ゴヤ賞を初めて統率する映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク2016年12月20日 14:11

       困難な会長職を引き受けたわけ――私たちはカオスの中にいる

 

★去る1214日、ゴヤ賞2017のノミネーション発表がありました。次回の授賞式を統率するのが新会長イボンヌ・ブレイク、マンチェスター生れのイギリス系スペイン人、母語は英語なので話が込み入ってくると了解を得ながらも英語混じりになる。なり手のなかった会長職をどうして引き受けたかというと、理事会役員の仲間から説得されたからだという。特に女優のアンパロ・クリメント、女性プロデューサーの草分け的存在のソル・カルニセロ、アルモドバル兄弟の「エル・デセオ」の中心的な製作者エステル・ガルシア・ロドリゲスなど、女性シネアストからの懇望に負けたからだという。

 

  

     (イボンヌ・ブレイク、映画アカデミー本部にある事務所にて、1129日)

 

★問題山積の中でも、新会長の肩に重くのしかかるのが活動資金調達の困難さ、「とにかく資金不足、掻き集めてくれる外郭団体があるにはあるが、問題は司令塔が存在しないこと」だと。「2017年はもう間に合わないが、2018年には授賞式を催すための他のグループを立ち上げたい。より多くの後援者を見つけないと今後は開催できなくなる事態になる」、パトロン探しが重要と新会長。2017年は質素なガラになるようです。より現代的な舞台装置、ミュージカル風でなく、多分本来の授賞に重きをおき、興行的にはしない方針のようです。1015日の就任以来、殆ど休みなく朝に夕に本部に詰めているという。

 

ブレイク新会長の女性ブレーン紹介

アンパロ・クリメントは、バレンシア生れの女優、最近はTVドラ出演が多いのでご紹介するチャンスがありませんが、かつてはグティエレス・アラゴンの『庭の悪魔』(82)やホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスの「Tranvia a la Malvarrosa」(96)に出演しているベテラン女優。

ソル・カルニセロは、1963年スペインテレビTVEのプログラム制作で第一歩を踏み出した。スペイン人から最も愛されたと言われる監督ガルシア・ベルランガの「ナシオナル三部作」といわれる辛口コメディ、ピラール・ミローの1910年代の実話に基づいた『クエンカ事件』(79)、治安警備隊の拷問シーンが残酷すぎると上映阻止の動きがあり、ミロー監督も一時的に収監されるという前代未聞の事態に発展した。民主化移行期とはいえフランコ時代が続いていたことを内外に知らせる結果になった。1年半後に公開されると空前のヒット作となった。

エステル・ガルシア・ロドリゲスは「エル・デセオ」のプロデューサー、2015年、数々の映画賞をさらったダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』で、20回フォルケ賞をアグスティン・アルモドバルと一緒に受賞しています。

イボンヌ・ブレイクのキャリア紹介記事は、コチラ⇒20161029

 

ヨーロッパ映画賞は全滅でした!

 

★スペイン語映画は全滅でした。ドイツ=オーストリア合作のマーレン・アデの「Toni Erdmann」が独占、ちょっと口をあんぐりの結果でした。「最多ノミネーション5個(作品、監督、脚本、女優サンドラ・フラー、男優ペーター・シモニシェック)、どれか一つくらい受賞するのではないでしょうか」と予想はしていましたが、なんと全部受賞してしまいました。過去にこのような例があるのかどうか調べる気にもなりませんが、他の映画もちゃんと観てくれた結果なのでしょうか。『ジュリエッタ』グループもアルモドバル監督以下揃って現地入りしていましたが、無冠に終り残念でした。

ヨーロッパ映画賞ノミネーションの紹介記事は、コチラ⇒2016118

 

   

                    (監督賞トロフィーを手に喜びのマーレン・アデ)

 

    

(監督を挟んでサンドラ・フラーとペーター・シモニシェック)

 

       アカデミー賞外国語映画賞プレ・セレクション9作品も全滅でした!

 

2015ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(アルゼンチン他)、2016年チロ・ゲーラの『彷徨える河』(コロンビア他)と2年続きでノミネートされたオスカー賞、2017年はプレ・セレクション9作品にも残れませんでした。有力視されていた(?)アルモドバルの『ジュリエッタ』、パブロ・ララインの「Nerudaネルーダ」も手が届きませんでした。ヨーロッパ映画賞を独占したドイツのマーレン・アデ「Toni Erdmann」は、予想通り残っていますね。来年まで勢いが続くかどうか、ハリウッドはドイツ嫌いが多い印象を受けています。


第3回イベロアメリカ・フェニックス賞*結果発表2016年12月15日 15:58

             こんな作品が受賞しましたが・・・

 

 

★去る127日の夜(現地時間2030)、メキシコシティの「Ciudad Esperanza Iris劇場」で授賞式が開催されました。ガラはアルゼンチンのフィト・パエス、メキシコの「Zoé」のボーカリストで作曲家のレオン・ラレギ、今回栄誉賞受賞のアレハンドロ・ホドロフスキーの4アダノフスキーのような豪華なミュージシャンが出演、かなり賑やかだったようです。カテゴリーは13個(その他として栄誉賞、プロダクションと批評家に与えられるフェニックス賞が追加されている)。Nerudaネルーダ」が最多4賞、メキシコのドキュメンタリー「Tempestad」が3賞を制して閉幕いたしました。ノミネーション発表記事で「ブラジルの健闘が目につく2016年」と書きましたが、予想通りの結果になりました(ブラジルからの出席も多かったようです)。結果は以下の通り:

 

    

              (音楽を担当したフィト・パエス)

 

作品賞(作品賞のみ7作品)

Nerudaネルーダ」チリ、アルゼンチン、スペイン、フランス合作、パブロ・ラライン監督

 製作:Fabula / AZ Films / Funny Balloons / setembre Cine9個ノミネーション、4

『エル・クラン』アルゼンチン他、監督パブロ・トラペロ(9個ノミネーション、2

『彼方から』ベネズエラ他、同ロレンソ・ビガス(4個ノミネーション)

Aquariusアクエリアス」ブラジル他、クレベル・メンドンサ・フィリオ

   (4個ノミネーション、2

Boi Neon」ブラジル他、ガブリエル・マスカロ(8個ノミネーション、2

La muerte de Luis XIVルイ14世の死」スペイン他、アルベルト・セラ(4個ノミネーション)

Te prometo anarquia」メキシコ他、同フリオ・エルナンデス・コルドン(1個ノミネーション)

 

   

   (製作者フアン・デ・ディオス・ラライン監督弟、GG・ベルナル、ルイス・ニェッコ

 

監督賞

クレベル・メンドンサ・フィリオAquariusアクエリアス」

パブロ・トラペロ『エル・クラン』

パブロ・ラライン「Nerudaネルーダ」

ガブリエル・マスカロ「Boi Neon

アルベルト・セラ「La muerte de Luis XIVルイ14世の死」

 

   

脚本賞

ガブリエル・マスカロBoi Neon」(ポルトガル語)

 

   

 

男優賞

ギジェルモ・フランセージャ『エル・クラン』

 

 

       (『エル・クラン』から)

 

女優賞

◎ソニア・ブラガAquariusアクエリアス」

 

   

            (トロフィーを手にしたソニア・ブラガ)

 

撮影賞

ディエゴ・ガルシアBoi Neon

 

録音賞

レアンドロ・デ・ロレド&ビセンテ・デリア『エル・クラン』

 

衣装賞

ムリエル・パラNerudaネルーダ」

 

編集賞

Hervé SchneidNerudaネルーダ」

 

美術賞

◎エステファニア・ララインNerudaネルーダ」

 

長編ドキュメンタリー賞

Tempestad(メキシコ)Pimienta Films / Cactus Films / Terminal 

  監タティアナ・ウエソ 

オリジナル音楽賞

レオ・エイブルムハコボ・リエベルマンTempestad

 

ドキュメンタリー撮影賞

エルネスト・パルドTempestad

 

   

 

栄誉賞 アレハンドロ・ホドロフスキー

 

   

  (父親の代理でトロフィーを受け取ったミュージシャンのアダン・ホドロフスキー)

 

プロダクション・フェニックス賞 パトリシア・リヘン監督のLos 33のプロダクション

 

批評家フェニックス賞 スペインのミゲル・マリアス

 

★どの映画賞にも言えることですが、結果に対する不満不平はつきものです。特に「イベロアメリカ」と称しながら、新大陸メキシコ開催ということで旧大陸スペインとポルトガルの影が薄い印象は否めません。今年はゼロだったこともあり、この映画の集いに各地から馳せつけた700人近い出席者の中には、この結果では「誰をも満足させられない」という愚痴がつぶやかれたようです。もともとメキシコのモレリア映画祭2013に集ったシネアストたちのお喋りから始まった映画賞。ラテンアメリカ諸国、スペイン、ポルトガルの合計23カ国を網羅して「Cinema 23」を起ち上げた。ディレクターは設立者の一人リカルド・ヒラルド。全地域から集められた映画に携わるプロフェッショナル約550人が選考に当たった。

 

   

        (今年のノミネーション作品を紹介するリカルド・ヒラルド)

 

フェニックス賞受賞は配給元にインパクトを与えられるか?

 

★イベロアメリカ諸国のアーチストの才能発掘、23カ国全地域の庶民がイベロアメリカ諸国製作の映画を観られる環境を作ること、という大きな2本の柱を掲げて始まった映画賞だが、当初から雑音入りだった。例えば13個のカテゴリー、撮影賞がフィクションとドキュメンタリーの両方にありながら特殊効果アニメーション短編が除外され、才能発掘を目指しながら新人枠の監督、俳優、助演者などのカテゴリーを設けなかったことなどが挙げられる。

 

★一口にイベロアメリカといっても公開時期がまちまちだから(未公開も多い)、ノミネートされていても観ていないケースが出てくる。というわけで、「本当にちゃんと観ていて選んだのですか?」という不満がくすぶることになる。これは映画賞全般に言えることでフェニックスに限りません。しかし「シネマ23」の権力が幅を利かすようでは困るということが背景にあるのかもしれません。会場ではアメリカ次期大統領ドナルド・トランプが、ラテンアメリカ諸国に対してどのような政策を打ち出してくるか、その危険性を警戒する声も聞かれたという。映画産業も政治と無縁では成り立たないですから、当然でしょう。

 

★賞には全く絡みませんでしたが、スペインからはセスク・ゲイの「トルーマン」(リカルド・ダリンの男優賞)、ホセ・ルイス・ゲリンの『ミューズ・アカデミー』(編集・脚本)、アルベルト・セラの「ルイ14世の死」(作品・監督・美術・衣装)がノミネートされたことが話題になったようです。3監督とも世界的な評価の高さに比してスペインでは傍流に属しているからでしょうか。フェニックス賞が配給元にインパクトを与えられるかどうかが今後の課題です。

 

★昨年の作品賞を受賞したチロ・ゲーラの『彷徨える河』はアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、それなりの成果を出しました。今年のガラで特に脚光を浴びたのがGG・ガエルと「ネルーダ」関係者だったようですが、果たして期待通りに行くでしょうか。アメリカ映画アカデミーも今までノミネートしたことのない国から選ぶ傾向にあるようで、チリは既に第85回アカデミー賞2012にララインのNoがノミネートされています。


第3回イベロアメリカ・フェニックス賞ノミネーション発表2016年12月04日 17:36

      Nerudaネルーダ」と『エル・クラン』が同数の9個ノミネーション

 

   

               (2016年のポスター)

 

2014年晩秋、イベロアメリカの「オスカー賞」という触れ込みで始まった映画賞「Los Premios Fénix」も今年で3回めを迎えました。イベロアメリカですからスペイン、ポルトガルも入りますが、どちらかと言うとラテンアメリカ諸国にシフトしています。第2回めの作品賞はパブロ・ララインの『ザ・クラブ』、他に監督賞・脚本賞・男優賞(アルフレッド・カストロ)と大賞を独占、『彷徨える河』のチロ・ゲーラが監督賞をララインと分け合い、その他ダビ・ガジェゴ(撮影賞)・カルロス・ガルシア他(録音賞)・ナスクイ・リナレス(音楽賞)の4賞と、2作品でほぼ決まりでした。 

        

           (イベロアメリカ・フェニックス賞のトロフィー)

 

★スペインはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』が美術デザイン賞(ぺぺ・ドミンゲス)の1賞のみ、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』の衣装賞(ソフィア・ランタン)、サンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』が女優賞(ドロレス・フォンシ)、パトリシオ・グスマンの『真珠のボタン』がドキュメンタリー撮影賞(カテル・ジアン)、ポルトガル語映画では、エドゥアルド・コウチーニョ19332014)の遺作となったUltimas Conversas(ブラジル)がドキュメンタリー賞をとりました。製作途中の20142月に精神を病んでいた息子に刺殺されるという痛ましい事件の犠牲者となりました。というわけで最終的に作品を完成させたのはジョアン・モレイラ・サレス、授賞には長年の彼の功績を讃える意味もあったのではないでしょうか。

 

   

        (左側中段のコウチーニョ監督とインタビューを受けた学生)

 

★さて、2016年は間もなく結果が発表になりますので(127日)、ノミネーションは作品賞と監督賞にして、後は結果が出ましたらアップいたします。

 

作品賞(作品賞のみ7作品)

『エル・クラン』アルゼンチン他、監督パブロ・トラペロ(9個ノミネート)

『彼方から』ベネズエラ他、同ロレンソ・ビガス(4個ノミネート)

Nerudaネルーダ」チリ他、同パブロ・ラライン(9個ノミネート)

Aquariusアクエリアス」ブラジル他、クレベル・メンドンサ・フィリオ(4個ノミネート)

Boi Neon」ブラジル他、ガブリエル・マスカロ(8個ノミネート)

La muerte de Luis XIVルイ14世の死」スペイン他、アルベルト・セラ(4個ノミネート)

Te prometo anarquia」メキシコ他、同フリオ・エルナンデス・コルドン(1個ノミネート)

 

監督賞

パブロ・トラペロ『エル・クラン』

パブロ・ラライン「Nerudaネルーダ」

ガブリエル・マスカロ「Boi Neon

クレベル・メンドンサ・フィリオ「Aquariusアクエリアス」

アルベルト・セラ「La muerte de Luis XIVルイ14世の死」

 

★「Boi Neon」の8個、「Aquariusアクエリアス」の4個とブラジルの健闘が目につく2016年です。黒い不死鳥の卵は誰の手に渡るのでしょうか。開催地メキシコ・シティでは「フェニックス週間」(121日~10日)としてノミネーションされた作品、または過去の受賞作品の上映会のほか、「Boi Neon」(脚本・編集)や『エル・クラン』(編集)、『モンスター・ウィズ・オブ・サウザン・ヘッズ』(脚本)など、各担当者が出席しての討論会も企画されているようです。


アルモドバル『ジュリエッタ』*ヨーロッパ映画賞2016ノミネーション発表2016年11月08日 10:21

        作品賞、監督賞、2人のジュリエッタが女優賞候補に

 

アルモドバルの新作『ジュリエッタ』が劇場公開された同じ日に、第29回ヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表されました。作品賞監督賞2人のジュリエッタに扮したエンマ・スアレスアドリアナ・ウガルテがユニットで女優賞観客賞4個です。アルモドバルはヨーロッパ映画賞のご常連、今回は多分貰えないと予想しますが蓋を開けてみないと分かりません。女優賞の2人は初ノミネート、かなり混戦状態ですが、こちらはアリかも知れません。他にハビエル・カマラがセスク・ゲイの“Truman”(「トルーマン」)で男優賞にノミネートされています。ハビエルはアルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』以来2回め、男優賞は異例の6人が残った。しかし、顔ぶれからみると、受賞は厳しそうです。

 

    

       (エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテ、『ジュリエッタ』から)

 

  

      (左から、ハビエル・カマラ、リカルド・ダリン、「トルーマン」から)

 

★対抗馬としては、カンヌ映画祭2016コンペティション作品がそのままノミネーションされているかの印象です。つまりケン・ローチI, Daniel Blake(パルムドール受賞)、ポール・ヴァーホーヴェンElleマーレン・アーデToni Erdmann(「トニ・エルトマン」)、本作は「ドイツ久々の大物監督誕生」と話題をさらいながらコンペでは無冠に終わり、カンヌでは物議を醸したのでした。サンセバスチャン映画祭でFIPRESCI(国際映画批評家連盟賞)を受賞しています。映画祭と映画賞は性質が違い、特に映画祭は審査委員長の意向に左右されるから、今回は無冠ということにはならないと予想します。最多ノミネーション5個(作品、監督、脚本、女優サンドラ・フラー、男優ペーター・シモニシェック)、どれか一つくらい受賞するのではないでしょうか。というのも観たい作品だからです。アルモドバルやケン・ローチでは新鮮味がないなどという理由ではありません(笑)。残るレニー・アブラハムソン(エイブラハムソン)『ルーム』のみが2015年作品、すでに劇場公開されています。

 

    

   (娘サンドラ・フラーと父親ペーター・シモニシェック、“Toni Erdmann”から)

 

★アルモドバルの第20作目になる『ジュリエッタ』は、愛してやまない者の喪失がテーマのドラマ、スリラー的要素もありそうですが、アクション好きな人にはお薦めでない。居眠りしてしまうかもしれない。他のカテゴリーでは、長編アニメーション1作、短編2作が残りました。結果発表は1210日、ポーランド西部の古都ヴロツワフで授賞式が行われる。

 

公開2016115日、新宿ピカデリー他、順次全国ロードショー展開


第3回イベロアメリカ・プラチナ賞2016*結果発表2016年07月31日 17:03

       『大河の抱擁』のモノクロ映像美の前にひれ伏した授賞式でした

 

 

★ベロアメリカ・プラチナ賞授賞式がウルグアイのプンタ・デル・エステで開催されました(724日)。「梅雨が明けたらプラチナ賞の結果発表」と思っていたのに忘れていました。梅雨明けが遅かったせいです(笑)。コロンビアのチロ・ゲーラ『大河の抱擁』7とほぼ独占状態でした。もう少しバラけるかと予想しておりましたが、今回も前回同様1作品に集中する結果になりました(前回は『人生スイッチ』の8賞)。スペインはもともとノミネーションが少ないこともあってアニメーション賞だけでした。

 

★総合司会はサンティアゴ・セグラとアルゼンチンで活躍しているウルグアイのナタリア・オレイロ、ガラの総指揮ガラはアダル・ラモネス、ケーブルテレビを介して生中継の責任者を担いました。スペインからは候補者以外、プレゼンター役に選ばれているナタリア・デ・モリーナゴヤ・トレド、エドゥアルド・ノリエガ、ウーゴ・シルバ、ペポン・ニエトなど若手も応援に馳せつけました。グアテマラからは、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』がノミネートされていたせいか、ノーベル平和賞受賞者リゴベルタ・メンチュウが小柄な体に美しい民族衣装を纏って登壇、基本的人権の闘いを力強く呼びかけました。今ではスペイン語話者は23カ国で6億人に上るという。英語で撮る監督が増えたとはいえ、スペイン語映画の今後の躍進を祈りたい。

 

  

       (左から、ナタリア・オレイロ、サンティアゴ・セグラ、アダル・ラモネス)

 

★各カテゴリーのノミネーションと結果(邦題『』は公開・映画祭上映作品、「」は仮題)

作品賞
"El Abrazo de la Serpiente" 『大河の抱擁』コロンビア、ベネズエラ、アルゼンチン

"El Clan" 「ザ・クラン」 アルゼンチン、スペイン 
"El club" 『ザ・クラブ』 チリ 
"Ixcanul"
 『火の山のマリア』 グアテマラ 
"Truman"
 「トルーマン」 スペイン、アルゼンチン 



        (ガラに勢揃いした『大河の抱擁』のスタッフとキャストたち)

 

アマゾン河沿いの村に暮らすコロンビア先住民たちが自然と対峙する姿が美しいモノクロ映像で語られた(ダビ・ガジェゴが撮影賞を受賞した)。その生き生きした、現代とは異なった哲学が受賞の決め手になったのではないでしょうか。

作品紹介記事は、コチラ⇒2015524

 

監督賞
アロンソ・ルイスパラシオス Alonso Ruizpalacios  "Güeros"『グエロス』(メキシコ)
セスク・ゲイ Cesc Gay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ Ciro Guerra 『大河の抱擁』
パブロ・ララインPablo Larraín 『ザ・クラブ』
パブロ・トラペロ Pablo Trapero 「ザ・クラン」


 

                  (チロ・ゲーラ)

 

男優賞
アルフレッド・カストロAlfredo Castro 『ザ・クラブ』
ダミアン・アルカサルDamián Alcázar "Magallanes"(ペルー、アルゼンチン・コロンビア・西)監督:サルバドル・デル・ソラル
ギジェルモ・フランセージャGuillermo Francella 「ザ・クラン」
ハビエル・カマラJavier Cámara 「トルーマン」

リカルド・ダリンRicardo Darín  「トルーマン」



                           (ギジェルモ・フランセージャ)

 

ギジェルモ・フランセージャは、『瞳の奥の秘密』でリカルド・ダリンの相棒役を演じたアルゼンチン人なら知らない人がいないという有名なコメディアン、ドロレス・フォンシが女優賞を受賞、リカルド・ダリンも「栄誉賞」を受賞しましたから、アルゼンチンは大喜びでしょう。「ザ・クラン」はベネチア映画祭2015銀獅子監督賞受賞作品、今秋の映画祭上映を期待したい作品。

「ザ・クラン」の主な紹介記事は、コチラ⇒201587


女優賞
アントニア・セヘルスAntonia Zegers 『ザ・クラブ』
ドロレス・フォンシDolores Fonzi『パウリーナ』(アルゼンチン、ブラジル、フランス)

監督:サンティアゴ・ミトレ

エレナ・アナヤ Elena Anaya  "La memoria del agua"(チリ、アルゼンチン、西・独)

 監督:マティアス・ビゼ
インマ・クエスタInma Cuesta "La novia"(西・トルコ・独)監督:パウラ・オルティス
ペネロペ・クルスPenélope Cruz  "Ma Ma"(スペイン) 監督:フリオ・メデム



            (ドロレス・フォンシ)

 

スペインの大女優たちを振り切って受賞、本作を機に結婚したサンティアゴ・ミトレ監督とハグして喜びをかみしめていた。

ドロレス・フォンシと『パウリーナ』の主な紹介記事は、コチラ⇒2015521

 

オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス Alberto Iglesias  "Ma Ma"
フェデリコ・フシド Federico Jusid  "Magallanes"
ルカス・ビダル Lucas Vidal  "Nadie quiere la noche" 監督:イサベル・コイシェ
ナスクイ・リナレス Nascuy Linares 『大河の抱擁』
パスクアル・レイジェス Pascual Reyes『火の山のマリア』監督:ハイロ・ブスタマンテ

ドキュメンタリー
"Allende mi abuelo Allende"
(チリ、メキシコ)『アジェンデ』

監督:マルシア・タンブッティ・アジェンデ
"Chicas nuevas 24 horas"
(西、アルゼンチン、パラグアイ、コロンビア、ペルー)

監督:マベル・ロサノ
"El botón de nácar" 『真珠のボタン』(チリ・仏・西) 監督:パトリシオ・グスマン
"La Once"
(チリ)監督:マイテ・アルベルディ
"The Propaganda Game"
(スペイン)監督:アルバロ・ロンゴリア



                   (パトリシオ・グスマンの 『真珠のボタン』)

 

脚本賞
セスク・ゲイ、トマス・アラガイ Tomás Aragay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ、ジャック・トゥーレモンド Jacques Toulemonde 『大河の抱擁』
ハイロ・ブスタマンテ Jayro Bustamante 『火の山のマリア』"
パブロ・ララインギジェルモ・カルデロンGuillermo Calderón他 『ザ・クラブ』
サルバドル・デル・ソラルSalvador Del Solar  "Magallanes"

撮影賞
アルナルド・ロドリゲス Arnaldo Rodríguez  "La memoria del agua"
ダビ・ガジェゴ David Gallego  『大河の抱擁』
ルイス・アルマンド・アルテアガ Luis Armando Arteaga 『火の山のマリア』
ミゲル・アンヘル・アモエド Miguel Ángel Amoedo  "La novia"
セルヒオ・アームストロング Sergio Armstrong  『ザ・クラブ』 

初監督作品賞
"600 millas"
(メキシコ) 監督:ガブリエル・リプスティン
"El desconocido"
(スペイン)『暴走車 ランナウェイ・カー』 監督:ダニ・デ・ラ・トーレ
"El patrón: Radiografía de un crimen"
(アルゼンチン、ベネズエラ)

監督:セバスティアン・シンデルSchindel
『火の山のマリア』 監督:ハイロ・ブスタマンテ
"Magallanes"
 監督:サルバドル・デル・ソラル

 

  

             (スタッフとキャスト、トロフィーを掲げているのがブスタマンテ監督)

 

『火の山のマリア』とハイロ・ブスタマンテ紹介記事は、コチラ⇒2015828日/1025

 

★その他、ノミネーションをアップしなかったカテゴリーの受賞者

美術賞アンへリカ・ペレア 『大河の抱擁』

編集賞エティエンヌ・Boussac & クリスティナ・ガジェゴ 『大河の抱擁』

録音賞カルロス・ガルシアマルコ・サラベリア 『大河の抱擁』

アニメーション賞Atrapa la bandera エンリケ・ガト(スペイン)

 

Cine en valores価値ある映画:Una segunda madreAnna Muylaert(ブラジル、ポルトガル語)

アナ・ムイラエルト(またはミュイラート?)は、1964年サンパウロ生れの女優、脚本家、監督。サンダンス映画祭2015でワールド・プレミア、英題“The second Mather”、つづくベルリン映画祭「パノラマ」部門出品、Männer Magazine Readers審査員賞を受賞している(男性雑誌でしょうか)。プレゼンターはリゴベルタ・メンチュウでした。

 

   

           (左側の横向きが監督、リゴベルタ・メンチュウ)

 

栄誉賞

リカルド・ダリン1957年ブエノスアイレス、俳優・監督)、ここ30年間のスペイン語映画でもっとも活躍している俳優の一人、人徳、才能、カリスマ性の三拍子が揃っている。特にセスク・ゲイの「トルーマン」(2015)でサンセバスチャン映画祭男優金貝賞ゴヤ賞主演男優賞を受賞して、タイミング的によかった。プラチナ賞は友人のギジェルモ・フランセージャが受賞したが、ダリン的には満足だったのではないでしょうか。受賞の弁は「映画のお陰でより良い人生が送れています」、俳優だった両親と11歳で舞台デビューした少年も、来年は還暦を迎えます。大資本を駆使するハリウッド支配に対抗してイベロアメリカ映画に貢献していることが評価された。私生活では1988年フロレンシア・バスと結婚、今もってラブラブはこのギョウカイでは珍しい。11女があり、長男リカルド・(チノ)・ダリンも俳優、共演している。

 

     

                 (リカルド・ダリン)

 

4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017マドリード開催がアナウンスされました。開催日は6月か7月になる模様。マドリード市が100万ユーロを拠出する。現在のマドリード市長は反フランコ体制の闘士と言われたマヌエラ・カルメナ(アオラ・マドリードAhora Madrid党)氏、20156月に就任した。市長の右腕と言われるルイス・クエト氏がウルグアイ入りして映画祭のノウハウを見て回ったとか。「いい体験ができた」とプレスのインタビューに答えていました。未だスペインは2回の総選挙にもかかわらず組閣ができておりませんので、社労党からも国民党からも資金提供は望めません。というわけでマドリード市が一肌脱ぐことになったようです。


第3回イベロアメリカ・プラチナ賞2016*ノミネーション発表2016年06月03日 13:11

        授賞式はウルグアイのプンタ・デル・エステ、724日開催

 

    

★「イベロアメリカ・プラチナ賞」は23カ国が参加するシネ・フェスティバルですが、ノミネーションから見えてくるのはスペイン、アルゼンチン、チリ、メキシコの作品がズラリ。申しわけ程度にペルー、コロンビア、グアテマラ、ブラジル、ポルトガル、肝心のウルグアイは何かノミネーションされていたかしら、いいえゼロです。メキシコでもアリエル賞と重なったのはガブリエル・リプスティンの"600 millas"だけのようです。映画祭の審査員も映画賞も「批評家」が選ぶわけではないので当然といえば当然かもしれない。作品賞にノミネートされた5作品のうち、グアテマラの8個はすべて『火の山のマリア』です。映画後進国グアテマラを応援する意味があるのでしょう。これは『大河の抱擁』についても言えること、アリエル賞の「イベロアメリカ映画賞」受賞作品です。

 

1986年、いわゆる「ウルグアイ・ラウンド」という通商交渉が行われたプンタ・デル・エステが開催地に選ばれた。ウルグアイは人口328万人(2011年)という南米でも2番めに小さい国、比較的治安の良い国と言われておりますが、昨今ではそうでもないということです。プンタ・デル・エステは大西洋に面したマルドナル県にある南米でも有数のリゾート地、富裕層がバカンスに訪れる。会場となる‘Centro de Convenciones de Punta del Este’は、まだ完成していないのか模型しか写真が入手できなかった。

 

   

             (お金持ちが集まる南米有数のリゾート地、プンタ・デル・エステ)

 

 

  

(会場となるプンタ・デル・エステ会議センターCentro del Convenciones の完成模型)

 

★主なカテゴリーのノミネーション(邦題『』は公開・映画祭上映作品、「」は仮題)

作品賞
"El Abrazo de la Serpiente"
 『大河の抱擁』 コロンビア、ベネズエラ、アルゼンチン 最多8
"El Clan"
 「ザ・クラン」 アルゼンチン、スペイン 6
"El club" 『ザ・クラブ』 チリ 6
"Ixcanul"
 『火の山のマリア』 グアテマラ 最多8
"Truman"
 「トルーマン」 スペイン、アルゼンチン 5


 『大河の抱擁』

   

          "El Clan"

    

               『ザ・クラブ』

    

      『火の山のマリア』

 

 
"Truman"

監督賞
アロンソ・ルイスパラシオス Alonso Ruizpalacios  "Güeros"『グエロス』(メキシコ)
セスク・ゲイ Cesc Gay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ Ciro Guerra 『大河の抱擁』
パブロ・ララインPablo Larraín 『ザ・クラブ』
パブロ・トラペロ Pablo Trapero 「ザ・クラン」


         『グエロス』のアロンソ・ルイスパラシオス


男優賞
アルフレッド・カストロAlfredo Castro 『ザ・クラブ』
ダミアン・アルカサルDamián Alcázar "Magallanes"(ペルー、アルゼンチン・

  コロンビア・西) 監督:サルバドル・デル・ソラル
ギジェルモ・フランセージャGuillermo Francella 「ザ・クラン」
ハビエル・カマラJavier Cámara 「トルーマン」

リカルド・ダリンRicardo Darín  「トルーマン」


                    "Magallanes"のダミアン・アルカサル


女優賞
アントニア・セヘルスAntonia Zegers 『ザ・クラブ』
ドロレス・フォンシDolores Fonzi『パウリーナ』(アルゼンチン、ブラジル、フランス)

監督:サンティアゴ・ミトレ

エレナ・アナヤ Elena Anaya  "La memoria del agua"(チリ、アルゼンチン、西・独)

 監督:マティアス・ビゼ
インマ・クエスタInma Cuesta "La novia"(西・トルコ・独)監督:パウラ・オルティス
ペネロペ・クルスPenélope Cruz  "Ma Ma"(スペイン) 監督:フリオ・メデム



         『ザ・クラブ』のアントニア・セヘルス



『パウリーナ』のドロレス・フォンシ

 

 

              "La memoria del agua" のエレナ・アナヤ

 

              

                                                                 "La novia" のインマ・クエスタ

 

            

                            "Ma Ma" のペネロペ・クルス

 

オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス Alberto Iglesias  "Ma Ma"
フェデリコ・フシド Federico Jusid  "Magallanes"
ルカス・ビダル Lucas Vidal  "Nadie quiere la noche" 監督:イサベル・コイシェ
ナスクイ・リナレス Nascuy Linares 『大河の抱擁』
パスクアル・レイジェス Pascual Reyes『火の山のマリア』監督:ハイロ・ブスタマンテ


 "Nadie quiere la noche" ルカス・ビダル


ドキュメンタリー
"Allende mi abuelo Allende"
(チリ、メキシコ)『アジェンデ』

監督:マルシア・タンブッティ・アジェンデ
"Chicas nuevas 24 horas"
(西、アルゼンチン、パラグアイ、コロンビア、ペルー)

監督:マベル・ロサノ
"El botón de nácar" 『真珠のボタン』(チリ・仏・西) 監督:パトリシオ・グスマン
"La Once"
(チリ)監督:マイテ・アルベルディ
"The Propaganda Game"
(スペイン)監督:アルバロ・ロンゴリア
 

             マルシア・タンブッティ・アジェンデの "Allende mi abuelo Allende"

 

                  マベル・ロサノの "Chicas nuevas 24 horas"

 

        パトリシオ・グスマンの 『真珠のボタン』

 

マイテ・アルベルディの "La Once"

 

        アルバロ・ロンゴリアの "The Propaganda Game"


脚本賞
セスク・ゲイ、トマス・アラガイ Tomás Aragay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ、ジャック・トゥーレモンド Jacques Toulemonde 『大河の抱擁』
ハイロ・ブスタマンテ Jayro Bustamante 『火の山のマリア』"
パブロ・ラライン、ギジェルモ・カルデロンGuillermo Calderón他 『ザ・クラブ』"
サルバドル・デル・ソラルSalvador Del Solar  "Magallanes"

撮影賞
アルナルド・ロドリゲス Arnaldo Rodríguez  "La memoria del agua"
ダビ・ガジェゴ David Gallego  『大河の抱擁』
ルイス・アルマンド・アルテアガ Luis Armando Arteaga 『火の山のマリア』
ミゲル・アンヘル・アモエド Miguel Ángel Amoedo  "La novia"
セルヒオ・アームストロング Sergio Armstrong  『ザ・クラブ』 

初監督作品賞
"600 millas"
(メキシコ) 監督:ガブリエル・リプスティン
"El desconocido"
(スペイン)『暴走車 ランナウェイ・カー』 監督:ダニ・デ・ラ・トーレ
"El patrón: Radiografía de un crimen"
(アルゼンチン、ベネズエラ)

監督:セバスティアン・シンデルSchindel
『火の山のマリア』 監督:ハイロ・ブスタマンテ
"Magallanes"
 監督:サルバドル・デル・ソラル


           セバスティアン・シンデルの"El patrón: Radiografía de un crimen"

 

        ガブリエル・リプステインの "600 millas"

 

 ダニ・デ・ラ・トーレの『暴走車 ランナウェイ・カー』

初出に国名を入れ、写真は多数につき1作品1枚を原則に適宜選びました。録音賞・編集賞・美術賞などは割愛。

 

★昨年の作品賞は、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』が10個ノミネーション、8個受賞とあんまりの結果にしらけました。今年はイベロアメリカ映画の将来を見据えての結果を期待したい。今回の総合司会者は、ウルグアイの女優・歌手・デザイナーのナタリア・オレイロ、お馴染みのサンティアゴ・セグラの二人。オレイロはルシア・プエンソの『ワコルダ』で少女の母親になった。

 

EGEDA (Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales FIPCAFederación Iberoamericana de Productores Cinematográficos y Audiovisuales) が主催します。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための管理交渉団体です。EGEDA1990年創設、活動は1993年から。スペイン、チリ、コロンビア、US、ペルー、ウルグアイ他などが参加しており、現会長はスペインのエンリケ・セレソ、副会長は同アグスティン・アルモドバル。

 

アリエル賞2016結果発表*『選ばれし少女たち』が大賞を独占!2016年06月01日 19:16

           ダビ・パブロス監督、両手にトロフィー

 

★今年58回目を迎えたアリエル賞、『選ばれし少女たち』の5個、“Gloria”の同5個、技術部門を制した“El más buscado”の4個という具合に3作に集中して幕を閉じました。なかで作品賞を含めて大賞を独り占めした『選ばれし少女たち』は、作品賞(カナナのパブロ・クルス)のほか監督賞・オリジナル脚本賞(ダビ・パブロス)・撮影賞(カロリーナ・コスタ)・新人女優賞(ナンシー・タラマンテス)、パブロスが両手にしているのは監督賞と脚本賞です。

 

           

            (両手にトロフィー、喜びのダビ・パブロス)

 

★本作はホルヘ・ボルピの同名小説“Las elegidas”に着想を得ている。原作は1970年代以降売春、人身売買の忌まわしい慣習の町として悪名高いトラスカラ州テナンシンゴの「ファミリー」に着想を得て書かれた小説。カナナのパブロ・クルスが映画化権を取り監督を探していた。若いダビ・パブロスに白羽の矢が立ち、しかし原文が難解なことから脚本をボルピに委ねた。ところが作家と監督の話合いの結果、場所をテナンシンゴから監督が育ったティフアナに移すとか、どんどん原作から離れてしまった。しかし原作と脚本に相違があるのはどの映画にも言えることで個人的にはノミネーションの段階からオリジナル脚本賞が妥当かどうか疑問に思っていました。ホルヘ・ボルピは今年の3月に来日して講演したのですが、後に監督も一緒だったと知りましたが、後の祭りでした。

 

★製作会社カナナについてはガエル・ガルシア・ベルナルディエゴ・ルナしか日本では紹介されていませんが、二人は俳優・監督と忙しく、実際にカナナを総括しているのはパブロ・クルスです。トロフィーも製作会社を代表して彼の手に渡りました。作品賞は製作者がもらう賞です。パブロ・クルスと監督のキャリア紹介は、カンヌ映画祭2015「ある視点」を参照してください。

 

       

      (トロフィーを高く掲げているのがパブロ・クルス、右後方に監督)

 

★カロリーナ・コスタの撮影賞受賞は嬉しい。カンヌ映画祭「ある視点」やラテンビートの紹介記事でも、彼女の画面構成、照明の当て方などを褒めたように記憶しています。ナンシー・タラマンテスはシンデレラ娘、まだ子供といってもいい15歳、キャリアはこれからです。

関連記事:カンヌ映画祭2015「ある視点」の記事は、コチラ⇒2015531

ラテンビート2015の記事は、コチラ⇒20151021

 

        文句なしのソフィア・エスピノサの女優賞受賞

 

★もう一つの5個受賞はクリスティアン・KellerGloria、女優賞(ソフィア・エスピノサ)・男優賞(マルコ・ペレス)・編集賞(アドリアナ・マルティネスパトリシア・ロメル)、メイクアップ賞(ダビ・ガメロス)・録音賞(マティアス・バルベロ他)の5賞です。

 

★女優賞は下馬評通りでした。他にジェラルディン・チャップリン(“Dolares de arena”)やハナ(ジャナ)・ラルイ(『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』)など、既にご紹介した映画のヒロインもおりましたが、ソフィア・エスピノサの迫力には及びませんでした。メキシカン・ポップやロック界のアイコン、現在も活躍中のグロリア・トレビの栄光と転落を素材にしたビオピックだから強い。ノミネーション以来、アカデミー会員の信頼を事実上得たも同然だったし、自身も受賞を確信していたでしょう。プロデューサーのセルヒオ・アンドラーデ役のマルコ・ペレスも男優賞を受賞した。アルフォンソ・キュアロンの『アモーレス・ペロス』で長編デビュー、今回、特殊効果賞以下4賞を受賞した“El más buscado”、キュアロンの息子ホナス・キュアロン(クアロン)の第2作目“Desierto”などに出演している。

 

    

                          (ソフィア・エスピノサ)

 

    

 (ガラの写真が入手できないマルコ・ペレス、映画から)

 

         実在の銀行強盗を描いたミステリアスな人生

 

★タイトルが二転三転したホセ・マヌエル・クラビオトのEl más buscado、特殊効果賞(アレハンドロ・バスケス他)、視覚効果賞(エドガルド・メヒア他)、衣装賞(ヒルダ・ナバロ)、美術賞(バルバラ・エンリケス)の4賞。脱獄を繰り返している実在の銀行強盗アルフレッド・リオス・ガレアナを素材にしている。2006年に撮った短編El charro misteriosoを土台にして出来たのが長編El más buscado”である。IMDbはこちらを採用しているが、最近タイトルをMexican Gangsterに変更した。多分アメリカでの公開を意識しているのかもしれない。『選ばれし少女たち』は実際のテナンシンゴの「ファミリー」に着想を得ているし、Gloria”は実在のモデルがいる。「事実は小説よりも奇なり」と、今後ビオピックが映画界を席巻するのではないかと危惧してしまいます。

 

      

              (“El más buscado”のポスター)

 

600 millas2賞は、助演男優賞(ノエ・エルナンデス)とガブリエル・リプステイン(リプスタイン)の初監督作品賞です。ベルリン映画祭2015「パノラマ」部門の初監督作品賞受賞作品、サンセバスチャン映画祭2015「ホライズンズ・ラティノ」部門ほか、国際映画祭で上映されていた。ノミネーションも14カテゴリーと多く、アカデミー賞メキシコ代表作品でもあったから、もう少し賞に絡むかと思っていましたが残念でした。批評家の評価は高かったのですが、メキシコ公開では期待を裏切る興行成績、両者の乖離が明白になった印象です。メキシコ監督としては『夜の女王』や『大佐に手紙は来ない』など、カンヌ映画祭の常連だったアルトゥーロ・リプステインの息子。プロデューサー、脚本家。『大佐に手紙は来ない』の製作者の一人として映画界入りした。父親も現役ですからライバルです。

 

    

          (トロフィーを手にしたガブリエル・リプステイン)

 

★残念ついでに、ロドリゴ・プラの『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』の脚色賞1個は如何にも寂しい。監督夫人のラウラ・サントゥリョの同名小説の映画化、脚本も彼女が手がけた。ということでオリジナル脚本賞にノミネーションされると考えていました。昨年の東京国際映画祭で上映され、監督とプロデューサーが来日して、Q&Aに出席した。

東京国際FF『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』の記事は、コチラ⇒2015113

 

★栄誉賞にあたる「金のアリエル賞」は、ロシータ・キンテロポール・ルデュク、共にメキシコ映画黄金期のシネアスト二人が受賞した。

 

   

          (体調崩して車椅子で登壇したロシータ・キンタナ)

 

★イベロアメリカ映画賞は、パブロ・トラペロの“El Clan”(アルゼンチン)、セスク・ゲイの“Truman”(スペイン)などを制して、コロンビアのチロ・ゲーラ『大河の抱擁』でした。誰が受賞しても納得のいくノミネーションでした。3作とも既に紹介記事をアップしております。


アレハンドロ・G・イニャリトゥ、アカデミー賞連続監督賞受賞2016年03月02日 15:49

         3人目の連続受賞者となったメキシコ出身監督

 

★下馬評通りだったのかサプライズだったのか知りませんが、アレハンドロ・G・イニャリトゥ2回連続監督賞受賞『レヴェナント 蘇えりし者』)には驚きました。ジョン・フォードとジョセフ・L・マンキーウィッツに次ぐ「3人目」といっても、大昔のことだから記憶を辿れる人は現在では少数派です。後者についてはF・トゥルエバ新作の記事中、「スペインでロケされた」映画『去年の夏 突然に』(59)を紹介したばかりでした。テネシー・ウィリアムズの戯曲の映画化ですね。アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』は、彼の『イヴの総て』(1950All about Eve、監督・脚本賞受賞)へのオマージュとして題名が付けられた話は有名です。昨年の『バードマン』は作品賞・監督賞・脚本賞のトリプル受賞、手は2本しかないから3個同時に持てなかったが、今年は片手で持てます。

 

       

          (お互い1個だから片手で十分です。レオ様と監督)

 

★もっとびっくりするのは、撮影監督のエマニュエル・ルベッキの3回連続受賞ではないでしょうか。こういう事例が過去にあるのかどうか調べる気にはなりませんが。彼もメキシコ出身、「メキシカン黄金時代の到来」は大げさでしょうか。本国メキシコでは「あれはハリウッド映画だから」と、逆に国民は冷めているのかもしれません。海外からの観光客には魅力的な国でも、そこでずっと生きていくのは大変な国ですから。

 

★三度目じゃなく六度目の正直、レオナルド・ディカブリオもやっとオスカー像を手にいたしました。「もう上げるべきだよ」と思ったアカデミー会員が多かったということです。シャーリー・マクレーン同様「遅ずぎました」。マーティン・スコセッシの『アビエイター』(04)で受賞できなかったのが実に不思議でした。1974年ハリウッド生れの41歳、5歳でテレビショーに出演したというから芸歴は長い。個人的には声が高いので好きになれないタイプの俳優、一番好きな映画はラッセ・ハルストレムの『ギルバート・グレイプ』93)、知的障害をもつ少年を演じた。少年役だから高い声が気にならなかったが、実際には20歳に近かった。すごい才能が現れたと思いました。これがアカデミー賞と関わりをもった最初の映画、兄ギルバートを好演したジョニー・デップも評価された。大ヒット『タイタニック』以前の映画のほうが好もしい。大ヒットがアダになって長年苦汁を強いられたが、本作では本当の大人の演技が見られるというわけです。

 

  

     (ヒュー・グラスに扮したディカブリオ、『レヴェナント 蘇えりし者』から)

 

アレハンドロ・G・イニャリトゥは、代表作5作がすべて日本語で鑑賞できる数少ない監督の一人。これを足すと6作になる。メキシコの監督とはいえ母国語のみはデビュー作『アモーレス・ペロス』だけ、このカンヌ映画祭2000での成功がアメリカ行きの切符を可能にしたわけだが、どうやら復路の切符は失くしてしまったらしい。ストーリーは実在した毛皮取りのワナ猟師ヒュー・グラス17801833)を主人公にした伝記小説の映画化。息子を殺された父親の復讐劇の一面をもつ。舞台は19世紀初頭のアメリカ、しかしカナダの雪原で自然光を使って撮影された(劇場公開422日予定)。

 

★外国語映画賞は、ハンガリー映画34年ぶり、2回めの受賞となった『サウルの息子』でした。コロンビア映画(ベネズエラ、アルゼンチン合作)、チノ・ゲーラの『大河の抱擁』は残念でした。しかし「ノミネートに意味がある」と思いたい。エル・デセオが手掛けた『人生スイッチ』が昨年ノミネートされたときのアグスティン・アルモドバルの言葉です。

 

『バードマン』オスカー賞3冠、監督キャリアなどの紹介記事は、コチラ⇒201536