第3回イベロアメリカ・プラチナ賞2016*結果発表2016年07月31日 17:03

       『大河の抱擁』のモノクロ映像美の前にひれ伏した授賞式でした

 

 

★ベロアメリカ・プラチナ賞授賞式がウルグアイのプンタ・デル・エステで開催されました(724日)。「梅雨が明けたらプラチナ賞の結果発表」と思っていたのに忘れていました。梅雨明けが遅かったせいです(笑)。コロンビアのチロ・ゲーラ『大河の抱擁』7とほぼ独占状態でした。もう少しバラけるかと予想しておりましたが、今回も前回同様1作品に集中する結果になりました(前回は『人生スイッチ』の8賞)。スペインはもともとノミネーションが少ないこともあってアニメーション賞だけでした。

 

★総合司会はサンティアゴ・セグラとアルゼンチンで活躍しているウルグアイのナタリア・オレイロ、ガラの総指揮ガラはアダル・ラモネス、ケーブルテレビを介して生中継の責任者を担いました。スペインからは候補者以外、プレゼンター役に選ばれているナタリア・デ・モリーナゴヤ・トレド、エドゥアルド・ノリエガ、ウーゴ・シルバ、ペポン・ニエトなど若手も応援に馳せつけました。グアテマラからは、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』がノミネートされていたせいか、ノーベル平和賞受賞者リゴベルタ・メンチュウが小柄な体に美しい民族衣装を纏って登壇、基本的人権の闘いを力強く呼びかけました。今ではスペイン語話者は23カ国で6億人に上るという。英語で撮る監督が増えたとはいえ、スペイン語映画の今後の躍進を祈りたい。

 

  

       (左から、ナタリア・オレイロ、サンティアゴ・セグラ、アダル・ラモネス)

 

★各カテゴリーのノミネーションと結果(邦題『』は公開・映画祭上映作品、「」は仮題)

作品賞
"El Abrazo de la Serpiente" 『大河の抱擁』コロンビア、ベネズエラ、アルゼンチン

"El Clan" 「ザ・クラン」 アルゼンチン、スペイン 
"El club" 『ザ・クラブ』 チリ 
"Ixcanul"
 『火の山のマリア』 グアテマラ 
"Truman"
 「トルーマン」 スペイン、アルゼンチン 



        (ガラに勢揃いした『大河の抱擁』のスタッフとキャストたち)

 

アマゾン河沿いの村に暮らすコロンビア先住民たちが自然と対峙する姿が美しいモノクロ映像で語られた(ダビ・ガジェゴが撮影賞を受賞した)。その生き生きした、現代とは異なった哲学が受賞の決め手になったのではないでしょうか。

作品紹介記事は、コチラ⇒2015524

 

監督賞
アロンソ・ルイスパラシオス Alonso Ruizpalacios  "Güeros"『グエロス』(メキシコ)
セスク・ゲイ Cesc Gay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ Ciro Guerra 『大河の抱擁』
パブロ・ララインPablo Larraín 『ザ・クラブ』
パブロ・トラペロ Pablo Trapero 「ザ・クラン」


 

                  (チロ・ゲーラ)

 

男優賞
アルフレッド・カストロAlfredo Castro 『ザ・クラブ』
ダミアン・アルカサルDamián Alcázar "Magallanes"(ペルー、アルゼンチン・コロンビア・西)監督:サルバドル・デル・ソラル
ギジェルモ・フランセージャGuillermo Francella 「ザ・クラン」
ハビエル・カマラJavier Cámara 「トルーマン」

リカルド・ダリンRicardo Darín  「トルーマン」



                           (ギジェルモ・フランセージャ)

 

ギジェルモ・フランセージャは、『瞳の奥の秘密』でリカルド・ダリンの相棒役を演じたアルゼンチン人なら知らない人がいないという有名なコメディアン、ドロレス・フォンシが女優賞を受賞、リカルド・ダリンも「栄誉賞」を受賞しましたから、アルゼンチンは大喜びでしょう。「ザ・クラン」はベネチア映画祭2015銀獅子監督賞受賞作品、今秋の映画祭上映を期待したい作品。

「ザ・クラン」の主な紹介記事は、コチラ⇒201587


女優賞
アントニア・セヘルスAntonia Zegers 『ザ・クラブ』
ドロレス・フォンシDolores Fonzi『パウリーナ』(アルゼンチン、ブラジル、フランス)

監督:サンティアゴ・ミトレ

エレナ・アナヤ Elena Anaya  "La memoria del agua"(チリ、アルゼンチン、西・独)

 監督:マティアス・ビゼ
インマ・クエスタInma Cuesta "La novia"(西・トルコ・独)監督:パウラ・オルティス
ペネロペ・クルスPenélope Cruz  "Ma Ma"(スペイン) 監督:フリオ・メデム



            (ドロレス・フォンシ)

 

スペインの大女優たちを振り切って受賞、本作を機に結婚したサンティアゴ・ミトレ監督とハグして喜びをかみしめていた。

ドロレス・フォンシと『パウリーナ』の主な紹介記事は、コチラ⇒2015521

 

オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス Alberto Iglesias  "Ma Ma"
フェデリコ・フシド Federico Jusid  "Magallanes"
ルカス・ビダル Lucas Vidal  "Nadie quiere la noche" 監督:イサベル・コイシェ
ナスクイ・リナレス Nascuy Linares 『大河の抱擁』
パスクアル・レイジェス Pascual Reyes『火の山のマリア』監督:ハイロ・ブスタマンテ

ドキュメンタリー
"Allende mi abuelo Allende"
(チリ、メキシコ)『アジェンデ』

監督:マルシア・タンブッティ・アジェンデ
"Chicas nuevas 24 horas"
(西、アルゼンチン、パラグアイ、コロンビア、ペルー)

監督:マベル・ロサノ
"El botón de nácar" 『真珠のボタン』(チリ・仏・西) 監督:パトリシオ・グスマン
"La Once"
(チリ)監督:マイテ・アルベルディ
"The Propaganda Game"
(スペイン)監督:アルバロ・ロンゴリア



                   (パトリシオ・グスマンの 『真珠のボタン』)

 

脚本賞
セスク・ゲイ、トマス・アラガイ Tomás Aragay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ、ジャック・トゥーレモンド Jacques Toulemonde 『大河の抱擁』
ハイロ・ブスタマンテ Jayro Bustamante 『火の山のマリア』"
パブロ・ララインギジェルモ・カルデロンGuillermo Calderón他 『ザ・クラブ』
サルバドル・デル・ソラルSalvador Del Solar  "Magallanes"

撮影賞
アルナルド・ロドリゲス Arnaldo Rodríguez  "La memoria del agua"
ダビ・ガジェゴ David Gallego  『大河の抱擁』
ルイス・アルマンド・アルテアガ Luis Armando Arteaga 『火の山のマリア』
ミゲル・アンヘル・アモエド Miguel Ángel Amoedo  "La novia"
セルヒオ・アームストロング Sergio Armstrong  『ザ・クラブ』 

初監督作品賞
"600 millas"
(メキシコ) 監督:ガブリエル・リプスティン
"El desconocido"
(スペイン)『暴走車 ランナウェイ・カー』 監督:ダニ・デ・ラ・トーレ
"El patrón: Radiografía de un crimen"
(アルゼンチン、ベネズエラ)

監督:セバスティアン・シンデルSchindel
『火の山のマリア』 監督:ハイロ・ブスタマンテ
"Magallanes"
 監督:サルバドル・デル・ソラル

 

  

             (スタッフとキャスト、トロフィーを掲げているのがブスタマンテ監督)

 

『火の山のマリア』とハイロ・ブスタマンテ紹介記事は、コチラ⇒2015828日/1025

 

★その他、ノミネーションをアップしなかったカテゴリーの受賞者

美術賞アンへリカ・ペレア 『大河の抱擁』

編集賞エティエンヌ・Boussac & クリスティナ・ガジェゴ 『大河の抱擁』

録音賞カルロス・ガルシアマルコ・サラベリア 『大河の抱擁』

アニメーション賞Atrapa la bandera エンリケ・ガト(スペイン)

 

Cine en valores価値ある映画:Una segunda madreAnna Muylaert(ブラジル、ポルトガル語)

アナ・ムイラエルト(またはミュイラート?)は、1964年サンパウロ生れの女優、脚本家、監督。サンダンス映画祭2015でワールド・プレミア、英題“The second Mather”、つづくベルリン映画祭「パノラマ」部門出品、Männer Magazine Readers審査員賞を受賞している(男性雑誌でしょうか)。プレゼンターはリゴベルタ・メンチュウでした。

 

   

           (左側の横向きが監督、リゴベルタ・メンチュウ)

 

栄誉賞

リカルド・ダリン1957年ブエノスアイレス、俳優・監督)、ここ30年間のスペイン語映画でもっとも活躍している俳優の一人、人徳、才能、カリスマ性の三拍子が揃っている。特にセスク・ゲイの「トルーマン」(2015)でサンセバスチャン映画祭男優金貝賞ゴヤ賞主演男優賞を受賞して、タイミング的によかった。プラチナ賞は友人のギジェルモ・フランセージャが受賞したが、ダリン的には満足だったのではないでしょうか。受賞の弁は「映画のお陰でより良い人生が送れています」、俳優だった両親と11歳で舞台デビューした少年も、来年は還暦を迎えます。大資本を駆使するハリウッド支配に対抗してイベロアメリカ映画に貢献していることが評価された。私生活では1988年フロレンシア・バスと結婚、今もってラブラブはこのギョウカイでは珍しい。11女があり、長男リカルド・(チノ)・ダリンも俳優、共演している。

 

     

                 (リカルド・ダリン)

 

4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017マドリード開催がアナウンスされました。開催日は6月か7月になる模様。マドリード市が100万ユーロを拠出する。現在のマドリード市長は反フランコ体制の闘士と言われたマヌエラ・カルメナ(アオラ・マドリードAhora Madrid党)氏、20156月に就任した。市長の右腕と言われるルイス・クエト氏がウルグアイ入りして映画祭のノウハウを見て回ったとか。「いい体験ができた」とプレスのインタビューに答えていました。未だスペインは2回の総選挙にもかかわらず組閣ができておりませんので、社労党からも国民党からも資金提供は望めません。というわけでマドリード市が一肌脱ぐことになったようです。


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