ホライズンズ・ラティノ部門第6弾*サンセバスチャン映画祭2016 ⑪2016年09月05日 16:47

        ボリビア映画、キロ・ルッソのデビュー作“Viejo calavera

 

    

 ★先月3歳の誕生日を迎えたばかりの新参ブログですが、映画開発途上国ボリビアの映画紹介ゼロは、あまりにバランスを欠いていると反省。先月初めに開催されたロカルノ映画祭2016「現在のシネアストたち」部門に出品、スペシャル・メンションを受賞したキロ・ルッソのデビュー作Viejo calaveraのご紹介。鑑賞するには少し辛い内容の作品ですが、サスペンス的な要素もあり、現代ボリビアが抱える諸問題ともリンクしているようです。

 

★ボリビア映画の日本公開は、ウカマウ集団/ホルヘ・サンヒネスの全作品しかないようです。20145月に「レトロスペクティブ『革命の映画/映画の革命の半世紀』19622014」というタイトルの特別上映会があり、『地下の民』89)、『鳥の歌』95)、『最後の庭の息子たち』04)など代表作品のほか全作品が上映され、ゲスト・トークもありました。彼の作品を見るには体力が必要です。

 

★その他、第22回東京国際映画祭のコンペにノミネートされたフアン・カルロス・バルディビア『ボリビア南方の地区にて』09Zona sur”)は非常に観念的な映画ですが、先住民と白人の対立構図はウカマウ集団と同じ、しかしティストはまったく異なっている。これといった事件が起こるわけではないのに、観客は最後に主客転倒劇を見せられる。ボリビアの若いシネアストたちの胎動を感じた作品でした。これは未公開だったと思います。

  

8Viejo calaveraDark Skull

製作:Socavon Cine / Doha film Institute /

監督・脚本・製作者(エグゼクティブ)・編集・録音:キロ・ルッソ

脚本・製作者(エグゼクティブ):Gilmar・ゴンサレス

撮影・製作者(エグゼクティブ)・編集:パブロ・パニアグラ

プロダクション・デザイン:カルロス・ピニェイロ

美術・メイクアップ:カヤラ・アギラールビビアナ・バルツ

録音:マルセロ・グスマン、ペポ・ラサッリ、ほか

ビジュアル効果:ペポ・ラサッリ、ダニエル・ベンディティ

プロダクション・マネジメント:フアン・パブロ・ピニェイロ

 

データ:製作国ボリビア=カタール、2016年、80分、長編デビュー作、撮影地ウアヌニ鉱山。カタールの「ドーハ・フィルム協会基金」からの援助、ウアヌニ鉱山労働組合、Londra Films P&A、文化省など、国内外の後援、協力を受けた。

映画祭・受賞歴:ロカルノ映画祭2016「現在のシネアストたち」部門出品、85日上映、スペシャル・メンション受賞。サンセバスチャン映画祭2016「ホライズンズ・ラティノ」部門出品、

 

キャスト:フリオ・セサル・ティコナ(エルデル・ママニ)、ナルシソ・チョケカジャタChoquecallata(名付け親の叔父フランシスコ)、アナスタシア・ダサ・ロペス(祖母ロサ)、フェリックス・エスペホ・エスペホ(フアン)、イスラエル・ウルタド(ガジョ)、ロランド・パジPatzi(チャルケ)、エリザベス・ラミレス・ガルバン(叔母カルメン)、ほか

 

   

         (エルデルを演じたフリオ・セサル・ティコナ、映画から)

 

解説:父と対立して町で好き勝手に暮らしていた若者エルデル・ママニの物語。父の死に遭遇してもエルデルはカラオケで飲みつぶれ、街中で悶着を起こし続けている。今では彼を気にかけるものはいなかった。彼にできること、それは鉱山の町ウアヌニに舞い戻って鉱夫として働くこと以外になかった。ウアヌニの町から離れた粗末な家で祖母と暮らすことになったエルデル、叔父で彼の名付け親でもあったフランシスコの口利きで鉱山で働けることになったが、彼にはまったく興味のない仕事に思われ、仲間とのトラブルが絶えなかった。謎めいた父の死、「フランシスコが関わっていたのではないか」、「どうしたら自分の人生を変えることができるのか」、果たして変えることができるのだろうか。

 

 トレビア

★オハナシとしては極くシンプルなもので物足りなく思う人もいそうだが、人物造形が皮相的という批評は計算済みらしく、「神秘的で人を幻惑するような世界のネオリアリズムを追求するために、敢えて登場人物の深層心理には踏み込まなかった」と監督。「ビジュアルな場面、または坑内の照明の取り方にはアンドレイ・タルコフスキーの表現の仕方を参考にして撮影した」と撮影兼製作兼編集と何役もこなしたパブロ・パニアグラは語っている。彼によらず多くのスタッフが掛持ち、デビュー作では珍しいことではありません。尚、キャスト陣はオール初出演のようです。

 

(坑内のシーン)

   

 

  

 (本作の見どころの一つがパニアグラのカメラ、映画から)

 

監督キャリア&フィルモグラフィー

キロ・ルッソ Kiro Russo は、1984年ラパス生れ、監督、脚本家、製作者。ブエノスアイレス映画大学で監督演出を学ぶ。2010年短編Enterprisse2011年、鉱山労働を描いた短編ドキュメンタリーJukuがインディリスボア・インディペンデント映画祭2012 短編部門のグランプリ受賞、ブエノスアイレス近郊に住むボリビア移民の青年群像劇Nueva vidaが、ロカルノ映画祭2015短編部門のスペシャル・メンション「トゥモロー豹」賞とイフラヴァ・ドキュメンタリー映画祭(チェコ)短編部門「ヨーロピアン・ドキュメンタリー」賞を受賞する。2016年本作で長編デビューした。 

   

 (「現在のシネアストたち」スペシャル・メンション受賞、2016年ロカルノ映画祭にて)

 

★現在ルッソ監督は、映画祭を推進するオーディオビジュアル・プロジェクト「Ikusmira Berriak」、現代文化国際タバカレラ・センターに参画、バスク・フィルムライブラリー、ドノスティア文化とコラボしている。