哲学者ミゲル・デ・ウナムノの晩年を描いた”La isla del viento”2016年12月11日 16:12

           ミゲル・デ・ウナムノの謎を解く二つのエポック

 

        

 

★日本でミゲル・デ・ウナムノの認知度がどのくらいあるのか全く見当がつきませんが、スペイン人にとっては「98年世代」を指導した思想家、大学人、作家、詩人、戯曲家、スペイン思想界に大きな足跡を残した「知の巨人」として知られています。複雑すぎる人格のせいかドキュメンタリーはさておき、本作が初のフィクション映画ということです。見る価値はあっても、だからと言って彼の矛盾した人格が解明されたわけではないということです。

Generación del 18981898年の米西戦争の敗北によって、スペインの最後の植民地(キューバ、プエルトリコ、フィリピン)を失ったとき、祖国の後進性を痛感し、近代化の遅れを苦悩しながらも未来を模索した知識人たちをさす名称。その代表的な思想家、作家、詩人は、本作の主人公ミゲル・デ・ウナムノ(1864)を中心にして、詩人アントニオ・マチャード(1875)、作家アソリン(1873)やピオ・バローハ(1872)、バリェ=インクラン(1866)など1860年代から70年代前半に生れており、スペイン内戦前夜の激動の時代、それにつづく戦火の生き証人でもあります。

 

     

 

    La isla del viento(「風の島」)

製作:Mgc Marketing / Mediagrama / Motoneta Cine / 16M. Films

監督・脚本:マヌエル・メンチョン

撮影:アルベルト・D・センテノ

編集:アレハンドロ・ラサロ

音楽:サンティアゴ・ペドロンシニ

プロデューサー:パトリック・ベンコモ、ビクトル・クルス、イグナシオ・モンへ、

ラファエル・アルバレス他

データ:スペイン=アルゼンチン、スペイン語・フランス語、2015年、105分、ビオピック、撮影地カナリア諸島フエルテベントゥラ、ワーキングタイトル「フエルテベントゥラのウナムノ」、マル・デ・プラタ映画祭2015114日)、マラガ映画祭2016423日)、スペイン公開19161118

 

キャスト:ホセ・ルイス・ゴメス(ミゲル・デ・ウナムノ)、ビクトル・クラビホ(ドン・ビクトル主任司祭)、イサベル・プリンス(ドーニャ・コンチャ)、アナ・セレンタノ(デルフィナ・モリーナ)、シロ・ミロ(ホセ・カスタニェイラ)、エネコイス・ノダ(ラモン・カスタニェイラ)、ルス・アルマス(成人カーラ)、スアミラ・ヒル(少女カーラ)、ラウラ・ネグリン(カーラの母)、ハビエル・セムプルン(ミリャン・アストレイ)、ファビアン・アルバレス(共和制の議員ロドリゴ・ソリアノ)他

解説1864年スペイン北部ビスカヤ県の県都ビルバオ生れ、1936年内戦勃発の1936年の大晦日に孤独と失意のうちに亡くなったミゲル・デ・ウナムノの晩年を描いた伝記映画。彼の人生の二つのエポックとなった192419361012日に焦点を合わせている。一つ目は独裁者ミゲル・プリモ・デ・リベラを批判したため政治犯としてカナリア諸島フエルテベントゥラに追放された19243月からフランスの新聞社の協力でパリに脱出するまでの4カ月間、二つ目が19367月にフランコの反乱軍による内戦が始まると反乱軍集会で演説したことで、8月に共和国政府からサラマンカ大学終身総長を罷免される。クライマックスは、1012**にサラマンカ大学講堂での反乱軍集会における軍人ミリャン・アストレイとの対決である。後世に残る名言を残したこの集会でウナムノは反乱軍兵士たちに反戦を説いて自宅軟禁になった。架空の登場人物羊飼いの娘カーラ、自作の『殉教者聖マヌエル・ブエノ』の主人公、彼の分身たるドン・ビクトル主任司祭、実在の豪商ラモン・カスタニェイラ、アルゼンチンの作家デルフィナ・モリーナとの宿命的な愛、フランコの友人にして軍人のミリャン・アストレイとの対決など、虚実を織り交ぜて彼の世界観を変えた二つの時代を軸に、知の巨人の複雑な深層に迫る。

**1012日はコロンブスがアメリカに到達した日、以前「アメリカ発見」と言われた日です。当時は「民族の日Dia de la Raza」といわれ、現在ではスペインのナショナルデーとして祝日になっています。 

     

        (友人同士だったフランコ将軍と軍人ミリャン・アストレイ)

 

★本作に関係の深いミゲル・デ・ウナムノMiguel de Unamuno y Jugoの簡単すぎるアウトライン。1864年ビスカヤ県の県都ビルバオ生れ。マドリード大学(現マドリード・コンプルテンセ大額)文学部で文学、哲学・言語学を学んだ。卒業後故郷に戻りラテン語の代用教員、個人教授、著作に専念、1891年サラマンカ大学のギリシャ語教授試験に合格後はサラマンカに居を移した。1900年には若干35歳にしてサラマンカ大学総長に任命された(以後政権によって罷免と再任を繰り返している)。映画に描かれた1924年の追放からフランス亡命を経て帰国するまでの6年間以外終生サラマンカで暮らした。バスク語、仏・独・伊・英語、ギリシャ語、ラテン語、デンマーク語他、カタルーニャ語などを含む17言語を解したと言われているが、母語はスペイン語である。ウナムノの主な著作をあげるのは難しいがざっくり選んでおきます(法政大学出版局より著作集全5巻が刊行されています)。

 

1905年『ドン・キホーテとサンチョの生涯』(哲学)

1913年『生の悲劇的感情』(哲学)

1914年『霧』(小説)

1921年“La tía Tura”(小説、「トゥーラ叔母さん」)

1930年『殉教者聖マヌエル・ブエノ』(小説)

 

★スペイン内戦終結後を描いた映画として一番日本で観られた映画と言えば、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』(73)にとどめをさすと思います。末期とはいえフランコ時代に撮られた反戦映画の意味も大きい。この中に姉妹の父親の書斎にミゲル・デ・ウナムノの写真と2羽の折り紙の小鳥が登場します。父親がサラマンカ大学でウナムノの教え子であったことを暗示しているわけです。ウナムノは折り紙の名手でLa isla del viento”の中でも羊飼いの少女に小鳥を折ってやるシーンが出てきます。また小説の映画化としては、上記のLa tía Turaが、1963年ミゲル・ピカソによって映画化され、1966『ひとりぼっちの愛情』の邦題で公開された。1984年秋開催の本格的なスペイン映画紹介となった「スペイン映画の史的展望195177」でもエントリーされています。

 

★ミゲル・デ・ウナムノを演じたホセ・ルイス・ゴメスは、1940年ウエルバ生れ、TVドラでデビュー、アルモドバルの『抱擁のかけら』(09)では、若い秘書(ペネロペ・クルス)を金で買った会社社長という情けない役で出演している。しかしオールドファンにはカミロ・ホセ・セラのデビュー作『パスクアル・ドゥアルテの家族』(1942)をリカルド・フランコが映画化した“Pascual Duarte”でしょうか。彼はパスクアルを演じて「カンヌ映画祭1976」の男優賞を受賞しました。 

  

                (サラマンカ大学講堂でスピーチするウナムノ、映画から)

 

    

      (フエルテベントゥラでヒトコブラクダに乗るウナムノ、映画から)

 

     

(ヒトコブラクダに乗っているウナムノ、実写)

 

フエルテベントゥラにドン・ビクトル・サン・マルティンとして登場する主任司祭の人格は、1930年に執筆した小説『殉教者聖マヌエル・ブエノ』の主人公からとられている。ウナムノの「alter ego」分身と思われ、フエルテベントゥラの自然と人々との連帯感のシンボリックな存在のようです。ドン・ビクトルに扮しビクトル・クラビホ1973年カディス生れ、ベルリン映画祭に正式出品されたF・ハビエル・グティエレスのスリラー“Tres días”(08)、ホルヘ・コイラのコメディ『朝食、昼食、そして夕食』(10)、最近ではコルド・セラの「Guernikaゲルニカ」(16)、これはマラガ映画祭2016で作品紹介をしています。

 

   

        (ドン・ビクトリに扮したビクトル・クラビホ、映画から)

 

★同じく前半に登場するデルフィナ・モリーナは実在のアルゼンチンの作家ですが、予告編にあるタンゴを踊るようなシーンはフィクションでしょう。彼女とはフエルテベントゥラと亡命先のパリで2度会っているだけだそうです。モリーナを演じたアナ・セレンタノは、1969年ブエノスアイレス州ラプラタ生れのアルゼンチン女優。エクトル・オリベラの『ミッドナイト・ミッシング』(86)に学生の一人として映画デビュー、マルセロ・ピニェイロのミステリー『木曜日の未亡人』(09DVD)、エクトル・オリベラの“El mural”(10)で銀のコンドル賞助演女優賞を受賞している。 

   

        (デルフィナとウナムノの宿命的な愛をテーマにした著作)

 

★ウナムノと陸軍将官ホセ・ミリャン・アストレイのサラマンカ大学講堂での対決は、音声も残っており、多くの書物に引用されています。1879年ラ・コルーニャ生れ(1954年マドリード没)、スペイン外人部隊の設立者。フランコ将軍の友人で19361012日のウナムノとの対決では、「君たちが勝てても、説得できないだろう」というウナムノに、「死よバンザイ、知性などくたばってしまえ!」、「カタルーニャとバスクは、スペイン国家の二つの癌!」とやり返してウナムノを挑発した人物の一人。彼を演じたハビエル・セムプルンは本作で映画デビューした。

 

  

                 (サラマンカ大学講堂から追い出されるウナムノ、実写)

 

  

 (ウナムノの後方にアストレイがいる同じシーン、映画から)

 

マヌエル・メンチョンManuel Menchonは、監督、脚本家、プロデューサー。本作が長編映画デビュー作、他にドキュメンタリーMalta Radio09)がある。これは20067月、地中海でスペインの漁師によって保護された移民たちの漂流をテーマにしたドキュメンタリー。オビエドやオスロなど海外の映画祭で上映され、エストレマドゥーラ・ドキュメンタリー映画祭で受賞した。マドリード市やカスティーリャ・ラ・マンチャのコミュニティの公共宣伝の仕事、マドリード銀行、レンフェRENFE、イベリア航空とのコラボもしている。

 

 

    (Malta Radioのポスターをバックにしたマヌエル・メンチョン監督)

 

  

         (マヌエル・メンチョン監督と主役のホセ・ルイス・ゴメス)


第3回イベロアメリカ・フェニックス賞ノミネーション発表2016年12月04日 17:36

      Nerudaネルーダ」と『エル・クラン』が同数の9個ノミネーション

 

   

               (2016年のポスター)

 

2014年晩秋、イベロアメリカの「オスカー賞」という触れ込みで始まった映画賞「Los Premios Fénix」も今年で3回めを迎えました。イベロアメリカですからスペイン、ポルトガルも入りますが、どちらかと言うとラテンアメリカ諸国にシフトしています。第2回めの作品賞はパブロ・ララインの『ザ・クラブ』、他に監督賞・脚本賞・男優賞(アルフレッド・カストロ)と大賞を独占、『彷徨える河』のチロ・ゲーラが監督賞をララインと分け合い、その他ダビ・ガジェゴ(撮影賞)・カルロス・ガルシア他(録音賞)・ナスクイ・リナレス(音楽賞)の4賞と、2作品でほぼ決まりでした。 

        

           (イベロアメリカ・フェニックス賞のトロフィー)

 

★スペインはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』が美術デザイン賞(ぺぺ・ドミンゲス)の1賞のみ、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』の衣装賞(ソフィア・ランタン)、サンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』が女優賞(ドロレス・フォンシ)、パトリシオ・グスマンの『真珠のボタン』がドキュメンタリー撮影賞(カテル・ジアン)、ポルトガル語映画では、エドゥアルド・コウチーニョ19332014)の遺作となったUltimas Conversas(ブラジル)がドキュメンタリー賞をとりました。製作途中の20142月に精神を病んでいた息子に刺殺されるという痛ましい事件の犠牲者となりました。というわけで最終的に作品を完成させたのはジョアン・モレイラ・サレス、授賞には長年の彼の功績を讃える意味もあったのではないでしょうか。

 

   

        (左側中段のコウチーニョ監督とインタビューを受けた学生)

 

★さて、2016年は間もなく結果が発表になりますので(127日)、ノミネーションは作品賞と監督賞にして、後は結果が出ましたらアップいたします。

 

作品賞(作品賞のみ7作品)

『エル・クラン』アルゼンチン他、監督パブロ・トラペロ(9個ノミネート)

『彼方から』ベネズエラ他、同ロレンソ・ビガス(4個ノミネート)

Nerudaネルーダ」チリ他、同パブロ・ラライン(9個ノミネート)

Aquariusアクエリアス」ブラジル他、クレベル・メンドンサ・フィリオ(4個ノミネート)

Boi Neon」ブラジル他、ガブリエル・マスカロ(8個ノミネート)

La muerte de Luis XIVルイ14世の死」スペイン他、アルベルト・セラ(4個ノミネート)

Te prometo anarquia」メキシコ他、同フリオ・エルナンデス・コルドン(1個ノミネート)

 

監督賞

パブロ・トラペロ『エル・クラン』

パブロ・ラライン「Nerudaネルーダ」

ガブリエル・マスカロ「Boi Neon

クレベル・メンドンサ・フィリオ「Aquariusアクエリアス」

アルベルト・セラ「La muerte de Luis XIVルイ14世の死」

 

★「Boi Neon」の8個、「Aquariusアクエリアス」の4個とブラジルの健闘が目につく2016年です。黒い不死鳥の卵は誰の手に渡るのでしょうか。開催地メキシコ・シティでは「フェニックス週間」(121日~10日)としてノミネーションされた作品、または過去の受賞作品の上映会のほか、「Boi Neon」(脚本・編集)や『エル・クラン』(編集)、『モンスター・ウィズ・オブ・サウザン・ヘッズ』(脚本)など、各担当者が出席しての討論会も企画されているようです。


『彷徨える河』 チロ・ゲーラ*コロンビア映画2016年12月01日 14:53

          文明と野蛮はラテンアメリカ文化の古典的テーマ

 

★昨年、公開あるいは映画祭上映を期待してアップしたチロ・ゲーラEl abrazo de la serpiente『彷徨える河』の邦題で公開された。カンヌ映画祭のパラレル・セクションである「監督週間」に正式出品した折に、原タイトルで紹介しております。カンヌ以降、世界の映画祭を駆け巡り、2016年の88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるというフィーバーぶり、それで公開されることになったのならアカデミー賞ノミネーションも悪くない。本作は昨年11月、第7回京都ヒストリカ国際映画祭において『大河の抱擁』の邦題で上映されました。まだ公開中ですが、新データを補足して改めて再構成いたします。

作品・監督フィルモグラフィー紹介記事は、コチラ⇒2015524

88回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートの記事は、コチラ⇒2016117

 

              

            (二人のカラマカテを配した英語版ポスター

 

『彷徨える河』(原題“El abrazo de la serpiente”)

製作:Buffalo Producciones / Caracol Televisión / Ciudad Lunar Producciones 他 

監督・脚本:チロ・ゲーラ(カタログ表記シーロ)

脚本(共同):ジャック・トゥールモンド・ビダル

撮影:ダビ・ガジェゴ

音楽:ナスクイ・リナレス

編集:エチエンヌ・ブサック、クリスティナ・ガジェゴ

製作者:クリスティナ・ガジェゴ

 

データ:コロンビア≂ベネズエラ≂アルゼンチン、スペイン語ほか、2015年、アドベンチャー・ミステリー、モノクロ、125分、言語はスペイン語・ドイツ語・英語・ポルトガル語のほかコロンビア、ペルー、ブラジルにおいて話されているクベオ語以下現地語マクナ語、ウイトト語など多数。撮影地はコロンビア南東部のバウペスVaupésの密林ほか多数、撮影期間約50日間。

映画賞・映画祭:カンヌ映画祭「監督週間」アートシネマ賞受賞、第88回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、以下オデッサ、ミュンヘン、リマ、マル・デル・プラタ、インドほか各映画祭で受賞、他にフェニックス賞、アリエル賞(イベロアメリカ部門)、イベロアメリカ・プラチナ賞など映画賞を受賞。2016年にはサンダンス(アルフレッド・P・スローン賞)、ロッテルダム(観客賞)などを受賞している。

 

             (第2回イベロアメリカ・フェニックス賞のトロフィーを手にしたゲーラ監督)

 

キャストニルビオ・トーレス(青年カラマカテ)、アントニオ・ボリバル・サルバドル(老年期のカラマカテ)、ヤン・バイヴート(テオ、テオドール・コッホ=グリュンベルク)、ブリオン・デイビス(エヴァン、リチャード・エヴァンズ・シュルテス)、ヤウエンク・ミゲ(マンドゥカ)、ミゲル・ディオニシオ、ニコラス・カンシノ(救世主・アニゼット)、ルイジ・スシアマンナ(ガスパー)、ほか

 

プロットアマゾン川流液に暮らすシャーマンのカラマカテと、聖なる薬草を求めて40年の時を隔てて訪れてきた二人の白人探検家との遭遇を通して、友好、誠実、信仰、世界観の食い違い、背信などが語られる叙事詩。白人の侵略者によって人間不信に陥ったカラマカテは、自分自身の文明からも離れて一人ジャングルの奥深くに隠棲していた。そんな折、死に瀕したドイツ人民族学者が連れて来られる。一度は治療を断るが、病を治せる幻覚を誘発する聖なる樹木「ヤクルナ」を求めて大河を遡上する決心をする。40年後アメリカ人植物学者がヤクルナを求めて再びカラマカテを訪れてくる。自然と調和して無の存在「チュジャチャキ」になろうとしていた彼の人生は一変する。過去と現在を交錯させ、悠久の大河アマゾンの恵みと畏怖、文明と野蛮、聖と俗、シンクレティズム、異文化ショック、重要なのがラテンアメリカ文化に特徴的な<移動>あるいは〈移行〉が語られることである。

          

                    (瀕死のテオに一時的な治療を施す青年カラマカテ

 

          先住民の視点で描かれた母なる大河アマゾンへの畏怖

 

A: 期待を裏切らない力作、少しばかり人生観というか多様な物差しの必要に迫られました。過去にもアマゾンを舞台にした映画は作られましたが、大体が欧米人の視点で描かれていた。例えばクラウス・キンスキーがアギーレを演じたヴェルナー・ヘルツォークの『アギーレ/神の怒り』(1972,西独)、10年後の『フィツカラルド』、カルロス・サウラの『エル・ドラド』(1988,西仏伊)、こちらはエリセの『エル・スール』で父親を演じたオメロ・アントヌッティがアギーレに扮した。

B: それぞれ力作ですが視点は当然白人側でした。主人公は本作に出てくる二人の探検家同様、アマゾンに魅せられた狂気の人物、この大河は人間を異次元に誘い込む媚薬のようです。

 

A: 主役は、時を隔ててアマゾンを訪れた二人の科学者にして探検家ではない。老年に達したカラマカテのようにも見えますが、生命を宿す母なる大河アマゾンという見方もできます。アマゾンなしでこの映画は成り立たない。

B: 二人の探検家の残した書物や資料が監督にインスピレーションを与えたとしても、それはキッカケでしかない。テオとして登場する最初に訪れたドイツ人テオドール・コッホ=グリュンベルクの視点は先住民に敬意をはらっているが、1940年代初めにアマゾンを訪れたエヴァン、アメリカ人植物学者のリチャード・エヴァンズ・シュルテスは、長生きして数々の功績を残した人物ですが、アマゾン探訪の動機は資本主義的であり、映画でもかなり辛辣に描かれている。

 

A: 本作がフィクションであることを押さえておくことが重要です。2011年から4年をかけて完成させた作品だそうですが、老年のカラマカテを演じたアントニオ・ボリバルの哲学が脚本に強い影響を与えていて、彼との出逢いが成功の決め手だった印象を受けました。ここで監督の名前の表記について触れておくと、カタログはシーロ・ゲーラで表記されていますが、今まで当ブログでは前例に従ってチロ・ゲーラで紹介してきました。

B: シロ・ゲラもあり、どれにするか迷いますね、配給元が今回監督に確認した結果ならシーロ・ゲーラに統一したほうがベターかもしれない。

A: Ciroはペルシャ帝国アケメネス朝の王キュロスから取られた名前、スペイン語ならスィロまたはシーロ、チロはイタリア語読みでしょうか。目下のところは当ブログでは前例に従っておきます。

 

B: そのほか聖なる樹「ヤクルナyakruna」は、実際には存在しない植物のようですね。

A: 映画では白っぽい花を咲かせていましたが、モノクロですし想像上の樹木ですから謎めかしていました。実際にはヤクルナに似た幻覚を誘発する樹木、例えばチャクルナからの連想かもしれない。とにかく本編を通じてヤクルナの美しさは忘れがたいシーンの一つでした。

B: モノクロ映画なのに、何故かカラーだったような印象があります。アマゾン流域の熱帯雨林の緑が目に焼きついて拭えないとか(笑)。

 

    

           (青年カラマカテと聖なる樹木ヤクルナの白い花)

 

A: チュジャチャキchullachaqui」という語は、一種の分身ドッペルゲンガーらしく、語源はケチュア語、感情や記憶をなくした空っぽの無の存在になることのようです。老年に達したカラマカテがアメリカ人植物学者にして探検家のエヴァンに会ったときの状態がチュジャチャキだった。

B: 記憶をなくしていたカラマカテが最後に到達した神々の住む山地を目前にして佇むシーン、これも圧巻でした。

A: カラマカテは最後の「大蛇の抱擁」の儀式をおこなって忽然と消えてしまう。そして一人残されたエヴァンは〈大蛇に抱かれて〉異次元に迷い込むが、目覚めると再び現世に戻ってくる。この大蛇はアマゾンに棲息するというオオアナコンダでしょうか。冒頭の大蛇の出産シーンにもドキリとさせられましたが、本作では大蛇が鍵になっている。題名は自由につけていいのですが、『彷徨える河』では若干違和感があります。

 

    

       (神々の住む山地を目前に呆然と佇む老いたるカラマカテとエヴァン

 

悠久の大河アマゾンに潜む光と闇、侵略者が破壊した先住民文化

 

B: 部分的に挿入されるカプチン派修道士が孤児たちを教育の名のもとに収容する施設での狂気、自称救世主のブラジル人が村を支配する信じがたい事例など、ヨーロッパ人が先住民文化を破壊していくさまを描いている。

A: これは実際に起こった歴史的事実ですし、特別珍しい視点とは思いませんが、まさに文明と野蛮、何が文明で何が野蛮なのかという古典的テーマを、監督としては外すことができなかったのしょうね。

B: コロンビア人でも知らない「コロンビアの現実を知ってもらいたい」という監督の気持ちも理解できますが、やや詰め込みすぎの感無きにしも非ずかな。

 

      

            (救世主の妻の病気を治療する老カラマカテ)

 

A: シンクレティズムの代表者として登場するのが瀕死の状態のドイツ人テオを連れてカラマカテを訪れるスペイン語のできるマンドゥカです。カラマカテのように白人を拒絶して隠棲して生きるか、マンドゥカのように西洋文明を受け入れ融合して生きるか、どちらかの選択を迫られる。

B: マンドゥカはさしずめガイド役、彼の部族もゴム栽培が目的の侵略者に土地を奪われながらも、生き残りをかけて融合の道を選んだ。

A: 大航海時代以降のラテンアメリカ諸国の受難は、概ね金太郎の飴です。欧米人はあたかも新大陸には文明がなかったかのように錯覚していましたから。

B: 豊かな叡智、キリスト教ではないが独自の宗教、神話、文字を持たなくても文明を持たない民族は存在しないということです。これに類した錯覚は大なり小なり現在も続いている。

 

     

                 (マンドゥカとテオ)

 

A: 過去をフラッシュバックさせながら行きつ戻りつしながら大河を遡上していきますが、いわゆるロード・ムービーという印象を受けなかった。

B: カラマカテは前進するのではなく、失った過去の記憶を取り戻そうとしている。未来ではなく過去へ過去へと遡っていく。

A: 彼の望みは大蛇に抱かれてあの世に旅立つこと、ここにあるのは前進ではなく単なる<移動>または〈移行〉であるように見える。この世とあの世は輪になっているから移動するだけである。

 

B: 本作の撮影隊は、プロデューサーのクリスティナ・ガジェゴによると、8000キロも移動したそうですが、よく7週間で撮れましたね。

A: 日本の国土の全長は約3000キロと言われますから、飛行機で飛んだ距離を含めても信じがたい距離です(笑)。クリスティナさんは監督夫人、デビュー作以来二人三脚で映画にのめり込んでいます。

B: 二人の間には二人の男の子がおり、そのタフさには驚きます。

 

   

  (クリスティナ、監督、ドン・アントニオ、ブリオン・デイビス、アカデミー賞ガラにて)

 

A: コロンビアの国土はブラジルに次いで2番めに広い。しかし半分は熱帯雨林、人々はボゴタなど都市部に集中している。なかでも6段階にきっちり決められた階層社会、富裕層に属する6番目は2パーセントにすぎない。

B: 500万を超える国内難民も国境沿いを移動しており、前より良くなったとはいえ治安も悪く、国内での階層間、人種間の対立は解消されていない。

A: 先住民は50万人とも80万人とも資料によって開きがあるが、言語は現在でも65以上にのぼるというが、年々消滅していくでしょう。青年カラマカテを演じたニルビオ・トーレスも部族のクベオ語しかできなかったそうですが、出演をきっかけにスペイン語を学んだ。老カラマカテ役のドン・アントニオは英語ができ現地語の分からないスタッフとの通訳をした由、急速に変化していくのではないか。

 

B: 横道にそれますが、半世紀にわたる左翼ゲリラとの平和合意に達した功績で、現大統領サントス氏の「ノーベル平和賞受賞」のニュースが世界を駆け巡りました。しかし前途多難に変わりはない。

A: ゲリラ側に譲歩しすぎと考える国民は半分を超えています。これが国民投票の結果に現れている。反対の中心は元大統領のウリベ氏、彼は父親をゲリラに殺害されている。個人的恨みで異議を唱えているわけではないが国民の傷口は相当深い。

 

B: 催眠術にかかってしまった2時間でしたが、鑑賞をお薦めできる作品でした。音楽、撮影については、もう観ていただくのが一番です。

A: 前回アップした監督キャリア紹介、実在した二人の学者のアウトラインを若干補足して再録しておきます。ご参考にして下さい。

 

 

チロ・ゲーラCiro Guerraは、1981年セサル州リオ・デ・オロ生れ、監督・脚本家。コロンビア国立大学の映画テレビを専攻する。1998年、同窓生のクリスティナ・ガジェゴ1978年ボゴタ生れ)と制作会社「Ciudad Lunar Producciones」を設立する。長編デビュー作La sombra del caminante2004)は、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭2005で観客賞を受賞。第2Los viajes del viento2009)はカンヌ映画祭「ある視点」に正式出品、ローマ市賞を受賞後、多くの国際映画祭で上映された。ボゴタ映画祭2009監督賞、カルタヘナ映画祭2010作品賞・監督賞及びサンセバスチャン映画祭2010スペイン語映画賞、サンタバルバラ映画祭「新しいビジョン」賞などを受賞した。

 

★本作が第3作目になり、いずれもアカデミー賞コロンビア代表作品に選出されている。上記の映画賞のうち第3イベロアメリカ・プラチナ賞では、作品賞・監督賞以下7部門を制している。現在ピーター・ライニーの著書をベースにしたThe Detainee(政治的抑留者の意)と、北コロンビアのグアヒラ砂漠を舞台にしたBirds of Passage2本が2018年の完成を目指して進行中である。

3イベロアメリカ・プラチナ賞の記事は、コチラ⇒2016731

なお2作目Los viajes del viento『風の旅』の邦題でセルバンテス文化センターにて上映が予定されている(123日)


テオドール・コッホグリュンベルクTheodor Koch-Grünberg18721924)は、ドイツのグリュンベルク生れ、20世紀の初め南米熱帯低地を踏査した民族学者。テオのモデルとなった。第1回目(190305)がアマゾン河流域北西部のベネズエラと国境を接するジャプラYapuraとネグロ川上流域の探検をおこない、地理、先住民の言語などを収集、報告書としてまとめた。第2回目は(191113)ブラジルとベネズエラの国境近くブランコ川、オリノコ川上流域、ベネズエラのロライマ山まで踏査し、先住民の言語、宗教、神話や伝説を詳細に調査し写真も持ち帰った。ドイツに帰国して「ロライマからオリノコへ」を1917年に上梓した。1924年、アメリカのハミルトン・ライス他と研究調査団を組みブラジルのブランコ川中流域を踏査中マラリアに罹り死去。 

      

リチャード・エヴァンズ・シュルテスRichard Evans Schultes19152001)は、マサチューセッツ州ボストン生れ、ハーバード大学卒の米国の生物学、民族植物学の創始者。エヴァンのモデルとなった。大学卒業後、戦時中の1941年にゴムノキ標本採集をアメリカ政府から要請され、初めてアマゾン河高地を踏査している。長い滞在で映画にも出てきたマクナ語、ウイトト語などの現地語を理解した。幻覚性植物の研究者としても知られ、著書『図説快楽植物大全』が2007年に東洋書林から刊行されている。

  

サンティアゴ・セグラ「金のメダル」授賞式2016年11月23日 12:11

       「トレンテVI」を撮るかどうかはトランプ次期大統領次第?

 

★スペイン映画アカデミー新会長イボンヌ・ブレイクは、「今日はあなたにとって素晴らしい一日になるでしょう。映画アカデミーはこのメダルをあなたに渡せることを誇りに思います」と挨拶、「金のメダル」がサンティアゴ・セグラの手に渡りました。受賞の発表は半年前の4月半ば、決定したときの会長は短命に終わったアントニオ・レシネス執行部でした。授賞式の夕べはアカデミー会員や友人を交えてリッツで開催されました(1118日)。サンティアゴ・セグラのキャリアと毎回高い興行成績でスペイン映画の窮地を救ってきた「トレンテ・シリーズ」の作品紹介は既にアップ済みです。主人公の悪徳警官ホセ・ルイス・トレンテを演じるために体重を20キロ増量して、太ったり痩せたりはきついのか、「トレンテ6」を撮るかどうかはトランプ次期アメリカ大統領次第と記者団を煙に巻いておりました。

 

         

                  (メダルを手に現在は痩せているサンティアゴ・セグラ)

 

メダルの正式名は、Medalla de Oro de la Academia de las Artes y las Ciencias Cinematográficas de España と長く、通称金のメダルです。スペイン映画アカデミーが選考、受賞対象者は、製作者、監督、脚本家、俳優、音楽家、撮影者などオール・シネアスト。「スペイン映画における多方面にわたる全功績に対して」贈られる。

 

 

20キロ増量した第1作“Torrente, el brazo tonto de la ley”のジャケット)

 

サンティアゴ・セグラは、1965年マドリード生れ、俳優、脚本家、監督、製作者。メダルを手に記者団の質問にはユーモアを交えて言葉巧みに応じていたようです。「自分の性格はふさぎ込むタイプ、これはあまり知られていない部分かも知れない。以前の受賞者と比較して、メダルが自分に値するかどうかわからないが、とても誇りに思っている。実際に生きる力になると感じているし、今夜はとても感動している」、「前進しつづけるためのガソリンになった」と。

 

★「私たちシネアストも他の労働者と同じように暮らしは大変だ。時々砂漠の真ん中で叫んでいるのにうんざりしてくる、何時かそれに気づくと思う。トランプはどう思うかだって、メダル受賞の投票からも分かるようにデモクラシーは不完全だ。今は彼が選挙で約束した政策を守らない他の政治家と同じようになることを期待している。映画アカデミー会長は? それはない。首相はどうかだって・・・ねえ、昨日トランプのニュースを見ていて考えたのだが、皆んな今の政治に飽き飽きしているんだよ。「トレンテ6」を撮るかどうかはトランプ次第、もし世の中ひっくり返ったら映画は作れない」。TPPには参加しないと言って、日本政府は慌てているけど・・・

 

今後の予定 アルゼンチンでダニエル・ブルマンのTVミニシリーズSupermaxに出演する。共演者はセシリア・ロス、ハバナ生れだがスペインで活躍するルベン・コルターダなど。他に映画を2本、ガブリエル・ナスシCasi leyenda(アルゼンチン、17)とフェデリコ・クエバのアクション・コメディSólo se vive una vez(アルゼンチン=西、17)をブエノスアイレスで撮影する。「アルゼンチンで自分が好まれているかどうか知らない。シリーズ『トレンテ』は未公開だが、海賊版がスタンドに出回っており、自分も贈呈され持っている。アクセントは耐えられないが同じ言語だからね。映画産業も御多分にもれずグロバリゼーションだね」。撮影終了後、帰国して大晦日のTVバラエティ番組「Fin de Año」の司会をする予定、なかなかもって忙しい。

 

  

                  (“Supermax”撮影中のサンティアゴ・セグラとダニエル・ブルマン監督)

  

★「ゴヤ賞は、短編映画賞新人男優賞新人監督賞3個持っているが、健康に恵まれ今後も仕事が続けられるなら、そのうち栄誉賞がもらえるかも」。「金のメダル」のあと狙うのはゴヤ栄誉賞のようです。

 

「金のメダル」、サンティアゴ・セグラのキャリア&作品紹介は、コチラ⇒2016611

 

『名誉市民』がバジャドリード映画祭「銀の穂」賞を受賞2016年11月15日 11:18

      グランプリ「金の穂」賞はパオロ・ヴィルツィの“La pazza gioia

 

  

          (小麦の穂をあしらった「金の穂」賞のトロフィー)

 

1029日に閉幕したバジャドリード映画祭のグランプリ「金の穂Espigas de Oro」賞は、パオロ・ヴィルツィの“La pazza gioia”(“Like Crazy”、仏伊合作)でした。この映画祭は、スペインではバジャドリード映画祭より“Semana Internacional de Cine de Valladolid”の頭文字Seminciで親しまれています。春開催のマラガ映画祭のようにスペイン語映画に特化しているわけではなく、第1回が1956年と歴史も古く、今年で61回を数える国際映画祭、バジャドリード市が後援しています。ただどちらかというとヨーロッパが中心の印象があるかもしれませんが、昨年は河瀬直美監督が『あん』で監督賞を受賞しています。今年は『名誉市民』が「銀の穂」賞を受賞したのでアップしました。

 

★東京国際映画祭と同じ10月下旬の映画祭なので、受賞作はほぼどこかの映画祭の受賞作と重なることが多い。スペインではサンセバスチャン映画祭に次ぐ老舗の映画祭ですが、日本ではバルセロナ近郊シッチェスで開催される後発の「ファンタジック映画祭」のほうが有名です。今年の審査委員長は、チリの若手監督、脚本家にして製作者のマティアス・ビセ、スペインの女優、現在は監督にシフトしているシルビア・ムント、他フランス、インド、イタリア、メキシコの6人編成でした。マティアス・ビセは1979年生れの37歳、“La vida de los peces”がゴヤ賞2011イスパノアメリカ映画賞を受賞しています。

 

★「金の穂」賞受賞のパオロ・ヴィルツィLa pazza gioiaは、他に二人の主演女優、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキミカエラ・ラマゾッティが女優賞を受賞しました。精神病院に入院している二人の女性の、不思議な絆で結ばれた、常軌を逸した悦楽が語られるようです。いずれ公開されると思います。本作はカンヌ映画祭と並行して開催される「監督週間」に出品された作品です。 

  

 

 

  (左から、ミカエラ・ラマゾッティ、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、監督)

 

★当ブログでご紹介したガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』は、「銀の穂」賞脚本賞2賞、「金」には手が届きませんでしたが善戦しました。ベネチア映画祭で男優賞を手にしたオスカル・マルティネスは受賞ならず残念でした。

 

   

 

★カテゴリーは他の映画祭と同じです。「栄誉賞」ジェラルディン・チャップリンチェマ・プラドに与えられました。前者のご紹介は不要でしょうが、チェマ・プラドは、国際フィルム・アーカイヴ連盟のメンバー、スペインのフィルム・ライブラリー(Filmoteca Española)のディレクターを1989年より26年間務め、今年4月に引退、同時にスペイン映画の回復保存に尽力した全功績に対して「パノラマ賞」を受賞しています。スペイン映画界を陰で支えてきた裏方に「栄誉賞」が渡ったことを喜びたい。

 

   

      (栄誉賞を受賞したジェラルディン・チャップリンとチェマ・プラド)

  

アルモドバル『ジュリエッタ』*ヨーロッパ映画賞2016ノミネーション発表2016年11月08日 10:21

        作品賞、監督賞、2人のジュリエッタが女優賞候補に

 

アルモドバルの新作『ジュリエッタ』が劇場公開された同じ日に、第29回ヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表されました。作品賞監督賞2人のジュリエッタに扮したエンマ・スアレスアドリアナ・ウガルテがユニットで女優賞観客賞4個です。アルモドバルはヨーロッパ映画賞のご常連、今回は多分貰えないと予想しますが蓋を開けてみないと分かりません。女優賞の2人は初ノミネート、かなり混戦状態ですが、こちらはアリかも知れません。他にハビエル・カマラがセスク・ゲイの“Truman”(「トルーマン」)で男優賞にノミネートされています。ハビエルはアルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』以来2回め、男優賞は異例の6人が残った。しかし、顔ぶれからみると、受賞は厳しそうです。

 

    

       (エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテ、『ジュリエッタ』から)

 

  

      (左から、ハビエル・カマラ、リカルド・ダリン、「トルーマン」から)

 

★対抗馬としては、カンヌ映画祭2016コンペティション作品がそのままノミネーションされているかの印象です。つまりケン・ローチI, Daniel Blake(パルムドール受賞)、ポール・ヴァーホーヴェンElleマーレン・アーデToni Erdmann(「トニ・エルトマン」)、本作は「ドイツ久々の大物監督誕生」と話題をさらいながらコンペでは無冠に終わり、カンヌでは物議を醸したのでした。サンセバスチャン映画祭でFIPRESCI(国際映画批評家連盟賞)を受賞しています。映画祭と映画賞は性質が違い、特に映画祭は審査委員長の意向に左右されるから、今回は無冠ということにはならないと予想します。最多ノミネーション5個(作品、監督、脚本、女優サンドラ・フラー、男優ペーター・シモニシェック)、どれか一つくらい受賞するのではないでしょうか。というのも観たい作品だからです。アルモドバルやケン・ローチでは新鮮味がないなどという理由ではありません(笑)。残るレニー・アブラハムソン(エイブラハムソン)『ルーム』のみが2015年作品、すでに劇場公開されています。

 

    

   (娘サンドラ・フラーと父親ペーター・シモニシェック、“Toni Erdmann”から)

 

★アルモドバルの第20作目になる『ジュリエッタ』は、愛してやまない者の喪失がテーマのドラマ、スリラー的要素もありそうですが、アクション好きな人にはお薦めでない。居眠りしてしまうかもしれない。他のカテゴリーでは、長編アニメーション1作、短編2作が残りました。結果発表は1210日、ポーランド西部の古都ヴロツワフで授賞式が行われる。

 

公開2016115日、新宿ピカデリー他、順次全国ロードショー展開


ゴヤ賞「栄誉賞」はアナ・ベレン*ゴヤ賞2017 ①2016年11月04日 14:29

           女優、歌手アナ・ベレンの全功績を讃えて栄誉賞

 

    

 

★ゴヤ賞「栄誉賞」のニュースが入ると、もう一年経ってしまったのかと時の速さにがっくりする。今年はスペイン映画アカデミー会長空席にもかかわらず、9月初めに発表がありました。アナ・ベレン受賞は満場一致だったそうです。イボンヌ・ブレイク新会長の最初の大仕事がゴヤ賞2017の授賞式です。

 

   

     (舞台でメデアを演じたアナ・ベレン、セネカの『メデア』から、201516

 

アナ・ベレン1951、マドリード、65歳)の全業績を紹介するとなると、これはなかなか簡単にはすまない。映画出演40作、舞台は古典から現代劇まで30作、ディスコは35作に及ぶ。196514歳で子役としてデビューしたからキャリアは半世紀を超えました。歌手、舞台俳優、TVドラマ、1作ながら監督もしている。TVドラの当り役は、ベニート・ペレス・ガルドスの長編小説『フォルトゥナータとハシンタ』をドラマ化したFortunata y Jacinta1980)、ベレンはフォルトゥナータに扮した。

 

 

(ニューヨークで誕生した初の女性ファッション誌「ハーパーズ・バザー」のために、

モデルのようにポーズをとる少女時代のアナ・ベレン)

 

★映画は後述するとして、今世紀に入ってからは出演が少ないが、最新作はフェルナンド・トゥルエバのLa reina de Españaが、20161125日にスペインで公開される。ペネロペ・クルス主演の『美しき虜』(1998La niña de tus ojos”)の続編、出番は少なそうです。当ブログでも紹介記事をアップしておりますが、いずれ記事にしたい映画です。というわけで女優というより歌手としての活躍が目立っているかもしれない。ステージはYOUTUBEで簡単に愉しむことができます。2015年にラテン部門のグラミー賞を受賞している。他に20165月下旬Desde mi libertadを公刊して話題になりました。

La reina de España”の紹介記事は、コチラ⇒2016228

 

★才色兼備が彼女ほどぴったりくる人は少ないのではないか。彼女の魅力はなんといっても加齢を感じさせない妖しいまでの美声、意志の強い眼光、細身ながらエネルギーあふれるルックスにありますね。スペイン映画にはどうしても欠かせない「顔と声」であり続けています。1972年に作曲家で歌手のビクトル・マヌエルと結婚(11女)、その二人三脚ぶりはつとに有名、パパラッチとの攻防にも怯まず、多分金婚式までいくでしょう。祖母として二人の孫との新しい人生を楽しんでいる。「祖父母の役目は孫を甘やかすことに存在意義がある。躾や教育するのは両親の役目、私たち夫婦もそうしてきた」ときっぱり。

 

1989年東京で開催された「第2回スペイン映画祭」に夫婦で来日しています。ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスの『神の言葉』1987)がエントリーされたからです。バリェ=インクランの同名戯曲Divinas palabrasの映画化でした。政治的発言にも躊躇しない。2003年にはイラク戦争反対を表明、雪解けムードで話題になっているキューバ政府の人権問題「私はキューバ政府を告発する」にも署名をしています。これは2010年にあったキューバの反体制政治犯の無条件即時解放を求めてオルランド・サパタが行った断食事件、85日後に死亡したことに対する抗議でした。スペインからもアルモドバル、マヌエル=ベレン夫妻、作家ではフェルナンド・サバテル、エルビラ・リンド、フアン・マルセ、ソエ・バルデス、国籍を取得したバルガス=リョサなどが署名、最終的にはトータルで約6千人が署名した。

   

 

 (イラク戦争反対の抗議デモに参加したビクトル・マヌエル=アナ・ベレン夫妻、2003年)

 

★ゴヤ賞授賞式までにシネアスト・キャリアは後述しますが、ゴヤ賞関連では主演女優賞4新人監督賞、合計5回ノミネーションされましたが、無冠に終わっていました。というわけで初のゴヤ賞受賞が「栄誉賞」になります。ノミネーションは以下の通り、年代順:

1988Miss Caribe”監督フェルナンド・コロモ、主演女優賞

1989El vuelo de la paloma”同ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェス、 主演女優賞

1991Cómo ser mujer y no morir en el intento 新人監督賞

1994La pasión turca”同ビセンテ・アランダ(VHSタイトル『悦楽の果て』 主演女優賞

2004Cosas que hacen que la vida valga la pena”同マヌエル・ゴメス・ペレイラ、 主演女優賞

2017「栄誉賞」受賞

 

  

        (ベリー・ダンスを披露したアナ・ベレン、『悦楽の果て』から)

 

★公開作品は、マリオ・カムスの『ベルナルダ・アルバの家』87,原作ロルカ)1作だけでしょうか。未公開だがNHK衛星が放映したビセンテ・アランダの『リベルタリアス/自由への道』96)、マヌエル・ゴメス・ペレイラの『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』96VHSDVD)くらいしかない。以上が代表作というわけではないので、ガラが近づいたらアップする予定です。

  

スペイン映画アカデミー新会長にイボンヌ・ブレイク2016年10月29日 17:22

         衣装デザイナーのイボンヌ・ブレイクが選出されました

 

★前会長アントニオ・レシネスの辞任に伴い、714日以来会長代理を務めていたイボンヌ・ブレイクが第15代会長に選出されました(1018日)。副会長に監督・脚本家のマリアノ・バロッソと女優のノラ・ナバス、立候補は3人セットで臨むのが原則です。対抗馬なしの選挙でしたから信認投票ですね。オンラインと郵送での選挙、アカデミー会員約1200人のうち投票したのは248人、その内訳は、賛成193票、反対50票、白票3、無効票2でした。どうやらバルセロナ派で固めたようで、反対票50はこれを反映しているのでしょう。投票率も最低なら、これでは今後が思いやられます。大勢は「どうでもいいや」でしょうが、ゴヤ賞投票と同じように、会員登録していても会費が滞っていると選挙権がないのかもしれません。

 

    

    (イボンヌ・ブレイクを中央にノラ・ナバスとマリアノ・バロッソ、9月末)

 

★スペインは政治も混迷していましたが、やっと社労党PSOEが国民党PPのラホイ首相の正式選出を容認しました。PSOEはラホイ続投に反対しておりましたが、年末に予定されていた3度めの総選挙を回避すべきという決定になったようです。つまり国会での信認投票には棄権するということです。国家もアカデミーも混迷続き、どちらも任期を全うできるでしょうか。特にアカデミーは問題山積、どこから着手すべきでしょうか。「アカデミーは映画に携わる総ての人々のための団体であるべきです。私たちの映画を守り発展させるためにしなければならないことが山ほどある」とブレイク新会長。

 

イボンヌ・ブレイクYvonne Blake1940年マンチェスター生れ)、イギリス系スペイン人(国籍はスペイン)の衣装デザイナー(生年は19381941と諸説あり、スペイン版ウィキペディア40によった)。英米合作映画フランクリン・J・シャフナーの大長編歴史ドラマ、ロマノフ家滅亡を描いた『ニコライとアレクサンドラ』71)で第44回アカデミー賞「衣装デザイン賞」を受賞した。他、『ロビンとマリリン』(76)、『スーパーマン』(78)、『宮廷画家ゴヤは見た』(06)など代表作が英米映画に特化していることが反対票の理由の一つかもしれない。スペイン映画では、ゴヤ賞4個(ホセ・ルイス・ガルシの“”ビセンテ・アランダの『カルメン』03など)、2012年に映画国民賞を受賞、これは女優以外の女性受賞者としてはは初めて。

 

   

                 (イボンヌ・ブレイク)

 

★副会長のマリアノ・バロッソは、1959年バルセロナ生れ、監督、脚本家、製作者。アメリカン・フィルム・インスティチュートとサンダンス・インスティチュートで映画演出を、テアトロ・エスパニョール・マドリード他で舞台演出を学ぶ。1993Mi hermano del almaゴヤ賞新人監督賞を受賞、ベルリン映画祭出品、サン・ジョルディ賞、カルロヴィ・ヴァリ映画祭金賞を受賞する。他の代表作はハビエル・バルデム、フェデリコ・ルッピを主役に据えたExtasis95)がベルリン、ロンドン、ワシントン各映画祭に出品された。2005Hormigas en la bocaでマラガ映画祭審査員特別賞、2007年、国境なき医師団の活躍を追ったドキュメンタリーInvisiblesをハビエル・バルデムなどと製作、ゴヤ賞ドキュメンタリー賞を受賞、2010年に放映された人気TVドラ・シリーズTodas las mujeres(脚本を執筆)を、2013年に映画化、ゴヤ賞脚色賞他を受賞した。舞台演出でも活躍している。

 

   

               (マリアノ・バロッソ)

 

   

    (中央が主人公エドゥアルド・フェルナンデス、映画“Todas las mujeres”から)

 

★同副会長ノラ・ナバスは、主にバルセロナ派の監督作品に出演、日本公開作品では、アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』の母親役でサンセバスチャン映画祭2010(銀貝)女優賞、ゴヤ賞2011主演女優賞を受賞、前回アップした『名誉市民』では、ノーベル賞作家ダニエルの秘書役で映画冒頭に登場していました。当ブログにもしばしば登場してもらっているバルセロナ派のベテランです。

 

 

     (ノラ・ナバス、『ブラック・ブレッド』から)


エドゥアルド・フェルナンデスが男優賞*サンセバスチャン映画祭2016 ⑮2016年09月26日 11:22

     この日を待っていた『スモーク・アンド・ミラーズ』の主役フェルナンデス

 

       

             (映画祭メイン会場のクルサール劇場)

 

★今年のラテンビートの目玉『スモーク・アンド・ミラーズ』の主役エドゥアルド・フェルナンデス男優賞(銀貝賞)を受賞しました(作品賞以外はすべて銀貝賞)。ということは来年のゴヤ賞を期待していいということです。長年連れ添った妻と離婚したばかり、ガラで隣に座っていたのは愛娘、留学しているロンドンから駆けつけたようです。アルベルト・ロドリゲスの監督賞は残念ながら「二度あることは三度ある」になってしまいました。2年前の『マーシュランド』のハビエル・グティエレス男優賞受賞と同じ結果になり、道のりは険しいです。ただ「FEROZ Zinemaldia」(フェロス映画祭賞)を受賞しました。

『スモーク・アンド・ミラーズ』の記事は、コチラ⇒2016924

  

 

     (トロフィーを手に喜びのエドゥアルド・フェルナンデス)

 

金貝賞(作品賞)は中国のフォン・シャオガンI’m not Madame Bovaryでした。こんな慎み深い控えめな作品が受賞すると予想した人がいたでしょうか。ヒロインファン・ビンビンの好感度が大きいというわけで、彼女の女優賞受賞は納得のようでした。監督賞には韓国のホン・サンスYourself and yoursが受賞、これまた受賞を言い当てた人は少数派だった。鑑賞には辛抱強さが必要と、口さがないシネマニアはチクリ。しかし西洋人の東洋人蔑視などと深刻に考えないことです。

 

審査員特別賞はスウェーデンとアルゼンチンの2作品が分け合いました。アルゼンチンのエミリアノ・トレスのデビュー作El inviernoは、ラミロ・シビタ撮影賞も受賞しました。パタゴニアを舞台にして仕事を取り合う老若二人(アレハンドロ・シエベキング、クリスチャン・サルゲロ)の物語。時間切れでアップできませんでしたが撮影賞はあるかもと予想していました。しかし審査員特別賞を受賞するとは思いませんでした。

 

 

   (主演の二人に挟まれたエミリアノ・トレス監督、サンセバスチャン映画祭にて)

 

(撮影賞のラミロ・シビタ)

        

 

 

 (クリスチャン・サルゲロ、背後に見えるのが監督)

 

脚本賞は、ロドリーゴ・ソロゴイェンの第3Que Dios nos perdone、監督とイサベル・ペーニャの共同執筆。これまた脚本賞を受賞するとは思いませんでした。

Que Dios nos perdone”の記事は、コチラ⇒2016811

 

   

          (ロドリーゴ・ソロゴイェンとイサベル・ペーニャ)

 

ホライズンズ・ラティノグランプリは、受賞はないだろうと割愛したペパ・サン・マルティンRara(チリ他)でした。他にスペシャル・メンションがアナ・クリスティナ・バランガンAlba(エクアドル他)、スペイン協力賞にエリアネ・カッフェHotel Cambrige(ブラジル他)、キロ・ルッソViejo calavera(ボリビア他)でした。13本中割愛した3本のなかに2本も含まれているとは、今年は外れまくって的中率がすこぶる悪い。十人十色、テイストが合わなかったことにしておきます。

アナ・クリスティナ・バランガン“Alba”の記事は、コチラ⇒201699

キロ・ルッソの“Viejo calavera”記事は、コチラ⇒201696

 

 

            (グランプリ受賞のペパ・サン・マルティン)

 

              特別栄誉賞

★授賞式がサンセバスチャン映画祭と決っている「映画国民賞」のアンヘラ・モリーナ、ゴヤ賞とは比較にならない重さがある賞です。「国民賞」は文学、科学などさまざまな分野で活躍する人にそれぞれ与えられる。授賞式ではメンデス・デ・ビゴ文部大臣と”Más cine por favor”をデュエットとして会場を沸かせた。「映画、映画、映画、もっと映画、人生は映画です」と。

 

    

               (アンヘラ・モリーナ、916日)

 

★サンセバスチャン映画祭のドノスティア栄誉賞は、米国のシガニー・ウィーバーとイーサン・ホーク、二人は別々の日にトロフィーを受け取りました。それにしてもシガニーの背の高さには目を見張ります。プレゼンターのフアン・アントニオ・バヨナは彼女の肩あたり、最も彼はスペイン人としても小柄ですが。彼の“A Monster Calls”(「怪物はささやく」)はSIGNIS特別メンションを受賞しました。そう言えば彼は、2012年の映画国民賞の最年少受賞者、『インポッシブル』の貢献が認められたのでした。

 

   

              (シガニー・ウィーバー、923日)

 

イーサン・ホークは、ビジネスマンらしく新作『マグニフィセント・セブン』のプロモーションを怠りませんでした。「この映画はドナルド・トランプも気に入るだろう」と冗談を飛ばしていました。昨年アメナバルの“Regression”(“Regresión”)がオープニング上映されたからスペインでの知名度は結構あります。

 

(イーサン・ホーク、917日)

     

    

 ★「ラテンシネマ・ジャガー・ルクルト賞」受賞のガエル・ガルシア・ベルナル、第1回の栄誉に浴しました。 

(ガエル・ガルシア・ベルナル)

   

 ★「ZINEMIRA」受賞者ラモン・バレア1949年ビルバオ生れ)、俳優、監督、戯曲家、製作者。この賞はバスク映画に貢献した人に与えられる賞。本人は欠席、代理が受け取りました。当ブログでは、ボルハ・コベアガのバスク・コメディ“Negociador”でご紹介しています。ラモン・バレア扮する交渉人マヌ・アラングレンには実在のモデルがいます。法学者で政治家、現在はバスク大学法学部で教鞭をとっているヘスス・マリア・エギグレン(1954年ギプスコア)。舞台背景となる200506年にはバスク社会党(PSE-EE)の党員だった。交渉は不発に終わったのだが「平和を取り戻そうとする」エギグレンの熱意がETAを終わらせたと評価されている。

 

               

                            (代理が受け取った授賞式) 


アンヘラ・モリーナの記事は、コチラ⇒2016728

シガニー・ウィーバーの記事は、コチラ⇒2016722

イーサン・ホークの記事は、コチラ⇒2016912

ガエル・ガルシア・ベルナルの記事は、コチラ⇒2016916

ラモン・バレアの記事は、コチラ⇒2015111

 

アルモドバルの新作11月公開*「フリエタ」でなく『ジュリエッタ』2016年09月03日 18:24

          危惧した通りの邦題「ジュリエッタ」になりした!

 

  

 ★サンセバスチャン映画祭に関する記事はちょっとお休みして、映画新情報を幾つかアップします。まずアルモドバルの新作Julieta(“Silencio”が途中で改題)が『ジュリエッタ』の邦題で115日に公開されます。危惧した通り「フリエタ」ではなく「ジュリエッタ」になりました。作中で「フリエタ」と呼ばれるシーンが出てくる度に、観客は「ジュリエッタ」という字幕を見るというわけです。スペイン語話者はスペイン、南北アメリカ、赤道ギニア、20カ国42000万人以上に上り、国際会議においては英語、仏語、露語、中国語、アラビア語と並ぶ6つの公用語の1つです。配給会社の関係者が考えるほどマイナー言語ではありません(配給元はブロードメディア・スタジオ)。

 

★当ブログでは既に「フリエタ」でご紹介しております。尚現在のフリエタを演じる女優名は公式サイトではエマ・スアレスですが、過去の「スペイン映画祭」ではエンマ・スアレス、こちらでご紹介しております。30年前のフリエタを演じるアドリアーナ・ウガルテはアドリアナ長音ナシのご紹介です。長音を入れるかどうかは好みの問題という立場をとっております。例年10月に開催される「ラテンビート2016で多分先行上映会されるのではないでしょうか。

 

トロント映画祭2016マスターズ部門ノミネーション、第29ヨーロッパ映画賞2016オフィシャル部門、及び観客賞選考対象作品にノミネーションされています。アカデミー賞外国語映画賞2017のスペイン代表作品に“El olivo”(イシアル・ボリャイン)と“La novia”(パウラ・オルティス)、それに『ジュリエッタ』がアナウンスされています。アルモドバルは『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(88ノミネート)、『ハイヒール』(91落選)、『私の秘密の花』(95落選)、『オール・アバウト・マイ・マザー』99年受賞)、『ボルベール』(06最終選考)に続いて6度め、間もなく発表になります。

  

     

       (公開に合わせてイギリス入りしたアルモドバル、2016810日)

 

エマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテのキャリア紹介記事は、コチラ⇒201545

アルモドバル、主な作品紹介の記事は、コチラ⇒2016219201658

 

 

      ベネチアとトロントにノミネートされたラウル・アレバロのデビュー作

 

   

ラウル・アレバロのスリラーTarde para la ira(“The Fury ob a Patient Man”)は、ベネチア映画祭の「オリッゾンティ部門」に続いて、トロント映画祭の「ディスカバリー部門」にノミネーションされました。「俳優になったのは監督になる足掛かりをつくるため」と語っていたアレバロ監督、名優にして名監督、フェルナンド・フェルナン・ゴメスの有名な言葉「多くの人は、一介の俳優が監督するなんて、と驚くが少しも驚くことじゃない。監督したくない人なんていない」を引用して、「これは自然なことなのだ!」とベネチア出発直前のインタビューに応えていました。

 

★日本デビューはダニエル・サンチェス・アレバロ監督のデビュー作『漆黒のような深い青』06、ラテンビート2007上映)、アルモドバル作品の常連さん、最近ではアルベルト・ロドリゲスのスリラー仕立ての社会派映画『マーシュランド』が記憶に新しい。

 

  

       (アレバロ監督、マドリードのデボド寺院公園にて、20168月)

 

★盟友アントニオ・デ・ラ・トーレ、ルイス・カジェホのプロ以外に、母親、伯母さん、兄弟、デ・ラ・トーレの娘さん、町を上げての協力のお陰で〈監督デビュー〉できました。それが三大映画祭の一つベネチアへ、米国市場への一番の近道トロントへ、さらに99日スペイン公開も決定しました。

監督&作品の記事は、コチラ⇒2016226

ベネチア映画祭2016の記事は、コチラ⇒201684

 

 

     ヨーロッパ映画祭賞2016オフィシャル部門出品作品

 

『ジュリエッタ』2016、アルモドバル、上記割愛

 

El olivo2016、イシアル・ボリャイン 

マイアミ、シアトル、エジンバラ、各映画祭2016出品、ブリュッセル映画祭観客賞受賞、ほか

作品&監督フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2016719

 

 

Truman2015、セスク・ゲイ

サンセバスチャン映画祭2015オフィシャル部門、男優賞受賞(リカルド・ダリン、ハビエル・カマラ)、ゴヤ賞2016作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞・助演男優賞受賞、ほか

作品&監督フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒201619

 

 

Mimosas2016、オリヴェル・ラセ

カンヌ映画祭2016のパラレル・セクション「批評家週間」のグランプリ作品、トロント映画祭2016Wavelengths部門」出品、ほか

紹介記事は、コチラ⇒2016522