『夏の鳥』ガジェゴ=ゲーラ共同監督*ラテンビート2018あれやこれや ⑨2018年11月17日 08:51

          ガジェゴ=ゲーラ共同監督の新作は『彷徨える河』を超えられたか?

   

    

★ラテンビート後半3作目『夏の鳥』は、チロ・ゲーラの前作『彷徨える河』の成功もあってか、観客の入りが一番多かったのではないか。新作はクリスティナ・ガジェゴの初監督作品、ガジェゴ=ゲーラ共同監督とはいえ、彼女のバイタリティを印象づける仕上がりだったように思います。カンヌ映画祭併催の「監督週間」のオープニング作品、その後、ロカルノ、トロント、釜山、シカゴ、ロンドン他、国際映画祭にエントリーされています。公開はまだ故国コロンビアのみですが、これから翌年にかけてメキシコ、ドイツ、ハンガリー、米国、フランスなどがアナウンスされています。『彷徨える河』同様、2019年アカデミー外国語映画賞コロンビア代表作品、米国での評価が雌雄を決するかもしれない。本作のストーリー&時代背景、キャスト、スタッフ紹介、監督フィルモグラフィーなどは、原題Pájaros de veranoでアップしております(配役のみ再録)。

 

        

    (婦唱夫随が長続きのコツ、クリスティナ・ガジェゴとチロ・ゲーラ監督夫妻)

 

配役:カルミニャ・マルティネス(ウルスラ・プシャイナ)、ナタリア・レイェス(ウルスラの娘サイダ)、ホセ・アコスタ(サイダの夫ラパイエット、ラファ)、ジョン・ナルバエス(ラファの親友モイセス)、ホセ・ビセンテ・コテス(ラファの伯父ぺレグリノ、エル・パラブレロ)、フアン・マルティネス(アニバル)、グレイデル・メサ(ウルスラの息子レオニーダス)、他エキストラ約2000

 

Pájaros de verano」の内容紹介は、コチラ20180518

『彷徨える河』の内容紹介は、コチラ20161201

 

        マリファナ密売者の繁栄と没落、野心と名誉の衝突が語られる

 

A: 背景は1970年代から80年代半ばにかけてマリファナ密売者が繁栄した「ボナンサ・マリンベラ(bonanza marimbera)」と言われる時代です。映画は時系列に1968年から1985年まで4部に分かれて語り継がれていく。コロンビア北部ラ・グアヒラの砂漠地帯に暮らす先住民ワユーの一族のマリファナ密売者プシャイナ家の繁栄と没落が語られる。

B: ワユーの文化と伝統を守ろうとするゴッドマザー的存在のウルスラ・プシャイナの名誉、サイダと結婚することで当主となったラパイエットの野心、母と娘の世代間の軋轢も語られる。    

 

       

      (プシャイナ一族、ペレグリノ、レオニーダス、ウルスラ、ラファ、サイダ)

 

A: ウルスラにカルミニャ・マルティネス、ラパイエットにホセ・アコスタ、サイダにナタリア・レイェス、この3人がプロの俳優です。『彷徨える河』に比べれば分かりやすいストーリーです。分かりやすい反面、先が読めてしまうので前作のような意外性には欠けます。しかし史実にインスピレーションを受けて製作されているから、一定のタガが嵌められるのは仕方がない。

B: ワユーの掟を破ってマリファナ密輸で富を得ようとしたプシャイナのようなクランと、それを潔しとしないクランの対立も語られ、ウルスラが遭遇する四面楚歌は自らが蒔いた種でもある。

         

        

                (クラン同士の権力闘争)

  

A: コロンビアとベネズエラの国境を挟んで、ワユー族のクランは今でも30くらい現存しているそうです。ラ・グアヒラの砂漠地帯とカリブ海に面したクランでは自ずと気質も異なります。プシャイナ一族も現存しています。

B: それはラストシーンで暗示されていた通りです。

 

          先住民ワユーも貪欲と強欲の本能をもつ人間である

 

A: 一族はワユーの文化や伝統を守ろうとするが、巨大なアメリカ資本の誘惑には太刀打ちできない。映画から透けて見えてくるのは、ワユーは無垢で時代遅れの人ではなく、貪欲と強欲の本能をもつ人間であるということです。

B: 生き残るためには他のクラン壊滅も厭わない。金の卵マリファナは札束と武器弾薬に形を変えて、米国の悪しき銃文化をも運んできた。

A: サイダを見初めたラファの持参金調達がそもそもの発端だった。無一文のラファには求婚の資格がない。悪友モイセス(ジョン・ナルバエス)と語らって、マリファナの密売にのめりこんでいく。

 

     

  (女性が男性を挑発するワユーの伝統的な求愛のダンス、サイダがラファを挑発している)

 

     

     (持参金の牛やヤギを引き連れて求婚にきたラファと腐れ縁のモイセス)

 

B: ウルスラは夢に左右されながらも、豊かさに比例して大きくなっていく権力の魅力に抵抗できない。家族の絆、特に不肖の息子レオニーダス(グレイデル・メサ)の溺愛が悲劇を呼び込む。

A: 息子への溺愛はウルスラが見る不吉な夢と関連しています。豪華な家具調度に囲まれた豪邸に暮らしていても悪夢が彼女を支配しており、心は以前と変わらない粗末な家屋に住んでいる。

B: ウルスラの夢が伏線となり、『彷徨える河』のようなサプライズが削がれてしまっている。もう少しひねりがあってもよかった。

 

       

              (ウルスラが見た悪夢のシーン)

 

          クラン間の交渉人エル・パラブレロが果たす役割の重要さ

 

A: ホセ・ビセンテ・コテスが演じたラファの伯父ペレグリノ、クラン間の対立を避けるための使者、交渉人エル・パラブレロとして登場する。ワユーでは非常に重要な大役、母方の一番年上の伯父が担う。

B: 甥ラファの求婚の交渉もペレグリノ、ラファの義弟レオニーダスがアニバル(フアン・バウティスタ)の娘に行なった侮辱を詫びる交渉も彼の仕事でした。

A: いかなる場合でも、エル・パラブレロは生きて返さねばならない。主役3人以外は初出演でしたが、ホセ・ビセンテは民族衣装とワユー・バッグを肩に掛けカンヌ入りをしていました。

B: 本日より大阪会場の上映が始まります。お楽しみください。

  

A: まだ全体をアップしておりませんが、去る117日、5回イベロアメリカ・フェニックス賞結果発表があり、本作が最高賞の作品賞、カルミニャ・マルティネスが女優賞、レオナルド・Heiblum音楽賞を受賞しました。チロ・ゲーラは次回作Esperando a los Barbarosの撮影のためモロッコ滞在中ということで授賞式は欠席でした。南アフリカのジョン・マックスウェル・クッツェーの小説の映画化です。初めて英語で撮るそうで、「ブルータス、お前もか」です。

 

        

      (作品賞のトロフィーを抱きしめたクリスティナ・ガジェゴと仲間たち

 

       

        (女優賞のトロフィーを手に貫禄のアルミニャ・マルティネス)


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2018/11/17/8999790/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。