女優賞の行方*ゴヤ賞2016ノミネーション ⑬2016年01月30日 10:57

         誰が受賞してもおかしくない主演女優賞

 

★フォルケ賞とフェロス賞の両方にノミネートされフォルケ賞を手にしたのがナタリア・デ・モリーナ、フォルケ賞では全く無視されたかたちのインマ・クエスタがフェロス賞を受賞した。こんな困難な役を引き受けてくれる女優は、「ぶっ飛んだクレージーなジュリエット・ビノシュ以外にいなかったのよ」とイサベル・コイシェ監督を感激させたフランスの大女優、ノーメイクも厭わない役者魂にはコイシェならずとも応援したくなる。両方にノミネート、無冠だったが自らも初めてプロデューサーに挑戦して全力投球したペネロペ・クルスと、もう誰が受賞してもおかしくない。クルスは過去に主演女優賞を『美しき虜』(98)と『ボルベール』(06)で2度受賞していますが、今回はそれより格段にいい。これはスペインの映画賞だからビノシュの分が悪いのは仕方ありません。

 

  

   (左から、インマ・クエスタ、J・ビノシュ、P・クルス、ナタリア・デ・モリーナ)

 

インマ・クエスタ“La novia”監督パウラ・オルティス  フェロス賞主演女優賞受賞

ペネロペ・クルス“Ma Ma”同フリオ・メデム

ジュリエット・ビノシュ“Nadie quiere la noche”同イサベル・コイシェ

ナタリア・デ・モリーナ“Techo y comida”同JM・デル・カスティジョ フォルケ賞女優賞受賞  

Ma Ma”の記事は、コチラ⇒201515

Nadie quiere la noche”の記事は、コチラ⇒201531

 

           ベテラン演技派が顔を揃えた助演女優賞

 

エルビラ・ミンゲスは『暴走車ランナウェイ・カー』で紹介しております。マリアン・アルバレスノラ・ナバスは、グラシア・ケレヘタの“Felices 140”で共演、アルバレスは“La herida”(13)で、ナバスは『ブラック・ブレッド』(10)で既に主演女優賞を受賞しています。ケレヘタは今年は短編映画賞に“Cordelias”がノミネーションされています。ルイサ・ガバサは、1951年サラゴサ生れのベテラン、TVドラマが多い。アルモドバルの『バチ当り修道院の最期』(83)ではその他大勢の尼僧役、パウラ・オルティスのデビュー作“De tu ventana a la mía”(11)では三人の主役の一人を好演し、それが今回の「花婿の母親」抜擢に繋がったようです。全員フェロス賞にノミネーション、ノラ・ナバスだけが無冠だったが両方にノミネートされていた。

 

  

  (左から、マリアン・アルバレス、ルイサ・ガバサ、エルビラ・ミンゲス、ノラ・ナバス)

 

エルビラ・ミンゲス“El desconocido”『暴走車ランナウェイ・カー』監督ダニ・デ・ラ・トーレ

マリアン・アルバレス“Felices 140”同ガルシア・ケレヘタ

ノラ・ナバス Felices 140”同上

ルイサ・ガバサ“La novia”同パウラ・オルティス

Felices 140”の記事は、コチラ⇒201517

       

       新人といっても80代も混じっている新人女優賞

 

80代の新人とはアントニオ・グスマンのデビュー作“A cambio de nada”に出演したアントニア・グスマン、監督の実のお祖母さんです。監督自身も作品賞、新人監督賞、脚本賞にノミネーションされています。以前にもパコ・レオンのデビュー作 Carmina o revienta”(2012)に実母カルミナ・ガルシアが主役カルミナで出演ノミネーションされたが、それでも59歳の若さだった。こちらはライバルの『ブランカニエベス』の白雪姫マカレナ・ガルシアの手に渡ってしまった。個人的には応援していたから残念だった。受賞には巡り合わせの運不運がありますね。

 

イレネ・エスコラルだけがフォルケ賞とフェロス賞にノミネートされていました。サンセバスチャン映画祭バスク映画部門で上映され、彼女はスペシャル・メンションを受賞しました。将来性を感じさせる女優で先頭を走っている印象です。本作はララ・イサギーレ監督の初監督作品、1985年バスク州のビスカヤ県アモレビエタ生れ、最近の若手監督の特徴でもあるアメリカ留学で映画を学んでいる。若いだけに初々しさに溢れている。恋人になるタマル・ノバスは、アメナバルの『海を飛ぶ夢』でハビエル・バルデムの甥役を好演し、確か新人男優賞を受賞したはずです。

 

ヨルダンカ・アリオサはサンセバスチャン映画祭の女優賞受賞者ですが、あちらは国際映画祭、こちらはスペインの映画賞と性格の違いがあります。さらにキューバの女優ということでビノシュ同様分が悪い。イライア・エリアスはアシエル・アルトゥナの“Amama”に主演、本作は同じサンセバスチャンのコンペティションに出品され、「バスク映画Irizar賞」を受賞した。

 

 

(左から、ヨルダンカ・アリオサ、イライア・エリアス、イレネ・エスコラル、A・グスマン)

 

アントニア・グスマン“A cambio de nada”監督ダニエル・グスマン

イライア・エリアス“Amama”同アシエル・アルトゥナ

ヨルダンカ・アリオサ“El rey de La Habana”『ザ・キング・オブ・ハバナ』同A・ビリャロンガ

イレネ・エスコラル“Un otoño sin Berlín”同ララ・イサギーレ

 

サンセバスチャン映画祭2015の結果発表記事は、コチラ⇒2015929