第1回作品賞はコロンビアのカミロ・レストレポ*ベルリン映画祭20202020年03月05日 17:09

           カミロ・レストレポの長編デビュー作「Los conductos

  

             

                        (ピンキー役のルイス・フェリペ・ロサ)

   

★新設された「エンカウンター部門」(15作品)は、話題作が多かったことで観客にも評判がよかった。今年の1回作品賞は同部門にエントリーされていたカミロ・レストレポLos conductos(コロンビア、ブラジル、フランス)が受賞した。全セクションから選ばれるから結構大きな賞になります。レストレポはコロンビア北西部アンティオキア県都メデジン出身の監督、脚本家、編集者、メデジンは首都ボゴタに次ぐ大都市だが、かつては麻薬密売の中心地として有名だった。キャリア紹介は後述するが、短編数本撮った後、主演に新人2人を起用した長編第1作で、第1回作品賞を受賞した。

 

   

 (トロフィーを手にしたカミロ・レストレポ、ベルリン映画祭2020229日ガラ)

 

 Los conductos2020

製作:5 a 7 Films / If You Hold a Stone / Mutokino

監督・脚本・編集:カミロ・レストレポ

音楽:アーサー・B・ジレットArthur B. Gillette

撮影:Guillaume Mazloum

録音:Mathieu Farnarier、ホセフィナ・ロドリゲス

製作者:エレナ・オリーブ、フェリペ・ゲレーロ、マルティン・ベルティエ、(以下共同製作者)グスタボ・ベック、アンドレ・ミエルニク

  

  

     (左から、アンドレ・ミエルニク、エレナ・オリーブ、レストレポ監督、

     グスタボ・ベック、ベルリナーレ2020フォトコール)

 

データ:製作国コロンビア、ブラジル、フランス、スペイン語、2020年、ドラマ、70分、

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2020エンカウンター部門正式出品、第1回作品賞受賞、以後、リトアニアのスプリング映画祭(319日上映)、米国ニュー・ディレクター/ニュー・フィルム(328日)がアナウンスされている。

 

キャスト:フェルナンド・ウサガ・イギタ(デスキーテ)、ルイス・フェリペ・ロサの(ピンキー)

 

ストーリー:逃亡中のピンキーの物語。夜になると街路は黙示録のにおいが充満して来るのは、町が火に包まれているからだろうか。麻薬は地下水と空気を通して渦を巻いている。ある<パードレ>に導かれたセクトの手から解放され、自分の運命を自らの手に委ねる決心をする。彼は今、塗料やスローガン、プレス機が散乱する不法なシャツ工場の中に隠れています。ピンキーには、トンネルの先の明かりが見えていますが、ゴーストに追い詰められています。彼は自分の人生のために走っています。コロンビアは火に包まれていますが、生きています。ネオ・ドキュメンタリー作品。                                

 

 

   本当に和平は調印できたのか――コロンビア内戦の傷痕と希望が語られる

 

カミロ・レストレポは、1975年メデジン生れの監督、脚本家、編集者。1999年以来パリに軸足をおいている。映画研究所L'Abominable のメンバー。2011Tropic Poketで短編デビュー、2015年のLa impresión de una guerra26分「Impression of a War」)が第68回ロカルノ映画祭短編部門の銀豹賞を受賞、続く2016Cilaos13分、仏)も同賞を受賞した。La bouche19分「The Mouth」)がカンヌ映画祭2017「監督週間」のイリー短編映画賞部門にノミネートされ、その後ヒホン映画祭2017ではアストゥリアス賞を受賞した。長編同様、短編も内容が重く、特に最後の短編は娘婿に娘を殺害された父親のリベンジが語られている。

   

  

              (銀豹受賞の「La impresión de una guerra」のポスター)

    

      

   (銀豹受賞の「Cilaos」のポスター)

    

   

(第69回ロカルノ映画祭2016の銀豹のトロフィーを手にしたカミロ・レストレポ)

 

★ストーリーからも想像できるように物語はヘビー、コロンビア内戦が国民に残した傷痕は、何代にもわたって癒えることがないでしょう。製作者の一人、フェリペ・ゲレーロはデビュー作Osculo animal16)の監督、脚本家、編集者、レストレポと同世代の1975年生れ。今回は製作にまわったが、本作も数々の受賞歴をもつ作品、テーマはコロンビアにはびこる暴力ラ・ビオレンシアを取り扱っている。もう一人の製作者、マルティン・ベルティエは、五十嵐耕平&ダミアン・マニヴェルの『泳ぎすぎた夜』17、無声、日仏合作)の製作者の一人、第74回ベネチア映画祭に出品され、翌年劇場公開されている。撮影監督の Guillaume Mazloum は、「Cilaos」も手掛けている。

Osculo animal」の紹介記事は、コチラ20160319

 

★キャスト陣については、今のところ情報を入手できていませんが、IMDbでは主演者2人とも本作がデビュー作のようです。フェルナンド・ウサガ・イギタが演じる「デスキーテ」は仕返しあるいは報復という意味です。

 

    

    

                      (長編「Los conductos」から)