アルモドバル新作”Silencio”*撮影開始2015年04月05日 07:34

        新「ミューズ」はエンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテ

   

★前回「イベロアメリカ・プラチナ賞」記事でアドリアナ・ウガルテがアルモドバルの新「ミューズ」とアナウンスしましたが、エンマ・スアレスも今まで一度もクロスしませんでした。二人は同じ女性<フリエタ>に扮します。若いフリエタにアドリアナ、円熟期のフリエタにエンマ・スアレス、舞台背景は1980年代末期から現代までのフリエタの辛い30年間が語られます。1980年代後半は、いちいちタイトルを挙げないでも、アルモドバル女性映画に特徴的な時代設定です。欧米から半世紀ほど遅れてやってきた民主主義が根付き始め、なんとかEUの仲間入りができた時代です。「女性路線だが、あくまでアルモドバル・ワールドに徹し、ゴテゴテせず、ユーモアは控えめ」ということです。男性目線か女性目線かどっちでしょうか。女性映画の触れ込みでも、結果的に<男性映画>だったりしますから。

 

                 

                       (エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテ)

 

★アルモドバルのキャスト選定のルールは、脇役でお試し起用をして合格点が付いたら次回にヒロインに抜擢する。ペネロペ・クルスも『ライブ・フレッシュ』(97)では、バスの中で男児を出産する娼婦役、冒頭で消えてしまう。しかし疲れ切って無力な未婚の母親を演じて監督を魅了しました。そもそもの出発点が本作、その後の嫉妬を買うほどの躍進に繋がった。しかし今回はこのルールを変えたようです、アドリアナ・ウガルテもエンマ・スアレスもいきなり起用された。アドリアナはTVドラマでは知られた顔だが、「私はTVドラマを殆ど見ない。だからオーデションで決めた」と監督。他のキャスト陣も同じようです。なかにはロッシ・デ・パルマのようにアルモドバルお気に入りのベテランもおりますが。

 

エンマ・スアレス1964、マドリード)が円熟期の女性を演じると聞いて驚く人は、フアン・ムニョスの“La blanca paloma”(89)、フリオ・メデムの『バカス』(92)、『赤いリス』(93)、『ティエラ―地―』、ピラール・ミロの史劇『愛の虜』96、映画祭題名「愛は奪った」)などの初々しさを知っているファンです。『バカス』で思春期の少女に扮したとき、既に20代後半だったわけです。『愛の虜』でゴヤ賞1997主演女優賞、“La mosquitera”でフォルケ賞2011主演女優賞を受賞、ほか受賞歴多数。

 

       

     (フリオ・メデムのミューズだった頃のエンマ・スアレス、『バカス』より)

 

アドリアナ・ウガルテ1985、マドリード)は、ベレン・マシアスの短編Mala espina20分)でデビュー、アルカラ・デ・エナレス短編映画祭2001のベスト女優賞を受賞した。テレビ界での活躍が続いていたが、サンティ・アモデオのCabeza de perro06)で映画に戻り、続いてベレン・マシアスの“El patio de mi cárcel”(08)、マヌエル・ゴメス・ペレイラの“El juego del ahorcada”(08、セルバンテス土曜映画上映会『言葉あてゲーム』字幕英語)、サルバドール・ガルシア・ルイスの“Castillos de cartón”(09、『砂の上の恋人たち』DVDタイトル)、ビセンテ・ビリャヌエバのコメディ“Lo contrario al amor”(11)、ダニエル・カルパルソロのアクションCombustión13)で主役を演じ、ドラマ、コメディ、スリラー、アクションと演技の幅は広い。最近はTVに映画にと大忙し、アンドレス・ルケ&サムエル・マルティン・マテオスのTiempo sin aireはマラガ映画祭のコンペティションに選ばれジャスミン賞を競う。フアナ・アコスタやカルメロ・ゴメスなどのベテラン勢に演技をしごかれたはずです。映画祭後すぐの430日に封切られる。コロンビア内戦をバックグラウンドにした辛い映画です。年末にもフェルナンデス・ゴンサレス・モリナの“Palmeras en la nieve”の公開が決定しています。 

      

              

           (アドリアナ・ウガルテ、“Combustión”より)

 

★第20作目となる“Silencio”は、既に2016318日封切りが確定しています。彼の最近の新作公開は春3月と決まっています。5月開催のカンヌ映画祭に焦点を当てている監督は、9月のサンセバスチャン映画祭の時期を選ばない。撮影は3月下旬に始動、期間は12週間。ガリシア、ウエルバの山脈、ピレネーとフリエタは旅をする。大切なある人のこと、人生のある大切なことを忘れるための旅、風景も重要なメタファーとして描かれる。アンダルシアの陽光とは一味違った北スペインの<光と影>も登場人物ということかもしれません。

 

       

       (撮影に先立ち、エンマ・スアレスのカメラ・テストをするアルモドバル)

 

★共演者として、ロッシ・デ・パルマの他、インマ・クエスタ(『マルティナの住む街』)、ミシェル・ジェンナー(“No tengas miedo”)、ナタリエ・ポサ(『不遇』)、スシ・サンチェス(『悲しみのミルク』)、ピラール・カストロ(『ベッドサイド物語』)、男優陣はダリオ・グランディネッティ(『トーク・トゥ・ハー』)、ダニエル・グラオ(『ロスト・アイズ』)、ホアキン・ノタリオ(『漆黒のような深い青』)ほか。作品名は必ずしも代表作ではありませんが、邦題が付いたものから選びました。ゴヤ・トレドの名前も挙がっていましたが、まだ未完成のIMDbにはありませんでした。

 

★ナタリエ・ポサは、マヌエル・マルティン・クエンカのMalas temporadasがセルバンテス土曜映画上映会で、『不遇』の邦題で上映されました(字幕英語)。

ナタリエ・ポサ主演“Malas temporadas”(『不遇』)の記事は、コチラ2014611

 

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