イベロアメリカ映画の将来を模索する*第4回フェニックス賞20172017年12月13日 16:51

            影の薄いかつての宗主国スペインとポルトガル

 

           

★授賞式の1日だけでなく「フェニックス週間Semana Fénix」(122日~9日)と銘打って、各種のシンポジウムが開催されました。せっかく各国のシネアストが一堂に会したのだから唯のお祭り騒ぎに終わらせたくないという思いがあるようです。「シネマ23」というメキシコ主導の映画賞とはいえ、ラテンアメリカ諸国の映画によりスポットを当てたい。どちらかというとかつての宗主国イベリア半島のスペインとポルトガルは裏方の印象が強い。それは結果を見れば歴然です。第1回の作品賞受賞国はメキシコのケマダ=ディエスの『金の鳥籠』、第2回と3回はチリのパブロ・ララインの『ザ・クラブ』と『ネルーダ』、第4回の『ナチュラルウーマン』とチリが3連続受賞しています。監督賞は順次、メキシコのアマ・エスカランテ、チリのパブロ・ララインとコロンビアのチロ・ゲーラ、ブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ、チリのセバスティアン・レリオと、スペイン、ポルトガルの影は薄い。ここいら辺が同じイベロアメリカを対象にしたプラチナ賞との大きな違いです。

 

       ノミネーションされた監督&脚本家のディスカッション

 

★シンポジウムの一つは監督と脚本家のグループ、出席者は、パブロ・ラライン、アマ・エスカランテ、ダビ・プリド(スペインの脚本家、『物静かな男の復讐』)、ガストン・ドゥプラットマリアノ・コーン(アルゼンチン、『笑う故郷』共同監督)、カルラ・シモン(スペインの監督、『夏、1993』)の6人。「イベロアメリカ映画というジャンルが実際に存在するのかどうか?」「イベロアメリカで製作された映画が共有しているスタイル、テーマがあるのかどうか?」などについて、かなりざっくばらんに語り合ったということです。メキシコ市のトナラTonalá 映画館で開催された。 

     

   (左から、ガストン・ドゥプラット、アマ・エスカランテ、マリアノ・コーン、他)

 

★今回は監督としてではなく『ナチュラルウーマン』のプロデューサーの一人としてメキシコにやってきたパブロ・ラライン、今のチリで一番国際的な知名度のあるシネアストの一人だと思います。どうやら監督賞ノミネーションのセバスティアン・レリオ(受賞した!)が来墨できなかったようで、弟フアン・デ・ディオスと設立した制作会社「ファブラ」の代表者として兄弟でチームをアシストしていた。「誰しも居心地のいい箱の中にいたほうがいいとは思っていません。私たちの映画は常に他の映画とは別に分類されます。それは映画の存在を知ってもらえるよう、定義してもらえるような箱が必要なんです」とラライン。まだ各国単独で立ち向かうには力不足ということでしょうか。 

      

         (左から、パブロ、フアン・デ・ディオスのラライン兄弟)

 

★今回は最新作La región salvaje(英題「The Untamed」)の作品・監督・脚本賞のノミネーションを受けたアマ・エスカランテ、国際的なデビューでは一番の古株になります。本作は初めて参加したベネチア映画祭2016の監督賞受賞作品、製作国はメキシコ、デンマーク、仏、独以下9ヵ国に及ぶという。「私は自分のアイディアを誰にも売らなくてよかった。誤りや適切な判断を含めて、私たちは自由をもっている」とエスカランテ。本作のテーマは「メキシコに存在する偽善、ホモ嫌い、マチスモについてのSF仕立ての映画です。各国のプロデューサーが意見を述べ、最終的には私が映画の売上高も考慮して決めた」と語っている。共同執筆者ヒブラン・ポルテラと物語の信憑性や要素を損なわずに維持することができた。ポルテラは『金の鳥籠』やアロンソ・ルイスパラシオスのデビュー作『グエロス』(東京国際映画祭2014)の脚本も各監督と共同で手掛けているライター。

IMDbによるとLa región salvaje」の公開が2018227日とアナウンスされていますが、邦題は未定のようで公式サイトも検索できませんでした。公開確実なら初めてとなります。デビュー作『サングレ』以下は映画祭上映です。

      

  

           (本作のプレゼンをするアマ・エスカランテ監督)

 

★製作資金も大きなテーマの一つだった。ガストン・ドゥプラットマリアノ・コーン1993年に出会い、11年前から今日までコンビを組んでドキュメンタリーを含めて長編6作を撮っている。批評家の絶賛にもかかわらずデビュー作以来今日まで彼らの作品にどこからも資金提供を得られなかったという。『ル・コルビュジエの家』(09)の成功後もそれは変わらず、ノミネート作品『笑う故郷』完成に5年間要したと語っている。「年率35%のインフレでは誰も映画に投資する気になれない。着手する前に疲労困憊してしまう」とコーン監督。アルゼンチンで映画を作ろうとするなら、まず会計業務や経済学を学んでからというわけです。

 

★初期の映画は社会イベントにカメラを持ち込んで製作した。その後『ル・コルビュジエの家』を12万ドルの資金で4週間で撮った。「観客が新鮮な視点やテーマのもつ力強さに興味をもってくれた」とドゥプラット監督、「ある地域的な物語かもしれないが、普遍的なパンチ力があった」とコーン監督。これは最新作『笑う故郷』にもいえることでしょう。個人的には『ル・コルビュジエの家』の不気味さのほうに惹かれますが。

 

          一番の難題は映画産業の拡大と流通のギャップ

  

★アマ・エスカランテがデビュー作『サングレ』(東京国際映画祭2005)を撮ったころのメキシコでは、メキシコ全体で20作ばかりしか製作されなかった。厳しさは相変わらずだが2017年には170作にも上るということです。1国だけで製作することは難しく、この10年間でいっても56ヵ国を超えるのは珍しくない。充分とは言えないが資金援助を利用することもできるようになっている。「警告しておきたいのは、販売ディーラーなしで映画を作るべきではない」とラライン。とは言っても、それが見つけられないのではないでしょうか。

 

★一番の問題は、映画産業の拡大はあっても、その作品がラテンアメリカ諸国間に流通しないということがある。他の国の映画を観ようとしても配給会社が手を出さない。危険を冒してまで賭けをしようとはしない。映画は映画館で観る時代ではなく、何か他のプラットフォームを考える時期に来ている。それは一つには「多分webウェブサイト」と、昨年の作品賞『ネルーダ』の監督。ラテンアメリカ諸国も変化の秋を迎えている。スペインから参加したダビ・プリドとカルラ・シモンは聞き役だったのでしょうか。

 

★もう一つのシンポジウムは俳優のグループ、男優賞・女優賞各5名のうち、レオナルド・スバラグリア(アルゼンチン、『キリング・ファミリー 殺し合う一家』)、エドゥアルド・フェルナンデス(スペイン、『スモーク・アンド・ミラーズ』)、エドゥアルド・マルティネス(キューバ、「Santa y Andrés」)、パウリナ・ガルシア(チリ、「La novia del desierto」)、アントニア・セヘレス(チリ、「Los perros」)、リリアナ・ビアモンテ(コスタリカ、「Medea」)、各3名が参加した(国名と出演映画タイトル)。

 

★作家性のある映画は消えていく傾向にあること、どうやって観客と出会えることができるのか、映画祭に出品される映画はともかく、そうでない作品はどうやって国境を越えて観客に届けることができるのか、コスタリカのようにプロジェクトがそもそも少ない小国で映画を作る厳しさ、ハリウッドで噴き出しているセクハラ問題には触れなかったようだが、男性のロジックが常にまかり通ってしまうラテンアメリカでは、全世代の女性たちに興味をもってもらえる役柄があるのではないかなど、ハリウッドのステレオタイプ的な映画を前にして、やるべき事柄は山積していることが異口同音に述べられた。

 

   

 (左から、P. ガルシア、E. フェルナンデス、司会者K. GidiE. マルティネス、L. スバラグリア、

    A. セヘレス、L. ビアモンテ)

 

当ブログで6作とも紹介記事をアップしております。


第4回イベロアメリカ・フェニックス賞2017*結果発表2017年12月09日 14:24

          最優秀作品賞はセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica

   

    

★昨年はパブロ・ララインの『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が作品賞以下多数のフェニックスのタマゴを独占しましたが、今年もセバスティアン・レリオUna mujer fantásticaが作品賞を受賞、他にセバスティアン・レリオが監督賞、主演のダニエラ・ベガが女優賞と連続でチリ映画が大賞を制しました(126日発表)。本作は『ナチュラルウーマン』の邦題で2018年2月公開が決定しています。政治的にも経済的にも各国問題を抱えていますから、単なるフィエスタに終わらせず、この映画賞を機にイベロアメリカ諸国が一堂に会して映画の未来を議論する場にしようと模索しているようでした。受賞作品並びに受賞者は以下の通り、作品賞のみノミネート作品を列挙しました。

3回イベロアメリカ・フェニックス賞の記事は、コチラ20161215

 

   

       (女性に性転換したマリナ・ビダルを演じたダニエラ・ベガ、映画から)

 

 映画部門

◎作品賞(このカテゴリーのみ7作品ノミネーション)

Viejo calavera  ボリビア=カタール、2016、監督キロ・ルッソ

 本作の内容・監督紹介記事は、コチラ201695

 

La región salvaje メキシコ=独=仏=デンマーク、2016、監督アマ・エスカランテ

  本作の内容・監督紹介記事は、コチラ2016917

 

Verano 1993 『夏、1993』スペイン、2017、監督カルラ・シモン

  本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ2017222

 

Una mujer fantástica チリ=スペイン=米国、2017、監督セバスティアン・レリオ

  本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ2017126

 

   

 (左橋がプレゼンターのディエゴ・ルナ、トロフィーを手にしているのがプロデューサーの

  フアン・デ・ディオス・ラライン、右端がヒロインのダニエラ・ベガ)

 

El ciudadano ilustre 『笑う故郷』アルゼンチン=西、2016

  監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

  本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ20161013

 

O Ornitologo ブラジル=ポルトガル=フランス、2016、監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

 

A fábrica de nada ポルトガル、2017監督ペドロ・ピニュ

  本作の内容・監督紹介記事は、コチラ20171115

 

◎監督賞

セバスティアン・レリオ Una mujer fantastica

 

◎男優賞

オスカル・マルティネス 『笑う故郷』

 

◎女優賞

ダニエラ・ベガ Una mujer fantastica

*家族の理解もあって自らも10代のころから徐々に性転換していったというダニエラ・ベガ、これからが役者としての正念場を迎えねばならない。

 

   

           (フェニックスのタマゴを手に喜びのダニエラ)

 

◎脚本賞

カルラ・シモン 『夏、1993 

 

    

   

◎撮影賞

ラミロ・シビタ El invierno 監督エミリアノ・トレス(アルゼンチン)

 本作の内容・監督紹介記事は、コチラ2016926

 

   

◎オリジナル音楽賞

キンカス・モレイラLa libertad del diablo メキシコ、2017、監督エベラルド・ゴンサレス

 

◎編集賞

クラウディア・オリヴェイラエドガー・フェルドマンルイサ・Homem A fábrica de nada

    

 (クラウディア・オリヴェイラ) 

 

 ◎美術デザイン賞

エウヘニオ・カバリェロ 『怪物はささやく』 監督フアン・アントニオ・バヨナ(米、西)

    

  

◎衣装賞

Ro Nascimento Joaquim 監督マルセロ・ゴメス(ブラジル、ポルトガル、スペイン)

 

◎録音賞

Marc Orts(マーク・オーツ)、オリオル・タラゴピーター・グロソップ 『怪物はささやく』

 

◎長編ドキュメンタリー賞

La libertad del diablo 監督エベラルド・ゴンサレス

 本作の内容・監督紹介記事は、コチラ2017222

 

   

◎ドキュメンタリー撮影賞

マリア・セッコ La libertad del diablo 

 

    

  (ディエゴ・ケマダ=ディエス『金の鳥籠』でも注目されたウルグアイのマリア・セッコ)

 

★他にTVシリーズ部門としてドラマコメディ俳優アンサンブル3カテゴリーがあり、ネットフリックスのオリジナル作品『ナルコス』(クリス・ブランカト、カルロ・ベルナルド、他、コロンビア=米)がドラマ部門と俳優アンサンブルで2賞、Club de Cuervos(ガス・アラスラキ、ミケ・ラム、メキシコ)がコメディ部門を受賞、ネットフリックスの存在の大きさを見せつけた夕べとなった。メキシコは合計4賞したこともあって、お茶の間も盛り上がったようでした。

 

  

      (タマゴを手にした『ナルコス』アンドレス・バイス監督、右側パウリナ・ガルシア)

      

         

              (喜びに沸いた「Club de Cuervos」のスタッフとキャスト一同)

 

★その他、特別賞として、キャリア賞ノルマ・アレアンドロ)、批評家賞アイザック・レオン・フリアス)、Exhibidoresという 展示者賞にフアン・アントニオ・バヨナ(欠席)の『怪物はささやく』が受賞した。

 

    

   (アルゼンチンの『オフィシャル・ストーリー』の主演女優ノルマ・アレアンドロ)

 

★エミリアノ・トレスのデビュー作「El invierno」は、サンセバスチャン映画祭2016の審査員特別賞受賞作品。時間切れで作品紹介はできませんでしたが、サンセバスチャンでもラミロ・シビタは撮影賞を受賞しています。

 

★ポルトガル映画ジョアン・ペドロ・ロドリゲスのO Ornitologoと、ブラジル映画マルセロ・ゴメスのJoaquimは当ブログ未紹介作品です。前者はロッテルダム映画祭2016の監督賞受賞を皮切りに国際映画祭の受賞歴多数、サンセバスチャン映画祭2016「サバルテギ」部門でも上映されました。後者はベルリン映画祭2017正式出品です(主要言語がポルトガル語)。

 

★イベロアメリカ・フェニックス映画賞は参加国が23ヵ国と多いせいか公開時期が各国異なるので、どうしても2016年と2017年が混在が避けられません。大分以前の作品もノミネーションされている印象を受けます。  (クラウディア・オリヴェイラ)

  

第14回セビーリャ映画祭開幕*ヨーロッパ映画賞ノミネーション発表2017年11月07日 15:11

         「金のヒラルダ」賞を競うコンペティション部門16作品は・・・

 

 

(実行委員会のアントニオ・ムニョス、ホセ・ルイス・シエンフエゴス、イサベル・オヘダ)

 

★今年で14回目を迎えたセビーリャ映画祭SEFF2017113日開幕しました(11日まで)。オープニング作品は、カルロス・マルケス=マルセ Tierra firme (スペイン、西語・英語・カタルーニャ語)でした。監督は 10,000km でマラガ映画祭2014の「金のビスナガ賞」を受賞している。今作の主役を演じたナタリア・テナダビ・ベルダゲルに加えてウーナ・チャップリンジェラルディン・チャップリンもカメオ出演している。ダビ・ベルダゲルは「ラテンビート2017」でドタキャンしたカルラ・シモン『夏、1993で少女フリーダの義父を演じた俳優。

 

  

               (Tierra firmeから

 

★チャップリン母子もレッド・カーペットに現れ、映画祭を盛り上げていたようです。他にベルト・ロメロ、マリオ・カサス、ホセ・コロナド、イレーネ・エスコラル、カロリナ・バング、監督では、カルロス・マルケス=マルセは当然のことだが、フランスからマチュー・アマルリックとティエリー・ド・ペレッティ、その他マヌエル・モソス、セルジ・ボソン・・・

 

★他には、ラテンビートでも上映されたベネチア映画祭の『サマZamaルクレシア・マルテル)、これは厳密にはアルゼンチン映画ですが、スペインも製作国、スペイン語映画ということで選ばれたのでしょうか。マヌエル・ムニョス・リバス El mar nos mira de lejosエバ・ビリャ Penélope が選ばれています。

 

(『サマ』から)

 

El mar nos mira de lejos から)

    

 

 Penélope から)

  

 

★話題になっているのが特別招待作品の Oro です。監督は『アラトリステ』アグスティン・ディアス・ヤネス、アルトゥーロ・ペレス・レベルテの未発表の短編の映画化です。ラウル・アレバロバルバラ・レニーオスカル・ハエナダホセ・コロナドフアン・ディエゴルイス・カジェホフアン・ホセ・バジェスタアントニオ・デチェントアンナ・カスティーリョなど、演技派の有名どころが集合しました。ロペ・デ・アギーレのようにエル・ドラドを探し求めてアメリカ大陸に渡ったコンキスタドールたちの物語、公開されるかな。

 

     

      (左端特別出演のフアン・ディエゴ、右端ホセ・コロナド、Oro から)

 

 

        ヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表になる映画祭

 

★セビーリャ映画祭はマラガと違ってヨーロッパ映画祭でもあり、例年フランス、イタリア、ポルトガル、ドイツ、イギリス、北欧各国から満遍なく選ばれます。11月上旬開催と時期的には遅いので、どこかの映画祭で既にエントリーされた作品が多いのは致し方ないのかもしれません。例えば東京国際映画祭のグザヴィエ・ボーヴォワ『ガーディアンズ』(仏・スイス)、『ショコラ』(88)で監督デビューしたクレール・ドゥニ『レッド・ザ・サンシャイン・イン』(仏)、カンヌ映画祭のBarbara(仏、マチュー・アマルリック)、同映画祭特別招待作品 A Violent Life(仏、ティエリー・ド・ペレッティ)など。今年はフランスが多い印象ですが、上記の参加国以外にも、チェコ、デンマーク、アイスランドなどから選ばれています。英語・西語の字幕入りで国際映画祭の基準を満たしています。

 

    

       (ジュリエット・ビノシュ、『レッド・ザ・サンシャイン・イン』から

 

★セビーリャ映画祭は、第30回になるヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表になる映画祭でもあり、今年は114日に発表になりました。下馬評ではパルムドール受賞のリューベン・オストルンド「The Square」、ライバルはイルディゴ・エンエディ「On Body And Soul」のようですが、蓋を開けてみないことには分かりません。一応、作品賞ノミネート5作品を英題で列挙しておきます。結果発表は129日、例年通りベルリンの予定です。

 

 1120 Battements Par Minute (仏)監督:ロバン・カンピヨ

 

  1. 2)Loveless (露、ベルギー、独、仏)アンドレイ・ズビャギンツェフ

     

    3On Body And Soul (ハンガリー)監督:イルディゴ・エンエディ

     

    4『希望のかなた』(フィンランド、独)監督:アキ・カウリスマキ

     

    5The Square (スウェーデン、独、仏、デンマーク)監督:リューベン・オストルンド

      

  1.   

  2.                    (リューベン・オストルンドの「The Square」から

     

  3. 9月に既に発表になっていた「ディスカバリー賞」に、カルラ・シモン『夏、1993がノミネーションされています。もしかすると・・・と期待しています。

       


 

ドノスティア賞の授賞式*サンセバスチャン映画祭2017 ⑭2017年09月30日 13:31

            そろそろ閉幕します、3人のドノスティア賞ガラも終了しました

 

ドノスティア賞1986年に始まった栄誉賞、第1回はグレゴリー・ペックとハリウッド・スターでした。受賞者の出身国は別として米国で活躍している俳優が大半を占めています。スペイン自体がフェルナンド・フェルナン・ゴメス(99)、パコ・ラバル(01)、アントニオ・バンデラス(08)、最後が2013年のカルメン・マウラの4人だけだから多いとは言えない。フランスでは受賞順にカトリーヌ・ドヌーヴ、ジャンヌ・モロー、イザベル・ユペールの女優陣、アニエス・ヴァルダを含めて4人と同数です。年を追うごとに米国頼みがどの映画祭でもはっきりしてきましたが、見てもらえなければ話にならないということです。ガラには敬意を払って、映画祭総ディレクターのホセ・ルイス・レボルディノスが出迎えました。

 

    

       (トロフィーを手にしたアニエス・ヴァルダ、924日のガラから)

 

    

            (現地入りしたアニエス・ヴァルダ、922日)

 

★アルゼンチンからの初受賞がリカルド・ダリンだったのは納得でしょうか。「ホライズンズ・ラティノ」というスペイン語・ポルトガル語に特化したセクションがありながら、ラテンアメリカからは初めての受賞者でした。授賞式前のプレス会見で「リカルド・ダリンとは何者?」という質問には、「いつも真実を語っている嘘つき」と応えていました(笑)。トロフィーは『サミット』で共演したエレナ・アナヤと一緒に登壇したドロレス・フォンシの手から受け取りました。今年のラテンビート『サミット』が上映されるので、そちらでトレビアをアップいたします。

 

     

             (リカルド・ダリン、926日のガラから)

 

    

            (現地入りしたリカルド・ダリン、925日)

 

★イタリアからはモニカ・ベルッチ、内面から滲みだしてくるような美しさ、年々若返りしているのではないか。「私も間もなく53歳になります。仕事を続けているのは美しさだけとは思わない」とベルッチ。素晴らしい体形を維持するのは口で言うほど楽ではない。美しさとインテリジェンスを調和させながら25年以上も闘ってきたんですよね。「映画はそのほかの芸術を理解する機会を与えてくれた。女優としてでなく、それ以上に人間として大きくしてくれた」と。授賞式は3000人が収容できるベロドロモで、1998年のドノスティア賞受賞者にして今年の審査委員長ジョン・マルコヴィッチの手から渡された。たったの5分間でしたが3000人の観客が彼女の美に酔いしれました。

 

   

   (英語とスペイン語で短いスピーチをしたモニカ・ベルッチ、927日のガラから)

 

    

         (現地入りしてファンの歓迎に応えるモニカ・ベルッチ)

 

★ドノスティア賞以外の栄誉賞の一つ「ジャガー・ルクルト賞」にパス・ベガが選ばれました。昨年から始まり、第1回の受賞者はガエル・ガルシア・ベルナルでした。パス・ベガはアントニオ・バンデラスが受賞した「映画国民賞」のガラにも姿を見せていました。フリオ・メデムの『ルシアとSEX』(01)でカンヌ映画祭新人賞、ゴヤ賞新人女優賞などを受賞した。『トーク・トゥ・ハー』(02)他、アルモドバル映画、ビセンテ・アランダの『カルメン』(03)でカルメンを演じた。2008年からロスアンゼルスを本拠地にして主にハリウッド映画やTVで活躍している。

 

 

            (トロフィーにキスをするパス・ベガ)

 

正式名は「Premio JaegerLeCoultre al Cine Latino」、2007年からベネチア映画祭で始まった「Premio JaegerLeCoultre Glory to the Filmmaker」と同じ1933年創業のスイスの高級時計マニュファクチュールジャガー・ルクルト社が与える賞。「10年以上のキャリアがあり、かつ将来的にも活躍が期待できるシネアスト」に贈られます。ジャガー・ルクルト社は、サンセバスチャン映画祭のパトロンの一つです。

 

アントニオ・バンデラス映画国民賞*サンセバスチャン映画祭2017 ⑬2017年09月28日 14:49

          映画国民賞授賞式に南アから馳せつけたアントニオ・バンデラス

 

★映画国民賞の授賞式は、例年サンセバスチャン映画祭と決まっています。今年の受賞者アントニオ・バンデラス(マラガ、1960)は、2日目の923日に授賞式がありました。昨年のアンヘラ・モリーナは3日目、受賞者の希望に合わせるようですが大体映画祭前半です。ある映画の撮影のため南アフリカ共和国から慌ただしく帰国したということで、記者団を前にしての談話は控えめで幾分疲れ切った声だった由。1月に心筋梗塞で倒れスイスでステント手術を受けた。公けに顔を出したマラガ映画祭では、大分やつれた印象でしたが順調に回復しているようです。授賞式会場はタバカレラ・センター(タバコ専売公社)だったが、ここでの授賞式は初めてらしく、受賞者が正装でなく黒のスーツだったのも初めてだった(写真下)。

 

 

   (メンデス・デ・ビゴ文化教育スポーツ相から国民賞を受け取るバンデラス

 

★「国の考えについては気にしていない。自分の分からない意見が次から次へと連発されるのが気にかかっているが、唯言えることは、私はこの国で生れ育ち、民主主義移行期に子供から大人になった。この時代は物事が自由に言えるようになった時代でした。国策アートの時代は終わり、スペイン人の投票が承認された」とバンデラス。中学生のころには軍事独裁政も内部では変革が起きていたから、ポジティブな視点を持てるようになった時代だったかもしれない。カタルーニャ自治州独立の是非を問う住民投票に水を向けられると、マラガっ子のバンデラスは「理性を欠いたことのように思える。勿論投票は民主主義の基本だが、それが唯一でないことを忘れるべきではない。法律を尊重すべきです」とかわし、スペイン政府の投票阻止については、「サッカーでいえばレッドカードのようなもの。誰が得点するの、審判員あるいは蹴り上げた選手?」と応じました。中央が言うように違憲なのかどうか分かりませんが、投票日101日が個人的には心配です。

 

          消費税21%が半分以下の10%に引き下げられたけど・・・

 

★先日、メンデス・デ・ビゴ文化教育スポーツ相がチケット代のIVA消費税21%を半分以下の10%に引き下げることを発表しました(施行2018年)。「映画産業にとっては歓迎すべきことですが、特に経済危機が長引いて苦境に立たされていた製作側では大いに助けになります」とコメント。映画鑑賞の方法に変化が起きており、必ずしも映画を映画館で見る時代は終わっている。「私の娘はiPhone で映画を見ている。作る側も変わらざるを得ない。スペインでは映画館が消えてしまった町だってあるから映画館で見たくても見られない。映画祭では見ず知らずの観客同士が暗い場内で映画を見るが、これも残念ながら消えていきつつある」と悲観的でした。将来的にはネットフリックスのことも視野に入れて考えねばならないでしょう。

 

     

    (国民賞を証明する公文書を記者団に披露するアントニオ・バンデラス)

 

★ガラは、文化相メンデス・デ・ビゴのバスク語での称賛スピーチで始まった。続いてパス・ベガを従えて登壇したカルロス・サウラが文化相のバスク語に呼応して「バスクではこの映画祭をZinemaldiaと呼んでいるが、今日はZinebuendiaと呼ぶことにします」と挨拶した。Zine-mal-diamal(悪い)をbuen(良い)に入れ替えたわけです。「消費税減税の朗報、信じられませんよ、大臣。文化大臣は文化のことを、映画芸術のことに気を配る時です」とサウラ、「2018年から減税しますよ。誰だって税金なんか払いたくありません。しかし老後の年金や根本的な公共サービスの財源を確保する必要があるんです」と文化相。どちらもステレオタイプ的な口合戦でした。

 

★会場はお祝いに駆けつけた人でごった返しだったようです。サウラ以下、ペドロ・オレア、マヌエル・グティエレス・アラゴン、マベル・ロサノ、イマノル・ウリベ、リノ・エスカランテの監督たち、ICAAの元ディレクターたち、ヨーロッパ映画アカデミー副会長アントニオ・サウラ、フェルナンド・ボバイラなど製作者たち、マラガ映画祭やバジャドリード映画祭のディレクター、女性シネアストでは、昨年の受賞者アンヘラ・モリーナマリサ・パルデスナタリエ・ポサ、今回ジャガー・ルクルト賞を受賞したパス・ベガetc.

 

 

映画国民賞Premio Nacional de Cinematografiaというのは1980年に始まった賞、まだゴヤ賞(1987年から)がなかった時期で、シネアストに与えられる賞としては唯一のものでした。国民賞は他に文学賞、美術賞、科学賞など各分野ごとに分かれています。選考母体文化教育スポーツ省と映画部門ではICAAInstituto de la Cinematografia y de las ArtesAudiovisuales)です。副賞として3万ユーロが授与される。特に多額ではありませんが、栄誉賞としてはゴヤ賞より上かもしれません。

 

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アントニオ・バンデラス「国民映画賞2017」受賞*その他いろいろ2017年08月25日 14:06

          バンデラスがサンセバスチャン映画祭にやってくる

 

★「国民映画賞」の授賞式は、サンセバスチャン映画祭で行われるのが恒例、アントニオ・バンデラスが久しぶりにサンセバスチャンにやってきます。昨年はアンヘラ・モリーナで盛り上がりましたが、なかには2015年のフェルナンド・トゥルエバのように「今更もらっても・・・」と受賞をごねる監督もいたりして、受賞者の選考は難しい。今回も「もう上げちゃうの、どうして?」と疑問を呈するシネアストもいるようでした。今年の126日に心筋梗塞で倒れ、その後ジュネーブの有名な心臓外科病院で3本のステント手術を受けており、健康不安というトラブルを抱えるようになっています。

 

 

          (心臓手術後のアントニオ・バンデラス、20174月)

 

2015年には最年少の受賞者としてゴヤ栄誉賞をもらったばかり、2008年にはサンセバスチャン映画祭の栄誉賞ドノスティア賞2004金のメダル、シッチェス映画祭2014栄誉賞、マラガ映画祭2017では名誉金のビスナガ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞2015栄誉賞などなど、海外も含めて50代にして数々の栄誉賞に輝いています。まだ受賞歴のないゴヤ賞主演男優賞あるいは助演男優賞が待たれるところです。

 

ゴヤ賞2015栄誉賞の記事は、コチラ2014115

マラガ映画祭2017名誉金のビスナガ賞の記事は、コチラ201741

 

 

       アカデミー賞2018外国語映画賞のスペイン代表は・・・

 

★先日、アカデミー賞2018外国語映画賞のスペイン代表候補3作がスペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイクの口から発表になりました。今年の話題作、カルラ・シモンのデビュー作 Verano 1993(ラテンビート2017の邦題『夏、1993)、パブロ・ベルヘルの第3作コメディ Abracadabra (仮題「アブラカダブラ」)、サルバドル・カルボの戦争歴史物 1898, Los ultimos de Filipinas 以上3作に絞られました。カルラ・シモンの Verano 1993 は、オデッサ映画祭2017のインターナショナル部門の作品賞を受賞したばかり、ヨーロッパ映画賞2017の候補に選ばれています。

 

  

   (カルラ・シモンの Verano 1993

 

           (パブロ・ベルヘルの Abracadabra

 

  

                    (サルバドル・カルボの 1898, Los ultimos de Filipinas

 

Verano 1993 の紹介記事は、コチラ2017222

Abracadabra の紹介記事は、コチラ201775

1898, Los ultimos de Filipinas の紹介記事は、コチラ201715

 

 

       ヨーロッパ映画賞2017にスペインから3作が残りました

 

★ヨーロッパ映画賞エントリー51作が発表になりました。うちスペインからは次の3作が選ばれています。スペイン映画界に多大な貢献をしているフアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(劇場公開になっています)、ラウル・アレバロ『物静かな男の復讐』Netflix放映)、カルラ・シモン『夏、1993(ラテンビート2017上映予定)の3作です。51作のなかから、114日開催のセビーリャ・ヨーロッパ映画祭でノミネーションが正式に確定します。11作品が恒例ですから選ばれるとしてもどれか1作です。授賞式は例年通り129日にベルリンで行われます。

 

  

 (フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』)

 

     

                                (ラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』)


アルモドバルとスペイン市民戦争*プラチナ賞2017授賞式2017年07月28日 10:05

       スペイン内戦の失踪者家族に捧げられたアルモドバルの受賞スピーチ       

      

★プラチナ賞2017監督賞を受賞したペドロ・アルモドバルの受賞スピーチの続きです。監督はトロフィーを「戦争中に失踪した人を今もって探し続けている何千何万という家族へ」捧げたという献辞の真意について簡単に説明したい。スペインは第二次世界大戦には参戦していませんから、戦争と言えばスペイン内戦193639)を指します。ざっと80年前の戦争です。プレス会見でアルモドバルは、「受賞作『ジュリエッタ』は、失踪した娘アンティアが母親に残した痛みについての物語」と語った。18歳になった娘の失踪の理由が理解できず、ずっと苦しみ続ける母親の話です。かつては夫の過去が許せず家を出た自分と娘をダブらせる話。失踪には死の臭いがただよう。「内戦の失踪者とタイプは異なるが、スペインでは失踪者を探し続ける家族は多い。自分の受賞スピーチは政治的な意味合いはなく、あくまでも人間的な要請から発せられたもの」と強調したようです。

 

    

   (受賞スピーチをするアルモドバル、マドリードのカハ・マヒカにて、722日)

 

★「ついこの間も、80年間閉められていた墓を掘り出したら、傷痕が幾つもある遺体が発見されたというニュースに接した」ことをあげ、内戦が終わっていない家族の存在を語った。「失踪者に関するテーマで映画を撮りたいと考えているが、相応しい脚本がまだ完成していない。それで生死が分からないとか、失踪者のいる家族に接触して取材している。スペインではこのテーマはとても重要だと考えている」とも。スペインにとどまらず、隣国ポルトガルは言うに及ばず、アルゼンチン、チリ、ドミニカ共和国、キューバ、パラグアイ、ペルーなど中南米諸国で軍事独裁を経験しなかった国はないのではないでしょうか。コロンビアやメキシコのように麻薬がらみの失踪者が現在も進行中のイベロアメリカ諸国が一堂に会したフェスティバルであってみれば、あながち唐突なスピーチでもなかったかもしれない。

 

       コミュニスト詩人マルコス・アナの回想録の映画化が実現する?

 

★アルモドバルは、詩人マルコス・アナの回想録 Decidme cómo es un árbol. Memoria de la prisión y la vida (バルセロナUmbriel 2007)の映画化権を2008年に取得している。当時スペインのランサローテ島で暮らしていたジョゼ・サラマーゴの序文が付いている。ポルトガルに初のノーベル文学賞をもたらした作家。どうやらこれと関係しているようです。まずマルコス・アナ(サラマンカ1920~マドリード2016)の紹介から。フェルナンド・マカロ・カスティーリョが本名だが、父親からとったペンネームのマルコス・アナで知られている詩人で作家。内戦終結後の1939年に19歳で逮捕された。容疑は内戦初期の1936年に司祭以下3人殺害の罪。本人は無実を主張したが、第一級殺人罪で死刑宣告、その後禁固30年に減刑され政治犯が収容される刑務所に収監されていた。1961年、設立されたばかりのNGOアムネスティ・インターナショナル、ラファエル・アルベルティやパブロ・ネルーダなどの海外の著名人の尽力によって自由の身になった。この獄中23年間を含む回想録が上記の本である。サラマーゴ、アルベルティ、ネルーダの3人は共にコミュニストでした。

   

       

                (回想録とマルコス・アナ) 

   

★アルモドバルは、『抱擁のかけら』完成後に、計画中の映画4本ほどを挙げていた。その中にマルコス・アナの回想録の映画化も入っていた。しかし2年おきに新作を発表しているのに一向に具体化せず、もう中止したのかと思っていました。というのも詩人も鬼籍入りしたことだし、冤罪ではないというフランコ支持者も多くいるなかで、映画化は難しいのではないかと考えていたからです。当時アルモドバルは「1939年に出所してからの詩人を描くことから始めたい」とインタビューに答えていた。詩人がアルモドバルに、「自由の身になってマドリードに放り出されたとき、私は42歳の幼児だった。痛みは肉体的なものより精神的なほうが辛かった。長いあいだ暗くて狭い空間に閉じ込められていたので広場恐怖症になり、灯りが怖く、車に乗ると酔って嘔吐した。同じように若い女性たちの存在にも慣れることができず、子供のようなリアクションをした」と告白していたそうです。

 

   

           (アルモドバルとマルコス・アナ、2014328日)

 

★映画化が決まったわけではありませんが、詩人のプロフィールを簡単に補足すると、父親は貧しい日雇い労働者、4人姉弟の末っ子としてサラマンカで生まれた。家計を助けるため12歳か13歳で店員として働き始めたから、日本でいう義務教育を最後まで受けられなかった。16歳で共産党に入党、19364月に結成された統一社会主義青年JSU193661)というスペインの共産主義青年同盟に加入している。内戦が始まると前線で戦い、内戦終結後の1939年に19歳で逮捕されたのは、上記の通りです。 

      

                     (フェルナンド・マカロ・カスティーリョ青年)

 

      

 (ラファエル・アルベルティとマルコス・アナ)

 

★刑務所内の巡回図書でスペインの古典、ケベド、ロペ・デ・ベガ、カルデロンなどに触れ、1950年代には禁書だったラファエル・アルベルティ(当時亡命)やミゲル・エルナンデス(1942年肺結核で獄死)、ガルシア・ロルカ(1939年射殺)などを、反フランコの地下組織を通じて入手して読んでいた。獄中で書き始めた詩は海外で出版され、スペイン国内より外国での知名度が高かった。それが釈放に繋がったようです。1961年釈放後はパリに脱出、スペインに戻ったのはフランコ死後の1976年である。200912月、社会労働党のサパテロ政府からゴールド・メダルを授与されたが、勿論フランコ支持者からは非難の矢が飛んだ。翌2010年、フランスの法学者ルネ・カサン(1968年ノーベル平和賞)の功績を讃える「ルネ・カサン人権賞」を受賞した。20161124日、合併症のため96歳で死去、谷あり山ありの波瀾万丈な一生でした。

 

  

  (バスク自治政府パチ・ロペス首相からルネ・カサン人権賞を受け取るマルコス・アナ)

 

★映画化がされるなら、元スパイのフランシスコ・パエサのビオピックを描いたアルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』のように面白くなりそうですが、どんな切り口にしろ物議をかもすのは目に見えています。今は取りあえずお蔵入りしたわけでないことを喜びたい。

ガルシア・ロルカの死に関する記事は、コチラ⇒2015年9月11日

 

第4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017*結果発表2017年07月25日 18:36

         作品賞は『笑う故郷』、アルモドバルが『ジュリエッタ』で監督賞!

 

★ノミネーション発表(531日)から大分時間が空いて気が抜けてしまっていた授賞式が、去る722日にマドリードのカハ・マヒカで開催されました。作品賞は予想通り、本作はラテンビート上映時の邦題『名誉市民』が『笑う故郷』と笑えないタイトルになって公開されます。監督賞J.A.バヨナアルモドバルか迷いましたが、後者に軍配が上がりました。当夜いちばん光が当たった人がアルモドバルでした。彼の授賞式参加は初めて、つまりガラでの発言は皆無でした。「この受賞を市民戦争中に行方不明になった家族を探し続けている人々に」捧げるとスピーチした。えっ『ジュリエッタ』ってそんな映画でした? これにはかなり説明が必要なので別にアップいたします。というのもフランコ時代に無実の罪で23年間服役していた詩人マルコス・アナ(19202016)の回想録の映画化と関係があるからです(アルモドバルはこの回想録の映画化権を持っている)。いずれアップします。

 

   

★ドラマ部門の女優賞はブラジルのソニア・ブラガ、本作で第3回イベロアメリカ・フェニックス賞でも女優賞を受賞している。なお彼女は第1回プラチナ賞の栄誉賞受賞者でもありました。観客賞部門の女優賞ナタリア・オレイロは、ウルグアイ出身であるが主にアルゼンチンで活躍している。前回ウルグアイで開催された第3回ではサンティアゴ・セグラと総合司会者を務めました。ということで今回はベテラン女優が気を吐きました。男優賞のオスカル・マルティネスについてはもう書きすぎました。

 

作品賞(ドラマ部門)

Aquarius アクエリアス」(ブラジル)監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ

『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)監督:ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)監督:アルベルト・ロドリゲス

『ジュリエッタ』(スペイン)監督:ペドロ・アルモドバル

「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)監督:パブロ・ラライン

 

  

 (左から、アンドレス・ドゥプラット、ガストン・ドゥプラット、オスカル・マルティネス、

  マリアノ・コーン、受賞者一同)

 

監督賞

フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(スペイン)

クレベール・メンドンサ・フィリオ「Aquarius」(ブラジル)

ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)

パブロ・ラライン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』(スペイン)

 

(ペドロ・アルモドバル

             

脚本賞

アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)

アンドレス・ドゥプラット『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

セルソ・ガルシアLa delgada línea amarilla」(メキシコ)

ギジェルモ・カルデロン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン

パベル・ヒロウド&アレハンドロ・ブルゲス他「El acompañante

 (キューバ、ベネズエラ、コロンビア)

 

 

女優賞

アンジー・セペダLa semilla del silencio」(コロンビア)

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』(スペイン)

フアナ・アコスタAnna」(コロンビア・フランス)ジャックToulemondeビダル監督

ナタリア・オレイロGilda, no me arrepiento de este amor」(アルゼンチン)

          ロレナ・ムニョス監督

◎ソニア・ブラガAquarius」(ブラジル)

 

 (ソニア・ブラガ)

  

男優賞

アルフレッド・カストロ『彼方から』(ベネズエラ、チリ)

ダミアン・カサレスLa delgada línea amarilla」(メキシコ)

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)

ルイス・ニェッコ「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)

オスカル・マルティネス『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

 

 (オスカル・マルティネス)

 

 

オペラ・プリマ(第1回監督作品、ドラマ部門)

『彼方から』(ベネズエラ、チリ)ロレンソ・ビガス

La delgada línea amarilla」(メキシコ)セルソ・ガルシア

Rara」(アルゼンチン、チリ)ペパ・サン・マルティン

Viejo calavera」(ボリビア)キロ・ルッソ

『物静かな男の復讐』(スペイン)ラウル・アレバロ

 

音楽賞

アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』

ゴヤ賞の胸像を10個、オスカー賞ノミネーション3回、今回プラチナ賞をゲットして、トロフィーのコレクター。アルモドバル作品を一手に引き受けている。

 

美術賞

エウヘニオ・カバジェロ『怪物はささやく』

 

撮影賞

オスカル・ファウラ『怪物はささやく』

 

編集賞

Bernat Vinapiana / Jaune Marti『怪物はささやく』

 

録音賞

Peter Glossop / Marc Orts / オリオル・タラゴ『怪物はささやく』

『怪物はささやく』は言語が英語のため、作品賞から外されました。興行的にはナンバーワンの功労者でしたが残念でした。バヨナ自身は監督賞を逃しましたが、技術部門4個を制しました。 

 

 (フアン・アントニオ・バヨナ)

 

  

ミニシリーズ&テレビシリーズ賞

Cuatro estaciones en La Habana(西、キューバ)監督:フェリックス・ビスカレット

キューバの推理作家レオナルド・パドゥラのマリオ・コンデ警部補が活躍する「四季シリーズ」がベースになっている。

 

ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria(スペイン)監督:エルナン・シン

現在ヨーロッパで起きている、各政府が目を背けている証言で綴られている。よりよい生活を求めて旅を続けるシリアの子供たち20人と14か月間、監督は行を共にして作ったドキュメンタリー。

 

アニメーション賞

Psiconautas, los niños olvidados (スペイン)監督:アルベルト・バスケス&ペドロ・リベロ

 

意義のある教育賞

Esteban(キューバ、スペイン)

 

 

作品賞(観客賞部門)

『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

 

女優賞(観客賞部門)

◎ナタリア・オレイロ Gilda, no me arrepiento de esta amor

 

 (ナタリア・オレイロ)

     

  

男優賞(観客賞部門)

オスカル・マルティネス『笑う故郷』

 

ポスター賞(観客賞部門)

『ジュリエッタ』アルモドバル

 

プラチナ栄誉賞

エドワード・ジェームズ・オルモス

EGEDA会長エンリケ・セレソがプレゼンターでした。1947年ロサンゼルス生れのメキシコ系アメリカ人俳優。スペインUSA合作『ロルカ、暗殺の丘』(1997、監督マルコス・スリナガ)、代表作は『ブレードランナー』、TVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』(198489)のマーティン・キャステロ主任警部役がもっとも有名でしょうか。本作で1985年にゴールデングローブ賞、エミー賞を受賞している。531日にロスで開催されたノミネーション発表会のプレゼンターを務めていた。   

 

★記者会見では「時差ボケで睡眠がとれずくたくたです。・・・国ではラテン芸術の理解に奮闘しています。彼らは私たちラテン系に恐怖をもっているのです」と、今や国民の20パーセントを占めるに至ったヒスパニック系アメリカ人に対する差別が増加していると語っていた。トランプが演出する反オバマ政策を支持する一部の人々が存在していること、そういう米国人はアフロ系大統領には我慢できなかった。「しかし私はオプティミストです」と希望も語っていた。

 

★第5回イベロアメリカ・プラチナ賞2018はラテンアメリカに戻って、メキシコのリビエラ・マヤで、4月開催がアナウンスされました。有名なリゾート地カンクンより南へ車で90分ほどにある、外国人セレブに人気のあるリゾート地です。

4回イベロアメリカ・プラチナ賞ノミネーション発表の記事は、コチラ201765

 

アリエル賞2017*メキシコ・アカデミー賞の結果発表2017年07月15日 16:30

        メキシコ未公開映画が最優秀作品賞以下10冠の不思議

 

★デビュー作(が目立った今年のアリエル賞711日に発表になりました。カテゴリーはまた増えて28個、うち10冠(ノミネート20個)を制したLa 4a compañíaが、未だにメキシコでは公開されていないのに受賞しました。グアダラハラ映画祭201636日)で上映こそされましたが、アカデミー会員の多くはスクリーンでは観てないはずです。今後の公開を期待したのかもしれませんが、配給会社はまだ決まっていないようです。受賞カテゴリーは、作品・男優(アドリアン・ラドロン)・クアドロ男優(エルナン・メンドサ)・編集・視覚効果・特殊効果・美術デザイン・録音・衣装・メイクアップの10個です。Tempestadがドキュメンタリーということからある程度は予想されていましたが、未公開作品が作品賞を取るという結果になりました。

 

           

              (La 4a compañíaのポスター)

 

★アリエル賞はメキシコの社会情勢を反映して、政治的メッセージの強い映画が選ばれる傾向にあると思います。2016年ダビ・パブロスの『選ばれし少女たち』2015年アロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』2014年ディエゴ・ケマダ=ディエスの『金の鳥籠』と、切りこむ角度は違ってもメキシコやラテンアメリカの闇を抉るという意味では同じでした。今年の受賞作も実話をベースにした刑務所が舞台になっている。制度的革命党PRIのホセ・ロペス・ポルティーリョが大統領だった時代(197682)、メキシコ・ペソの大暴落で世界を混乱させた頃の物語です。実現までに10年以上もかかったプロジェクト全員が、待ちに待った受賞者のアナウンスに酔いしれた夕べとなりました。

La 4a compañía」ほかノミネーション発表の記事は、コチラ20176月9日

  

 最優秀作品賞(メキシコ)

『夜を彩るショーガール』Bellas de noche)ドキュメンタリー

                        監督マリア・ホセ・クエバス

『彼方から』(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス

『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン

Tempestad」ドキュメンタリー 監督タティアナ・ウエソ

Me estás matando, Susana監督ロベルト・スネイデル

La 4a compañía(スペイン合作)

                  監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ

El sueño del Mara'akame監督フェデリコ・Cecchetti

 

   

        (ミッチ・バネッサ・アレオラとアミル・ガルバン・セルベラ)

 

 監督賞&長編ドキュメンタリー賞

タティアナ・ウエソTempestad」ドキュメンタリー

女性で監督賞を受賞した第1号となり、当夜のもう一人の華だった。アリエル賞は1947年、16のカテゴリーで始まったメキシコ・アカデミー賞、その長い歴史にもかかわらず、ウエソ監督が初とは驚きを通りこして沈黙あるのみです。女性への暴力が処罰されないメキシコの現在が語られる。パウラ・マルコビッチ監督の自伝的デビュー作「El premio」(メキシコ、仏、独、ポーランド)が、2013年に作品賞を受賞したことがあります。しかし彼女はメキシコで活動しているアルゼンチン出身の脚本家でした。

 

 

        (監督賞のトロフィーを手にしたタティアナ・ウエソ)

 

 オペラ・プリマ第1回作品賞&と音楽賞

El sueño del Mara'akame」監督:フェデリコ・Cecchetti

 

    

                (出演者と一緒に)

 

 男優賞(二人)

アドリアン・ラドロンLa 4a compañía

ホセ・カルロス・ルイスAlmacenados監督:ジャック・サグア・カバビエZagha Kababie確認

若手とベテランが賞を分け合いました。

 

 

      (左から、ホセ・カルロス・ルイスとアドリアン・ラドロン)

 

 女優賞

ベロニカ・ランガー(ランヘル)La calidas監督:マロエイリノ・イスラス・エルナンデス

 

   

               (貫禄の受賞者ベロニカ・ランガー)

 

 助演男優賞

オセHoze・メレンデスAlmacenados

 

 

 助演女優賞

アドリアナ・パスLa calidas

 

  

 新人男優賞

パコ・デ・ラ・フエンテEl alien y yo監督:ヘスス・マガニャ・バスケス

 

 新人女優賞

マリア・エボリTenemos la carne」監督:エミリアノ・ロチャ・ミンター

  

 

 クアドロ男優賞

エルナン・メンドサLa 4a compañía

 

 

 クアドロ女優賞

マルタ・クラウディア・モレノ 「Distancias cortas」

 

 

 

 オリジナル脚本賞

ホアキン・デル・パソルシー・PawlakMaquinaria Panamericana監督ホアキン・デル・パソ

 

 脚色賞

ダビ・デソラAlmacenados

 

 撮影賞

エルネスト・パルドTempestad

 

 編集賞

ミッチ・バネッサ・アレオラフランシスコ・リベラカミロ・アバディアLa 4a compañía

 

   

  (欠席したカミロ・アバディアのトロフィーも手にアレオラ、フランシスコ・リベラ)

 

 視覚効果賞

リカルド・ロブレスLa 4a compañía

 

 特殊効果賞

ルイス・エドゥアルド・アンブリスLa 4a compañía

 

 美術デザイン賞

ジェイ・エロエスティカルロス・コッシオLa 4a compañía

 

 

 音楽賞

エミリアノ・モッタEl sueño del Mara'akame

 

 衣装賞 

ベルタ・ロメロホセ・グアダルーペ・ロペスLa 4a compañía

 

 

 メイクアップ賞

カルラ・ティノコアルフレッド・ガルシアLa 4a compañía

 

 

 録音賞2作)

ハビエル・ウンピエレスイサベル・ムニョスLa 4a compañía

フェデリコ・ゴンサレス・ホルダンカルロス・コルテスTempestad

 

 短編賞(フィクション)

El ocaso de Juan監督:オマル・デネド・フアレス

 

 

 短編賞(ドキュメンタリー)

Aurelia y Pedro監督:オマル・ロブレスホセ・ペルマル

 

 

 短編アニメーション(長編は該当作なし)

Los aeronautas監督:レオン・ロドリゴ・フェルナンデス

 

    

 イベロアメリカ映画賞

『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート

笑う故郷(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル

Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、 監督セバスティアン・コルデロ

『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ

(ブラジルとアルゼンチンが分け合いました)

 

 ゴールデン・アリエル賞(二人)

イセラ・ベガ(女優、脚本家、製作者、シンガー・ソング・ライター)

1939年生まれ。アリエル賞では、女優賞を1984年にアルトゥーロ・リプスタインのLa viuda negra」で受賞しているが、本作は1977年製作、メキシコ公開が1983年でした。他に2000年「La ley del Herodes」でも受賞、他に助演女優賞も受賞している。サム・ペキンパーの米国メキシコ合作映画『ガルシアの首』に出演、これは1975年公開されている。

 

 

ルセロ・イサック(美術監督)

 

 

 

La 4a compañía10個、Tempestad4個、Almacenados」が3個、「El sueño del Mara'akame

La calidas2個ずつ、他は1カテゴリーという結果になりました。既に公開、映画祭上映、ネットフリックスなどで見ることのできる作品もありますが、この他どのくらい日本で見られるでしょうか。マリア・エボリが新人賞を取ったホラー・ファンタジーTenemos la carne」(エミリアノ・ロチャ・ミンター)あたりは期待できそうです。

  

アリエル賞2017*ノミネーション発表2017年06月09日 12:13

         メキシコ版アカデミー賞、作品賞候補にドキュメンタリーも

 

         

★アリエル賞2016の結果発表は5月中だったが、今年は711日ということです。昨年の授賞式は『選ばれし少女たち』の監督ダビ・パブロスが両手に花でしたが、今年も同じような結果でしょうか。ざっと見た限りですが、ノミネーションは昨年12月の「イベロアメリカ・フェニックス賞」、11月開催の「ロス・カボス映画祭」受賞作品などと、当然ですがダブっているようです。最優秀作品賞ノミネーションには、公開、映画祭上映、ネットフリックスと、既に日本語字幕入り作品も交じっています。カテゴリーの数が多く、監督賞・脚本賞などはダブるので、最優秀作品賞とイベロアメリカ映画賞だけアップしておきます。ゴチック体は当ブログで扱った作品です。

 

   

             (最優秀作品賞ノミネーションの7作品)

 

最優秀作品賞(メキシコ)

『夜を彩るショーガール』Bellas de noche)ドキュメンタリー

                        監督マリア・ホセ・クエバス

『彼方から』(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス

『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン

Tempestad」ドキュメンタリー、監督タティアナ・ウエソ

Me estás matando, Susana監督ロベルト・スネイデル

La 4a compañía(スペイン合作)

                  監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ

El sueño del Mara'akame監督フェデリコ・Cecchetti

印はデビュー作

 

マリア・ホセ・クエバスの『夜を彩るショーガール』は、カンヌ映画祭で物議をかもしたネットフリックスで放映されている作品、ディスコ全盛期の1970年代から80年代にかけて活躍した5人のショーガールvedette(リン・メイ、ワンダ・セウス、プリンセサ・ジャマル、ロッシー・メンドサ、オルガ・ブレースキン)の数奇な人生を語るドキュメンタリー。ショー場面が続く前半よりオール60歳代になった後半が胸を打つ。彼女たちの栄光と転落がホンネで語られるからです。vedette というのはフランス語起源のバラエティーショーのセックス・シンボル的な女性スター、踊れて歌えて演技もできるアーティスト。モレリア映画祭2016メキシコ・ドキュメンタリー賞、ロス・カボス映画祭、パナマ映画祭などで受賞している。本作はドキュメンタリー部門でもノミネートされている。

 

 

アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラの「La 4a compañía」は、最多の20カテゴリーでノミネートされている。本作についてはミシェル・フランコの「Las hijas de Abril」に出演していたエルナン・メンドサの紹介記事で少しだけ触れています。両監督のデビュー作。

 

 

タティアナ・ウエソの「Tempestad」は8部門ノミネーション、分類はドキュメンタリーだがドラマでもある。監督はこの二つのジャンルは区別できないと語っている。暴力が処罰されることのないメキシコ、二人の犠牲者の物語。ミリアムは人身売買の濡れ衣を着せられて収監中、アデラは移動サーカスで働いている。闇が支配する世界への旅は同時に自由への旅でもある。一種のロードムービー。ベルリン映画祭2016フォーラム部門上映で高い評価を受け、12月開催の「フェニックス賞」ではドキュメンタリー賞やエルネスト・パルドの素晴らしい映像が撮影賞などを受賞している。『夜を彩るショーガール』同様、本作もドキュメンタリー部門でノミネートされている。審査員の評価は高いと思います。

 

 

★「El sueño del Mara'akame」はフェデリコ・Cecchettiの長編第1作、タイトルのMara'akameはウイチョル族のシャーマンを指すようです。オースティン映画祭観客賞とスペシャル・メンション、モレリア映画祭第1回・2回作品賞受賞、シカゴ映画祭他で上映されている。今年のアリエル賞は新人監督が目立つ印象です。4作とも第1回監督賞にノミネートされている。

 

 

 

『彼方から』の紹介記事は、コチラ2016930

『ノー・エスケープ自由への国境』は、コチラ2017年4月23

Me estás matando, Susana」は、コチラ2016322

La 4a companía」は、コチラ201758

 

イベロアメリカ映画賞

Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル

Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、ドイツ)

                 監督セバスティアン・コルデロ

『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

 追記:公開邦題『笑う故郷』として岩波ホールで9月16日から

『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ

『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート

 

★「Anna」は、ゴヤ賞2017のイベロアメリカ映画賞ノミネート、これから発表になる第4回イベロアメリカ・プラチナ賞には主演のフアナ・アコスタが候補者となっている。映画賞、映画祭で目にするが受賞にまで至らない。「Sin muertos no hay carnaval」は、セバスティアン・コルデロが生れ故郷エクアドルで撮った話題作、いつかご紹介したいと思っている映画の一つ。

 

 

 

アナ・ミュイラートの長編第4作目『セカンドマザー』(Que Horas Ela Volta?)は、英題「The Second Mother」の片仮名起こし、東海地方で展開しているコロナシネマワールドでのみ上映される「メ~シネマ」作品として今年1月公開された。ミュイラート監督は1964年サンパウロ生れの53歳、サンパウロ大学で映画を学ぶ。脚本家としてキャリアを出発させた。主にテレビ界での活躍が目立っていたが、短編中編を手掛けた後、2002年「Durval Discos」で長編デビューを果たす。日本ではカオ・アンブルゲールの『1970、忘れられない夏』(2006シネフィル・イマジカ放映、当時ハンバーガーと表記された)や『シングー』(2011ラテンビート2012)の脚本家の一人として紹介されているが、もっと注目されていい監督の一人。またベテラン女優のヘジーナ・カゼRegina Caseが母親役を演じているのも見逃せない。レジーナ・ケースという英語読みがあり、ポルトガル語はスペイン語以上に人名表記が定まっていない。古い話だが、アンドルッシャ・ワッディントンの佳作『エゥ・トゥ・エリス』(東京国際映画祭2000上映)で日本初登場、これは『私の小さな楽園』の邦題で公開された。

 

  

               (母と娘、ブラジル版ポスター)

 

『名誉市民』の主な紹介記事は、コチラ20161013

『物静かな男の復讐』の主な紹介記事は、コチラ2017年1月9日