第22回マラガ映画祭2019結果発表*マラガ映画祭2019 ⑥ ― 2019年03月24日 23:20
金のビスナガはカルロス・マルケス=マルセとアレハンドラ・マルケス・アベジャ
★3月23日、セクション・オフィシアル(長編・短編・ドキュメンタリー)以下、各セクションの受賞結果が発表になりました。「金のビスナガ」には、12,000ユーロの副賞が付いています。
★セクション・オフィシアルの審査員は、委員長パトリシア・フェレイラ(スペインの監督・脚本家)以下、アグスティナ・チアリーノ(ウルグアイのプロデューサー)、アンドレス・バヨナ(コロンビア、ボゴタ映画祭総ディレクター)、ディエゴ・サン・ホセ(スペイン、脚本家)、ナチョ・ルイス・カビリャス(スペイン、フィルム編集者)の5人でした。
◎金のビスナガ(スペイン)副賞12,000ユーロ
「Els dies que vindran」(「Los días que vendrán」)監督カルロス・マルケス=マルセ
◎金のビスナガ(イベロアメリカ)副賞12,000ユーロ
「Las niñas bien」監督アレハンドラ・マルケス・アベジャ
◎審査員特別賞(銀のビスナガ)
「Esto no es Berlin」監督ハリ・サマ
◎監督賞(銀のビスナガ)
カルロス・マルケス=マルセ「Els dies que vindran」(「Los días que vendrán」)
◎女優賞(銀のビスナガ)
マリア・ロドリゲス・ソト「Els dies que vindran」(「Los días que vendrán」)
◎男優賞(銀のビスナガ)
オスカル・マルティネス 「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」監督サンティ・アモデオ
◎助演女優賞(銀のビスナガ)2人
カロリナ・ラミレス「Niña errante」監督ルベン・メンドサ
マギー・シバントス「Antes de la quema」監督フェルナンド・コロモ
◎助演男優賞(銀のビスナガ)2人
キム・グティエレス「Litus」監督ダニエル・デ・ラ・オルデン
マウロ・サンチェス・ナバロ「Esto no es Berlin」
◎脚本賞(銀のビスナガ)
アレハンドラ・マルケス・アベジャ「Las niñas bien」
◎音楽賞(銀のビスナガ)
アルトゥロ・カルデルス「Buñuel en el laberinto de las tortugas」監督サルバドール・シモー
◎撮影賞(銀のビスナガ)デラックス
アルフレッド・アルタミラノ「Esto no es Berlin」
◎編集賞(銀のビスナガ)
ミゲル・シュアードフィンガー「Las niñas bien」
◎観客賞(銀のビスナガ)
「Antes de la quema」
*以上ですが、金賞の「Els dies que vindran」と「Las niñas bien」、審査員特別賞の「Esto no es Berlin」の3作品に集中しました。また制作会社については、後日作品紹介をする折にアップいたします。
★24日には受賞作10本がアルベニス映画館で上映され、見逃したファンや走り回って時間が取れなかった映画関係者の纏め見の最後のチャンスになっています。上映時間が重なるのですべてを見ることはできませんが、効率よく良作が楽しめます。クロージング作品は、アルバロ・ディアス・ロレンソのコメディ「Los Japón」です。
ラウル・アレバロ、マラガ才能賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑤ ― 2019年03月22日 22:15
受賞者ラウル・アレバロは「モストレスのマラガっ子」
(マラガ才能賞のトロフィを手にしたラウル・アレバロ)
★本映画祭もあっという間に終盤を迎えてしまい、セクション・オフィシアルの第1回上映もほぼ済んだようです。今年は作品紹介ができないうちに受賞結果を待つような事態になってしまいましたが、せめて特別賞だけでも受賞者紹介をいたします。先ず2日目3月17日、セルバンテス劇場で特別賞の二つ目マラガ才能賞―マラガ・オピニオンがラウル・アレバロに授与されました。18日には本映画祭の大賞マラガ―スール賞(俳優ハビエル・グティエレス)、21日にはリカルド・フランコ―マラガ映画祭アカデミー賞(脚本家ラファエル・コボス)の授与式が続きました。今回はラウル・アレバロのキャリア&フィルモグラフィーをアップいたします。
*ラウル・アレバロ監督デビュー作『物静かな男の復讐』の記事は、コチラ⇒2017年01月09日
(授賞式前のインタビューを受けたラウル・アレバロ)
★ラウル・アレバロ Raul Arevalo、1979年マドリード市のベッドタウン、モントレス生れ、俳優、監督。本来ならマドリっ子なのですが、友人知己の多くがマラガ出身者、それで仕事もここマラガと縁が深い。それでいつの間にか「モストレスのマラガっ子」と称されるようになった。「人生においてもキャリアにおいても、すべてがマラガに関係がある」と。先輩で親友のアントニオ・デ・ラ・トーレ(1968、ゴヤ賞2019主演男優賞受賞)、大先輩のアントニオ・バンデラス(1960、マラガ映画祭2017「名誉金のビスナガ」受賞)もマラガ出身者。以下、監督デビュー作『物静かな男の復讐』の作品紹介と内容が重なりますが、クリスティナ・ロタが指導する演劇学校で演技を学んだ。しかし俳優志望ではなく、あくまで目標は監督になることだった。
★「私は俳優ですが、私が最も情熱を傾けているのは監督すること」と語るアレバロは、2008年、短編「Un amor」を撮ったあと、念願の長編監督デビュー作「Tarde para la ira」(16『物静かな男の復讐』Netflix、『静かなる復讐』公開)を手掛けるまで8年の歳月を費やした。さいわいベネチア映画祭「オリゾンティ」に正式出品され、出演者のルス・ディアスに女優賞がもたらされた。2017年にはゴヤ賞作品賞、自身は新人監督・脚本賞の2冠、マノロ・ソロが助演男優賞を手にした。フォルケ賞ではドラマ部門の作品賞、フェロス賞では作品・監督・脚本賞、ガウディ賞、サン・ジョルディ賞初監督作品賞と次々に受賞、2017年はまさに黄金の年であった。「俳優として学んだことが大いに役立った」と語る。次回作は「急がずに」脚本を練っているところだという。未だ若い、勝負はこれからです。
(アントニオ・デ・ラ・トーレ主演のデビュー作『物静かな男の復讐』のポスター)
★俳優としては、TVシリーズでデビュー後、2003年ホアキン・オリストレルの「Los abajo firmantes」で映画デビュー、2006年、アントニオ・バンデラスの「El camino de los ingleses」(邦題『夏の雨』)に出演、俳優で出発しながら監督として指揮を執るバンデラスを身近にして、将来の自分に重ね合わせて観察したようです。ダニエル・サンチェス・アレバロの「AzulOscuroCasiNegro」(邦題『漆黒のような深い青』)に出演、俳優ユニオン新人賞を受賞した。両作ともラテンビート2007で上映された。後者の共演者がアントニオ・デ・ラ・トーレとキム・グティエレスで、デ・ラ・トーレとは『デブたち』や『マルティナの住む街』でも共演している。ホセ・ルイス・クエルダ監督の「Los girasoles ciegos」で主役を演じ、ハビエル・カマラやマリベル・ベルドゥとわたり合った。アルベルト・ロドリゲス監督の『マーシュランド』では、マドリードから地方に左遷された刑事役を、今回マラガ―スール賞を受賞するハビエル・グティエレスと好演した。脇役が多かったこともあり、映画だけでも出演本数は40作ぐらいになります。以下に主な作品だけ列挙しておきます。現在は2019年公開予定のポロ・メナルゲスの「El pian」の撮影が終わったところの由、アントニオ・デ・ラ・トーレとチェマ・デル・バルコが共演する。
*主なフィルモグラフィー&受賞歴*
2006「AzulOscuroCasiNegro」『漆黒のような深い青』ダニエル・サンチェス・アレバロ監督
(ラテンビート2007)俳優ユニオン新人賞を受賞
2007「Siete mesas de billar francés」グラシア・ケレヘタ監督、俳優ユニオン助演男優賞受賞
2008「Los girasoles ciegos」ホセ・ルイス・クエルダ監督、
2009「Gordos」『デブたち』ダニエル・サンチェス・アレバロ(スペイン映画祭2009)
ゴヤ賞2010助演男優賞受賞
2010「Balada triste de trompeta」『気狂いピエロの決闘』アレックス・デ・ラ・イグレシア
2010「También la lluvia」『ザ・ウォーター・ウォー』イシアル・ボリャイン
2011「Primos」『マルティナの住む街』同上(ラテンビート2011)俳優ユニオン助演男優賞受賞
2013「Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エクサイテッド!』ペドロ・アルモドバル
2014「Las ovejas no pierden el tren」仮題「羊は電車を逃さない」
アルバロ・フェルナンデス・アルメロ、セルバンテス文化センター土曜映画会(英語字幕)
2014「La isla mínima」『マーシュランド』公開、アルベルト・ロドリゲス監督、
サン・ジョルディ賞2015スペイン映画男優賞
2016「Cien años de perdón」『バンクラッシュ』ダニエル・カルパルソロ
2018「El aviso」ダニエル・カルパルソロ
2018「Mi obra maestra」ガストン・ドゥプラット
*『物静かな男の復讐』の作品紹介は、コチラ⇒2017年01月09日
*『マーシュランド』の作品紹介は、コチラ⇒2015年01月24日
セクション・オフィシアル(後半)*マラガ映画祭2019 ④ ― 2019年03月19日 16:09
『オルフェ』のカルロス・ヂエギスの「O grande circo mistico」は目玉か?
★ノミネーション22作のうち、前回11作までアップした残りをご紹介します。グラウベル・ローシャと一緒にブラジルのシネマ・ヌーヴォの一人だったカルロス・ヂエギスの新作「O grande circo mistico」、『笑う故郷』のオスカル・マルティネスやアレックス・デ・ラ・イグレシアの常連カルロス・アレセス、コメディに引っ張り凧のイングリッド・ガルシア・ヨンソンが活躍する、サンティ・アモデオのコメディ「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」、2013年に撮ったデビュー作「La Plaga」がガウディ賞以下、数々の国際映画賞を攫ったネウス・バリュスの第2作目「Staff Only」などがエントリーされています。デビュー作もマラガ映画祭に出品されたのでした。
*前半同様、タイトル、製作国、製作年、監督名、主な出演者の順です。
*セクション・オフィシアルのノミネーション(後半)*
12)La banda スペイン、2019年
ロベルト・ブエソ(バレンシア、1986)デビュー作
キャスト:ゴンサロ・フェルナンデス、シャルロット・ベガ、ペポ・リョピス Llopis、
ハビ・ヒネル Giner、ウーゴ・ルベルト
13)Las niñas bien メキシコ、2018年
アレハンドロ・マルケス・アベジャ(サン・ルイス・ポトシ)第2作目
キャスト:イルセ・サラス、カサンドラCiangherotti、パウリナ・ガイタン、
ジョアンナ・ムリリョ
14)Litus スペイン、2019年
ダニエル・デ・ラ・オルデンの第4作目
キャスト:ベレン・クエスタ、アドリアン・ラストラ、アレックス・ガルシア、
マルタ・ニエト、キム・グティエレス、ミケル・フェルナンデス
15)Los helechos ペルー、2018年
アントリン・プリエトのデビュー作
キャスト:ヌリア・フリゴラ・トレンテ、ミキ・バルガス・ナバロ、マリアナ・パラウ、
マフェル・グティエレス、Nooei・カナシロ
16)Niña errante コロンビア、2018年
ルベン・メンドサ(コロンビア、1980)第4作目(ドキュメンタリー、短編多数)
キャスト:ソフィア・パス・ハラ、カロリナ・ラミレス、リナ・マルセラ・サンチェス、
マリア・カミラ・メヒア
17)O grande circo mistico(El gran circo místico)ブラジル=ポルトガル=フランス、
2018年(字幕付き)
カルロス・ヂエギス(ブラジルのマセイオ、1940)ブラジルのシネマ・ノーヴォの監督
キャスト:ヘスイータ・バルボサ、ブルナ・Linzmeyer、ヴァンサン・カッセル、
ラファエル・ロサノ、アントニオ・ファグンデス、マリアナ・シメネス
- 18)¿ Qué te juegas ? スペイン、2018年
イネス・デ・レオン(、1990年)デビュー作
キャスト:レティシア・ドレラ、アマイア・サラマンカ、ハビエル・レイ、
マリアン・エルナンデス、ダニエル・ペレス・プラダ、サンティアゴ・セグラ
19)Sordo スペイン、2018年
アルフォンソ・コルテス=カバニリャス 第2作目
キャスト:アシエル・エチェアンデア、マリアン・アルバレス、ウーゴ・シルバ、
アイトル・ルナ、イマノル・アリアス、ルス・ディアス、ハイメ・マルティン
20)Staff Only スペイン=フランス 2019年 (字幕付き)
ネウス・バリュス Neus Ballus (バルセロナ、1980)第2作目
キャスト:エレナ・アンドラーダ、セルジ・ロペス、Diomaye A. Ngom、イアン・サムソ、
Madeleine C. Ndong
21)Vigilia en agosto アルゼンチン、2019年
ルイス・マリア・メルカド(アルゼンチンのコルドバ生れ) デビュー作
キャスト:リタ・パウルス、マリア・ヒオレンティーナ、エバ・ビアンコ、Michel Noher、
マキシミリアノ・ビニ、アドリアナ・ビアレ・ベガ
22)Yo, mi mujer y mi mujer muerta スペイン=アルゼンチン 2018年
サンティ・アモデオ(セビーリャ、1969)第5作目
キャスト:オスカル・マルティネス、カルロス・アレセス、イングリッド・ガルシア・ヨンソン
★長編セクション・オフィシアルのノミネーション作品は以上です。コンペティション外は、オープニング作品アレホ・フラの「Taxi a Gibraltar」とクロージング作品アルバロ・ディアス・ロレンソの「Los Japón」の2作、共にダニ・ロビラ主演のコメディです。
(「Los Japón」のマリア・レオンとダニ・ロビラ)
セクション・オフィシアル*マラガ映画祭2019 ③ ― 2019年03月18日 14:13
ベテランから新人のデビュー作まで22作品が勢揃いしました
★ラウル・アレバロのマラガ才能賞の授与式の様子も入ってきておりますが、まずは長編コンペティション部門に選ばれた22作品のご紹介から。以前はスペインとラテンアメリカ諸国に大別され審査員も別でしたが、現在は一括されています。1国だけで製作できる時代が終わったからでしょうか。特にラテンアメリカ諸国ではほとんどが合作です。「金のビスナガ」は各1個ずつ両方に与えられることになりました。以下、タイトル、製作国、製作年、監督名、主なるキャストの順で2回に分けてアップします。言語がカタルーニャ語、あるいはポルトガル語は字幕付き上映です。
★審査員は委員長パトリシア・フェレイラ(スペインの監督・脚本家)以下、アグスティナ・チアリーノ(ウルグアイのプロデューサー)、アンドレス・バヨナ(コロンビア、ボゴタ映画祭総ディレクター)、ディエゴ・サン・ホセ(スペイン、脚本家)、ナチョ・ルイス・カビリャス(スペイン、フィルム編集者)の5人です。
(審査委員長パトリシア・フェレイラ)
*セクション・オフィシアルのノミネーション22作品(前半)*
1)522.Un gato, un chino y mi padore スペイン=ポルトガル、2019年 (字幕付き)
パコ・R. バニョ(セビーリャ、1971)
キャスト:ナタリア・デ・モリーナ、アルベルト・ホ・リー、ミゲル・ボルヘス、
セルジ・ロペス
2)7 razones para huir スペイン、2018年
エステベ・ソレル、ヘラルド・キント、ダビ・トラス(共同監督)
キャスト:エンマ・スアレス、ロラ・ドゥエニャス、セルジ・ロペス、
フランセスク・オレリャ
ホタ・リナレス
キャスト:ポル・モネン、ハイメ・ロレンテ、アンドレア・ロス、マリア・ペドラサ
4)Aire アルゼンチン、2018年
アルトゥロ・カストロ・ゴドイ(カラカス、1986)
キャスト:フリエタ・ジルベルベルグ、マリア・オネット、カルロス・ベジョソ
5)Antes de la quema スペイン、2019年
フェルナンド・コロモ(マドリード、1946)
キャスト:サルバ・レイナ、マヌエラ・ベラスコ、マギー・シバントス、ホアキン・ヌニェス
6)Buñuel en el laberinto de las tortugas スペイン=オランダ、2019年
サルバドール・シモー
7)El despertar de las hormigas コスタリカ=スペイン、2019年
アントネジャ・スダサシAntonella Sudasassi(コスタリカのサン・ホセ、1986)
キャスト:ダニエラ・バレンシアノ、レイナル・ゴメス、イザベラ・モスコソ
8)El doble mas quince スペイン、2019年
ミケル・ルエダ(1980)
キャスト:マリベル・ベルドゥ、ゲルマン・アルカラス
カルロス・マルケス=マルセ(バルセロナ、1983)
キャスト:マリア・ロドリゲス、ダビ・ベルダゲル
10)Esto no es Berlin(This is not Berlin)メキシコ、2019年
ハリ・サマ
キャスト:ハビアニ・ポンセ・デ・レオン、ホセ・アントニオ・トレダノ、ヒメナ・ロモ
11)Insumisas キューバ、2018年
フェルナンド・ぺレス(ハバナ、1944)&ラウラ・カサドール(ジュネーブ、1983)
キャスト:シルビエ・テストゥダ、Yeni Soria、アントニオ・ブイル、エクトル・ノアス
★長くなるので後半部分は次回にアップします。
「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞」授与式*マラガ映画祭2019 ② ― 2019年03月17日 17:00
特別賞第1弾―フリア・グティエレス・カバのビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞
(メイン会場セルバンテス劇場前の人だかり、2019年3月15日)
★マラガ映画祭2019の開会式はメイン会場テアトロ・セルバンテスで開催されました。8時開催にもかかわらず、明るいうちから劇場前は赤絨毯を踏むセレブたちを待つファンでいっぱい、次々に到着するシネアストたちも気軽にスマホにおさまっていました。開会式司会者ルイス・サエラの「マラガはもっとも輝かしいスペインの映画祭の一つ、映画の質の高さを競い合う国際的な映画祭としても衆目の的になっています」という挨拶で幕を開けました。ルイス・サエラ(サンティアゴ・デ・コンポステラ1966)はロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」でゴヤ賞2019助演男優賞を受賞したばかり、1987年、バジェ=インクランの戯曲をホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスが映画化した『聖なる言葉』でデビュー、数々のTVシリーズに出演している。いずれ「El reino」でご紹介したい。
(開会のスピーチをする俳優ルイス・サエラ)
★本日もっとも感動的だったのは、特別名誉賞の一つ「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ」賞の授与式でした。この賞は2015年から始まり、過去の4人の受賞者は、フリエタ・セラノ、エミリオ・グティエレス・カバ(フリアの弟)、フィオレリャ・ファルトヤノ、モニカ・ランダルです。今年は不屈の精神と疲れを知らない長い女優人生を歩んだ女性に光が当たりました。黒のパンタロン・スーツの受賞者フリア・グティエレス・カバ(マドリード1932)は、86歳という年齢にはとても思えない若々しさで登壇しました。(キャリア&フィルモグラフィーは後述)。こんなに颯爽と凛としていられるなら「86歳まで生きていても悪くない」と感じさせる爽やかさだった。「映画が大好きで小さいときから女優を夢見ていましたが、映画は生きていくうえで避けられない孤独を癒す仲間でした」とスピーチした。
(颯爽と登壇したフリア・グティエレス・カバ)
★「映画は私に喜びとチャンスを与えてくれた」と受賞者は心境を吐露した。彼女にとって如何に映画が重要であったかをセルバンテス劇場を埋め尽くした人々と共有した。映画の黎明期から共に歩んできた彼女と同世代の俳優たちにとって映画はとても意味のあることでした。映画は架空の世界ではあっても素晴らしいものであったと語った。彼女の家族は19世紀から舞台俳優として有名な一族ですが、当時女優になることは、品位を落とすとして非常に厳しいものがあった。そのように評価されることのなかった女性たち、彼女を支えてくれた家族、仲間たちへの感謝が述べられた。
(受賞の喜びを語るフリア・グティエレス・カバ)
★フィナーレは、今年のオープニングとクロージングの両方に主演しているダニ・ロビラにマラガの特別栄誉のビスナガのトロフィーが授与された。彼は前回ご紹介したようにマラガが生れ故郷、マラガ市の親善大使も務めていることが評価されたようです。まさに故郷に錦を飾ることができました。オープニング作品はコンペティション外のアレホ・フラの長編第2作「Taxi a Gibraltar」というアクション・コメディ、共演のイングリッド・ガルシア=ヨンソンも「アンダルシアのマラガ才能賞」を受賞するとアナウンスされています。クロージング作品は、これもコンペティション外ですが、アルバロ・ディアス・ロレンソのコメディ「Los Japón」です。タイトルから想像できるように17世紀初頭の日本に題材をとっています。お相手の女優はマリア・レオンです。両作とも字幕入りで観られるかな、期待しています。
(特別栄誉のビスナガのトロフィを手にしたダニ・ロビラ)
*フリア・グティエレス・カバのキャリア&フィルモグラフィー*
★彼女の一族は150年前の曾祖父パスクアル・アルバの時代から舞台俳優一家だった。共に俳優だったエミリオ・グティエレス・エステバンを父にイレネ・カバ・アルバを母に、1932年マドリードで生まれた。上記した2016年の受賞者エミリオ・グティエレス・カバは弟、姉妹イレネと3人姉弟。祖母、伯父伯母、従兄弟などに俳優や映画製作者を多数いる。1964年、舞台演出家のマヌエル・コジャド・アルバレスと結婚、夫は2009年に鬼籍入りしている。
★舞台デビューは1951年、1960年フアン・アントニオ・バルデムの「A las cinco de la tarde」で映画デビュー、サン・ホセ賞スペイン映画女優賞を受賞した。以降舞台中心だが併行して映画やTVシリーズにも出演している。他に同監督の「Nunca pasa nada」でシネマ・ライターズ・サークルCEC賞1963女優賞とフォトグラマス・デ・プラタ俳優賞、ホセ・ルイス・ガルシの「You're the One(una historia de entonces)」(00)でゴヤ賞2001助演女優賞、CEC賞2001助演女優賞を受賞している。本作では監督賞他を受賞した話題作だった。フェルナンド・パラシオスの「La gran familia」(63)が『ばくだん家族』の邦題で公開されているほか、ギリェム・モラレスの『ロスト・アイズ』(10)にも出演している。
(最もエレガントと称賛されたアルマーニを着たフリア、ゴヤ賞2001助演女優賞)
★演劇界の最高賞と言われるMax栄誉賞を2012年に受賞している。2017年にはアメリカの劇作家A.R.バーニーの新バージョン「Love Letters」(スペイン題「Cartas de amor」)を、84歳にして主役を演じて話題になった。共演はミゲル・レリャン。
(Max栄誉賞受賞のフリア、2012年)
(「Cartas de amor」の共演者ミゲル・レリャンとフリア、2017年3月)
★TVシリーズとしては、主役を演じた「Buenas noches, senores」(72)のあとブランクがあったが、今世紀に入ってから「Los Serrano」(03~08)、「Águila Roja」(11~12)、「Estoy vivo」(17~18)などに出演している。疲れを知らない女優と呼ばれる所以です。
(左から3人目フリア、アントニオ・レシネス、ベレン・ルエダなど、「Los Serrano」)
(左から、弟エミリオ、売り出し中の孫イレネ・エスコラル、フリア)
第22回マラガ映画祭2019開幕*特別賞を受賞するシネアストたち ① ― 2019年03月15日 18:08
マラガの大賞「マラガ―スール賞」は俳優のハビエル・グティエレス
(彩り鮮やかな第22回マラガ映画祭2019のポスター)
★昨2018年は異例の4月開催でしたが、今年は以前の3月に戻りました。1998年に産声を上げたマラガ映画祭も22回目を迎えました。3月15日20:00時開幕、メイン司会者は俳優のルイス・サエラ、ハビエル・リモン&ネジャ以下ミュージシャンたちがバックを盛り立てるはずで、フィナーレを飾るのはマラガオペラ合唱団、オープニング作品はアレホ・フラのコメディ「Taxi a Gibraltar」、マラゲーニョのダニ・ロビラ主演、ホアキン・フリエル、イングリッド・ガルシア=ヨンソンなどが共演する。24日に結果発表があり閉幕します。お祭り好きのアンダルシアで、春を待ちかねた観客が押し寄せることでしょう。時差を考慮すると明日の朝に第一報が届くはずです。
(左から、ホアキン・フリエル、イングリッド・ガルシア=ヨンソン、ダニ・ロビラ)
★昨年のマラガ-スール賞は、『シェイプ・オブ・ウォーター』がブレイクしたメキシコのギレルモ・デル・トロ監督でしたが、今年はスペインの俳優、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』(14)で、銀貝賞、ゴヤ賞、フォルケ賞、フェロス賞、サンジョルディ賞など貰える賞をひとり占め、最近ではハビエル・フェセルの「Campeones」に主演した俳優ハビエル・グティエレスが受賞することになりました。特別賞は5つありますが、トロフィー授与は各受賞者のスケジュールに合わせて映画祭開催中に渡される。キャリア&フィルモグラフィーはそれに合わせて紹介するとして、今回はそれぞれ受賞者名だけアナウンス順にアップしておきます。
◎マラガ―スール賞(1月17日発表)
ハビエル・グティエレス(アストゥリアス1971、俳優)2018年はギレルモ・デル・トロ
◎ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞(1月31日発表)
フリア・グティエレス・カバ(マドリード1932、女優)2018年はモニカ・ランダル
◎マラガ才能賞―マラガ・オピニオン(2月7日発表)
ラウル・アレバロ(マドリード1979、俳優・監督)2018年はロドリゴ・ソロゴジェン
◎レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ(2月11日発表)
セシリア・ロス(ブエノスアイレス1956、女優)2018年はフアン・アントニオ・バヨナ
◎リカルド・フランコ―マラガ映画祭アカデミー賞(2月18日発表)
ラファエル・コボス(セビーリャ1973、脚本家・ショーランナー)
★今年の「金の映画」は、ホセ・ルイス・クエルダのコメディ「Amanece, que no es poco」(89)が公開30周年を記念して選ばれました。これは嬉しいサプライズと喜んでいるファンが多いことでしょう。
(左から、アントニオ・レシネス、ルイス・シヘス、「Amanece, que no es poco」から)
最近のコメント