アカデミー賞外国語映画プレセレクションにコロンビア代表作品が選ばれた2015年12月19日 15:54

     チロ・ゲーラの新作“El abrazo de la serpiente

 

★ゴヤ賞2016イベロアメリカ映画賞にもノミネーションされず、チロ・ゲーラの不運を嘆いておりましたが、アカデミー賞プレセレクション9作品の仲間入りを果たしました(英題Embrace of the Serpent”)。製作国は他にベネズエラとアルゼンチンが参加しています。後者のパブロ・トラペロの「ザ・クラン」は落選、アルゼンチンは昨年ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』が選ばれたので可能性は低かったかもしれません。1960年から70年代にかけては参加国も限られていたから、フランス、イタリア、北欧諸国が2年連続受賞ということもありましたが、21世紀に入ってからは流石にないようだ。他に中南米からはハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』(グアテマラ)、初めて代表作品を送り込んだパラグアイのドキュメンタリー“El tiempo nublado”、スペインの『フラワーズ』は残れませんでした。

 

   

            (“El abrazo de la serpiente”のポスター)

 

★この9作品の中から最終的にノミネーション5作品が選ばれますが、もう受賞作はハンガリーの『サウルの息子』に決定しているとか。昨年はポーランドの『イーダ』が下馬評通り受賞しましたから、多分そうなるのでしょう、白けます。しかしノミネーションを受けるだけでも大変なこと、昨年ジフロンに付き添って現地入りしていたアグスティン・アルモドバルも「ノミネーションだけでも名誉なことだ」と語っていた。興行的にプラスになることが借金返済や次回作の資金集めに大いに寄与してくれるからです。

 

★チロ・ゲーラがコロンビア代表作品に選ばれるのは3回目、前回は2009年の“Los viajes del viento”(英題“The Wind Jouneys”)、コロンビアのノミネーションはまだゼロ、もし三度目の正直で残ったら初となる。本作はカンヌ映画祭と並行して開催される「監督週間」に正式出品された。その折、監督キャリア&フィルモグラフィー、並びに本作紹介記事をアップしております。

コチラ⇒2015524 

第7回「京都ヒストリカ国際映画祭」(10月31日~11月8日)で『大河の抱擁』の放題で上映されました。 

 

     アイルランド代表作品“Viva”は異色のスペイン語映画

 

★パディ・ブレスナックの新作“Viva”はアイルランド映画だが、キャストはキューバ人、舞台はハバナ、言語はスペイン語と異色づくめ。キューバは今年代表作を送らなかったが、アイルランドの代表作品がプレセレクションに選ばれた。キューバ映画の顔みたいなホルヘ・ペルゴリアが、主人公ヘススの父親アンヘル役で出演しています。18歳の主人公にエクトル・メディナ、15年の刑期を終えて出所してくる元ボクサーの父親にペルゴリア、脇をベテランが固めています。本作についても既に簡単ながら記事をアップしております。

コチラ⇒2015103  

 

  

          (ドラッグ・クイーンのエクトル・メディナ、映画から

 

マルティネス=ラサロの新作”Ocho apellidos catalanes”公開2015年12月09日 13:14

     1年半待たされましたがやっと“Ocho apellidos catalanes”が公開

 

★昨年のスペイン映画界の救世主Ocho apellidos vascos2014)の続編です。監督エミリオ・マルティネス=ラサロの希望というより製作者の「柳の下の二匹目の泥鰌」を狙っての企画だったようです。果たして泥鰌は「居たのか、居なかったのか」どっちなのでしょうか。クランクインの記事はアップしておりますが、改めてフィーバーぶりを。前作も日本では無視され続けておりますが(多分)、スペインでの興行成績は、毎回好評のサンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズは言うまでもなく、あのフアン・アントニオ・バヨナの『インポッシブル』をも抜いたのでした。スペイン人を理解するには、格好の教材だと思うのですが、公開の道は遠そうです。

 

★スペインで映画館に足を運んだ人は延べ約1000万人、総人口4600万の国ですから、一つマルが間違っているのではないかと思うほどです。山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズは本編48作、ギネスブック入りだそうですが、それでも全作のトータル観客数は8000万、これも凄い数字ですけど、ちなみに第1作は54万人だったそうです。“Ocho apellidos vascos”の数字が如何に破格だったかが分かります。これは、映画館から何年も足が遠のいていた人、映画はテレビやDVDで観るものと決めていた人が行かないと達成できない数字です。

 

 

    (2015年興行成績ナンバーワンの結果に大喜びするスタッフ、キャストたち)

 

★第2作目、カタルーニャ編はどうだったか、思惑通り二匹目の泥鰌は居たようです。1127日、公開1週目の集計が出ました。観客動員数1,809,490人のおかげで、11,081,639ユーロ、うち観客の73%が初日に映画館に足を運んだそうです。「バスク編」のスクリーン数は350でしたが、「カタルーニャ編」は884だったそうです。封切り日は金曜日なのですが。結局2014年に引き続き、2015年も興行成績ナンバーワンになることは確実です。公開前の予想では、「バスク編5600万ユーロを超えることは不可能、うまくいって3000万ユーロ」と踏んでいたようですから期待以上の数字です。どうやら先が読めなくなってきたようだ。

 

(クララ・ラゴ、ダニ・ロビラ、カラ・エレハルデ、続編「カタルーニャ編」から)

 

★こうなると第3作、4作・・・と欲が出て、「ガリシア編」やら「アンダルシア編」などが撮られるかもしれない。脚本は前作と同じボルハ・コベアガディエゴ・サン・ホセが共同執筆した。国粋主義者の「コルドをニューヨーク入りさせたい。ブルックリン橋を船で潜らせ、『なんてこった、こりゃポルトゥガレテの吊橋じゃないか』と歓喜の声を上げさせたい」とサン・ホセ。「ポルトゥガレテの吊橋」というのは、1893年に完成したビルバオ川に架かった吊橋、世界遺産に登録されている。しかし規模は比較にならないほど小さいから笑える。このシリーズは、主役のダニ・ロビラクララ・ラゴより、バスク・ナショナリストに凝り固まったコルト役カラ・エレハルデ(クララの父、ゴヤ助演男優賞受賞)なしでは成立しないコメディです。海外編も考えているということですかね。

★「わたしたちが好きなコメディは、ジュリア・ロバーツが出演した『ベスト・フレンズ・ウェディング』なのです。かつての恋人―しばらく会っていないが今でも愛している―の結婚式をぶち壊して自身が花嫁になりたい。このようなコメディが元になっている」とコベアガ。ハリウッドのロマンティック・コメディの古典ですね。また「バスク編」のプロットは、ジェイ・ローチの『ミート・ザ・ペアレンツ』、主人公ベン・スティラーが恋人(テリー・ポロ)の父親(デ・ニーロ、元CIAの職員)に結婚の許しを得るためニューヨークに乗り込むお話でした。吹き替えでも繰り返し放映されたヒット・コメディ。カラ・エレハルデVSデ・ニーロ、ダニ・ロビラVSベン・スティラー、クララ・ラゴVSテリー・ポロという図式です。

 

★他に、ベルランガの『ようこそマーシャルさん』(1952)、セグラの「トレンテ」シリーズ、W・ベッカーの『グッバイ、レーニン!』(独2003)、それに戦前のハリウッド映画、ジョージ・キューカーの『フィラデルフィア物語』(1940)などを上げている。戦後間もない1948年に日本でも公開され、「こんな映画を作っていた豊かな大国と戦争してたんだ」と、観客はショックを受けた。

 

★「第1作の成功がプレッシャーになっていたが、脚本は自由裁量であった。二人が恐れていたのは筋のマンネリ化、それを避けるためガラリと変えた。続編は恋の三角関係です」とサン・ホセ。スタッフもキャストもほぼ同じですが、クララ・ラゴ(アマイア)のカタルーニャでの新恋人にブルト・ロメロ、その祖母役に大ベテランのロサ・マリア・サルダが加わった。この家族は典型的なカタルーニャ気質を体現しており、バスクのクラシック・ジョークを言い換えながら笑わせる。どうやらバスクとカタルーニャの違いが分からないと笑えないのかもしれない。ジハード・テロリストについてのジョークもちょこっとあるようだ(心配?)。ロメロが演じる新恋人は、現代アーティストでヒップスターという役柄、「この役はマリオ・カサスには無理だよ、それで僕のところに回ってきたんだ」とロメロ。エル・パイス紙の購読者向けに企画された公開2日前インタビューで冗談をとばしていた(司会は本紙の批評家グレゴリオ・ベリンチョン)。

 

  

  (左から、カルメン・マチ、ブルト・ロメロ、マルティネス=ラサロ監督、1118日)

 

★このインタビューから見えてきたのは、バスク編製作中に続編が構想されていたが、「実際に私が、決心したのは第1作の大成功が分かった時点」とマルティネス=ラサロ監督。また「映画は数多くのおバカさんで成り立っている」とも語っていた。確かホセ・ルイス・ゲリンも「クレージーでないと映画は作れない」と語っていた。監督キャリアはバスク編で紹介しています。

 

カルメン・マチは続編も同じメルチェ役、バスク編ではゴヤ助演女優賞を受賞した。多くの批評家が脇役エレハルデとカルメンのベテラン勢の演技なしに大成功はなかったと口を揃えた。彼女は、2010年エミリオ・アラゴンの『ペーパーバード 幸せは翼にのって』がラテンビートで上映されたとき、監督と一緒に来日した。アルモドバル新作「フリア」(「沈黙」を改題)には出演していませんが、アルモドバルの常連さんでもある。ゴヤ賞2015ノミネーション他でキャリア紹介しています。

 

関連記事・管理人覚え

◎バスク編の紹介記事は、コチラ⇒2014327

◎バスク編フィーバーの記事は、コチラ⇒2014513

◎ゴヤ賞2015ノミネーションの記事は、コチラ⇒2015128


バヨナ、新作「怪物はささやく」の予告編を披露した2015年11月26日 13:02

          公開は1年先の201610月に決定

 

★昨年12月にキャストやスタッフなど大枠をアップいたしましたが、先日最初の予告編が監督のツイッター上に登場しました。1分ちょっとの本当に短いものですが見上げるようなイチイの大木です。リーアム・ニーソンがこのイチイのモンスターになります。スペイン語題はUn monstruo viena a vermeですが、言語は英語です。邦題がどうなるか分かりませんが、パトリック・ネスの同名小説“A Monster Calls”が既に『怪物はささやく』として翻訳されておりますので、決定するまで当ブログではこれを採用します。

 

      

              (イチイの大木を見上げるコナー少年)

 

★フアン・アントニオ・バヨナの「母子三部作」の最終回です。「母子三部作」というのは、2007年の『永遠のこどもたち』2012年の『インポッシブル』のこと、テーマ的には第1作に近い。というのは「現実的な家族を描きますが、領域的には死が身近にあり、エモーショナルな激しさを共有しているから」だそうです。『インポッシブル』は、昨年のOcho apellidos vascosが記録を塗り替えるまで、スペインでの興行成績ナンバーワン、国内でこそ記録は破られましたが、世界記録は保持しています。本作でバヨナはゴヤ賞監督賞のみならず、最年少「国民賞」(映画部門)受賞者にも輝いた。今年の受賞者がフェルナンド・トゥルエバでしたから、いかに異例の受賞だったかが分かります。

 

主役のコナー少年にはオーディションを受けた約1000人の中から選ばれたルイス・マクドゥーガル、ほか主な登場人物は、癌闘病中の母親にフェリシティ・ジョーンズ、祖母にシガニー・ウィーバー、『永遠のこどもたち』にも出演したジェラルディン・チャップリンなどがクレジットされている。リーアム・ニーソンを含めて大物俳優が脇を固めている。

 

(最後列L・ニーソン、脚本家P・ネス、S・ウィーバー、前列L・マクドゥーガル)

 

本作“Un monstruo viena a verme”のデータは、コチラ⇒20143171213


アルモドバル、新作タイトル”Silencio”を”Julieta”に変更2015年11月21日 14:32

 

   スコセッシの新作“Silence”との「将来的な混乱」を避けるため

 

1119日、製作会社「エル・デセオ」を通して正式に発表された。予てから、同年公開、同タイトルではややこしいなと思っていたので、タイトル変更は歓迎です。両作とも劇場公開は100パーセントですから。新タイトルはヒロインの名前「フリエタ」から採られた。日本メディアはヒロイン名を「ジュリエッタ」と紹介しているので、どうなるかは不明です。既にクランクアップしており、音楽担当のアルベルト・イグレシアスもすべての作曲を終了した由、2016318日スペイン公開が決定しております。

 

  

          (二人のフリエタ、左からエンマ・スアレス、アドリアナ・ウガルテ)

 

★アルモドバルによると、タイトルは「沈黙」と同じでも、‘Silencio’と‘Silence’と違うし、物語や製作国はまったく異なるから問題なしと考えていたようです。しかし将来的には混乱が起きる可能性無きにしも非ずと思い直したようです。スコセッシの方は遠藤周作の同名小説の映画化だから、改題はありえないと考えたのかもしれません。

 

★アルモドバルは、13日に起きたパリ同時多発テロに言及、「エル・デセオの仲間は13日以来喪に服している」と、犠牲者の家族とパリを愛する多くの人々への連帯を表明した。

 

       マーティン・スコセッシ念願の“Silence

★マーティン・スコセッシの「Silence沈黙」は、ご存じ遠藤周作(192396)の同名小説の映画化、1966年、谷崎潤一郎賞ほかを受賞したベストセラー歴史小説。監督が企画してから数年経ち、スケジュールの関係でキャストも二転三転、やっと陽の目を見るとこになった監督念願の大作。江戸時代初めのキリシタン弾圧下の日本に潜伏して布教するポルトガル青年司祭ロドリゴが主人公、懐疑と内面的な救いにもがく姿を描いた。「沈黙」とは「神の沈黙」です。1971年、篠田正浩監督が『沈黙 SILENCE』のタイトルで映画化している。今回はロドリゴにアンドリュー・ガーフィールド、師フェレイラ神父にリーアム・ニーソン、通詞に浅野忠信(前は渡辺謙だった)、塚本晋也監督もモキチ役で登場します。台湾で撮影中セットが崩れて死者一人が出るなどの不幸もあったが、撮影終了、来年公開です。 

関連記事*管理人覚え

Silencio”製作発表の記事は、コチラ⇒2015315

エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテの紹介記事は、コチラ⇒201545

クランクアップの記事は、コチラ⇒2015818



フアン・ディエゴ & アイタナ・サンチェス=ヒホンに「金のメダル」2015年11月20日 11:55

 

「金のメダル」受賞者はスペイン映画界きっての論客の手に

 

★今年はスペイン映画アカデミー設立30周年の年、新会長アントニオ・レシネスの手から、「金のメダル」が師弟愛で固く結ばれているシネアストフアン・ディエゴアイタナ・サンチェス=ヒホンの二人に贈られた。二人揃って記者会見に臨んだが、何しろ名うての論客だから例年より盛り上がったようです。二人とも映画のみならず舞台にテレビにと幅広く活躍しており、特にアイタナ・サンチェス=ヒホンは最近、映画から遠ざかって舞台に専念していたので予期せぬ受賞だったようです。 

 

  (メダルを手に喜びのフアン・ディエゴとアイタナ)

 

アイタナ・サンチェス=ヒホン(1968年、ローマ生れ)は、ゴヤ賞の候補にさえ選ばれなかったのに、スペイン映画アカデミーの最初の女性会長を務めた稀有の女優。「わたしが16歳でデビューしたとき、フアンが近づいてきて話しかけてくれた。お世辞を言う人ではない、そのとき以来のわたしの助言者、先生です。演技のメソッドについての本をプレゼントしてくれた。彼は私のピグマリオンです。30年後に先生と一緒にメダルがもらえるなんて夢みたい」と、傍らの恩師に言及しながら喜びを語った。「(アカデミー会長の)アントニオから電話で知らせがあったとき、本当は当惑したの。受話器を置いてからも呆然としてしまって、この私がフアン・ディエゴと一緒? まさか。現在は映画に出演していないし、でも結局、アカデミーの意向を受け入れようと。メダルが私を元気づけてくれたことに気がついた」と、受賞をまったく予期していなかったようです。受賞がアナウンスされたときにキャリアとフィルモグラフィーをご紹介しています。

*コチラ⇒201581

 

★受賞がアナウンスされたとき、「現在はとてもワクワクしている。ずっと前から待っていたからね」と語っていたフアン・ディエゴ1942年、セビーリャのボルムホス生れ)の喜びの弁は、「アイタナと一緒の受賞は素晴らしいことだよ。重要なのはまだ若くて人を愛せる年齢の人に与えることだ」と。金のメダルは功成り名遂げた人に与える名誉賞ではないということか。自分は遅すぎたという感慨があるのかもしれない。ゴヤ賞主演助演を含めて3個を受賞している実力者の言葉は重いです。受賞は逃したが、彼の代表作の一つが、カルロス・サウラの“La noche oscula”(「暗夜」1989)、16世紀の聖人、神秘思想家サン・フアン・デ・ラ・クルスに扮した作品です。タイトルは彼の有名な詩集『暗夜』から取られた。当ブログには度々登場してもらっています。特に「マラガ映画祭2014」で輝かしい受賞歴、主なフィルモグラフィーをご紹介しております。

*コチラ⇒2014421

 

   

   (“La noche oscula”でサン・フアン・デ・ラ・クルスに扮したフアン・ディエゴ)

 

★女優が40代に入ると、だんだん舞台にシフト替えしていくのは、舞台のダイレクトな反応に魅了されることも大きいが、オファーが減ることにも一因がある。アイタナも「スペインでは円熟した女性を主人公にした映画があまりない。フランスではジュリエット・ビノシュやイザベル・ユペールのために映画が製作される。スペインは18歳から35歳まで、36歳過ぎると母親役が回ってくる。そういう風潮を変えることが必要」と。40歳は95歳と言われるハリウッドほどではないが女優業は年齢との戦いだ。売れっ子女優シャーリー・マクレーンのオスカー賞受賞の弁「あまりに遅すぎます」は有名ですが、彼女も40代初めは一時引退状態だった。『愛と追憶の日々』(83)で受賞したときには49歳だった。娘になったデブラ・ウィンガーは、干されないうちに早々と引退してしまった。大きな損失だと思いますね。

 

           実るほど頭を垂れる稲穂かな

 

フアン・ディエゴ:「女性は突然やめてしまい、結果的に舞台に鞍替えする。せっかくお金をかけて育てたのに、映画界にとってはとても残念なことだ」。彼も一人芝居の魅力にとり憑かれている。平土間の観客から受ける反応が堪らないからのようだ。しかし来年2月に30万ユーロで映画を撮る予定、「それは映画が好きだし、映画の仲間も好きだから」だそうです。彼は内戦終結直後の生れ、つまりフランコ体制時代の教育を受けて育っている。独裁制と民主主義移行期の混乱を体験している。社会に対して仲間に対しての義務を果たすことにも精を出している。だから皆から信頼されるのだろうと思う。役者が天職という彼だが、「身を粉にして一生懸命学び、はたらき、真実を求める」が信条、これからの活躍を期待したい。そのための「金のメダル」だから。

 

アイタナ・サンチェス=ヒホン「フアンほど真摯な人にはあったことがない。年を重ねるごとに顕著になっていく」と言うアイタナだが、「ビガス・ルナが亡くなってほんとに寂しい。私にとって仕事の上でも個人的なことでも重要な監督だった」と鬼籍入りした監督を懐かしむ。彼女にサンセバスチャン映画祭1999の最優秀女優賞をもたらした『裸のマハ』の監督です。主役はアルバ公爵夫人を演じたアイタナでしたが、日本ではペピータ役のペネロペ・クルスが話題をさらった。ビガス・ルナ監督も正当に評価されているとは思えない。個人的には銀幕にカムバックして欲しい。 

 

    (ゴヤの「着衣のマハ」のポーズをとるアルバ公爵夫人、『裸のマハ』から)

 

『ミューズ・アカデミー』 がセビーリャ・ヨーロッパ映画祭「金のヒラルダ」受賞2015年11月18日 18:26

   セビーリャ・ヨーロッパ映画祭「金のヒラルダ」を受賞

 

★記憶が残っているうちにアップしようと思っている『ミューズ・アカデミー』「金のヒラルダ」Giraldeillo de Oro)を受賞しました。例年11月半ばにセビーリャで開催される映画祭の最高賞です。ヨーロッパ映画賞の前哨戦の意味合いがあり、この映画祭でノミネーションが発表される(今年は既に発表)。ここでの受賞作品はヨーロッパ映画賞ノミネーションの確率が高く、ただ『ミューズ・アカデミー』は選ばれませんでした。ヨーロッパ映画賞のうち技術部門(音響・衣装デザイン・編集など)は10月末に受賞者が決定されている。

 

    

       (ラファエレ・ピント教授と妻 『ミューズ・アカデミー』から)

 

★『ミューズ・アカデミー』受賞はちょっと意外、というのも下馬評ではポルトガルのミゲル・ゴメスのArabian Nights(“As mil e una noites”ポルトガル、仏、独、スイス)か、トルコ映画“Mustang”が高得点だったこと、既に発表されていたヨーロッパ映画賞の作品賞以下のノミネーションがゼロだったからでした。“Arabian Nights”は「銀のヒラルダ」Giraldeillo de Plata)を受賞、ヨーロッパ映画賞(技術部門)の音響デザイナー賞の受賞が決定しています。

 

★その他では、観客賞受賞のトルコのMustang(監督Deniz Gamze Erguven 仏、独、トルコ、カタール)が作品賞とディスカバリー賞にノミネーションされています。トルコ映画ですがフランス、ドイツが製作国に参加ですから対象作品です。カンヌ映画祭と並行して開催される「監督週間」の話題作、カンヌ以来、世界各地の映画祭、ベネチア、トロント、バジャドリード、ニューヨークと次々に招待され、フランス、ベルギー、アルゼンチンなどで公開、来年にかけても続々公開が決まっています。両親が亡くなり孤児となってしまったトルコ北部の村で暮らす5人姉妹のドラマ、祖母と叔父の庇護のもと、彼女たちがボーイフレンドたちと巻き起こす自由奔放な行動、フリーダム、女性の権利、親族によるレイプ、スキャンダル、死、社会的圧力など、現代トルコが抱える問題が描かれる。

               

                (“Mustang”のポスター)

 

★今年のセビーリャ・ヨーロッパ映画祭の授賞式は、パリで起きた同時多発テロの影響でキャンセルされました。セビーリャのロペ・デ・ベガ劇場で行われる予定だったアメリカの歌手ソフィー・オースターのコンサートも中止となり、テロの影響は深刻です。

 

★『ミューズ・アカデミー』のアップは、1回鑑賞ではすこぶる心もとないですが、「金のヒラルダ」を受賞したことだし、時間が経つと億劫になりそうなので、次回にまとめます。

 

ゴヤ賞2016 「栄誉賞」 はマリアノ・オソレス監督が受賞 ①2015年11月18日 17:33

 

ゴヤ賞2016「栄誉賞」はコメディ監督マリアノ・オソレス

 

★ゴヤ賞授賞式は来年2月と大分先ですが、ゴヤ賞2016の「栄誉賞」はコメディ監督マリアノ・オソレスが選ばれました。昨年のアントニオ・バンデラスのように日本での知名度はありませんが、スペイン人で彼の映画を見たことがない人は少ない。ゴヤ賞とは無縁の監督でしたが、40年間で96作、低予算、短期間で1年間に5作品撮った年もあるとか。どの作品も観客に受け入れられた、つまり映画館に足を運んだ観客は延べ8700万人、総人口の倍近いそうです。スペイン人がコメディ好きなのは、暗い時代が長かったから、せめて映画館の中だけでも笑いたかったのかもしれません。

         

        

               (ゴヤ賞2016の栄誉賞に選ばれたマリアノ・オソレス監督)

 

1926年マドリード生れ、監督、脚本家。両親は俳優だったが監督の道を選んだ。俳優を選んだのは兄弟のホセ・ルイスとアントニオ、最近では姪のエンマ・オソレス、アドリアナ・オソレスなど。「考え深い人で、とても控えめだが、人々を幸せにできる人。驚くべきことは、常に誇りをもって映画に取り組んだ監督、受賞にふさわしい人は彼以外にいない」と映画アカデミー会長アントニオ・レシネスの弁。ゴヤ賞が近づいたら、改めてご紹介いたします。

 

オスカー賞2016のスペイン代表はバスク語映画『フラワーズ』2015年10月03日 13:39

     決定しても米国では未公開、プレセレクションへの道は遠い

 

グラシア・ケレヘタ(“Felices 140”)とカルロス・ベルムト(“Magical girl”)は残念でした。“Magical girl”はアカデミー会員の年々上がる平均年齢から判断して、まず選ばれないと考えていました。こういうオタクっぽいミステリーは好まれない傾向にあるからです。“Felices 140”はかなりスペイン的なシリアス・コメディだから無理かなと。消去法と言ってはなんですが、結局ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガ『フラワーズ』が残ったのではないでしょうか。しかし、選ばれてもアメリカでは映画祭上映だけで、目下一般公開のメドが立っていません。最終候補に残るには、少なくともロスで1週間以上の一般公開が必要条件です。アメリカでの映画祭上映、映画祭で受賞してもダメです。本作はパーム・スプリングス映画祭のラテン部門で受賞していますが、これは条件を満たしたことになりません。

 


12月中頃に9作品のプレセレクション発表、ノミネーションは年明け114日です。短期間の勝負だから多くの国はプロモーションの人手は足りても資金が続かない。二人の監督はスペイン映画アカデミーに感謝の言葉を述べていますが、ちょっと神経質になっているようです。何しろゴヤ賞でさえビビっていたのですから。反対にプロデューサーのハビエル・ベルソサは意気軒高、初のバスク語映画、この稀少言語を逆手にとって、他との差別化を図りたい。以前モンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』(1997)がノミネートされ、舞台がバスクだったので若干バスク語が入っていたが、本作は全編バスク語だ。「この特異性は強いカードだ」と言う。「目下新作を製作中だが一時中断してプロモーションに出掛ける」そうです。

 


★バスク自治州政府も後押ししている。スペインで一人当りの平均収入が最も高い豊かな州だが、過去に起きたETAの暴力テロで国際的にはイメージがよいとは言えない。またバスク語は放置すれば消滅してしまう言語ですから、バスク語映画が代表作品に選ばれたのをチャンスととらえ、バスク語普及に力を入れているバスク政府の言語政策のキャンペーンにも利用したい、あわよくば観光客も呼び込みたいと一石二鳥どころか三鳥、四鳥も狙っているようです。ま、頑張って下さい。

 

★昨年、ラテンビートと東京国際映画祭で共催上映されたから、ご覧になった方は、鋭い人間洞察、ちょっとしたユーモア、雨に濡れた森の緑の映像美、バックに流れる音楽、見事な伏線の張り方、何はおいてもテーマになった、老いや孤独、突然の死が織りなすドラマに魅了されたことでしょう。

 

★スペイン以外で決定しているラテンアメリカ諸国のうち、アルゼンチン、チリ、グアテマラなど、当ブログに度々登場させた映画も選ばれています。以下はその一例:

 

アルゼンチンEl clan 「ザ・クラン」パブロ・トラペロ、ベネチア映画祭監督賞受賞

チリEl Club”『ザ・クラブ』パブロ・ラライン、ベルリン映画祭グランプリ審査員賞受賞

コロンビアEl abrazo de la serpienteチロ・ゲーラ、カンヌ映画祭「監督週間」作品賞受賞

グアテマラIXCANUL”『火の山のマリア』ハイロ・ブスタマンテ

ベルリン映画祭アルフレッド・バウアー賞受賞

メキシコ600 Millasガブリエル・リプスタイン

ベルリン映画祭2015「パノラマ」部門で初監督作品賞受賞

ベネズエラDauna. Lo que lleva el río(“Gone With The River”)マリオ・クレスポ

パラグアイEl tiempo nublado(“Cloudy Times”)ドキュメンタリー、アラミ・ウジョン

ドミニカ共和国Dólares de arena(“Sand Dollars2014

ラウラ・アメリア・グスマン&イスラエル・カルデナ

 

★ベネズエラはベネチア映画祭で金獅子賞を受賞したばかりのロレンソ・ビガスDesde allá(「フロム・アファー」)を当然予想していましたが外れました。多分受賞前に決定していたのではないかと思います。まったくノーマークだったマリオ・クレスポの作品が選ばれましたが、ベネズエラのTVドラを数多く手掛けている監督です。

 

★パラグアイのEl tiempo nubladoは、近年増加しているというパーキンソン病に罹ったウジョン監督自身の母親を追ったドキュメンタリー、車椅子生活となった母と娘が向き合う映画、これは是非見たい映画です。下の写真は監督と母親、映画から。

 



★ドミニカ共和国の“Dólares de arenaは、2014年の作品で、主演のジュラルディン・チャップリンが第2回プラチナ賞の候補になったときご紹介した作品です。二人の監督はメキシコで知り合い結婚しています。本作は二人で撮った長編3作目になります。いずれドミニカ共和国を代表する監督になるでしょう。アグスティ・ビリャロンガの『ザ・キング・オブ・ハバナ』でも書いたことですが、若いシネアストたちのレベルは高い。

 



★奇妙なことに外交的な雪解けにも拘わらず、キューバ映画芸術産業庁は今回代表作品を送らないことに決定したそうです。送らないのか送れないのか、どちらでしょうか。2016年のゴヤ賞やアリエル賞も参加しないようです。面白いことにアイルランド代表作品Vivaは、キューバの俳優を起用してハバナで撮影、言語はスペイン語、ハバナで暮らすドラッグ・クイーンの若者が主人公のアイルランド映画。当ブログはスペイン語映画のあれこれをご紹介していますが、こういう映画は想定外でした。18歳の若者に長編デビューのエクトル・メディナ、刑務所を出所したばかりの父親に名優ホルヘ・ペルゴリア、他ルイス・アルベルト・ガルシアなどベテランが脇を固めています。「父帰る」で対立の深まる父と子の物語。

 


                       (エクトル・メディナ、映画から)

★監督は1964年ダブリン生れのパディ・ブレスナック、すべて未公開作品ですが、DVD化されたホラー映画2作とファミリー映画1作があるようです。トロント映画祭やコロラド州のテルライド映画祭(9月開催)でも上映された。テルライド映画祭は歴史も古く審査員が毎年変わる。今年はグアテマラ代表作品IXCANULも上映された。アイルランド映画委員会が資金を出して映画振興に力を注いでいるようで、本作のような海外撮影を可能にしたようです。

 

★アイルランドの公用語は勿論アイルランド語ですが、400年にも及ぶイギリス支配で、国民の多数は英語を使用しています。国家がアイルランド人としてのアイデンティティ教育の一環として学校で学ぶこと義務づけられています。しかし学ぶには学ぶが、日常的には英語だそうです。最近EUの公用語に指定された。支配下にあった時代のスウィフトの『ガリヴァー旅行記』、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』も英語で書かれた。

 

 

オスカー賞2016*スペイン代表映画の候補3作品2015年09月09日 17:36

          バスク映画『Flowers / フラワーズ』が驚きの候補に

 


★アカデミー賞のガラは来年228日、まだラテンビートも始まらないのにオスカー賞の話は早すぎますが、昨年のラテンビートと東京国際映画祭で共催上映されたホセ・マリ・ゴエナガ & ジョン・ガラーニョのFlowers / フラワーズ』が一つに選ばれました。2014年作と少し古いですがスペイン公開が遅かったので選ばれたのでしょう。他はガルシア・ケレヘタのFelices 1402015Happy 140”)とカルロス・ベルムトのMagical girl2014)の2作です。3作とも既にご紹介しています。

 

Magical girlは、年初には夏公開とアナウンスされましたが、今もって未定です。配給元(ビターズ・エンド)との打ち合せかと思いますが、7月にベルムト監督は来日したようです。話題にもなりませんでしたが、「どうかお蔵入りになりませんように」と祈るばかりです()。今回選ばれなくても公開時には改めて記事にいたします。監督はもともとの出発がコミックのデッサンを描いていた。大変なマンガ好き、子供の頃は映画などに興味なかったそうです。映画のストーリーは、日本のテレビアニメ「マジカル・ガール Yukiko」が好きな病弱な美少女をめぐる奇妙なミステリーです。サンセバスチャン映画祭2014金貝賞監督賞(銀貝賞)ダブル受賞の映画です。監督、キャストは以下で紹介しています。バルバラ・レニーがゴヤ賞主演女優賞を受賞など、他にも盛りだくさんな受賞歴です。


Magical girl”の記事は、コチラ⇒20149162015121

バルバラ・レニーの記事は、コチラ⇒2015327

 


 (左から金貝賞受賞の製作者ペドロ・エルナンデス、銀貝監督賞受賞のカルロス・ベルムト

 

 

Felices 140のガルシア・ケレヘタは、現在スペイン映画アカデミーの副会長の一人。エンリケ・ゴンサレス・マチョ前会長がゴヤ賞授賞式後に任期半ばで突如辞任を表明、改選されてアントニオ・レシネスが会長、彼女とバルセロナ派のプロデューサーエドモン・ロチが副会長に就任した。本作はマリベル・ベルドゥを主役にしたシリアス・コメディ、興行成績もよく選ばれる可能性が高いか。今年は決定打がなく3作のうちどれが選ばれてもプレセレクションには残れない気がします。

Felices 140”の記事は、コチラ⇒20151743

 


          
          (本作撮影中のマリベル・ベルドゥとケレヘタ監督)

 

 

Flowers / フラワーズ』は、サンセバスチャン2014で「初のバスク語映画がコンペティションに」と話題になった作品。ゴヤ賞2015の作品賞にもノミネートされ、無冠でしたが画期的な出来事でした。作品も良かったから、スペイン映画界にとっても大きな収穫でした。以下のように何回か記事にいたしましたが、セルバンテス文化センターのニューズレターによると、共同監督のデビュー作80 egunean2010、英題“Por 80 Days”)が上映されるようです。残念ながら「バスク語スペイン語字幕」ということですが、映像の力で楽しめるのではないかと思います。『フラワーズ』で名演技を見せたイジアル・アイツプルが主演の一人アスンに扮し、もう一人マイテには本作でデビューしたマリアスン・パゴアゴが扮しました。当ブログで紹介した簡単なストーリーを再録すると、大体こんなオハナシです。


     

80 egunean:少女だった遠い昔、親友だったアスンとマイテの二人はひょんなことから50年ぶりに邂逅する。アスンは農場をやっているフアン・マリと結婚するため引っ越して以来田舎暮らしをしていた。両親と距離を置きたい娘は離婚を機にカリフォルニアに移り住んでいる。レズビアンのマイテはピアニストとして世界を飛び回ってキャリアを積んでいたが既に引退して故郷サンセバスチャンに戻ってきた。別々の人生を歩んだ二人も既に70歳、不思議な運命の糸に手繰り寄せられて再び遭遇する。この偶然の再会はアスンに微妙な変化をもたらすことになる、自分の結婚生活は果たして幸せだったのだろうか。マイテにサンタ・クララ島への旅を誘われると、アスンは自分探しの旅に出る決心をする。

 


    (アスン役のアイツプルとマイテ役のパゴアゴ、映画から

 

★受賞歴:「トゥールーズ・シネ・エスパニャ2011で二人揃って女優賞を受賞した。年輪を重ねた知性豊かな二人の女性のナチュラルな演技が観客賞にも繋がった。

 


       (左から、ジョン・ガラーニョ監督とホセ・マリ・ゴエナガ監督)

 

上映作品80日間』 (80 egunean) とシネフォーラム

日時:20151018日(金曜日) 1900

場所:セルバンテス文化センター地下1階「オーディトリアム」

入場無料、予約不要、先着順、バスク語スペイン語字幕入り

講師アインゲル・アロス/ホセ・マリ・ゴエナガ監督のビデオでの挨拶

 

Flowers / フラワーズ』の記事は、コチラ⇒20149221192015116

 

ペネロペ・クルスとフリオ・メデム*新作”Ma ma”が公開2015年09月04日 17:54

             ペネロペが身重の乳癌患者を力演する

 


★お正月に今年公開される映画をいくつかご紹介いたしましたが、フリオ・メデムMa maもその中の一つ、いよいよ911日にスペインで公開されます。ペネロペ・クルスはスペイン映画としては、アルモドバルの『抱擁のかけら』以来、約6年ぶりのヒロイン役マグダに扮します。脚本に惚れこんで、初のプロデューサーにも挑戦しました。演技をしているときは女優に、製作側に立つときはプロデューサーに徹し、二つの狭間で苦労したとも語るPP、第二子誕生後、押し寄せる出演依頼にいささか疲労困憊、なかでも彼女の「ステージ・パパ」とも言われた父親を6月に見送ったことが打撃だったようです。

Ma ma”の紹介記事は、コチラ⇒201515、フリオ・メデム監督の「キャリア&フィルモグラフィー」も紹介しております。

 

     Ma ma2015 スペイン

製作(共同)Morena Films(スペイン) / Mare Nostrum Productions

監督・脚本・プロデューサー・編集:フリオ・メデム

撮影:キコ・デ・ラ・リカ

音楽(サウンドトラック) アルベルト・イグレシアス

美術:モンセ・サンス

編集:イバン・アレド、ヤゴ・ムニィス

衣装デザイン:カルロス・ディエス

メイクアップ:(特殊メイク)ラケル・アルバレス、ルベン・セラ、他

プロダクション・マネージメント:マリア・モレノ

プロデューサー(共同):アルバロ・ロンゴリア(エグゼクティブ・プロデューサー、代表作『ローマ、愛の部屋』)、ペネロペ・クルス、他

 

データ:スペイン、スペイン語、2015、ドラマ、111分、撮影地マドリード、テネリフェ島など

公開:フランス2015521日、ドイツ730日、スペイン911日、カナダ915


キャスト:ペネロペ・クルス(マグダ)、ルイス・トサール(アルトゥロ)、アシエル・エトシェアンディア Etxeandia(フリアン)、ジョン・コルタハレナ、アレックス・ブレンデミュール(ラウル)、シルビア・アバスカル(看護師)、アナベル・マウリン(放射線専門医)、ビルヒニア・アビラ(ICU看護師)、サムエル・ビジュエラ、エレナ・カランサ(TVレポーター)、シロ・ミロー、ノルベルト・トルヒージョ B、他

 

プロット:小さな息子を抱え癌と闘う女性マグダの物語。死の淵にありながら新しい命と新しい家族を組みたてようとする。厳しい状況に直面したマグダは、ただ現実を受け入れるだけでなく、そうすることが自分の命を縮めるかもしれないが、積極的に勇気をもって内側から人生の立て直しを決心する。辛い映画ではあるが打ちひしがれる映画ではない。どうしたら心の平静をたもち、充実した人生を送れるのかという「生き方のレッスン」に観客は出遭うだろう。そして予想もしないユーモアある光景や心こまやかな幸せを目にすることができる。     (文責:管理人)

 

       

         (環境破壊NOキャンペンのシャツを着たトサール、ペネロペ、メデム監督)

 

  
トレビア

★ペネロペ・クルスの役柄についての拘りというか研究熱心はつとに有名ですが、今回もインターナショナル・ルベン・クリニックの婦人科医エレナ・カリージョの指導を受けて、誇りを持って不自然にならないよう癌患者の役に取り組んだという。「エレナは、友人としても私をサポートしてくれた」とPP。癌と闘うスペイン協会、乳癌病理学スペイン協会、国立癌協会の手になる情報を提供してくれた。実際の乳癌患者にも取材をして生の声を聞いたようで、「彼女たち全員が傷痕と心の内を見せてくれた」とも。

 

★今回は役者とプロデューサーの二足の草鞋、メデム監督との関係は、「演技しているときは女優と監督、製作については噛みあわず議論もしたけれど、最終的には合意できた。彼と一緒に仕事ができたことは素晴らしい経験だった」と語る。テネリフェ島の撮影は、好い天候に恵まれて、二人の男性共演者ルイス・トサールアシエル・エトシェアンディアとも良好、「だって、これは落胆したり暗い気持ちになる映画ではないの。むしろ恐怖より光が差し込む映画。でも撮影終了のパーティは楽しめなかった。喪失感と大きな困惑を覚えた。面食らうこともあったし、確かなことは一風変わったセンセーショナルな仕事だったけれど、疲れは感情的なものだった」そうです。撮影中に15カ国の配給元が契約してくれ、現在は25カ国に増えた。

 


     (ルイス・トサールとペネロペ、映画から)

 

★スペイン版『ヴォーグ』9月号の表紙を飾ったペネロペ・クルス、Ma ma”を含めた乳癌征圧の特集号のようです。1冊につき0.50ユーロが「スペイン癌征圧協会」に寄付される。週刊誌『エルパイス・セマナル』821号の表紙にも選ばれた。嬉しい話題が溢れているが、以前から心臓病を患っていた父親がムルシアで亡くなった(618日、享年62歳)。海外で撮影中だったので死に目にはあえなかった。

 


              (スペイン版『ヴォーグ』9月号の表紙)

 

10代でデビューした彼女を業界やマスコミの餌食から守ってくれた「ステージ・パパ」でもあった。父親のサポートなしで今日のPPはない。ペネロペ三人姉弟の母親とは離婚しており、再婚したカルメン・モレノとの間に3歳の娘がいる。「まだ62歳と若かったのよ、私たちは常に結束していて、多くの場合、海外ロケも一緒だった。だから仕事復帰は難しかった。というのもコメディだったから、人を笑わせる演技が辛かった。セリフが多いシークエンスでは集中できなかった」とPPは打ち明ける。コメディとはベン・スティラーの『ズーランダー 2のことだ。コイシェ監督が「へとへとになるまで笑わせてくれた」と言っていた『ズーランダー』(01)の続編。撮影中に今度はスティラー監督の母親が亡くなって、撮影は数日間頓挫してしまった。「どうやって立ち直ったんだい?」と質問されたそうです。来年211日アメリカその他で公開が決定している。いずれ日本も公開されるでしょう。

 


      (マドリードの遺体安置所に駆けつけたペネロペとハビエル・バルデム)

 

フェルナンド・トゥルエバ『美しき虜』98)の続編La reina de Eapaña2016年公開予定)で同じマカレナ・グラナダを演じる。主要キャスト、アントニオ・レシネス、ホルヘ・サンス、サンチャゴ・セグラなどは前回と同じ、既にシナリオの読み合せもしたそうです。その後、前評判が大分先行しているフェルナンド・レオン・デ・アラノアAmando a Pablo, odiando a Escobarが予定されている。ビルヒニア・バジェッホの同名回想録(2007年刊)の映画化。コロンビアのメデジン麻薬カルテルのドン、パブロ・エスコバルの80年代の愛人。作家でジャーナリスト、コロンビア女性は美人が多いと言われるが、彼女もその例に漏れない、現在はマイアミ在住。パブロにハビエル・バルデム、愛人ビルヒニア・バジェッホにペネロペが扮する。間もなくクランクイン「彼と一緒の仕事はちょっと不安がある」とPP、結婚前の『ハモンハモン』や『それでも恋するバルセロナ』のように簡単ではないということか。リドリー・スコットの『悪の法則』では共演と言っても撮影は交差しなかったが、今度はそうはいかない。

 

★『ハモンハモン』の少女も今では一男一女の母親、どうやって美しく年を重ねていけるか。スペインでは『抱擁のかけら』で母娘を演じたアンヘラ・モリーナ、また『NINE』で共演したソフィア・ローレンが理想とか。二人とも子供と仕事を両立させている女優、アンヘラは確か5人ぐらいいるし、長女オリビア(『地中海式人生のレシピ』のヒロイン)に子供が生まれたからお祖母さんでもある。