トロフィーを手にスピーチするサラ・ビルバトゥア)
★「El verano que vivimos」は、本映画祭では賞に絡まないチャリティー上映でしたが、パートナーになってから初めて共演するブランカ・スアレスとハビエル・レイをキャスティング、他にカルロス・クエバス、シンガーのアレハンドロ・サンス、マリア・ペドラサなど、目下話題の若手を起用した。オープニング・セレモニーには監督以下主演者たちが一堂に会し、その華やかさでコロナ禍吹き飛ばしに一役買った。ワーナーブラザーズで11月6日公開が決定している。オンライン配信を期待しています。
*オープニング・セレモニーの記事は、コチラ⇒2020年09月21日
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