「金のビスナガ」 受賞作 「Las distancias」*マラガ映画祭2018 ⑯2018年04月27日 14:54

        エレナ・トラぺが作品賞「金のビスナガ」と監督賞受賞

 

     

エレナ・トラぺの長編第2Las distancias作品賞(スペイン映画部門)、トラペ自身も監督賞を受賞しました。昨年のカルラ・シモンの『夏、1993』に続いて、カタルーニャの若い女性監督が「金のビスナガ」を受賞したことになります。ESCACの監督科出身、先輩イサベル・コイシェの薫陶を受けているようです。秋の映画祭上映への期待やゴヤ賞2019ノミネーションを考えてアップしておきます。

ESCACEscuela Superior de Cine y Audiovisuales de Cataluña1994年バルセロナ大学の付属上級映画学校として設立された。現在は近郊のタラサに本部を移して活動している。フアン・アントニオ・バヨナ、キコ・マイリョ、マル・コル、ハビエル・ルイス・カルデラなどバルセロナ派の監督の多くが本校の出身者です。

 

        

     (赤絨毯に現れた、左からブルノ・セビーリャ、エレナ・トラぺ監督、

   アレクサンドラ・ヒメネス、マリア・リベラ、ミキ・エスパルベ、マラガFF 2018

 

 Las distancias(「Les distáncies」)2018

製作:Coming Soon Films / Miss Wasabi

      協賛 TV3(カタルーニャTV/ RTVE / ICEC / ICAA

監督:エレナ・トラぺ

脚本:エレナ・トラぺ、ミゲル・イバニェス・モンロイ、Josan Hetero

撮影:フリアン・エリサルデ

編集:リアナ・アルティガル

美術:アンヘラ・リベラ

録音:ジョルディ・ロシニョール・コロメル、アルベルト・マネラ

キャスティング:アンナ・ゴンサレス

衣装デザイン:マルタ・ムリーリョ、サラ・クレメンテ

メイクアップ:ダナエ・ガテル

プロダクション・デザイン:バネッサ・Locke、ノラ・ウィリー

助監督:アンナ・カプデビラ

製作者:マルタ・ラミレス、(協力)イサベル・コイシェ、マルセロ・ブッセ

 

データ:製作国スペイン、言語カタルーニャ語・スペイン語、2018年、99分、ドラマ、マラガ映画祭2018正式出品、417日上映、スペイン今秋公開が決定している。配給Sherlock Films

 

キャスト:アレクサンドラ・ヒメネス(オリビア)、ミキ・エスパルベ(コマス)、イサク・フェリス(ギリェ)、ブルノ・セビーリャ(エロイ)、マリア・リベラ(アンナ)他

 

プロット:オリビア、エロイ、ギリェ、アンナの仲間4人は冬のベルリンにやって来る。35歳の誕生日を迎えるコマスを驚かすためだ。しかしコマスは彼らが期待したようではなかった。週末までずっとグループは彼の友情の感じ方に疑問をもちながら次第にばらばらになっていくだろう。彼の生き方が、彼らが若かった頃に共有していたようなものではないことを受け入れ、それぞれ失望に向き合うことになる。

  

     

(左から、ミキ・エスパルベ、マリア・リベラ、ブルノ・セビーリャ、トラペ監督、

 アレクサンドラ・ヒメネス、プロデューサーのマルタ・ラミレス、417日にて)

 

           永遠にはつづかない壊れやすい友情についての物語

 

★ストーリーからは特別なハプニングが起きる印象を受けませんが、見た目にそうであっても実は深層では登場人物が葛藤しているという作品があるから未見では判断できない。というのは中心人物コマスの寡黙さが逆に雄弁に感じられるからです。若者たちが30代半ばになり、友情の美名のもとに邂逅する。ところが彼らがかつて描いていた夢の挫折に直面すると、美名に隠れていたフラストレーションが引き起こされ徐々に覆いが外されていく。友情は永遠にはつづかない。コマスを演じたミキ・エスパルベ1983バルセロナ)はコマスと同世代、マラガ映画祭2016コンペティション部門に出品されたマルク・クレウエトの辛口コメディEl rey tuercoの主役を演じている。

El rey tuerco」の紹介記事は、コチラ20160505

 

★もう一人の主役オリビア役で女優賞を受賞したアレクサンドラ・ヒメネス1980サラゴサ)は、目下引っ張り凧の女優の一人、バレリーナとして15歳でプロデビューしたという抜群のプロポーション、本映画祭でもベストドレッサーとしてメディアの注目を浴びていた。公開作品はナチョ・G・ベリジャの『シェフズ・スペシャル』(08)、ハビエル・ルイス・カルデラ『最終爆笑計画』(09、未公開DVD『ゴースト・スクール』(12SPY TIME スパイ・タイム』15)、パコ・レオンKIKI~恋のトライ&エラー』など比較的公開作品が多く、コメディ・ファンにはお馴染みです。未公開ですがフアナ・マシアスのコメディ「Embarazada」では、パコ・レオンとタッグを組み、40代で子供を持とうと奮闘する夫婦役を演じた。夫とは子供願望度に温度差があり次第に食い違っていく妻役が高評だった。バレリーナから転向後、マドリードのEscuela Superior de Artes TAI1970年創立)で演技を学んだという努力家でもある。

SPY TIME スパイ・タイム』の紹介記事は、コチラ20160202

KIKI~恋のトライ&エラー』の紹介記事は、コチラ20160605

 

      

        (ミキ・エスパルベとアレクサンドラ・ヒメネス、映画から)

 

30代後半というのは微妙な年齢で、自分に合った仕事、夢見るような愛などの限界が見えてしまう世代だから生き辛い。彼らの望みは次第にしぼんでいき、見た目ほどにはお気楽な独身生活を送っているわけではないのだろう。青春時代の確固たる友情は脆く、冬のベルリンで各自失望や幻滅を味わうことになる。セリフを極力ふるい落とし、5人はしぐさや視線での演技を要求され、充分それに応えたという。このことも作品賞受賞に繋がったのかもしれない。目の演技は役者にとって難問、却って途切れなく続くセリフで意思伝達をするほうが易しい。舞台を寒々とした冬のベルリンに選んだのはトラぺ監督の希望だったそうですが、これもなにかのメタファーと思われます。

 

    

   (コマスを訪ねてベルリンにやってきた、エロイ、オリビア、マリア、ギリェ)

  

  監督キャリア&フィルモグラフィー

エレナ・トラぺ Elena Trapé は監督、脚本家。バルセロナ自治大学で芸術史を専攻、バルセロナ大学Gestió Culturalのマスター卒。2004ESCAC監督科を出る。2003年短編「Dónde París」、2006年「No quiero la noche」、2008年「Pijamas」、同年TV映画「La Ruïna」はガウディ賞2009にノミネートされた。2010年長編デビュー作Blogはサンセバスチャン映画祭「サバルテギ」部門に正式出品「Otra Mirada」を受賞した。2015年のドキュメンタリーPalabras, mapas, secretos, otras cosasは、イサベル・コイシェ監督についてのポートレート、一種のロード・ムービー、コイシェ監督の友人、家族、ジャーナリストへのインタビューからなる。マラガ映画祭2015で上映された。本作Las distanciasが長編2作目となる。

 

    

                  (エレナ・トラぺ、マラガ映画祭2018 授賞式にて)

 

        

     (長編デビュー作Blog」のポスター

 

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