ニューディレクターズ部門ノミネーション*サンセバスチャン映画祭2016 ④ ― 2016年08月14日 17:55
スペイン語映画はスペインの他アルゼンチンから2作品
★スペインからはネリー・レゲラの“María (y los demás)”1作のみ、アルゼンチンからフェデリコ・ゴッドフリードの“Pinamar”、モロコ・コルマンの“Fin de semana”の2作です。長編映画デビュー作になるわけですが、脚本家、助監督としてのキャリア、短編映画やドキュメンタリー製作など、かなり経験を積んだ監督が多い部門でもある。
*ニューディレクターズ部門*
★“María (y los demás)” ネリー・レゲラ スペイン 2016
人生の岐路に立つマリアの物語。35歳になったマリア(バルバラ・レニー)は、15歳のとき母親が亡くなったことで、父親(ホセ・アンヘル・エヒド)と兄弟たちの面倒をみてきた。というのもマリアが家族の大黒柱だったからだ。しかし父親がカチータ(マリア・スケル)という介護士と再婚したいと言い出したことで、今までの人生がかき回される事態になった。マリアはこれからの生き方を変える必要に迫られる。
*作品データ:製作Avalon / Frida Films 他、監督・脚本ネリー・レゲラの初監督作品、2016年、ガリシア・テレビTVGが参画、撮影地ガリシア州ア・コルーニャ県の自治体クジェレード、スペイン公開10月7日が決定している。
*キャスト:バルバラ・レニー(マリア)、ホセ・アンヘル・エヒド(父アントニオ)、ロシオ・レオン(フリア)、ビト・サンス(トニ)、マリナ・スケル(カチータ)、ルイサ・メレラス(ロサリオ)、パブロ・デルキ、フリアン・ビジャグラン、アイシャ・ビジャグラン、ほか多数
*ネリー・レゲラNery Reguera、カタルーニャ出身の脚本家、監督。短編“Ausencias”(02)でデビュー、同“Pablo”(09)、マル・コルがゴヤ賞新人監督賞を受賞した『家族との3日間』(09、“Tres dias con la familia”)の第1助監督を務めた。本作は東京国際女性映画祭2010のオープニング作品、まだデータが少ない監督だが、追い追い増えていくと思います。
*トレビア:撮影地クジェレードは、ア・コルーニャ県でも12~13世紀の建築物が残っている美しい町、人口は現在3万人に満たないが、有名レストランパソ・デ・ビラボアでの結婚式など観光地として人気が高い。ガリシア語話者85パーセント以上と高率です。バルバラ・レニーによると、「こんな素晴らしい土地での撮影は初めて」と感激、北スペインはサンセバスチャンだけでなく魚貝類料理が美味しいようです。「暗い悲劇のようにみえますが、決してそうではない」とも語っている。『エル・ニーニョ』や『マジカル・ガール』出演により日本でも知名度が高くなりつつある。共演者のホセ・アンヘル・エヒドやパブロ・デルキは、短編“Pablo”にも出演しているベテランです。個人的には来年のゴヤ賞新人監督賞が楽しみになってきました。
★“Pinamar” フェデリコ・ゴッドフリード アルゼンチン 2016
母親が亡くなり、パブロとミゲルの兄弟がピナマルに帰ってくる。母親との別離の他に相続、つまり家族所有のアパートを売却するためだった。パブロはできる限り早く片付けて帰りたい、一方ミゲルは滞在をゆっくり楽しみたい。期せずしてこの旅は彼らの関係を見つめなおすことになる。
*フェデリコ・ゴッドフリードFederico Godfridは、アルゼンチンの監督、脚本家、俳優。2008年、フアン・サシアインとの共同監督の長編デビュー作“La Tigra, Chaco”はロマンチックコメディ。本作が初の単独での監督。俳優としては、アドリアン・Szmuklerの“Prepotencia de trabajo”(11)に出演している。
★“Fin de semana” モロコ・コルマン アルゼンチン 2016 77分
カルラ(マリア・ウセド)は数年ぶりにマルティナ(ソフィア・ラナロ)と過ごすために山間のサンロケ湖にやって来る。二人の関係がどこかよそよそしいのは、互いに語られない何か秘密があるようだった。マルティナにはディエゴ(リサンドロ・ロドリゲス)という人目を忍ぶ相手がおり、二人は激しいセックスゲームから抜けだせないでいた。カルラはこの関係を知ると、ディエゴと対決しようとする。
(左から、ソフィア・ラナロ、マリア・ウセド、モニカ役エバ・ブランコ、撮影現場から)
*モロコ・コルマンMoroco Colmanは、アルゼンチンのコルドバ出身の監督、脚本家、製作者。1990年代からコルドバでは有名なDJとして活躍している。2010年に同タイトルの短編“Fin de semana”がサンセバスチャ映画祭2010で上映されている。俳優も別ならストーリーも母娘の関係になっている。しかし舞台が都会でなく山に囲まれた湖に設定するという大枠は、短編を踏襲している。監督によると「山間の湖を舞台にすることが重要だった」と語っている。2011年に短編“Laura”を撮っている。
*パールズ(Perlas / Pearls)部門*
★チリ=仏=アルゼンチン=西合作、パブロ・ララインの“Neruda”(「ネルーダ」)1作のみです。カンヌ映画祭と並行して開催される「監督週間」にノミネーションされた折に、監督フィルモグラフィー並びにキャスト、ストーリーを紹介しております。尚、今年のトロント映画祭でも「スペシャル・プレゼンテーション」部門にエントリーされております。
*主な監督&作品紹介の記事は、コチラ⇒2016年5月16日
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