『クリスタル・フェアリー』Q&A*第10回LBFF20132013年10月29日 10:38

 

1013日上映後のQ&A

出席者:セバスチャン・シルバ監督  司会者:アルベルト・カレロ氏

 

司会者:シルバ監督のキャリアの紹介『クリスタル・フェアリー』参照。この映画は『マジック・マジック』と対をなす作品です。

シルバ:これは12年前に自分が体験したことを映画にしたものです。私も☆●☆を吸ったし、幻覚サボテン「サン・ペドロ」は悪くなかった。今回の映画では私が拵えたんです。実際のクリスタルも飲んだ後、映画と同じようにいなくなってしまって、それきり会っていません。この映画は彼女に見てもらいたくて作ったんです。最初にサンフランシスコで上映したのも彼女がシスコ出身だと話していたので、もしかしたら来てくれるかもしれないと期待したから。結局なんの手がかりも得られなかった。彼女のアソコと脇毛は本物です。今日は皆さんとクリスタルと同じようにハダカの話をしたい。

(管理人:ジェイミーにはシルバ監督が深く投影されているということです。)

 

質問男1:クリスタルに見せたいと思いますか。
(管理人:見せたいと言ってるのに聞いていない質問)

シルバ:勿論イエスだ。彼女を記念して作ったんだから。

 

(写真:ホフマン、幻覚サボテン「サン・ペドロ」、セラ)

質問男2:本物と映画の中のクリスタルに違いはありますか。

シルバ:本物は裸にならなかった。ウサギに蘇生術を施したのもフィクションだし、長い髪ではなくスキンヘッドだった。テーマは他人と共感したいということで、マイケル扮するジェイミーがクリスタルの過去の秘密を聞いて泣くシーンがそれです。

(管理人:テーマは他者の受容と思いやりに尽きます。サン・ペドロはアドベンチャー・コメディにするためのオマケです。結局誰よりも重い秘密を抱えていたのがクリスタルでした。貰い泣きした観客も多かったでしょう。エモーショナルなホフマンの演技には本物のクリスタルが乗りうつったようでした。)

 

質問男3(スペイン語):映像が素晴らしく、クリスタルの演技も良かった。

シルバ:ジェイミーと砂漠に出掛ける連れの3人は私の弟たちです。あらかじめきちんとしたシナリオを作らず、ぶっつけ本番で12日間で撮りました。

(管理人:質問というより感想でした。撮影監督は本作がデビューのCristian Petit-Laurentです。クリスタル役のホフマンの演技を褒めている批評が目立ちますね。撮影中を含めて現在10本近い映画がアナウンスされています。弟3人のうちピト役のアグスティンは、『家政婦ラケル』でデビュー、『マジック・マジック』ではアリシアに催眠術をかけたサラの恋人役、兄の映画3本の他、最新作はイサベル・デ・アイグアビベスのデビュー作El árbol magnético2013、英題The Magnetic Tree)に出ています。前にもご紹介したようにシルバと一緒に砂漠に出掛けた友人は一人でした。誰だったか質問すべきでした。)

 

質問男4:クリスタルはどうやって選んだか。

シルバ:『マジック・マジック』のオーデションをニューヨークでしたときホフマンが応募してきた。そのときから「クリスタル」に起用しようと決めていた**。でも、これはコメディなんだよ、みんな笑ってくれなかったけど。前の席に座って見てたんだ。私がここで踊れば笑ってくれるかな。

(管理人:当たり前のことだが、日本の観客がどんな反応を示すか知りたかったようだ。結構クスクス笑い声がしてましたが聞こえなかったようです。)

 

★管理人:この後、トイレで流れなかったウンチの話になり、スタッフの誰かのものと言っていたが、結局自分のものだと白状した。撮ろうとしていたのをスタッフの一人が間違って流してしまい、もう夜遅くなっていたから出る人がいなかった。「ウンチとクリスタルの毛は本物です」。監督自身も最初のほうにロボ役でちらっと出演していた。つまりロボだけでなくウンチも出演していた。二人のドラァグクイーンが木陰に隠れておしっこするシーンとか排泄に関するシーンがあり、これは不要なものは溜めこまないで吐き出した方が生きやすい、素直に自分を裸にした方が生きやすいということか。かなりシャイな監督で静かに鑑賞する日本の観客に戸惑ったようでした。

 

アイグアビベスの第1作はスペインとチリの合作、サンセバスチャン映画祭2013「新人監督」部門で上映されました。あるチリの家族の個人史的なポートレートのようです。これには家政婦ラケルを怪演したカタリーナ・サアベドラが母親役として出演、来年見たい映画の1本です。

**1982年ニューヨーク生れ。母親は女優のViva、姉Alexandra Auderも女優。4歳の時からコマーシャルに出演、映画デビューは、ジョン・ヒューズのコメディUncle Buck1988『おじさんに気をつけろ!』)、すでに自分の年より多い40本以上の映画に出ている。

 

★追記:『マジック・マジック』のジュノー・テンプルが、1021日閉幕した「シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭」(通称シッチェス映画祭)で女優賞を受賞しました。

『暗殺者と呼ばれた男』Q&A*第10回LBFF20132013年10月29日 15:36

1012日上映後のQ&A

出席者:カタリーナ・サンディノ・モレノさん  司会者:アルベルト・カレロ氏

 

司会者:(アンドレス・)バイスとの出会いはどのようなものだったのですか。

カタリーナ:第1作のときにも、第2作のときにもオファーがあったが、調整がつかなくてお断りした。3回目のオファーを頂いてやることにしたのです。実はコロンビアでの撮影は初めてだったのです。「マジック」と違って家族のいるボゴタだったのでリラックスできたし、3カ月の撮影期間には家族もスタジオに見学に来てくれた。「マジック」で味わった孤独はなかったのです。自国の歴史的事件でもあり、そういう映画に出会えてよかったと思っています。祖母から当時の「ボゴタッソ」の話も聞いていましたから。

 

     
 (『暗殺者と呼ばれた男』 から)

(管理人:第1作とは『ある殺人者の記憶』、第2作とは『ヒドゥン・フェイス』を指しています。デビュー作『マリア、そしてひと粒のひかり』も『コレラの時代の愛』も撮影はアメリカでしたから、コロンビアでの撮影は初めてになります。ボゴタッソとはガイタン暗殺のあった194849日のボゴタ暴動、ボゴタだけでなくコロンビア全土に波及したので、現在では「49日事件」と言われているようです。)

 

司会者:コロンビア映画の現状はどうですか。

カタリーナ:コロンビアでも映画推進協会ができて後押ししてくれるようになった。やはり機材や音響技術の進歩、俳優の演技も良くなってきている。麻薬物、ゲリラ物以外の新しいジャンルとしてホラーも作られている。まだ映画よりテレビが主流です。

 

シルバ:今後の予定としては何を撮るの?

カタリーナ:自分は目下テレビの仕事をしているが、1時間使って撮ったものが20分に編集されたりしてムダが多い感じがします。個人的には映画のほうが好きです。

(管理人:シルバ監督は前の席で鑑賞していた。やはり映画のテイストは違っていても他監督作品を見るチャンスは逃さない。)

 

質問1:政治的なテーマの作品が多いが、そういうテーマが好きなのでしょうか。

カタリーナ:コロンビアだけでなくラテンアメリカ映画は政治的な映画が多い。私が選んでいるのではなく、監督が私を選んでくれているのです。

 

質問2:古い時代なのにボゴタの街並みの雰囲気が残っていてよかった。

(管理人:質問者は俳優にする質問ではないがと断っていたが、通訳に混乱もあってカタリーナさんは、質問の主旨が分からず答えに窮していた。)

質問3:ボゴタは現在もスペイン時代のコロニアル建築物が残っていて街並みはあまり変わっていません。

(管理人:日本語も分かるコロンビア人らしい女性から助け舟の説明がありました。ここも若干通訳に混乱があり、最終回上映後のQ&Aは参加者全員にとってハードということもあって課題の残る結果になりました。)

 

★個人的にはある殺人者の記憶』(Satanásのほうが気に入りました(邦題に問題ありとしても)。コロンビア国民には教科書で習う歴史的事件でも、当時ボゴタ大学の法学部学生だったガルシア・マルケスの自伝風エッセイ『生きて、語り伝える』(2002、訳書2009)の読者とか、ラテンアメリカ政治史に興味のある人以外の外国人には馴染みがない。

 

★ちょうど第9回汎米会議開催中で各国代表がボゴタに滞在、それに合わせてアメリカ帝国主義打倒を目指すラテンアメリカ学生会議も開催されていた。ハバナ大学の学生代表だったフィデル・カストロも仲間と滞在しており、当日午後二時にガイタンと二度目の会談をする予定だった。フィデルはまだコミュニストではなかったし、マルケスとも面識がなかったが、お話し作りの上手な二人は、後に尾鰭を付けてアレコレ語ることになる。

 

★暗殺者は今もって謎のままですが、仮に映画のようにフアンが陰謀に巻き込まれて暗殺者に仕立てられたとするなら、映画の時代背景をもう少し描く必要があります。ガイタンを崇拝していた失業中の夢見がちな男に何故白羽の矢が立てられたのか。また力演でしたが当時26歳だったというフアンを、40歳のマウリシオ・プエンテスが演じるには無理があったように感じました。

 

★監督・キャスト紹介は、『暗殺者と呼ばれた男』*第10LBFFに詳述してあります。