ナタリア・メタの第2作「The Intruder」*ベルリン映画祭20202020年02月27日 08:48

             ベルリン映画祭2020開幕、アルゼンチンからサイコ・スリラー

 

     

29日から始まっていたベネチアのカーニバルが途中で中止になりましたが、220日、ベルリン映画祭2020は開幕しました(~31日)。ドイツも新型コロナウイルスが無縁というわけではありませんが予定通り開幕しました。ドイツは19日、フランクフルト近郊のハーナウで起きた連続銃乱射事件で8名の犠牲者がでたりと、何やら雲行きがあやしい幕開けでした。天候もあいにくの雨続きのようですが既に折り返し点にきました。

   

     

        (左から、セシリア・ロス、ナタリア・メタ、エリカ・リバス) 

   

    

       (出演者とメタ監督、ベルリン映画祭2020、フォトコールにて)

 

★コンペティション部門18作のうち、スペイン語映画はアルゼンチン=メキシコ合作のEl prófugo(映画祭タイトルは英題The Intruder1作のみです。監督は『ブエノスアイレスの殺人』(ラテンビート2014)のナタリア・メタの第2作目です。ある外傷性の出来事によって現実に起きたことと想像上で起きたことの境界が混乱している女性の物語、悪夢や現実の概念の喪失がテーマのようですが、審査委員長ジェレミー・アイアンズ以下審査員の心を掴むことができるでしょうか、ちょっと難しそうですね。

『ブエノスアイレスの殺人』の作品&監督紹介は、コチラ201409291101

 

     

              (ナタリア・メタ、プレス会見にて)

 

 

 El prófugo(英題The Intruder2020

製作:Rei Cine / Barraca Producciones / Infinity Hill / Picnic Produccionas / Piano / Telefe

監督・脚本:ナタリア・メタ

原作:C. E.フィーリング「El mal menor」(1996年刊)

撮影:バルバラ・アルバレス

音楽:Luciano Azzigotti

編集:エリアネ・カッツKatz

視覚効果:ハビエル・ブラボ

製作者:ベンハミン・ドメネチ、サンティアゴ・ガジェリGallelli、マティアス・ロベダ、他

 

データ:製作国アルゼンチン=メキシコ、スペイン語、2020年、サイコ・スリラー、90分、撮影地ブエノスアイレス、メキシコのプラヤ・デル・カルメン、他。ベルリン映画祭2020コンペティション部門でワールド・プレミア。

 

キャスト:エリカ・リバス(イネス)、セシリア・ロス(母マルタ)、ナウエル・ぺレーズ・ビスカヤート(アルベルト)、ダニエル・エンドレル(レオポルド)、アグスティン・リッタノ(ネルソン)、ギジェルモ・アレンゴ(マエストロ)、他

 

ストーリー:女優のイネスは歌手として合唱団で歌っている。パートナーのレオポルドと一緒に出掛けたメキシコ旅行で受けたひどい外傷性の出来事により、現実に起きたことと想像上のことの境界が混乱するようになり、悪夢と日常的に襲ってくる反復的な音に苦しんでいる。イネスはコンサートのリハーサルで若いアルベルトと知り合うまで母親マルタと暮らしていた。彼とは問題なく過ごしているようにみえたが、ある危険な予感から逃れられなかった。夢からやってくるある存在が、彼女の中に永遠に止まりたがっていた。 (文責:管理人)

 

        豪華なキャスト陣を上手く泳がすことができたでしょうか

 

★主役イネスにエリカ・リバス(ブエノスアイレス1974)は、ダミアン・ジフロン『人生スイッチ』14)で、結婚式当日に花婿の浮気を知って逆上する花嫁を演じた。若い女性役が多いが実際は既に40代の半ば、銀のコンドル賞(助演『人生スイッチ』、女優賞「La luz inncidente」)、スール賞、クラリン賞、マルティン・フィエロ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞などを受賞、映画以外にもTVシリーズ出演は勿論のこと、舞台でも活躍しているベテランです。フォード・コッポラのモノクロ映画『テトロ』09)、サンティアゴ・ミトレ『サミット』17)では、リカルド・ダリン扮するアルゼンチン大統領の私設秘書を演じた。2作ともラテンビート映画祭で上映されている。

 

   

 

      

 (母親役のセシリア・ロスとエリカ・リバス、映画から)

 

★イネスの恋人レオポルドには監督デビューも果たしたダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976)が扮した。ウルグアイとアルゼンチンで活躍、『夢のフロリアノポリス』のアナ・カッツ監督と結婚している。アドリアン・カエタノ『キリング・ファミリー 殺し合う一家』17)他で何回かキャリア紹介をしている。彼も銀のコンドル賞、スール賞以下、アルゼンチンのもらえる賞は全て手にしている。

キャリア&フィルモグラフィーの紹介は、コチラ201702200409日 

 

  

        (レオポルド役のダニエル・エンドレル、映画から) 

 

★イネスの新しい恋人アルベルト役のナウエル・ぺレーズ・ビスカヤート(ブエノスアイレス州1986)は、アルゼンチンとフランスで活躍している(スペイン語表記ナウエル・ペレス・ビスカヤルト)。ロバン・カンピヨBPMビート・パー・ミニット』(17)がブレイクしたので、フランスの俳優と思っている人が多いかもしれない。彼自身もセザール賞やルミエール賞の男優賞を受賞したことだし、公開されたアルベール・デュポンテル『天国でまた会おう』(17)もフランス映画だった。最初は俳優になるつもりではなかったそうですが、2003アドリアン・カエタノTVミニシリーズDisputas17歳でデビュー、2005年にはエドゥアルド・ラスポTatuadoで銀のコンドル新人賞を受賞している。アルゼンチンではTVシリーズ出演がもっぱらだが、トロント映画祭2014年で上映されたルイス・オルテガLulú / Lu-Luに主役ルカスを演じた。2016年に公開されるとヒット作となり、彼も銀のコンドル賞にノミネートされた。家庭の愛をうけることなく成長した車椅子のルドミラLudmiraとルカスLucasの物語、タイトルは二人の名前から取られた。

    

     

                   (アルベルト役のナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)

 

   

           (アルベルトとイネス、映画から)  

 

★ラテンアメリカ映画、特にラプラタ地域では悪夢や分身をテーマにすることは珍しくない。さらに特徴的なのが <移動> した先で事件が起きること。本作でも主人公はアルゼンチンからメキシコに旅行している。資金調達のために合作が当たり前になっているラテンアメリカでは都合がいい。原作はブエノスアイレス市内で起きた事件なのに、舞台をスペイン北部に移してしまう作品だって過去にはあった。賞に絡むことはないかもしれないが、『ブエノスアイレスの殺人』の監督、ナタリア・メタの第2作ということでご紹介しました。

 

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