フアン・ディエゴ & アイタナ・サンチェス=ヒホンに「金のメダル」2015年11月20日 11:55

 

「金のメダル」受賞者はスペイン映画界きっての論客の手に

 

★今年はスペイン映画アカデミー設立30周年の年、新会長アントニオ・レシネスの手から、「金のメダル」が師弟愛で固く結ばれているシネアストフアン・ディエゴアイタナ・サンチェス=ヒホンの二人に贈られた。二人揃って記者会見に臨んだが、何しろ名うての論客だから例年より盛り上がったようです。二人とも映画のみならず舞台にテレビにと幅広く活躍しており、特にアイタナ・サンチェス=ヒホンは最近、映画から遠ざかって舞台に専念していたので予期せぬ受賞だったようです。 

 

  (メダルを手に喜びのフアン・ディエゴとアイタナ)

 

アイタナ・サンチェス=ヒホン(1968年、ローマ生れ)は、ゴヤ賞の候補にさえ選ばれなかったのに、スペイン映画アカデミーの最初の女性会長を務めた稀有の女優。「わたしが16歳でデビューしたとき、フアンが近づいてきて話しかけてくれた。お世辞を言う人ではない、そのとき以来のわたしの助言者、先生です。演技のメソッドについての本をプレゼントしてくれた。彼は私のピグマリオンです。30年後に先生と一緒にメダルがもらえるなんて夢みたい」と、傍らの恩師に言及しながら喜びを語った。「(アカデミー会長の)アントニオから電話で知らせがあったとき、本当は当惑したの。受話器を置いてからも呆然としてしまって、この私がフアン・ディエゴと一緒? まさか。現在は映画に出演していないし、でも結局、アカデミーの意向を受け入れようと。メダルが私を元気づけてくれたことに気がついた」と、受賞をまったく予期していなかったようです。受賞がアナウンスされたときにキャリアとフィルモグラフィーをご紹介しています。

*コチラ⇒201581

 

★受賞がアナウンスされたとき、「現在はとてもワクワクしている。ずっと前から待っていたからね」と語っていたフアン・ディエゴ1942年、セビーリャのボルムホス生れ)の喜びの弁は、「アイタナと一緒の受賞は素晴らしいことだよ。重要なのはまだ若くて人を愛せる年齢の人に与えることだ」と。金のメダルは功成り名遂げた人に与える名誉賞ではないということか。自分は遅すぎたという感慨があるのかもしれない。ゴヤ賞主演助演を含めて3個を受賞している実力者の言葉は重いです。受賞は逃したが、彼の代表作の一つが、カルロス・サウラの“La noche oscula”(「暗夜」1989)、16世紀の聖人、神秘思想家サン・フアン・デ・ラ・クルスに扮した作品です。タイトルは彼の有名な詩集『暗夜』から取られた。当ブログには度々登場してもらっています。特に「マラガ映画祭2014」で輝かしい受賞歴、主なフィルモグラフィーをご紹介しております。

*コチラ⇒2014421

 

   

   (“La noche oscula”でサン・フアン・デ・ラ・クルスに扮したフアン・ディエゴ)

 

★女優が40代に入ると、だんだん舞台にシフト替えしていくのは、舞台のダイレクトな反応に魅了されることも大きいが、オファーが減ることにも一因がある。アイタナも「スペインでは円熟した女性を主人公にした映画があまりない。フランスではジュリエット・ビノシュやイザベル・ユペールのために映画が製作される。スペインは18歳から35歳まで、36歳過ぎると母親役が回ってくる。そういう風潮を変えることが必要」と。40歳は95歳と言われるハリウッドほどではないが女優業は年齢との戦いだ。売れっ子女優シャーリー・マクレーンのオスカー賞受賞の弁「あまりに遅すぎます」は有名ですが、彼女も40代初めは一時引退状態だった。『愛と追憶の日々』(83)で受賞したときには49歳だった。娘になったデブラ・ウィンガーは、干されないうちに早々と引退してしまった。大きな損失だと思いますね。

 

           実るほど頭を垂れる稲穂かな

 

フアン・ディエゴ:「女性は突然やめてしまい、結果的に舞台に鞍替えする。せっかくお金をかけて育てたのに、映画界にとってはとても残念なことだ」。彼も一人芝居の魅力にとり憑かれている。平土間の観客から受ける反応が堪らないからのようだ。しかし来年2月に30万ユーロで映画を撮る予定、「それは映画が好きだし、映画の仲間も好きだから」だそうです。彼は内戦終結直後の生れ、つまりフランコ体制時代の教育を受けて育っている。独裁制と民主主義移行期の混乱を体験している。社会に対して仲間に対しての義務を果たすことにも精を出している。だから皆から信頼されるのだろうと思う。役者が天職という彼だが、「身を粉にして一生懸命学び、はたらき、真実を求める」が信条、これからの活躍を期待したい。そのための「金のメダル」だから。

 

アイタナ・サンチェス=ヒホン「フアンほど真摯な人にはあったことがない。年を重ねるごとに顕著になっていく」と言うアイタナだが、「ビガス・ルナが亡くなってほんとに寂しい。私にとって仕事の上でも個人的なことでも重要な監督だった」と鬼籍入りした監督を懐かしむ。彼女にサンセバスチャン映画祭1999の最優秀女優賞をもたらした『裸のマハ』の監督です。主役はアルバ公爵夫人を演じたアイタナでしたが、日本ではペピータ役のペネロペ・クルスが話題をさらった。ビガス・ルナ監督も正当に評価されているとは思えない。個人的には銀幕にカムバックして欲しい。 

 

    (ゴヤの「着衣のマハ」のポーズをとるアルバ公爵夫人、『裸のマハ』から)

 

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2015/11/20/7916214/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。