バーニー・エリオット”La deuda”*マラガ映画祭2015 ⑥2015年04月19日 23:28

           第4弾“La deuda”のテーマは「金と権力と貧困」

   

★“La deuda”のオリジナル・タイトルはOliver’s Deal、言語は英語ですが、既にスペイン公開が515日に決定しているらしく吹替え版で見ることになるようです。マラガ映画祭はサンセバスチャンやシッチェスのような国際映画祭ではなくスペイン語映画に特化しているので、監督がアメリカ人、オリジナル版が英語というのは珍しいケースだと思います。前回に続いて本作も長編デビュー作、新人監督にしては大物俳優を揃えることができました。監督の興奮ぶりはキャスト紹介の監督コメントに入れました。

  

 La deudaOliver’s Deal) バーニー・エリオット 2014 西=米=ペルー 
  スリラー 
99

製作:Arcadia Motion Pictures(西) / Atlantic Pictures() / Viracocha Films(ペルー) /

監督・脚本:バーニー・エリオット

キャスト:スティーヴン・ドーフ(オリバー)、アルベルト・アンマン(リカルド・シスネロス)、カルロス・バルデム(ルーベン・カラベド)、デヴィッド・ストラザーン(ネイサン)、ブルック・ラングトン(ケイト)、ルチョ・カセレス(セロン医師)、ハビエル・バルデス(セニョール・ロペス)、ヘスス・アランダ(マリオ)、ニディア・ベルメホ(ロシオ)、リリアナ・トルヒーリョ(サンドラ)、デルフィナ・パレデス(グロリア)、パコ・バレラ(刑事)他

 

      

   (左から、S.ドーフ、A.アンマン、C.バルデム、D.ストラザーン スペイン語版ポスター)

 

解説:異なった二つの国アメリカとペルー、国際金融取引を背景に異なった階級に属する男たち、一攫千金を夢見るハゲタカたちが激しく交錯する骨太な政治ドラマ。オリバーは野心満々のアメリカの実業家、彼の昔からの友人ペルー人のリカルドと一緒にある契約をまとめるつもりである。二人はかつてペルー政府が住民と交していた古い今では忘れられてしまっているある負債を悪用する計画を立てる。オリバーとリカルドは、ペルー山地の村パンパカンチャの土地が思いがけずかなり価値があることに気づく。しかしそこに農民たちの厳格な族長と大土地所有者のカラベドが立ちはだかることになる。二人ともそれぞれ自身の計画を持っていたからだ。

 

        

            (オリジナル版“Oliver’s Deal”のポスター オリバー役のS.ドーフ)

 

   *監督紹介&フィルモグラフィー*

バーニー・エリオット Barney Elliott20005月、サンフランシスコ大学メディア・コミュニケーションを卒業、その後イギリスに渡り、2003年に「ロンドン・フィルム・スクール」修士課程映画監督科を卒業。卒業後、The Art and Technique of Filmmakingで働く。監督、製作者、カメラ技師、編集者としてフィルムとビデオ両方のフォーマットづくりに取り組んだ。フィルム・スクール時代からフリーランスの編集者としてコマーシャル、ドラマ、ドキュメンタリーを手掛けており、ロンドンで仲間と共同でプロダクションAgile Films Ltd. を設立する。

2006年、短編デビュー作となるTrue Colours2007、英語)製作のためAgile Films Ltd.を離れる。本作は20071月のアンジェ映画祭(仏)で短編監督第1作に与えられる特別審査員賞を受賞する。その後90あまりの映画祭で上映、数々の受賞を果たす。「若手監督のパライソ」と称されるカンヌ映画祭の資金援助財団「シネフォンダシオン」に選ばれ、パリに5ヵ月間(200710月~翌年2月)滞在して“La deuda”の脚本を書くことができた。その他、ペルーで短編Ultimo recurso2010、西語、9分)を撮る。バーニーは妻子と200910月よりペルーのリマで暮らしている。妻のバレリア・ルイスValeria Ruiz Elliott はペルーの若手監督の一人。

 


トレビア

スペイン公開は、最初424日とアナウンスされていましたが、配給元Alfa Picturesの関係で515日に変更になりました。これもあくまで予定です。

撮影はニューヨーク、ペルーの首都リマと中央高地にあるワラス州(Huaraz / Waraq ケチュア語で‘夜が明ける’)で行われた。美しいワラスの風景も一つの見どころのようです。

映画製作も御多分にもれず多国籍企業化して久しいが、アメリカとペルーの接点がなかなか見えてこなかったのですが、奥さんがペルーでも注目の若手監督の一人バレリア・ルイスと分かってやっと繋がりました。彼女のほうが人生においても監督としても先輩です。いずれ当ブログにも登場させる機会がくると思います。ペルーは映画後進国と言えますが、若手が欧米の映画学校に学びに出掛けており、サンセバスチャン映画祭でも高評価の作品が上映されるようになっています。このバーニー=バレリアのカップルも出会いはヨーロッパでした。

 

 キャスト紹介*

◎オリバー役のスティーヴン・ドーフ Stephen Dorff  は、1973年ジョージア州アトランタ生れのアメリカの俳優。1985年デビュー、1994年イアン・ソフトリーの『バック・ビート』に主役スチュアート・サトクリフに抜擢される。1998年スティーヴン・ノリントンの『ブレイド』で悪役を演じた。吹替え版で放映もされ、DVDも発売されている。

エリオット監督談「私の長編デビュー作に彼のような俳優が出演してくれたなんて本当にラッキーの一言です。電話で何度も打ち合わせに応じてくれ、私にチャンスを与えてくれた」

 


◎リカルド役のアルベルト・アンマン Alberto Ammann は、1978年アルゼンチンのコルドバ生れ、俳優。ダニエル・モンソンの『プリズン211』の新任看守役でゴヤ賞2010の新人男優賞を受賞した。生後1ヵ月で家族と共に軍事独裁を逃れてスペインに亡命する。父ルイス・アルベルト・アンマンはジャーナリスト、政治家で作家でもあり、民主化なった1982年帰国する。しかし数年後勉学のためスペインに戻り、フアン・カルロス・コラッサの演劇学校で俳優としての演技を学んだ。2008TVシリーズ“Plan America”に出演、映画デビューは前述の『プリズン211』、他にキケ・マイジョの『EVA エヴァ』(ラテンビート2012上映)、ダニエル・カルパルソロの“Invasor”(12)など。 


◎カラベド役のカルロス・バルデム Carlos Encinas Bardem は、1963年マドリード生れ、俳優、脚本家、作家。女優ピラール・バルデムと父ホセ・カルロス・エンシナス(1995没)の長男、オスカー俳優ハビエルは弟。1955年カンヌで国際批評家連盟賞を受賞した『恐怖の逢びき』の監督フアン・アントニオ・バルデムは伯父(2002没)。マドリード自治大学で歴史学を専攻。小説を既に数冊出版しており、1999年、“Muertes Ejemplares”でナダル賞の審査員特別メンションを受けている。2010年にダニエル・モンソンの『プリズン211』(2009)のアパッチ役で助演男優賞にノミネート、同作でスペイン俳優組合賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、他を受賞しています。他に小説Alacrán enamoradoサンティアゴ・サンノウ監督によって映画化されたとき自身も出演、ゴヤ賞2014の助演男優賞にノミネートされた。

本作についての記事はコチラ⇒201422

エリオット監督談「スペインにルーベン・カラベド役を探しに出掛けたとき、何人かに接触した。その後カルロスに会い、5分後にはもう彼に決めていた。魅力的なだけでなくポジティブでカラベドにぴったりだったし、何よりも役柄の理解が素早かったからね」

 


◎ネイサン役のデヴィッド・ストラザーン David Strathairn は、1949年サンフランシスコ生れのアメリカの俳優。1997年カーティス・ハンソンの『L.A. コンフィデンシャル』で脇役だが渋い演技を披露した。毎年一度はどこかで放映されていますね。2005年『グッドナイト&グッドラック』でベネチア映画祭ベスト男優賞を受賞、オスカー賞にもノミネートされた。

エリオット監督談「カメラを前にしてもステージに立っても動じないのは、もはや語り草になっているけれど、何よりも高潔で親切、少しも偉ぶらない謙虚な紳士です」