エミリー・ワトソン、ドノスティア賞受賞*サンセバスチャン映画祭2015 ⑦2015年09月07日 12:28

         今年の受賞者はエミリー・ワトソン一人だけ?

 

★第63回サンセバスチャン映画祭のドノスティア賞エミリー・ワトソンとアナウンスされました(94日)。授賞式は映画祭のメイン会場クルサール・ホールで925日になる模様。2012年は第60回という記念すべき年だったので5名と大盤振る舞い、2013年はカルメン・マウラヒュー・ジャックマン2人、2014年もベニチオ・デル・トロデンゼル・ワシントン2人でした。これから追加もあるかもしれませんが、どうやら2015年はワトソン一人でしょうか。

 

★エミリー・ワトソンは、1967年ロンドン生れの英国女優、話題作は公開されているからご紹介は不要でしょうか。どんな役をやっても頭の良さが前面に出てきてしまう女優さん、それもそのはずブリストル大学で英文学を専攻している。卒業後仕事をしながらドラマ・スタジオ・ロンドンで演劇を学び、チェーホフの『三人姉妹』やイプセンの『海の夫人』に出演している。1992年ロイヤル・シェクスピア・カンパニーに所属、映画はラース・フォン・トリアーの『奇跡の海』1996)、無垢で宗教心の厚い女性を演じて、ヨーロッパ映画賞女優賞、全米映画批評家協会賞ほかを受賞、アカデミー賞女優賞にもノミネーションされ、幸運なデビューを果たした。

 


             (エミリー・ワトソン、『奇跡の海』より)

 

★その後、ダニエル・デイ≂ルイスと共演した『ボクサー』(97)、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』98)が再びアカデミー賞女優賞にノミネーションされた。ほか話題作としてアラン・パーカーの『アンジェラの灰』(99)、『ゴスフォード・パーク』(01)、『レッド・ドラゴン』(02)、ピーター・セラーズの最初の妻になった『ライフ・イズ・コメディ!ピーター・セラーズの愛し方』(04)、『孤独な嘘』(05DVD)、『ミス・ポター』(06)、『ウォーター・ホース』(07)、『戦火の馬』(11)、『オレンジと太陽』(12)、最近ではホーキング博士の伝記映画『博士と彼女のセオリー』(14)で最初の妻になるジェーンの母親役で顔を出していた。最新作は、日本でも11月に公開が決定しているバルタザール・コルマウクルの3D『エベレスト』(15)、ベネチア映画祭のオープニングに選ばれたので、スタッフもともども現地入りしている。

 

       (現地入りしているエミリー・ワトソン、ベネチア映画祭、94日)

 

2002年から舞台に復帰、シェークスピアの『真夏の夜の夢』やチェーホフの『ワーニャ伯父さん』に出演、後者でイギリスでもっとも権威のある演劇賞「ローレンス・オリヴィエ賞」にノミネーションを受けた。映画に舞台にテレビにと、二足も三足も草鞋を履いて活躍中。


第2回イベロアメリカ・プラチナ賞結果発表2015年07月21日 15:34

            『人生スイッチ』が作品賞他8賞を独占

 


★不安が的中、『人生スイッチ』が4個ぐらいは貰うと予想しておりましたが、なんと8個とは! ということで個人的にはいささか不機嫌です。ノミネーション作品をちゃんと見ていたら、もう少しばらつくと思いませんか。カテゴリーはたったの「13」しかなく、いやしくもラテンアメリカ諸国を含め23カ国が参加する国際的な賞とは思えない。これではイベロアメリカ映画の<オスカー賞>という名前が泣くし、イベロアメリカ映画の将来にもよい結果をもたらさない。

 

『人生スイッチ』のコメントは、725日に封切られますので、鑑賞後改めてアップすることにし、今回は触れないことに致します。ジフロン監督は合計3回登壇して「素晴らしい1日でした」と挨拶。そりゃそうでしょ、彼のために開催された授賞式でした。

 

            (トロフィーを手にした『人生スイッチ』一同

 

主なカテゴリー候補と受賞作品・受賞者(ゴチック体が受賞)

作品賞

Conducta (キューバ)『ビヘイビア』(SKIPシティ映画祭上映)ノミネーション8

La isla mínima  (スペイン)同9

MR. Kaplan   (スペイン、ウルグアイ)同9

Pelo malo    (ベネズエラ、ペルー、アルゼンチン)同8

Relatos salvajes  (アルゼンチン、スペイン)同10『人生スイッチ』公開

 

*監督賞

アルベルト・ロドリーゲス  La isla mínima  (スペイン)

アルバロ・ブレチネル    MR. Kaplan   (スペイン、ウルグアイ)

ダミアン・ジフロン    『人生スイッチ』(アルゼンチン、スペイン)(写真下)

エルネスト・ダラナス   『ビヘイビア』(キューバ)

マリアナ・ロンドン     Pelo malo    (ベネズエラ、ペルー、アルゼンチン)

 


*脚本賞

アルバロ・ブレチネル    MR. Kaplan

ダミアン・ジフロン    『人生スイッチ』

エルネスト・ダラナス   『ビヘイビア』

マリアナ・ロンドン     Pelo malo  

ラファエル・コボス&アルベルト・ロドリーゲス  La isla mínima

 

*男優賞

ベニチオ・デル・トロ    Escobar: Paraiso perdido(スペイン、パナマ)

ハビエル・グティエレス   La isla mínima (スペイン)

ホルヘ・ペルゴリア     La pared de las palabras(キューバ)

レオナルド・スパラグリア  『人生スイッチ』(アルゼンチン、スペイン)

オスカル・ハエナダ     Cantinflas(メキシコ)(写真下)

 


女優賞6名)

エリカ・リバス         『人生スイッチ』(アルゼンチン、スペイン)(写真下)

ジュラルディン・チャップリン  Dólares de arena (ドミニカ共和国、アルゼンチン、他)

ラウラ・デ・ラ・ウス      Vestido de novia キューバ 

レアンドラ・レアル       O lobo atrás da porta ブラジル

パウリナ・ガルシア       Las analfabestas (チリ)

サマンサ・カスティージョ    Pelo malo(ベネズエラ、ペルー、アルゼンチン)

 


*撮影賞:“La isla mínima”のアレックス・カタラン

*オリジナル音楽賞グスタボ・サンタオラジャ『人生スイッチ』

*編集賞パブロ・バルビエリダミアン・ジフロン『人生スイッチ』

*美術賞:クララ・ノタリ他『人生スイッチ』

*録音賞:ホセ・ルイス・ディアス『人生スイッチ』

*ドキュメンタリー賞 O sal da terra”(“The Salt of the Earth”)ヴィム・ヴェンダースジュリアーノ・リベイロ・サルガドの共同監督(2014ブラジル、仏、伊)

*アニメーション賞:“O Menino e o Mundoアレ・アブレウ2014ブラジル)

*初監督作品賞クラウディア・ピントLa distancia mas larga”(2013ベネズエラ)

 

           (ピント監督の“La distancia mas larga”から)

 

★第1回は前年(2013)の1月から12月の作品から選ばれ、ガラは4月に開催されました。製作年ではなく公開年が選定の基本。それで初監督作品賞のようにノミネーションが若干ずれてしまうことがあります。第2回は20141月から20153月に変更され7月開催となりました。第3回からは前年4月から翌年3月までになるのではないでしょうか。

 

★“La distancia mas larga”が選ばれたベネズエラではグッド・ニュースと報じられました。カルメ・エリアスがガラに出席していたのは、本作のヒロインだったからでしょう。ハビエル・フェセルの『カミーノ』で頑迷な母親を演じた女優です。

 

★授賞式に出席した俳優・監督・製作者の顔ぶれ

俳優:マリベル・ベルドゥ、エドワード・ジェムス・オルモス、ピラール・ロペス・デ・アヤラ、ダリオ・グランディネティ、ギジェルモ・フランセジャ、ハビエル・グティエレス、アルベルト・アンマン、カルロス・バルデム、ゴヤ・トレド、インマ・クエスタ、カルメ・エリアス、ジョルディ・モリャ、他

監督:フアン・アントニオ・バヨナ、サンティアゴ・セグラ、フリオ・メデム、他

製作者:アウグスティン・アルモドバル、ホセ・アントニオ・フェレス、他

 

★授賞式は、スペイン国営テレビで中継された。プレゼンターは俳優イマノル・アリアス、女優アレサンドラ・ロサルド、ジャーナリストのフアン・カルロス・アルシニエガス二。米国在住のスペイン語話者を含めると4億人が見られたはずです()

 

★栄誉賞受賞のアントニオ・バンデラスは、プエルトリコ出身ののリタ・モレノからトロフィーを受け取りました。『ウエスト・サイド物語』(1961)でアカデミー賞とゴールデングローブ助演女優賞、他にトニー賞、グラミー賞、エミー賞の受賞者。1931年生れの83歳、伝説的な女優、ダンサー、舞台女優ですから名誉なことでしょう。写真で見る限り83歳には見えない。

 


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第2回イベロアメリカ・プラチナ賞*ノミネーション発表2015年06月11日 21:14

          『人生スイッチ』が最有力候補

 

★プレセレクションの大枠をアップしておりますが、527日正式ノミネーションが発表になりました。アリエル賞2015でイベロアメリカ映画賞を受賞したダミアン・シフロンの『人生スイッチ』(アルゼンチン≂スペイン)が一番手を走っているというのが各国メディアの下馬評です。続いてスペインのゴヤ賞作品賞他受賞の“La isla minima”が二番手を走っている模様です。これから718日の授賞式に向けて賞レースが始まります。『人生スイッチ』の日本公開は725日から。プラチナ栄誉賞アントニオ・バンデラスがアナウンスされました。ゴヤ賞2015で体験済み、今度は緊張しないでしょう。

 


主なカテゴリー候補は以下の通り(13カテゴリー):

作品賞

Conducta        (キューバ)ノミネーション8

La isla mínima  (スペイン)同9

MR. Kaplan   (スペイン、ウルグアイ)同9

Pelo malo    (ベネズエラ、ペルー、アルゼンチン)同8

Relatos salvajes  (アルゼンチン、スペイン)同10、邦題『人生スイッチ』

 

*監督賞

アルベルト・ロドリーゲス  La isla mínima  (スペイン)

アルバロ・ブレチネル    MR. Kaplan   (スペイン、ウルグアイ)

ダミアン・シフロン     Relatos salvajes (アルゼンチン、スペイン)

エルネスト・ダラナス    Conducta     (キューバ)

マリアナ・ロンドン     Pelo malo    (ベネズエラ、ペルー、アルゼンチン)

 

*脚本賞

アルバロ・ブレチネル    MR. Kaplan

ダミアン・シフロン     Relatos salvajes

エルネスト・ダラナス    Conducta 

マリアナ・ロンドン     Pelo malo  

ラファエル・コボス&アルベルト・ロドリーゲス  La isla mínima

 

★なんとまあ、作品賞・監督賞・脚本賞5作品に集中、ほかにも編集賞・美術賞・撮影賞・録音賞も同じ顔ぶれ、もうゲンナリしています。合計23カ国の映画関係者が年に一度集まるお祭りとはいえ、もう少し変化が欲しい。ノミネーションの数が多くても無冠ということもありますが、他の作品は見ていないのかしら。Pelo malo2013年製作と古く、2014年製作が選出対象だから意外なノミネーション。サンセバスチャン映画祭2013のコンペに選ばれ、審査員の全会一致で金貝賞を受賞した作品です。 

 

              (『人生スイッチ』のシフロン監督

 

             (マリアナ・ロンドンの“Pelo malo”)

 

    (脚本賞ノミネーションのラファエル・コボスとアルベルト・ロドリーゲス)

 

*男優賞

ベニチオ・デル・トロ    Escobar: Paraiso perdido(スペイン、パナマ)

ハビエル・グティエレス   La isla mínima (スペイン)

ホルヘ・ペルゴリア     La pared de las palabras(キューバ)

レオナルド・スパラグリア  『人生スイッチ』(アルゼンチン、スペイン)

オスカル・ハエナダ     Cantinflas(メキシコ)

 

女優賞6名)

エリカ・リバス         『人生スイッチ』(アルゼンチン、スペイン)

ジュラルディン・チャップリン  Dólares de arena (ドミニカ共和国、アルゼンチン、メキシコ)

ラウラ・デ・ラ・ウス      Vestido de novia (キューバ) 

レアンドラ・レアル       O lobo atrás da porta (ブラジル)

パウリナ・ガルシア       Las analfabestas (チリ)

サマンサ・カスティージョ    Pelo malo(ベネズエラ、ペルー、アルゼンチン)

 

★混線模様なのが男優賞と女優賞。キューバのホルヘ・ペルゴリア(『苺とチョコレート』)が久しぶりに登場、動くことも話すこともできない病人役に挑戦、見るのが辛い映画です。監督フェルナンド・ペレス(『永遠のハバナ』)の4年ぶりの新作。キューバと言えばいつもエルネスト・ダラナスの“Conducta”だけだった。 オスカル・ハエナダはスペインの俳優ですが、メキシコ映画、<カンティンフラス>については「アリエル賞2015」でご紹介しています。

 

              (ホルヘ・ペルゴリア)

 

             (オスカル・ハエナダ)

 

★米国国籍のジュラルディン・チャップリンのノミネーションも珍しい。同名小説の映画化、イスラエル・カルデナスとラウラ・アメリア・グスマンの共同監督。フランスからドミニカにやってきて、若い娼婦に魅了されるた中年女性に扮する。『グロリアの青春』で前回の受賞者となったパウリナ・ガルシアが連続でノミネートされている。“Las analfabestas”(2013)はモイセス・セプルベダのデビュー作、ただチリ公開が2014年、今年のチリは寂しい(ベルリン映画祭2015審査員賞グランプリを受賞したパブロ・ララインの“El Club”は第3回になります)。他は音楽賞に『リアリティのダンス』2013)のアダン・ホドロフスキーがノミネートされています。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の四男、アナーキストにも扮していた。音楽賞もなかなかの混線です。 

              (ジュラルディン・チャップリン)

 

★授賞式は718日、スペインのマルベーリャで開催されます。

 

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アリエル賞2015*『グエロス』 が作品賞など 5 賞2015年06月10日 19:29

★第57回アリエル賞2015ノミネーションの大枠はすでにアップ済みですが、527日、受賞結果が発表になりました。アルフォンソ・ルイスパラシオス『グエロス』作品賞・監督賞・監督第1作賞など下馬評通り、新人男優賞セバスティアン・アギーレは『グエロス』とObediencia perfectaの両方でノミネートされていましたが後者で受賞、役の重さからいっても順当な受賞でした。イベロアメリカ映画賞の“Relatos salvajes”は『人生スイッチ』の邦題で公開予定(25日)、ただし監督名がフロンです(当ブログはフロンでご紹介していますが)。

 

          (トロフィーを手にしたアルフォンソ・ルイスパラシオス)

 

作品賞:『グエロス』“ Güeros

監督賞:アルフォンソ・ルイスパラシオス(『グエロス』)

監督第1作賞:『グエロス』

オリジナル脚本賞:リゴベルト・ペレスカノ(Carmín tropical)

脚色賞: エルネスト・アルコセル&ルイス・ウリクサ  (Obediencia perfecta)

 

男優賞:フアン・マヌエル・ベルナル(Obediencia perfecta)

女優賞アドリアナ・パス (La tirisia)

助演男優賞: ノエ・エルナンデス (La tirisia)

助演女優賞イセラ・ベガ (Las horas contigo)

新人男優賞: セバスティアン・アギーレ (Obediencia perfecta)

新人女優賞イサベル・ウエルタ (Seguir viviendo)

 

撮影賞:ダミアン・ガルシア (『グエロス』)

編集賞バレンティナ・ルデュク(Las oscuras primaveras)

音楽賞: エマヌエル・デル・レアル/レナト・デル・レアル/ラミロ・デル・レアル (同上)

特殊効果賞: リカルド・アルビス& Willebaldo Bucio (El crimen del cácaro Gumaro)

美術デザイン賞:クリストファー・ラグネス (Cantinflas)

視覚効果賞:チャーリー・イトゥリアガ (Visitantes)

録音賞 『グエロス』&“Las oscuras primaveras”の2

衣装賞 ガブリエラ・フェルナンデス (Cantinflas)

メイクアップ賞マリパス・ロブレス (Cantinflas)

 

ドキュメンタリー賞:“H20mx (ホセ・コーエン、ロレンソ・アヘルマン)

イベロアメリカ映画賞:“Relatos salvajes”(ダミアン・シフロン)『人生スイッチ』に決定

 

短編アニメーション賞: El modelo Pickman (パブロ・アンヘレス・スマン)

短編フィクション賞:“Ramona”(ジョバンナ・サカリアス)

短編ドキュメンタリー賞:“El penacho de Moctezuma”(ハイメ・クリ)

 

金のアリエル賞Ariel de Oro):ミゲル・バスケスベルタ・ナバロ

 

          
          
          (男優賞と新人男優賞を受賞したベルナルとアギーレ)

★ロード・ムービー『グエロス』が大賞をせしめる結果になりましたが、アリエル賞受賞作品は「一般観客は見に行かない」と皮肉られるようですが、メキシコのヌーベルバーグと評価の高い本作はどうなんでしょうか。確かに昨年のケマダ≂ディエスの『金の鳥籠』(“La Jaula de oro”難民映画祭2014上映)が盛り上がりに欠けたことは、映画アカデミー会長ブランカ・ゲラも認めております。しかしアリエル賞は将来性のある若い監督を応援するのが一つの目的ですから、ここらへんがゴヤ賞とは違う点です。

 

★ハリウッド進出前の、ギジェルモ・デル・トロ(『クロノス』93)、今やオスカー監督となったアルフォンソ・キュアロン(『最も危険な愛し方』91)とアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『アモーレス・ペロス』00)の中堅三羽ガラスも、デビュー作が受賞しています。もっともキュアロンは本作の上映をめぐって資金提供者の政府と揉め、それがハリウッド行きを決心させたという話は有名です。テレビやドキュメンタリーを除くと7~8作と少ないが、受賞歴は山ほどあって自身でも覚えきれないでしょう。3人ともお金のかかる映画を作っているから、もう資金力のないメキシコには戻ってこないかな()

 

★日本でも一部のシネマニアから熱狂的な支持を得ているカルロス・レイガダス『静かな光』07)で受賞、あのブニュエルだって半世紀以上も昔に『忘れられた人々』50)で受賞しています。亡命スペイン人監督が撮ったメキシコ映画でした。「映画アカデミーのオトモダチに賞をやってる」という悪口も聞こえてきますが、文句を言う人は何時でもどこでもいるものです。

 

★一般観客に人気のあったのは、国民的な英雄ともいえるカンティンフラスの伝記映画、セバスティアン・デル・アモのCantinflasでしょう。メキシコのみならずラテンアメリカ全体で尊敬され、チャップリンも認めたという偉大なコメディアンでした。カンティンフラスことマリオ・モレノに扮したスペインのオスカル・ハエナダは男優賞を逃しました。美術・衣装・メイクアップとスタッフ陣が報われ、バランスを取ったという印象です。2014年秋にメキシコで公開されるや、中南米の北から南まで殆どの国で公開されています。ラテンビート上映を期待しています。

 


★政府からの資金援助や報奨金が削減されていくなかで「映画は文化大使の役もしているのだから削減しないで」と『グエロス』のルイスパラシオス監督。喜びのなかでも資金援助削減で映画製作が深刻になりつつある現状を訴えた。

 

金のアリエル賞受賞者は二人。ミゲル・バスケスは特殊効果のベテラン、50作ほど手掛けている。ベルタ・ナバロはメキシコでは指折りのプロデューサー、30作ほど手掛けている。若いころのギジェルモ・デル・トロの才能を発掘して『クロノス』を撮らせ、つづく『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』などを国際的に成功させた。デル・トロも「彼女なくして今日の自分はない」と言うほどの恩人プロデューサーです。エクアドルのセバスティアン・コルデロの『激情』も手掛けている。写真下は編集賞を受賞した娘バレンティナ・ルデュクとのツーショット。

 


関連記事*管理人覚え

アリエル賞2015ノミネーションの記事はコチラ2015429

『グエロス』の記事はコチラ20141031030

ルイス・ウルキサの“Obediencia perfecta の記事はコチラ201491

アリエル賞2014の結果発表『金の鳥籠』の記事はコチラ201465

ダミアン・シフロンのRelatos salvajesの記事

カンヌ映画祭2014の紹介記事201451日/522

トロント映画祭2014の紹介記事2014815

『人生スイッチ』25日公開予定(ヒューマントラスト有楽町他、全国順次ロードショウ)

オフィシャルサイトは  http://jinseiswitch.gaga.ne.jp/


アリエル賞2015*ノミネーション発表2015年04月29日 16:21

           メキシコ「アリエル賞」の授賞式は527

 


モノクロ・コメディ『グエロス』がノミネーション最多の12

 ★マラガ映画祭にかまけている間に映画「新」情報も「旧」になってしまいましたが、まだガラまでには時間があります。マラガ映画祭受賞作品の落ち穂拾いは一旦小休止して、メキシコのアカデミー賞「アリエル賞」の大枠をアップいたします(現在のメキシコ映画アカデミー会長はブランカ・ゲラ)。第57回という回数に驚きますが、57年前はメキシコ映画の「黄金時代」と言われた頃、まだブニュエルがメキシコで映画を撮っていた時代、スペインはフランコ体制が揺るぎもしなかった時代です。ゴヤ賞の2倍の歴史をもっている勘定になります。

 


★さて、ラテンビート2014で上映されたアロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』が最多の12個のノミネーションは嬉しいニュースです。ベルリン映画祭(パノラマ部門)でデビュー作に与えられる「初監督作品賞」やサンセバスチャン映画祭の「ベスト・フィルム&ユース賞」など評価は高く、ラテンビート作品紹介でもかなり詳しく紹介いたしました。

 

カテゴリーは、作品賞・初監督作品賞・監督賞・オリジナル脚本賞・男優賞(テノッチ・ウエルタ)・女優賞(イルセ・サラス)・新人男優賞(セバスティアン・アギーレ)・撮影賞(ダミアン・ガルシア)、オリジナル作曲賞・編集賞・美術賞他など。主な出演者3人が選ばれています。セバスティアン・アギーレは“Obediencia perfecta”とダブルでノミネートされています。作品賞と初監督作品賞の両方にノミネートされており、後者のカテゴリーにはライバルとして、「モントリオール映画祭2014」出品の、クリスティアン・ディアスのGonzalez、マックス・スニノのLos banistas、ルイス・ウルキサのObediencia perfectaなどがノミネートされており混線模様です(当ブログでも紹介)。

 

『グエロス』の記事はコチラ2014103日/1030

クリスティアン・ディアスの“Gonzalez”の記事はコチラ2014821

マックス・スニノの“Los bañistas の記事はコチラ2014821

ルイス・ウルキサの“Obediencia perfecta の記事はコチラ201491

 

   (ノミネーション・プレゼンターのソフィア・エスピノサとルイス・メンデス、
    中央がブランカ・ゲラ会長)

 

★スペインでは320日公開でしたが、前宣伝として監督紹介から受賞歴まで新人監督作品にしては異例のサービスぶりから期待のほどが感じられました。デヴィッド・リンチの後継者とか、ジム・ジャームッシュを思い起させるとか、好意的な批評が多い。前者は製作・監督・脚本・美術など一人で自主制作したカルト映画『イレイザーヘッド』(1977、モノクロ)を、後者も全編モノクロで撮られた『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を指しているようだが、ユーモアの味が似ているかも。ジム・ジャームッシュは本作でカンヌ映画祭1984「カメラ・ドール」新人監督賞を受賞した。比較的ロード・ムービーは好まれるが、窮地に陥ってもタオルを投げないところが魅力なのかもしれない。

 

ライバル作品は何?

オフィシャル・セレクション部門

1)“Carmín tropical リゴベルト・ペレスカノ 10
2 Güeros
アロンソ・ルイスパラシオス  12

3)“Guten Tag, Ramón”ホルヘ・ラミレス≂スアレス 6
4)“La dictadura perfecta”ルイス・エストラーダ 10

5)“ Las oscuras primaveras エルネスト・コントレラス
10

 

       (リゴベルト・ペレスカノ、モレリア映画祭2014の記者会見にて)

 

★(4)のルイス・エストラーダは既に“El infierno”(2010)と“La ley de Herodes”(1999)で受賞している。本作も辛口コメディ、興行的にも観客の反応はよく成功作のようです。エルネスト・コントレラスはベラクルス生れ、本作は長編第2作目、作品賞のほか監督賞にも選ばれている。モレリア映画祭2014での評価も高く、特にキャスト陣がよく、下馬評では女優賞のイレーネ・アスエラ、助演女優賞のセシリア・スアレス、新人男優賞のハイデン・マイヤーベルクは受賞圏内にいるとか。リゴベルト・ペレスカノの(1は、モレリア映画祭2014の作品賞を受賞している。本映画祭はメキシコ映画祭の老舗グアダラハラを抜いて最近では重要度が増している。ここでの作品賞受賞は大きいインパクトになる。作品賞のほか監督賞・オリジナル脚本賞、助演男優賞にルイス・アルベルティ、他はオリジナル作曲賞・撮影・編集・録音など技術部門が多い。(3)のホルヘ・ラミレス≂スアレスはプロデューサーとして出発、監督デビューは1995年のコメディ“Morena”、本作は4作目、作品賞のほか監督賞にも、かつてノミネーションはあるが受賞はまだ。ラモン役のクリスチャン・フェレルが男優賞にノミネートされている。

 

イベロアメリカ映画賞部門

1)“Conductaエルネスト・ダラナスキューバ2012
2
)“La isla mínima アルベルト・ロドリゲス(スペイン)2014
3
)“Mr. Kaplan  アルバロ・ブレッヒネル Brechner(ウルグアイ=西=独)2014
4
)“Pelo malo マリアナ・ロンドン(ベネズエラ)2013
5
)“Relatos salvajes”ダミアン・シフロン(アルゼンチン=西)2014

 

             (右側がハコボ役のエクトル・ノゲラ)

 

★(1)はエルネスト・ダラナスが「マラガ映画祭2014」ラテンアメリカ部門の作品賞を受賞した作品。2012年製作の旧作ですがワールド・プレミアは2014年と時間差があります。何しろキューバ映画芸術産業庁ICAICが出資して製作した映画は最近では本作1本しかありません、本当に寂しい限りです。ゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞にもノミネーションされました。そういう意味では(4)のマリアナ・ロンドン映画も2013年製作、サンセバスチャン映画祭2013の「金貝賞」受賞作品ですが、メキシコ・リリースが201411月なので今年ノミネートされました。何しろ本国のベネズエラでさえ国際映画祭で数々の受賞歴を重ねたすえに、やっとこさ20144月に公開されたんだから。ベネズエラの人種差別や格差社会を描いているから権力者には不都合なんでしょうね。アルバロ・ブレッヒネル3)はゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞にノミネーションされたスリラー仕立てのコメディ、75歳のミスター・カプランを演じたエクトル・ノゲラは1937年チリのサンチャゴ生れ、等身大の主人公ハコボに扮した。本作もゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞のノミネーション作品。(2)と(5)はさんざ書きまくったので割愛です。後者は日本夏公開が決定しています(2015年公開映画リストはコチラ⇒2015323)。

第2回イベロアメリカ・プラチナ賞はスペインのマルベリャで開催2015年03月28日 17:20

              授賞式は夏本番の718

★第1回の授賞式は45日パナマで開催されましたが、今年は718日と夏本番に開催されるようです。マルベリャはコスタ・デル・ソルの有数な観光地、避暑客を当て込んでいるのでしょうか。ホテルの予約は大変かもしれない。さて、各国代表作品は発表されていますがノミネーションは1ヵ月前として大分先のことになります。イベロアメリカ映画の<オスカー賞>という触れ込みですから、だいたいの作品が既に当ブログに登場しております。

 


★スペインでは分かりきったことですが、ゴヤ賞ノミネーションが殆んどです。例えば最優秀作品賞は『エル・ニーニョ』、“La isla mínima”、“Magical Girl”の3作品、Flowers &フラワーズ』が落ち、監督がアルゼンチン人なのでそちらにまわった“Relatos salvajes”の2作品が Ocho apellidos vascos”と“10.000 km”に入れ替わりました。監督賞はアルベルト・ロドリゲスとダニエル・モンソン、オリジナル脚本賞はカルロス・ベルムトとアルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボスという具合です。

 

男優賞のカテゴリーでは、ハビエル・グティエレス、ホセ・サクリスタン、ダニ・ロビラの3人、オスカル・ハエナダが選ばれているのは、メキシコ映画“Cantinflas”のカンティンフラスに扮したからです。女優賞のカテゴリーでは、バルバラ・レニー、エレナ・アナヤ、ナタリア・テナ、唯一重ならなかったのはベネズエラ=スペイン合作の“La distancia más larga”主演のカルメ・エリアスだけのようです。

 

★プレセレクションの候補を読み上げたのがフアン・ディエゴ・ボトとアドリアナ・ウガルテでした。アドリアナはアルモドバルの新作“Silencio”の主役に抜擢され、ペドロの<新ミューズ>となりました。そんなこともあって選ばれたんでしょうか。エル・デセオのアグスティン・アルモドバルは本賞を主催するEGEDAの副会長さんですから()

 

   (フアン・ディエゴ・ボト、アドリアナ・ウガルテ、右端エンリケ・セレソ)

 

★正式なノミネーションが発表になりましたら、作品名、製作者、監督、俳優など昨年同様アップすることにします。スペイン映画芸術アカデミー前会長エンリケ・ゴサレス・マチョ(去る20152月、ゴヤ賞授賞式後にアントニオ・レシネスが新会長に就任しました)、ICAA会長ロレナ・ゴンサレス・オリバレス、EGEDA会長エンリケ・セレソが本賞を組織しています。ハビエル・マリスカル制作のトロフィーが誰の手に渡るかは718日に分かります。

Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales の頭文字。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための管理交渉団体です。1990年創設ですが活動は1993年から、現会長はエンリケ・セレソ、副会長はアグスティン・アルモドバル。

 

関連記事*管理人覚え

○第1イベロアメリカ・プラチナ賞の記事はコチラ2014220日/318日/417
○アルモドバル新作Silencio”の記事はコチラ2015315


『バードマン』*アカデミー賞2015作品賞2015年03月06日 16:46

      メキシカン黄金時代の再来か、アレハンドロ・G・イニャリトゥ『バードマン』

★昨年のアルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』に続いて、今年もメキシコ出身の監督がオスカーを手にした。今回アレハンドロ・G・イニャリトゥ1963年メキシコ・シティ生れ)は、作品賞・監督賞・脚本賞のトリプル受賞だから驚きだ。手は2本しかないからオスカー像が一度に持てない()。因みに撮影賞のエマニュエル・ルベツキ1964メキシコ・シティ生れ)もメキシコからの移民、それで「メキシカン黄金時代」なんて書かれることになったが、勿論どちらもメキシコ映画じゃないし、スペイン語でもない。ルベツキは昨年の『ゼロ・グラビティ』に続いて2度目の受賞、二人は「エル・ネグロEl Negro」「エル・チボEl Chivo」とニックネームで呼び合う仲、同時受賞でヨカッタヨカッタ。 

          

         (オスカー像が一度に持てないエル・ネグロことゴンサレス・イニャリトゥ)

 

 
2度目のオスカー像を手に、エル・チボことエマニュエル・ルベツキ)

 

★『BIUTIFUL ビューティフル』の後、少しスランプ気味で引きこもっていたが、禅の瞑想のお蔭でカオスから抜け出られたという。常に自身の根っこにある「メキシコ」に拘りつづけていたが、それが吹っ切れた。ここに新生ゴンサレス・イニャリトゥが誕生した。キャストにはスペイン語ができない人を選び、主役には主人公と同じ辛い体験をしたことのある俳優を探すことにした。そしてマイケル・キートンに行き着いたという訳らしい。こうして『バードマン』は動き出した。ルベッキによると不自然さを捨てるため全編長回しで撮りたかったが、それは無謀すぎるので、観客にはあたかもそう見えるようにするのに苦労した。

 

             

           (主演男優賞を逃したマイケル・キートン)

 

★監督紹介は日本語のウイキィでも読めるし、本作の公式サイトもアップされているからキャスト、プロット以下は割愛、下記に長編フィルモグラフィーだけ記しました。代表作5作がすべて日本語で鑑賞できる数少ない監督の一人。メキシコの監督とはいえ母国語のみはデビュー作『アモーレス・ペロス』だけ、本作のカンヌ映画祭2000での成功がアメリカ行きの切符を可能にした。日本では監督の名前を知らなくても第1話に出演したガエル・ガルシア・ベルナル(写真下)の名前なら知っている。同年の東京国際映画祭には監督以下スタッフとキャストが来日して、下馬評通りグランプリを受賞しました。更に『バベル』がカンヌ映画祭2006コンペにノミネーション、メキシコ初の監督賞を受賞しました。カルロス・レイガダス2012年、アマ・エスカランテ2013年ですからずっと後ですね。 

                              

                                (『アモーレス・ペロス』のG・G・ベルナル)

★他にスペイン語が主言語なのはBIUTIFUL ビューティフル』だけです。というわけで当然ながらスペイン語関係の賞は少ない。デビュー作『アモーレス・ペロス』がメキシコのアリエル賞ファースト作品賞他、ハバナ映画祭ファースト作品賞他、ボゴタ映画祭作品賞他、チリのバルディビア映画祭ファースト作品賞受賞ぐらいでしょうか。ゴヤ賞は『BIUTIFUL ビューティフル』がオリジナル脚本賞にノミネートされただけ、メキシコの監督というよりハリウッド監督という捉え方をされています。移民監督ですが、国籍は現在もメキシコです。メキシコ「移民」というと「不法」をイメージしがちですが、彼はアルフォンソ・キュアロンのようなセレブ階級ではありませんが、中流階級の出身、「列車の旅」組ではありません。 

 

★オスカー作品賞受賞でも興行成績は飛躍的に伸びるかどうか。元夫婦対決と話題になった『ハートロッカー』と『アバター』、妻に軍杯が揚がったがトータル22億円、対する夫の『アバター』はケタ違いの400億円と言われている。『バードマン』の最近の数字は45億円(米国)、製作費1800万ドルは充分回収できているが、今後どれだけ増やせるか。20152月までに世界の殆どの国が公開しており、日本の410日公開がドン尻のようで、話題は早くも2016年のアカデミー賞予想に移っている。

 

*長編フィルモグラフィー*

2000Amores perros”『アモーレス・ペロス』(メキシコ)西語 

200321 Grams”『21グラム』(米国)英語

2006Babel”『バベル』(米国・仏・メキシコ)英語・アラビア語・西語・日本語・
   ベルベル語他

2010Biutiful”『BIUTIFUL ビューティフル』(メキシコ・西)西語・中国語・ウォロフ語

2014Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance

 『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(米国)英語

2016The Revenant**(米国)英語、(撮影中)

 

ウォロフ語は、セネガル、ガンビア、モーリタニアにかけて住むウォロフWolof族の言語。

**The Revenant”は、実在した毛皮取りのワナ猟師ヒュー・グラス(17801833)を主人公にした伝記小説の映画化。舞台は19世紀初頭のアメリカ、レオナルド・ディカプリオ主演です。雪のカナダで撮影中。撮影監督は勿論エマニュエル・ルベッキです。20161月米国公開が決定しています。