スペイン国営テレビTVEが「名画劇場」に変身2015年05月14日 12:32

          スペイン映画690本がプライム・タイムに放映される

      


★正式なプログラム・タイトルはHistoria de nuestro cine、チャンネルはLa 2 de TVE、今週の月曜日(511日)から始まりました。月曜から金曜日の午後10時から、この時刻がスペインのプライム・タイム、日本とは大分違います(宵っ張りもありますが、季節によっては午後9時でも明るい)。向こう3年掛かりで1930年代から2000年までの作品690本です。

 

★第1週目は513日からカンヌ映画祭が始まるのに呼応して、受賞作及び正式出品作品から選ばれたようです。元来は曜日ごとに年代分けがあります(後述)。

月曜『ようこそマーシャルさん』(1952)ガルシア・ベルランガ監督

  カンヌ1953、コンペティション正式出品、ユーモア映画賞&脚本賞受賞、映画祭上映、未公開

火曜La niña de luto”(1964、直訳『喪服の少女』マヌエル・スメルスサマーズ監督

  カンヌ1964、コンペティション正式出品、未公開

水曜『根なし草』(1951)ホセ・アントニオ・ニエベス・コンデ監督

  カンヌ1952、コンペティション正式出品、映画祭上映、未公開

木曜『無垢なる聖者』(1983)マリオ・カムス監督

  カンヌ1984、コンペ正式出品、パコ・ラバル&アルフレッド・ランダ主演男優賞受賞

マリオ・カムス、エキュメニカル審査員スペシャル・メンション受賞、19865月劇場公開
金曜『ビリディアナ』(1961メキシコとの合作)ルイス・ブニュエル監督

カンヌ1961、コンペティション正式出品、グランプリ受賞(現在のパルムドールに当る)

196410月劇場公開

★第1回目はガルシア・ベルランガの『ようこそマーシャルさん』が選ばれた。やはりというか誰が見ても納得の選択でしょうか。スペインで最も国民から愛された監督といわれるベルランガ、しかし日本では映画祭上映はあっても劇場公開作品ゼロはいかにも残念です。また「パルムドール」の名称は1990年から使用されようになったので、当時の最高賞は「グランプリ」です。

『無垢なる聖者』は、当ブログでアップしています2014311 ①②

 

 
                        (『ようこそマーシャルさん』から)

★月曜から金曜までの年代分けは:

月曜:1930年代~1940年代

火曜:1950年代~1960年代

水曜:1970年代

木曜:1980年代

金曜:1990年代~2000年まで

   

放映前にイントロとして専門家のグループによる作品解説がつく。一般の視聴者にはクラシック映画では時代背景や映画技術の解説がないと理解しにくい配慮と思われます。以前スカパーで放映されていた「スペイン・チャンネル」でも20分ぐらいの解説付きでした。作品だけを見たい人はずらして見れば問題なしです。TVで一度も放映されなかった映画からも選ばれるそうです。因みに第1回の解説者は映画史家のルイス・E・パレス、プレゼンテーターはエレナ・S・サンチェスです(1979年アビラ生れ、マドリードのコンプルテンセ大学ジャーナリズム科卒、2000年からテレビの司会者、ゴヤ賞、アストゥリアス皇太子賞の授賞式のプレゼンターなど若手ながら重責をこなしている)。 

                   

                (エレナ・S・サンチェス)

 

1930年代からというのはトーキー時代からで無声映画は含まれないのでしょうか。予定作品には、エドガル・ネビーリェの“El crimen de la calle de Bordadores”(1946直訳『ボルダドーレス街の犯罪』)、ブニュエルの『皆殺しの天使』(1962)、カルロス・サウラの『カラスの飼育』(1976)、ホセ・ルイス・クエルダ“Amanece, que no es poco”(1988意訳『とにかく夜が明けるんだから』)、アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)など。エドガル・ネビーリェは貴族の出で、映画監督のほか外交官、作家、戯曲家、画家と多才な人、スペイン映画に残した功績は大きい。ホセ・ルイス・クエルダは『にぎやかな森』のほうが有名だが、個人的にはこちらのほうが好み、タイトルもそうだが映画も人を食ったオハナシです。どんな解説がされるのか興味津津。いずれアップしたい。

 

★作品選定は、こんな人がやっています(写真左から順番に、現在の肩書)

 ハビエル・オカーニャ:批評家、エル・パイス紙の映画欄の常連コラムニスト

 エレナ・S・サンチェス:ジャーナリスト、テレビ司会者、2014よりCine de Barrioの司会者

 ルイス・E・パレス:映画史が専門の歴史家(本プログラムのコーディネーター)

 ホセ・ラモン・ディエス(中央):TVEのディレクター

 フランシスコ・キンタナル:TVEのディレクター

 フェルナンド・メンデス≂レイテ:本プログラムのプロデューサー

 ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェス:本プログラムのプロデューサー

 


他にTVEの「映画の顔」になっている女優のカジェタナ・ギジェン・クエルボ、プロデュサーのエンリケ・セレソ、ホセ・フラデ、勿論映画アカデミー会長アントニオ・レシネス、エトセトラ。

 

★番組制作費の分担とか問題は山積しているようですが、とにかく“Historia de nuestro cine”号は発車しました。