カンヌ映画祭2014*「批評家週間」コロンビア映画2014年05月08日 16:01

★「批評家週間」というセクションは公式プログラムではなく、映画祭と同時期に開催されますが、カンヌ本体とは別組織が運営しています。1962年から始まり今年で53回目です。監督デビュー作か2作目ぐらいが対象です。ここで見出されたあとパルムドールを受賞した監督もおり、外郭団体とはいえ目が離せません。ベルナルド・ベルトリッチ、ケン・ローチ、ウォン・カーウァイ、フランソワ・オゾン、ギジェルモ・デル・トロ・・・ああ、数えきれないや。今年は11作品がエントリーされていますが、カメラドールを競うのは7作品、オープニング、クロージング、特別上映作品はコンペ外です。

 

スペイン語映画では、アントニオ・メンデス・エスパルサの『ヒア・アンド・ゼア』(2012Aquí y allá 西=米国=メキシコ、東京国際映画祭上映)があります。スペインの監督ですが映画はアメリカで学び、そのとき知り合ったメキシコの友人夫婦を主人公にメキシコを舞台にした映画で、カンヌの後サンセバスチャンでも会場に勝手連が押し寄せて満席だった映画。他にアルゼンチンのアレハンドロ・ファデルの『獣たち』(2012Loa salvajes アルゼンチン、ラテンビート2012上映)など。概ねワールドプレミアが多く、これからご紹介するフランコ・ロジィのデビュー作 Gente de bien(コロンビア=仏)もワールドプレミアです。

 

★ラテンアメリカで最近存在感を増してきているのがコロンビア、56年前のチリの躍進を思い出させます。「ラテンビート2013」でご紹介したアンドレス・バイス(『暗殺者と呼ばれた男』他)の次の世代です。コロンビア革命軍(FARC)を中心としたゲリラ組織と政府との和平交渉は道半ばですが、以前のような戦争状態からは脱しています。欧米で映画の勉強をしていた若手が帰国して新しい波が寄せてきているのかもしれません。これからご紹介するフランコ・ロジィもその一人です。

 

   
 (写真:フランコ・ロジィ)

*フランコ・ロジィ Franco Lolli 1983年ボゴタ生れ。映画はフランスの映画学校で学ぶ。最初はポール・ヴァレリー大学や新ソルボンヌ大学(Sorbonne Nouvelle)で学んだ後、映画学校 La Fémis Paris の監督学科を専攻、そこでの卒業制作として撮った短編 Como todo el mundo2007)が、サンセバスチャン、ロスアンゼルス、グアダラハラなど50以上の映画祭に出品され26個の賞を受賞しました。なかでフランスのアンジェ・ヨーロッパ・ファースト・フィルム映画祭、ブリュッセル短編映画祭、フランスの古都クレルモン=フェラン短編映画祭、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭などで受賞。 


短編第2 Rodri 2012)が、カンヌの「監督週間」にエントリーされた。カルタヘナ映画祭スペシャル・メンション、クレルモン=フェラン短編映画祭ACSE賞他を受賞しています。RodriRodorigoのことでロドリーゴ・ゴメスが演じた。またカンボジアに渡って、Rithy Panh とのコラボでドキュメンタリー Memoria e imágenes, una experiencia camboyano を撮っている。長編第1作はカンヌ映画祭財団の基金を貰って、パリにある Résidence学生寮で脚本を書いたようです。現在はボゴタとパリで生活しており、ボゴタでは2個所の映画学校で教えている。

 

                                         

                                                                 (写真:父アリエルと息子エリック)

ストーリー:少年エリックと父親アリエルの物語。母親に見棄てられた10歳のエリックは、離れて暮らしていた貧しい父親と暮らすことになる。ブルジョア階級のマリア・イサベルの家で大工として働いていたアリエルは、突然現れた息子とどう接していいか分からない。心を痛めていたマリア・イザベルはクリスマスを自分の別荘で過ごすよう父子を招待する。それがどのような波紋を起こすか彼女には思い及ばなかった。貧富の二極化が進む社会を同時に体験するエリックの心は微妙に揺れ動く。

 

(写真:Gente de bien から)

★「批評家週間」を総括するシャルル・テソンによると、エリックはブルジョア家族の子供たちと遊ぶが、同時に自分がその階層に属していないことを感じることになる。「この映画には胸を打たれた。小津安二郎の Los chicos de Tokio を思い出す」とコメントしている。これは自信はないが内容からして多分サイレントの『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』(1932)じゃなかろうか。いずれにしても好い感触なのが嬉しい。

 

★短・中編セクションにスペインの大物プロデューサーとして有名なヘラルド・エレーロの Safari2013)がエントリーされています。16分の短編、言語は英語です。

 

★審査委員長はイギリスのアンドレア・アーノルド監督(『嵐が丘』『フィッシュタンク』など)、スペインのフェルナンド・ガンソ(雑誌「リュミエールLumiere」の共同編集者)、メキシコのダニエラ・ミチュレ(映画批評家)その他審査員にはジャーナリスト、批評家が多い。

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