アントニオ・バンデラス*ゴヤ賞2015の栄誉賞に決定 ― 2014年11月05日 13:56
★去る10月20日、アントニオ・バンデラス(マラガ1960)の第29回ゴヤ賞2015の「栄誉賞」受賞発表がありました。いやぁ驚きました。こんな若いシネアストが受賞するなんて、ゴヤ賞始まって以来のことです。更にバンデラスはノミネートこそ5回ありますが(データ参照)、未だ無冠でした。うち3回はペドロ・アルモドバル作品です。彼をスカウトして『セクシリア』でデビューさせ、『欲望の法則』、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』と起用した育ての親より先に受賞してしまった。アントニオが『マンボ・キングス/わが心のマリア』出演のためハリウッドに渡ったときのアルモドバル監督の失望は大きかったと言われています。別に他の監督作品に出演しなかったわけではないけれど。(写真下、プレス会見場で)
★スペイン・アカデミー発表の受賞理由:大西洋を挟んだ二つの大陸で、俳優として、監督として、製作者として、諸々の輝かしいキャリアでもってわが国の価値を高めるのに寄与してくれた。受賞は選考員の満場一致だった。・・・彼は、危険や厳しい状況を乗り越え、演技者の<戦士>として、国境を越えて活躍するマラガ人であり、幅広い優れた経歴の持ち主である(抜粋)。
★ハリウッドの重い扉を開けてくれたパイオニアの一人に違いありませんね。『セクシリア』(1982)から最新作のSF映画“Autómata”(2014)まで、トータルで90作以上に出演は、チョイ役でなかっただけに改めて感心いたします。当ブログで、メラニー・グリフィスと離婚して故郷マラガに新居を購入という記事を書いた時には、想像もしませんことでした(⇒6月21日)。ハリウッド作品では『フィラデルフィア』(93)、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)、『デスぺラード』(95)、『エビータ』(96)、『マスク・オブ・ゾロ』(98)・・・と1990年代の活躍は目覚ましい。
★監督デビュー作品“Crazy in Alabama”(99、英語)が翌年のヨーロッパ・フィルム賞、サン・ジョルディ賞他を受賞、第2作“El
camino de los ingleses”(06)は、ベルリン映画祭2007ヨーロッパ・シネマ賞を受賞、ラテンビート2007で『夏の雨』の邦題で上映されました。
★主なる受賞:ゴヤ賞は無冠でしたが、2004年アカデミー「金のメダル」賞、2008年サンセバスチャン映画祭「ドノスティア」賞、2014年シッチェス・カタロニア映画祭「栄誉賞」をそれぞれ受賞しています。またペンシルバニア大学やマラガ大学の名誉博士号も貰っております。
★54歳とはいえ、二十代の初めに故郷マラガを後にマドリードに出て、ハリウッドを目指して既に35年のキャリアがある。90年代のスペインには、ハリウッドに行って自分を試すなんて慣例はなかった時代でした。「海外からやってくるものは、映画といわず全てが驚きだった。長い独裁政が終わって、社会全体を覆っていた、ある種のコンプレックスを打ち壊した。ハリウッドでの勝利は、多分一粒の種を播いたことになった」と、控えめながら自分もスペイン映画界に貢献しているという自負を受賞会見で覗かせました。
★「どんな資金難にも、決して降参しないぞ」と、決意のほどを熱く語ったバンデラス、「みんな、賞など重要じゃないと言いますが、それは貰うまでの話だ」と。貰ってみればその大きな威力というか素晴らしさに驚くというわけです。自分の経歴についての評価は他人がすることで、自分はあれこれ言う立場じゃない。しかしスペインの「偉大な巨人たち、フェルナンド・フェルナン・ゴメス(07没)、アグスティン・ゴンサレス(05没)、ホセ・ルイス・ロペス・バスケス(09没)など、私たち映画界の<バッファロー>に出会えて一緒に仕事ができたことは望外な<喜び>であった」と。最後にメラニー・グリフィスのことを訊かれたバンデラス、「彼女との関係は仕事だけ、遥か昔に彼女に出会い女優として感嘆した、その気持ちは今でも同じだよ」と応じていました。もう終わったことだよ、記者の皆さん。
★現在、三本の脚本を執筆中。サンセバスチャン映画祭コンペティションにサイエンス・フィクション“Autómata”(⇒9月16日)が公開された(これはゴヤ主演男優賞にノミネートされる確率が高い?)。テレンス・マリックの“Knight of Cups”(15英語)、カルロス・サウラの“33 dias”(15西・仏語)、ここではパブロ・ピカソになり、愛人の一人ドラ・マールにはグウィネス・パルトローが扮する。彼女は10代にスペインで暮らしたことがありスペイン語は堪能だそうです。ヒュー・ハドソンの“Altamira”(15英語)が目下撮影進行中という。ハドソン監督は『炎のランナー』(81)でアカデミー賞作品賞を受賞している。
*ゴヤ賞ノミネート作品*
1987 Matador『マタドール<闘牛士>炎のレクイエム』ペドロ・アルモドバル 助演男優賞
1991 Atame!『アタメ』ペドロ・アルモドバル 主演男優賞
1997 Two Much『あなたに逢いたくて』フェルナンド・トゥルエバ 主演男優賞
2012 La piel que habito『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル 主演男優賞
2014 Justin and the Knights of Valour(Justin y la espada del valor)言語:英語
*長編アニメーション賞(ヴォイス出演)作品賞なので製作者がノミネートされました。
ゴヤ賞授賞式もマラゲーニョのダニ・ロビラに決定
★栄誉賞に先だって、ゴヤ賞2015授賞式の総合司会者もアナウンスされました(10月14日)。当ブログで何回か登場してもらったエミリオ・マルティネス・ラサロのコメディ“Ocho apellidos vascos”(2014)の主役ダニ・ロビラです。1980年マラガ生れの34歳とこちらも若返り。マラガは熱くなっている? 発表予定はもっと後だったようですが、マラガのメディアが嗅ぎつけて騒ぎだしたせいで急遽正式発表とあいなった。メイン司会者の資格は明記されているわけではないが「進行役として1年以上のキャリアがあること」が慣例になっていて、ロビラはそれを満たしていなかったという事情もあったらしい。ただし過去にもカルメン・マチやアントニア・サン・フアンが同じケースだった。
(嬉しさ半分、怖さ半分のダニ・ロビラ)
★現アカデミー会長エンリケ・ゴンサレス・マチョ自らが公表しました。例年通りテレビション・エスパニョーラがライブ放映する。
★ダニエル・ロビラは、「プッシュがあったとき思わずオーケーと言ってしまったが、後で考えてみたら怖くなってしまった。いまは嬉しさと恐怖が半々だが、ガラが近づいてきたら恐怖でいっぱいになると思う。責任重大なのは分かってるよ」と正直です。アタマの回転の速い人だし、舞台負けしない自信がある由、コメディアンの素質は“Ocho
apellidos vascos”で証明済み、本作で主演男優賞ノミネートは確実です(!)。2015年は栄誉賞受賞者と司会者がノミネートされるという大変な年になりそう。
★例年、政治的発言が取りざたされる授賞式ですが、ガラのシナリオはやはり欠かせません。ロビラはブラック・ユーモアというより「アイボリー・ホワイト」のユーモア派だそうです。オブラートに包んでやんわりやるのでしょうか。当日が楽しみです。
*大成功によりシリーズ化されるのか、続編が決まった“Ocho apellidos vascos”は、コチラにアップしております(⇒3月27日/5月13日)。
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