イサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン2019年07月19日 17:50

                    脚本家イサベル・ペーニャが辿った長い道のり

 

★インスティトゥト・セルバンテス東京が主催した「スペイン映画祭2019」で上映して欲しかった映画の一つが、ロドリゴ・ソロゴジェンEl reinoでした。残念ながらエントリーされませんでしたが、EU 加盟国28ヵ国の欧州議会が贈る映画賞ラックス賞(第12007年)のオフィシャル・セレクション10作に選ばれました。ノミネーション3作が確定するのは今月末ということです。投票権があるのは欧州議会議員だけですが、イギリスのEU 離脱が先延ばしになったので目下は751名です。過去の受賞作は大体公開されており、スペイン映画はまだ受賞したことがありません。直近の受賞作は、2018年『たちあがる女』(アイスランド・仏・ウクライナ)、2017年『BPM ビート・パー・ミニット』(仏)、2016年『ありがとう、トニ・エルドマン』(独・墺)でした。

 

                

               (TCM出演のイサベル・ペーニャ)

 

★ロドリゴ・ソロゴジェン(マドリード1981)のキャリア&フィルモグラフィーについては、デビュー作Stockholmからご紹介してきましたが、脚本の共同執筆者イサベル・ペーニャについては触れてきませんでした。最近 TCM(映画のTVチャンネル)のインタビュー記事がエル・パイスに載りましたので、これから活躍が期待できる女性脚本家として記事を纏めました。今ではスペインを代表する脚本家になりましたが、その道のりは平坦ではありませんでした。私たちは間違いをおかしますが、「間違うことは前進すること」とペーニャ、つまり失敗は成功の母だということでしょうか。

 

イサベル・ペーニャ(サラゴサ1983)、脚本家。18歳までサラゴサで暮らす。高校卒業後、ナバラ大学でジャーナリズムを専攻するもジャーナリストの道は肌に合わずオーディオビジュアル・コミュニケーションに変更、マドリード映画学校 ECAM の特別脚本科で学ぶ。TCMインタビューによると、「最初から映画を学びたかったが家族の賛同が得られず、書くことが好きだったので、仕方なくジャーナリズムを専攻した。しかしジャーナリズムは当時でっち上げ傾向にあり史上最悪の状況だった。それで結局やりたかった映画を学ぶことになったのです」と語っている。

 

         

            (ゴヤ賞2019脚本賞受賞のトロフィーを手に)

 

2008年、ハビエル・ロアルテの短編Martina y la lunaに監督と脚本を共同執筆、マルティナの母親役で出演もした。映画学校の最終学年にTVシリーズImpares0817話)、次いでBicho malo0932話)、Frágiles121312話)、2010年にはLa pecera de Eva57話)にコーディネーターとして参加した。2013年ロドリゴ・ソロゴジェンのStockholm(マラガ映画祭新人脚本家賞)、2016『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』(サンセバスチャン映画祭審査員賞)、2018El reino(ゴヤ賞オリジナル脚本賞、フェロス脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞)、2019Madreの長編4作をソロゴジェン監督と共同執筆した。映画祭、映画賞ノミネーションは多数につき割愛。ほか短編、TVシリーズがある。

 

     

 (『ゴッド・セイブ・アス』審査員賞受賞、サンセバスチャン映画祭2016924日)

     

        

       (「El reino」フェロス賞受賞の監督とペーニャ、2019119

 

★ロドリゴ・ソロゴジェンから「Stockholm」の共同脚本の打診があったのは2010年で、「即座にハイ」と応えたそうです。これが映画界に入るチャンスになった。当時を偲んで「映画マニアの多くの仲間たちと語りあい、飲みあかしたのです。語り合うことが即、学ぶことであった」とペーニャ。ソロゴジェンとは既にECAMで出会っており、上記のTVシリーズには彼も監督や脚本家として参加していた。

  

★ソロゴジェンのメソッドは、大いに語り合った後、テーマは何か、登場人物はどうするかを一度明確にして、情報を整理する。更に「自分たちよりもっと情報を持っている人を訪ねてインタビューする。なぜなら脚本を書くには、そのテーマのエキスパートでなければならないからで、数ヵ月かかる」と。それぞれ書いた半分を持ち寄り、互いに読みあって弛みを直したり是正したりして交換する・・・二つの頭が一つになるまでその作業を続ける。そうやって完成したものは二人の子供のようなものだとインタビューに応えていた。「El reino」がラックス賞2019ノミネーション3作に踏み止まれるならば、公開が期待できるかもしれない。

 

     

(無冠に終わった「El reino」のフォトコール、サンセバスチャン映画祭、2018922日)

 

Stockholm」の紹介記事は、コチラ20140617

『ゴッド・セイブ・アス』の紹介記事は、コチラ20160811

El reino」の紹介記事は、コチラ⇒2018年07月25日


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