アナ・カッツの「Sueño Florianópolis」*サンセバスチャン映画祭2018 ㉑2018年09月21日 12:39

       「ホライズンズ・ラティノ」第4弾―カルロヴィ・ヴァリのFIPRESCI受賞作品

 

       

★「ホライズンズ・ラティノ」部門12作品のうち3作が女性監督、うちアルゼンチンのアナ・カッツの新作コメディSueño Florianópolis」は、カルロヴィ・ヴァリ映画祭2018に正式出品され、既に国際映画批評家連盟賞 FIPRESCI ほか審査員特別賞、主演のメルセデス・モランが女優賞を受賞している。アナ・カッツは過去にもサンセバスチャン、カンヌ、サンダンスなどの映画祭にエントリーされている監督、紹介がアルゼンチンに偏ってしまうので迷っていましたが、やはり今年の目玉の一つであるのでアップすることにしました。

 

        

(トロフィーを手に喜びのアナ・カッツとメルセデス・モラン、カルロヴィ・ヴァリFF2018

 

 Sueño Florianópolis(「Florianópolis Dream」)2018

製作:Bellota Films(仏、ドミニク・Barneaud/

    El Campo Cine(アルゼンチン、ニコラス・Avruj/ Laura Cine(同、アナ・カッツ)/

      Groch Films(ブラジル、カミラ・Groch/ Prodigo Films(同、ベト・ガウス)

監督・脚本・製作:アナ・カッツ

脚本:(共)ダニエル・カッツ(アナ・カッツ「Los Marziano」)

撮影:グスタボ・ビアッツィBiazzi(サンティアゴ・ミトレ『パウリナ』

     『エストゥディアンテス』)

編集:アンドレス・タンボルニノ(アナ・カッツ「Mi amiga del parque」)

美術:ゴンサロ・デルガド(『ウィスキー』)

音楽:エリコ・テオバルド(ブラジル)、マクシミリアノ・シルベイラ

      (「Mi amiga del parque」)

製作者:ニコラス・Avruj(エグゼクティブ、アルゼンチン『家族のように』)、ディエゴ・レルマン(アルゼンチン)、カミラ・Groch(ブラジル)、ベト・ガウス(同)、フランセスコ・シビタ(同)、ドミニク・Barneaud(仏)ほか

 

データ:製作国アルゼンチン=ブラジル=フランス、スペイン語・ポルトガル語、2018年、コメディ・ドラマ、106

映画祭・受賞歴:カルロヴィ・ヴァリ映画祭201874日)、国際映画批評家連盟賞・審査員特別賞・女優賞受賞。トロント映画祭(96日)、サンセバスチャン映画祭(924日)、シカゴ映画祭(1012日)、他

 

キャスト:グスタボ・ガルソン(夫ペドロ)、メルセデス・モラン(妻ルクレシア)、ホアキン・ガルソン(息子フリアン)、マヌエラ・マルティネス(娘フロレンシア、フロール)、マルコ・ヒッカ(ブラジル人マルコ)、アンドレア・ベルトラン(マルコの元恋人ラリッサ)、カイオ・ホロヴィッツ(マルコの息子セザル)、他

 

物語1992年夏、ルクレシアとペドロの夫婦は、二人のティーンエイジャーの子供フリアンとフロレンシアを連れて休暇を過ごすため、蒸し暑いブエノスアイレスを逃れてブラジルのリゾート地フロリアノポリスにやって来た。夫婦は少し前から別居をしていたがバカンスの計画は中止しなかった。ブラジル人のマルコの別荘を借り、マルコの元ガールフレンドのラリッサともどもバカンスを満喫することに。浜辺では波乗り、カラオケ、水中散歩、言葉の壁を越えて幾つか恋も生まれ、子供たちは子供たちで、大いにブラジルの休暇を楽しんでいたが、陽気なサンバのリズムにも次第に飽きがきて・・・思わぬ事態に遭遇することに。

 

      

 (左から、メルセデス・モラン、監督、ニコラス・Avruj、カルロヴィ・ヴァリFF2018

 

1990年代のアルゼンチンでは、夏のバカンスはブラジルのリゾート地に行くのが中流階級のステータスだったらしい。国家破産を何度も繰り返し、国際的な援助のお蔭で救われても「喉元過ぎれば熱さを忘れる」が得意な国民は、プライドばかり高く実績に見合わない贅沢好き。現在も通貨ペソの下落でIMFに泣きついている。アルゼンチンはラテンアメリカでは、ブラジルと並んで映画先進国、大いに楽しませてもらっているが、政治経済的には問題国、隣国からは嫌われている。本作のコメディもそんな意地悪な視点から見ると面白いかもしれない。

 

         

      (ブラジルのリゾート地フロリアノポリスにやって来た家族)

 

アナ・カッツ Ana Katz は、1975年ブエノスアイレス生れ、監督、製作者、女優。

2002El juego de la silla

 (デビュー作、SSIFFシネ・エン・コンストルクシオン参加、メイド・イン・スぺインの

  スペシャル・メンション受賞、2003年サバルテギ・ニューディレクターズに正式出品)

2007Una novia errante

  (シネ・エン・コンストルクシオンIndustria賞受賞、カンヌ映画祭「ある視点」正式出品)

2011Los MarzianoSSIFFコンペティション部門正式出品)

2014Mi amiga del parque

 (シネ・エン・コンストルクシオン出品、サンダンス映画祭2016出品、審査員賞・脚本賞受賞)

2018Sueño Florianópolis省略

 

(本作撮影中の監督)

          

★女優としては、自作のEl juego de la silla」「Una novia errante」「Mi amiga del parque」のほか、フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストールの『ウィスキー』04)、パコ・レオンのKIKI~愛のトライ&エラー~(ラテンビート2016)などに出演している。私生活ではウルグアイ出身の俳優、監督ダニエル・エンドレル2007年に結婚、『ウィスキー』では二人ともチョイ役だが共演している。

 

      

 (ベレン・クエスタ、パコ・レオン、アナ・カッツ、『KIKI~愛のトライ&エラー~』) 

 

      

           (ダニエル・エンドレルとアナ・カッツ)

 

★脚本を共同執筆したダニエル・カッツは弟、他に「Los Marziano」も手掛けているほか、Una novia errante」のアシスタント監督、「Mi amiga del parque」に出演している

 

      

 

★本映画祭では3回上映(924日~26日)され、Q&Aには監督、メルセデス・モラン、マヌエラ・マルティネス、製作者のカミラ・Groch、美術を手掛けたゴンサロ・デルガドが登壇予定。デルガドはモンテビデオ出身のアート・ディレクター、監督、脚本家、俳優。美術では『ウィスキー』を手掛けている他、2016年、コメディLas toninas van al Esteを女優のベロニカ・ぺロッタと共同で監督、脚本も共同執筆、共に出演、ぺロッタは主役でした。子供を演じた二人は夫ペドロ役のグスタボ・ガルソンの実の子供だそうです。

追記:ラテンビート2018に邦題『夢のフロリアノポリス』で上映が決定しました。


今年の話題作「メイド・イン・スペイン」*サンセバスチャン映画祭2018 ⑱2018年09月05日 11:53

         11作品のうちデビュー作が5作も選ばれた「メイド・イン・スペイン」

 

   

★今年スペインで公開された話題作を纏めて見ることができる部門、ラテンビート以下ミニ映画祭で公開される可能性が高いので賞には絡みませんがタイトルをアップしておきます。なかには既にNetflixで放映されている作品、例えばラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』なども含まれています。長編デビュー作5作、ベテラン監督作品5作、ドキュメンタリー2作です。マラガ映画祭でプレミアした「Casi 40」、「Les distancies / Las distancias」、「Mi querida cofradia」ほかが含まれています。

 

Casi 40監督ダビ・トゥルエバ(マドリード、1969

★マラガ映画祭2018審査員特別賞銀賞受賞作品

紹介記事は、コチラ20180404 

 

   

 

Les distancies / Las distanciasエレナ・トラぺ(バルセロナ、1976

★マラガ映画祭2018の最高賞「金のビスナガ」、監督賞、主演女優賞(アレクサンドラ・ヒメネス)受賞作品、長編2作目。

紹介記事は、コチラ20180427

 

  

 

Mi querida cofradía」同マルタ・ディアス・デ・ロペ・ディアス(ロンダ、1988

★長編デビュー作、マラガ映画祭2018の観客賞、助演女優賞(カルメン・フロレス)受賞作品  

カルメンは年配のカトリックのマラゲーニャ、人生の夢は女性初となる信徒会の名誉ある会長になること、目下奮闘中であるが、イグナシオという男性会員が・・・。

 

    

 

La enfermedad del domingoラモン・サラサール(マラガ、1973

★ベルリン映画祭2018パノラマ部門正式出品、『日曜日の憂鬱』の邦題でNetflixで放映

紹介記事は、コチラ201802220621

 

   

 

The Bookshop(「La librería」イギリス合作)同イサベル・コイシェ(バルセロナ、1960

★ゴヤ賞2018作品賞・監督賞・脚色賞受賞作品、本邦公開が予告されている。

紹介記事は、コチラ201801070208

 

    

 

Perfectos desconocidesアレックス・デ・ラ・イグレシア(ビルバオ、1965

紹介記事は、コチラ20171217 

 

    

 

Con el viento(「Amb el vent」アルゼンチン・仏合作)

   同Meritxell Colell(バルセロナ、1983

★長編デビュー作、短編ドキュメンタリーを撮っているほか、長編映画8作の編集を手掛けている。本作はベルリン映画祭「フォーラム」部門、グアダラハラ映画祭正式出品、マラガ映画祭2018Zonazine」部門の作品賞受賞作品。将来が期待できる監督。

*モニカは47歳のバレリーナ、父危篤の電話をうけ、20年ぶりに生れ故郷ブルゴスに戻ってくる。既に父は亡くなっており、母親から家の売却を手伝ってほしいと頼まれる。

 

  

 (コンチャ・カナル、モニカ・ガルシア)

 

 

El avisoダニエル・カルパルソロ(バルセロナ、1968

★三大映画祭にノミネートされた経験をもつ、ベテラン監督カルパルソロの最新作。日本では『パサヘス』(96、未公開・TV放映)、『インベーダー・ミッション』(12)、『バンクラッシュ』(16)などが紹介されている。公開が期待できる新作の主役は、『インベーダー・ミッション』にも出演したラウル・アレバロが起用されている。

ダニエル・カルパルソロのキャリア紹介は、コチラ20160703

  

  

 (ラウル・アレバロ、アントニオ・デチェント)  

 

I Hate New Yorkドキュメンタリー 同グスタボ・サンチェス(ハエン、1978

★長編デビュー作、マラガ映画祭2018正式出品作品。2007年から2017年のあいだ、脚本なしでニューヨークのアンダーグラウンドのサブカルチャーを撮り続けた。トランスジェンダーのアマンダ・レポレほか4人のアーティストの怖れと希望を描くエモーショナルな証言で構成されている。監督はジャーナリストでもある。

*追記:ラテンビート2018上映が決定しました。

 

 

 

Trinta lumes / Thirty Soulsディアナ・トウセド(ポンテべドラ、1982

★長編デビュー作、ベルリン映画祭2018「パノラマ」部門、マラガ映画祭2018Zonazine」部門正式出品作品。ガリシア出身だがバルセロナ自治大学付属上級映画学校ESCACで学び、バルセロナに軸足をおいている。長編ドキュメンタリーEn todas as mans15、ガリシア語)はガリシア限定で公開された。ほか短編ドキュメンタリーを撮っている。これまでにドキュメンタリーを含む長短編映画20作以上の編集を手掛けており、なかで昨年のカンヌ映画祭併催の「批評家週間」にエントリーされたラウラ・フェレスの短編ドキュメンタリー「Los desheredados」がDiscovery賞を受賞している。

本作は12歳の少女アルバの物語、生と死の闘いの神秘さを知るため無邪気に出かける旅。

  


   

 

Querido Fotogramasドキュメンタリー 同セルジオ・オクスマン(サンパウロ、1970

★セルジオ・オクスマンSergio Oksmanは、監督、脚本家、製作者。サンパウロでジャーナリズムを、映画をニューヨークで学び、マドリード在住のブラジルの監督。「Una historia para Los Modlin」でゴヤ賞2013短編ドキュメンタリー賞を受賞している。本作は70年の歴史をもつ、スペインの映画月刊雑誌Fotogramas19461115日、バルセロナで創設)への関係者と映画ファンへのオマージュを込めて製作された。20186月、本拠地をバルセロナからマドリードに移したことが報じられている。

出演者は、Toni Ulled Nadal(編集長)以下の編集者、フェルナンド・コロモ、イサベル・コイシェ、J.A.バヨナ、ゴンサロ・スアレス(以上監督)、以下順不同にマリサ・パレデス、アンヘラ・モリーナ、ホセ・サクリスタン、コンチャ・ベラスコ、カルメン・マウラ、アイタナ・サンチェス=ヒホン、エンマ・スアレス、ハビエル・バルデム、レオノル・ワトリング、ベレン・ルエダ、アナ・トレント、他多数。

SSIFF上映922日、スペイン公開105

 

     

(出演のマリサ・パレデス)

 

         

  (Fotogramas」の表紙を飾るのが夢だったというホセ・サクリスタン、20186月号)

 

監督週間にチロ・ゲーラの「Pájaros de verano」*カンヌ映画祭2018 ⑥2018年05月18日 20:20

       婦唱夫随で撮った新作Pájaros de verano」も「監督週間」でした!

 

     

★コロンビアのクリスティナ・ガジェゴチロ・ゲーラの新作Pájaros de veranaoが、「監督週間」のオープニングの光栄に浴しました。最初カンヌ本体のコンペティション入りが噂されていたので、どこかに落ち着くとは予想していました。結局、新作も2015年の話題作『彷徨える河』と同じ「監督週間」でした。オープニング作品に選ばれたのは、前作の成功があったからに違いない。最近の「監督週間」は、作家性のある新人登竜門という枠組を超えてベテラン勢が目につきます。確かにクリスティナ・ガジェゴのデビュー作ではありますが新人とは言えない。カンヌには両監督の他、<ゴッドマザー>的存在の主役を演じたカルミニャ・マルティネス、その娘に扮するナタリア・レイェスホセ・アコスタホセ・ビセンテなどがカンヌ入りしました。

『彷徨える河』の内容&監督キャリア紹介は、コチラ20161201

 

       

    (赤絨毯に勢揃いした、チロ・ゲーラ、ホセ・ビセンテ、カルミニャ・マルティネス、

 クリスティナ・ガジェゴ、ナタリア・レイェス、ホセ・アコスタ、201859日)

 

 Pájaros de verano(「Birds of Passage」)2018

製作:Ciudad Lunar roducciones / Blond Indian Films(以上コロンビア)/ Snowglobe(デンマーク)/ Labodigital / Pimienta Films(以上メキシコ)/ Films Boutique(フランス)、

協力カラコルTV(コロンビア)

監督:クリスティナ・ガジェゴ&チロ・ゲーラ

脚本:マリア・カミラ・アリアス、ジャック・トゥールモンド(『彷徨える河』)

   (原案)クリスティナ・ガジェゴ

音楽:レオナルド・Heiblum(メキシコ1970

撮影:ダビ・ガジェゴ(『彷徨える河』)

編集:ミゲル・シュアードフィンガー(『サマ』『頭のない女』)

美術:アンヘリカ・ぺレア(『彷徨える河』)

衣装デザイン:キャサリン・ロドリゲス(『彷徨える河』『チリ33人 希望の軌跡』)

製作者:カトリン・ポルス(デンマーク)、クリスティナ・ガジェゴ、他共同製作者多数

 

データ:製作国コロンビア=デンマーク、協力フランス=メキシコ、言語スペイン語とWayuuワユー語、2018年、ドラマ、125分、撮影地ラ・グアヒラ県の砂漠地帯、マグダレナ県、シエラ・ネバダ・デ・サンタ・マリア、撮影9週間、201753日クランクアップ。配給Films Boutique(フランス919日公開)、The Orchard(米国公開決定、公開日未定)

映画祭:カンヌ映画祭併催の「監督週間」オープニング作品、59日上映

 

キャスト:カルミニャ・マルティネス(ウルスラ・プシャイナ)、ナタリア・レイェス(ウルスラの娘サイダ)、ホセ・アコスタ(サイダの夫ラパイエット、ラファ)、ジョン・ナルバエス(ラファの親友モイセス)、ホセ・ビセンテ・コテス(ラファの叔父ペレグリノ)、フアン・バウティスタ(アニバル)、グレイデル・メサ(ウルスラの長男レオニーダス)、他エキストラ約2000

 

物語・解説:コロンビアの「マリファナ密売者の繁栄」時代と称される70年代を時代背景に、ラ・グアヒラの砂漠地帯でマリファナ密売を牛耳るワユー族一家の物語。当主ラパイエット・アブチャイベと姑ウルスラ・プシャイナによって統率された一家は、麻薬密売による繁栄を守るために闘う。金力と権力に対する野心と女性たちの地位についての物語。夢と寓話、残酷な現実を絡ませて物語は時系列に進行するが、共同体同士の権力闘争、家族間の争いはワユーの文化、伝統、人生そのものさえ危うくしていくだろう。未だに終りの見えないコロンビアの混乱の始まり、復讐はワユー共同体の原動力として登場する『ゴッドファーザー』イベロアメリカ版。コロンビアの崩壊したアイデンティティを魅力的に語る詩編。                              (文責:管理人)

 

          アマゾンの大河からラ・グアヒラの砂漠に移動して

 

★ある没落したワユー族の若者が繁栄を誇る一族の娘に結婚を申し込む。しかし要求された持参金はとうてい若者が準備できる額ではなかった。そこでマリファナを探していた米国のグループの仲介者になろうと決心する。容易にお金を工面するために始めたはずが、次第に麻薬ビジネスにのめりこんでいく。それは大地に深く根を下ろしたワユーの文化や伝統から遠く外れていくものだった。発端は求婚に過ぎなかった。ヨーロッパの批評家は「コロンビアの麻薬密売の起源のシェイクスピア風悲劇」と評している。この求婚者に扮するのがホセ・アコスタです。

 

★コロンビア北端のラ・グアヒラの砂漠地帯に約1000年前から住んでいるワユー族は、もともとマリファナを栽培していたという。ガジェゴ監督によると、ワユー族の女性たちは人前では口を閉ざしているが、一歩家に入れば政治経済に強い発言力を持っており、背後で男を操っている存在だという。いわば財布の紐を握っていたわけです。そういう女性を中心に据えてコロンビアの「bonanza marimbera マリファナ密売者の繁栄」と言われた197685年の麻薬密売取引を絡ませた映画を、ワユー族の視点で描きたいと長年考えていた。1960年代70年代のラ・グアヒラ地方はまだ資本主義の揺籃期で、米国のマフィアによって近代化された麻薬密売組織によって、たちまち危機に晒されるようになった。時代的にはパブロ・エスコバルのコカインによるメデジン・カルテルが組織される以前の話です。

   

★映画祭での評価は概ねポジティブですが、前作に比べると先が読めてしまう展開のようで、前作のような驚きは期待できないか。前作『彷徨える河』は、アカデミー外国語映画賞にノミネートされたこともあって米国では予想外のロングランだった。というわけで今回The Orchard により早々と米国公開が決定したことはビッグニュースとして報じられている。プロの俳優、カルミニャ・マルティネスナタリア・レイェス、今回が映画デビューのホセ・アコスタ、ワユーのネイティブのホセ・ビセンテ・コテス、などアマ・プロ混成団は、エキストラ2000人、スタッフ75名の大所帯だった。 

     

                             (ナタリア・レイェス、映画から) 

  

★主役のウルスラ・プシャイナを演じるカルミニャ・マルティネスは舞台女優、映画によってカルミニャ、カルミニアと異なるが、IMDbではカルミナでクレジットされている。1996TVシリーズ「Guajira」でデビュー、カルロス・パウラの「Hábitos sucios」(03)、ダゴ・ガルシア&フアン・カルロス・バスケスの「La captura」(12)に出演している。「ウルスラは厳しい女性であるが、情熱的で複雑な顔をもっている」と分析している。ホセ・アコスタは「母語でない他の言語で演じるのは難しいと思われているが、そんなことはない。心を開き人物になりきれば、そんなに難しいことではない」とインタビューに答えている。ナタリア・レイェスは、2015年のTVシリーズ「Cumbia Ninja」全45話に出演、一番知名度がある。「自分が知らなかったワユー族の素晴らしい文化を知ることができた。またラ・グアヒラの名誉を回復する物語に出られた貴重な時間だった」と語っている。  

    

                (中央がウルスラを演じたカルミニャ・マルティネス、映画から)

 

★ゲーラ監督は、砂漠での撮影は「何にもまして辛かった」と顎を出したそうだが、ガジェゴ監督は「ぜーんぜん」とすまし顔、非常にバイタリティに富んだ女性である。これは前作の『彷徨える河』で証明済みでした。ラ・グアヒラは厳しい乾燥地帯で、歴史的に海賊もスペイン人もイギリス人も寄り付かなかった地帯です。

 

クリスティナ・ガジェゴ Cristina Gallego は、1978年ボゴタ生れの製作者、監督。夫チロ(シーロ)・ゲーラとはコロンビア国立大学の同窓生、共に映画テレビを専攻した1998年、二人で制作会社「Ciudad Lunar roducciones」を設立して、ゲーラ作品の製作を手掛けている。200811年、マグダレナ大学で「製作と市場」についてのプログラムのもと後進の指導に当たる。今回Pájaros de verano」で監督デビューした。ゲーラとの間に2児。

 

     

      (第50回「監督週間」のポスターをバックにゲーラ監督とガジェゴ監督、カンヌにて)

 

チロ・ゲーラCiro Guerraは、1981年セサル州リオ・デ・オロ生れ、監督・脚本家。長編デビュー作La sombra del caminante04)は、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭2005で観客賞を受賞。第2Los viajes del viento09)はカンヌ映画祭「ある視点」に正式出品、ローマ市賞を受賞後、多くの国際映画祭で上映された。ボゴタ映画祭2009監督賞、カルタヘナ映画祭2010作品賞・監督賞サンセバスチャン映画祭2010スペイン語映画賞、サンタバルバラ映画祭「新しいビジョン」賞などを受賞。第3作目となる『彷徨える河』15)は、カンヌ映画祭2015併催の「監督週間」に正式出品、アートシネマ賞受賞、第88回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、以下オデッサ、ミュンヘン、リマ、マル・デル・プラタ、インドほか各映画祭で受賞、他にフェニックス賞、アリエル賞(イベロアメリカ部門)、イベロアメリカ・プラチナ賞など映画賞を受賞。2016年にはサンダンス(アルフレッド・P・スローン賞)、ロッテルダム(観客賞)などを受賞。4作目が本作Pájaros de veranoとなる。

 

    

               (本作撮影中のゲーラ=ガジェゴと撮影監督ダビ・ガジェゴ

 

★ゲーラ=ガジェゴの次回作は、2003年のノーベル文学賞受賞者にして2度も英国ブッカー賞を受賞した、南ア出身の小説家ジョン・マックスウェル・クッツェーJ. M. Coetzee の小説Waiting for the Barbarians(「Esperando a los Bárbaros」)の映画化(現在の国籍はオーストラリア)。多くの小説が翻訳され、本書も『夷狄を待ちながら』という難読邦題で刊行されている。年末にモロッコでクランクインの予定。英語で撮るのは初めて、海外での撮影も初めてになります。

追加:第15回ラテンビート2018上映が決定、邦題は『夏の鳥』

 

「監督週間」にロマのレスビアンの愛を語った映画*カンヌ映画祭2018 ④2018年05月13日 16:19

       アランチャ・エチェバリアのデビュー作「Carmen y Lola

 

★「ある視点」は後回しにして、ビルバオ生れの新人アランチャ・エチェバリアのデビュー作Carmen y Lolaについて。女性同士の愛が禁じられているロマ社会で、偏見や差別、家族の無理解と闘って愛を貫徹しようとする十代の娘カルメンとロラの物語。エチェバリア監督談によると、本作は2009年スペインでロマ女性の同性婚第1号となったロサリオとサラのニュースにインスパイアーされて製作したということです。実在の二人はロマの居住が多いグラナダ出身ですが、映画はマドリードの町外れに舞台を移している。スペインでは、2005年同性婚が正式に認められるようになった。「ある視点」でも、ケニアの女性監督ワヌリ・カヒウWanuri Kahiuが首都ナイロビを舞台にして撮った長編デビュー作Rafiki / Friendが、レズビアンの愛をテーマにしている。ケニアでは現在でもケニアの法律や文化、またモラルに反するとして、同性愛は御法度で14年間の禁固刑が科せられる。今作はホモセクシュアルなシーンを理由に本国では上映禁止になった。

 

     

 

 Carmen y Lola2018

製作:TvTec Servicios Audiovisuales

   協賛:ICAA、教育文化スポーツ省、マドリード市、Orange Spain Film madrid

監督・脚本:アランチャ・エチェバリア

音楽:ニナ・アランダ

撮影:ピラール・サンチェス・ディアス

編集:レナート・サンフアン

キャスティング:ディエゴ・ベタンコル、クリスティナ・モレノ

衣装デザイン:テレサ・モラ

メイクアップ:ソレ・パディリャ、グロリア・ピナル

製作者:アランチャ・エチェバリア、ピラール・サンチェス・ディアス

 

データ:スペイン、スペイン語、2018年、90分、撮影地マドリード、サンタンデール(カンタブリア州)、製作費約700,000ユーロ。脚本はSGAE基金(作家編集者協会)が設立したフリオ・アレハンドロ賞の特別メンションを受賞。カンヌ映画祭2018併催の「監督週間」正式出品作品、初監督作品に与えられるカメラ・ドール賞の対象作品に選ばれている。

 

キャスト:サイラ・ロメロ(ロラ)、ロシー・ロドリゲス(カルメン)、モレノ・ボルハ(ロラの父パコ)、ラファエラ・レオン(ロラの母フロール)、カロリナ・ジュステ(パキ)、他

 

物語:カルメンは、マドリードの町外れに住んでいるロマの娘である。他の女の子たち同様、結婚して、できるだけ沢山の子供を産み育てるという、なん世代にも亘って繰り返されてきた人生を運命づけられている。美容師になりたいが、父親も恋人も、彼女の仕事には関心がない。17歳になればどうせ結婚するのだから。ロラは16歳、他のロマの娘とは一風変わっていて、大学に行くことが夢である。内気なロラは時々壁や塀に小鳩のグラフィティをして周りを驚かせている。男の子には興味がなく、ネットで女性同士がキスをしているのを見ると慌ててしまう。野菜の露天商を営む父親は娘が地域の合唱団で歌っているのを誇りに思い、字の読めない母親は娘が学校に通っていることを誇りにしている。そんな二人がある日、雨の降り出した市場で偶然運命の出会いをしてしまった。カルメンはロラに抗しがたい魅力を感じ、ロラも不思議な感情を抱く。ロマ社会の偏見や差別、家族の口出しにもかかわらず二人は急速に惹かれあっていく。

 

     

            (一目で惹かれあうカルメンとロラ)

 

★プロフェッショナルな俳優は、パキを演じたカロリナ・ジュステ唯一人だそうで、他はオーディションに押し掛けた1000人ほどのアマチュアから、エキストラを含めて約150人を選んだ。大変な作業で6か月もかかり、特にカルメン役の人選に難航した。もう半ば諦めかけたときにロシー・ロドリゲスが現れ、彼女のエントリーナンバーはなんと897番だった。結婚しても6か月後に夫を見捨てるという、ロマ・コミュニティに見られる典型的な「不幸な結婚」の一例を演じる。サイラ・ロメロが扮したロラは16歳、ロマとロマでない両親の娘という設定、父親が営む野菜の露天商を手伝っている。恥ずかしがり屋で目立つのが好きではないが、カルメンと出会うことで心を急速に解放していく。   

        

                    (カルメン役のロシー・ロドリゲス)

  

        

(壁に小鳩のグラフィティをして心を発散させるロラ)

 

★冒頭で触れたように監督の肩を押したのは、2009年の「ロマ女性の同性婚第1号」というグラナダ・ニュースを聞いたことによる。二人は顔写真なしの仮名を条件に新聞社の取材に応じた。だからロサリオもサラも本名ではない。周囲からも家族からもロマ・コミュニティからも追い出され、闘いはまるでボクシングの試合のようだったという。いわゆる「村八分」以上の扱いを受けたが、二人の決心は揺るがなかった。ロマの女性であることは、家父長制が敷かれたマチスモが常識である社会では、そもそも女性の同性婚など存在すべきではないということです。ロサリオとサラの話は遠い前世紀のことではなく、ついこの間の話なのである。今もってスペインのロマの女性は、用箪笥ではなく金庫室に閉じ込められているから、容易なことではカミングアウトできない。

 

      

           (本作撮影中の左から、母親、父親、弟、ロラ)

 

★エチェバリア監督が「カルメンとロラ」で語りたいのは、二人が愛を育むなかで自分たちの視野を広げ、それぞれの視点を世界に向けること、ロマの女性たちの声を世界に届けることのようです。監督にとって重要なことは、現代的な素材を使ってクラシックな表現形式に生気を吹き込むことにある。かつてのパルム・ドール受賞作品、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』『ある子供』、またはジャック・オーディアールの『ディーパンの闘い』のように、現実を操らないで語ることを目指して。最も以上の3作は、受賞発表時には会場からブーイングと称賛が同時に起きたのでした。

 

アランチャ・エチェバリア Arantxa Echevarria は、1968年ビルバオ生れの監督、脚本家、製作者。マドリードのコンプルテンセ大学で映像科学を学び、同大学でオーディオビジュアル演出を専攻した。その後オーストラリアのシドニー・コミュニティ・カレッジで映画製作を学んだ。1991年から広告宣伝と映画を両立させながら、オーディオビジュアル産業のプロフェッショナルなキャリアを出発させる。

 

          

            (本作撮影中のアランチャ・エチェバリア監督)

 

2010年、短編デビュー作となるPanchitoは、アマチュアだけを起用して撮ったコメディ。同2010年、国営テレビの要請でDocumentos TVのルポルタージュCuestión de pelotas、を撮る。これは女性サッカー・クラブReal Federación Española de Fútbolについてのドキュメンタリー。2013年、短編サイコ・スリラーDe noche y de prontoを監督、翌年ゴヤ賞2014短編映画部門にノミネートされた。2016年、短編El último busが、メディナ・デル・カンポ映画祭の作品賞を受賞した。2017年、ドキュメンタリー7 from Etheriaは、7人の共同監督作品(製作は米国)。2018年、長編デビュー作Carmen y Lolaが監督週間にノミネートされた。

 

     

         (サイコ・スリラーDe noche y de pronto」のポスター)

    
追記:ラテンビート2018に 『カルメン&ロラ』 の邦題で上映が決定しました。

ブラジル映画「Benzinho」が金のビスナガ*マラガ映画祭2018 ⑰2018年04月30日 17:31

              ブラジル中流家庭の或る一面を切り取った映画

 

      

★今年はブラジルから2作ノミネートされ、その一つウルグアイとの合作、グスタボ・ピッツィの長編第2Benzinhoが、イベロアメリカ部門の作品賞「金のビスナガ」を受賞した。ピッツィ監督は目下TVミニシリーズ撮影中で来マラガできなかったが、製作者を代表して参加したウルグアイの共同プロデューサー、アグスティナ・チアリノ金のビスナガのトロフィーを受け取りました。サンダンス映画祭2018でワールドプレミア、続いてロッテルダム映画祭、スウェーデンのヨーテボリ映画祭、ウルグアイのプンタ・デル・エステ映画祭などに出品された後、マラガにやってきました。ブラジル中流家庭の日常、新居の購入、息子の自立、母親の子離れの難しさをコメディタッチで描く。いずれにしろ子供は親の知らないうちに大人になってしまうのです。

 

         

      (トロフィーを手に喜びのスピーチをする製作者アグスティナ・チアリノ)

 

Benzinho(「Loveling」)2018

製作:Bubbles Project / Baleia Films / Mutante Cine / TvZERO

監督・脚本・製作者:グスタボ・ピッツィ、脚本クレジットはグスタボ・パッソス・ピッツィ

脚本(共):カリネ・テレス、レイテ・デ・ソウサ・ピッティ

撮影:ペドロ・ファエルステイン

音楽:ダニエル・ロランド、ペドロ・サー、マクシミリアノ・シルベイラ

編集:リビア・セルパ

美術:ディナ・サレム・レヴィ

衣装デザイン:ディアナ・レステ

メイクアップ:ビルヒニア・シルバ

製作者:タティアナ・レイテ(エグゼクティブ)、ロドリゴ・レティエル、アグスティナ・チアリノ(ウルグアイ)、フェルナンド・エプステイン(ウルグアイ)

 

データ:製作国ブラジル=ウルグアイ、ポルトガル語、2018年、コメディ・ドラマ、98分、撮影地リオデジャネイロ近郊のペトロポリス。サンダンス、ロッテルダム、ヨーテボリ、プンタ・デル・エステ、マラガ、各映画祭2018正式出品。マラガ映画祭イベロアメリカ部門の作品賞受賞作品、ブラジル公開823日。配給New Europe Film Saes

キャスト:カリネ・テレス(イレーニ)、オッタヴィオ・ミュラー(夫クラウス)、アドリアナ・エステベス(イレーニ姉ソニア)、コンスタンティノス・サリス(長男フェルナンド)、セザル・トロンコソ(ソニアの夫アラン)、マテウス・ソラーノ(パソカ)、ルカス・ゴウヴェア(登記所職員)、パブロ・リエラ(サンダー)、ビセンテ・デモリ、ルアン・テレ、アルトゥル&フランシスコ・テレス・ピッツィ(双子の3男4男)

 

物語:イレーニとクラウスが結婚したのは随分前のことだ。イレーニは38歳になりクラウスと言えば45歳になった。二人は4人の息子とリオデジャネイロの近郊ペトロポリスに住んでいる。子供が大きくなり狭くなった、おまけにガタのきた家から出たいと思っている。それで夫婦で一生懸命働き数年がかりで新居を建てようと夢をふくらませている。イレーニはハイスクールの卒業証書をもらうための勉強のかたわらセールスの仕事をしている努力家だ。一方クラウスは既に斜陽になったコピーショップを経営、書籍の販売もしているが転職を目論んでいる。16歳になる長男のフェルナンドはハンドボールの有力選手で、シーズンのハイライトの後、ドイツのプロチームからオファーをうけた。嬉しいニュースには違いないが、家族に微妙なさざ波が、特にイレーニが動揺しはじめた。自慢の息子フェルナンドとこんなに早く離れて暮らすとは考えてもいなかった。巣立ちするには早すぎる、新居には彼の部屋も用意していたのだ。もう少し後のはずだったのに間もなくドイツに行ってしまうのだ。フェルナンドのいない新しい生活に順応しなければならない。子供は知らないうちに大きくなってしまうのだ。

 

       ブラジルの観客は社会的階級を反映した映画を見る習慣がありません。

 

★今回映画祭にはウルグアイ側の製作者アグスティナ・チアリノだけが来マラガした。監督はTVミニシリーズの撮影に入ってしまって出席できなかったということです。プレス会見では「フレッシュで飾らない日常を描いた映画には価値があるのですが、ブラジルの観客には、このような社会的階級を反映した映画を見る習慣がありません」とコメント。これはどこの国にもいえることです。物語が身近すぎるから平凡に感じてしまうのです。カンヌやベルリンで評価されても変わりありません。 

          

      (一人で来マラガしたアグスティナ・チアリノ、プレス会見、419日)

 

★また「脚本を共同執筆した監督と主役イレーニを演じたカリネ・テレスは、実生活では夫婦ですが、彼らのビオピックではありません。双子の兄弟を演じた子役は夫妻の実の子供ですから、勿論ストーリーには家族のエッセンスが流れ込んでいます」ということでした。それで撮影中は実生活と映画の線引きがややこしかったこともあったようです。「今のママはどっちなの?」というわけです。

 

           

(双子の兄弟と次男ロドリゴ、映画から)

 

       

                    (家族揃って参加したロッテルダム映画祭2018

 

  監督キャリア&フィルモグラフィー 

グスタボ・ピッツィGustavo Pizziは、1977年ペトロポリス生れ、監督、製作者、脚本家。リオデジャネイロのフルミネンセ連邦大学UFF映画科卒。2006年ドキュメンタリー「Preterito Perfeito」を撮る。2010年、長編デビュー作Riscado(英題「Craft」)は、XAXW映画祭2011でワールドプレミアした。その後40か所以上の映画祭で上映された。同2010年、共同で監督した短編A Distração de Ivanでは製作も手掛け、カンヌ映画祭と併催の「批評家週間」に出品されている。2012年、ドキュメンタリーOncotoを撮る。本作Benzinhoが長編第2作目になる。TVシリーズの脚本を執筆、現在TVミニシリーズ「Gilda」の撮影中で来マラガできなかった。

 

             (長編デビュー作Riscado」のポスター

 

      

         (グスタボ・ピッツイ=カリネ・テレス夫妻、2010年ごろ)

 

★イレネ役のカリネ・テレスは、1978年、監督と同郷のペトロポリス生れの39歳、女優、脚本家、製作者。映画、TVシリーズ、舞台で活躍している。監督長編デビュー作「Riscado」に出演している。ペトロポリスは本作の撮影地、監督が生れ故郷を舞台に選んだのは、子供のころ過ごした好きな町だからです。夫役のオタヴィオ・ミュラーは、1965年リオデジャネイロ生れ、映画にTVにと出演キャリアの長いのベテランです。

 

           

 (イレネとクラウスの夫婦、映画から)

 

         

                 (イレネとソニア役のアドリアナ・エステベス、映画から)

 

         

    (ハンドボールの選手フェルナンド役のコンスタンティノス・サリス、映画から)

 

★出演者は、第1作に出演した俳優が多く、スタッフも重なっている印象でした。ウルグアイのもう一人のプロデューサー、フェルナンド・エプステインは、フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストールの共同監督「25 Watts」や、公開された『ウィスキー』、同じくフェデリコ・ベイロフ『アクネACNE』やアドリアン・ビニエス『大男の秘め事』、最近ではパラグアイ映画ですが、ベルリン映画祭2018のマルセロ・マルティネシ「Las Herederas」など話題作を手掛けています。ウルグアイは小国で市場も限られているので、隣国アルゼンチンやブラジルとの合作が多い。個人的には金のビスナガを受賞するとは考えておりませんでしたが、もしかするとブラジル映画祭にエントリーされるかもしれません。

Las Herederas」の記事紹介は、コチラ20180216

 第15回ラテンビート2018上映が決定、邦題は『ベンジーニョ』

初めてパラグアイ映画が金熊賞を競う*ベルリン映画祭2018 ①2018年02月16日 16:16

     マルセロ・マルティネシの長編第1作「Las herederas」がノミネーション

   

    

★第68回ベルリナーレ2018215日から25日)のコンペティション部門に、初めてパラグアイからマルセロ・マルティネシLas herederasがノミネートされました。コンペティション部門は19作、スペイン語映画はパラグアイの本作と、メキシコのアロンソ・ルイスパラシオスMuseo2作品です。次回アップいたしますが、モノクロで撮ったデビュー作『グエロス』(14)はパノラマ部門で初監督作品賞を受賞しています。Las herederas」は、パラグアイの首都アスンシオンに暮らす上流階級出身の60代の二人の女性が主人公です。金熊賞以外の国際映画批評家連盟賞、初監督作品賞、テディ賞などの対象作品のようです。コンペティション以外のパノラマ、フォーラム各部門にスペインやアルゼンチンからも何作か気になる作品が選ばれています。

 

      

 

   Las herederas(「The Heiresses」)

製作:La Babosa Cine(パラグアイ)/ Pandara Films(独)/ Mutante Cine(ウルグアイ)/

   Esquina Filmes(ブラジル)/ Norksfilm(ノルウェー)/ La Fábrica Nocturna(仏)

監督・脚本・製作者:マルセロ・マルティネシ

撮影:ルイス・アルマンド・アルテアガ

編集:フェルナンド・エプスタイン

プロダクション・デザイン:カルロス・スパトゥッザSpatuzza

衣装デザイン:タニア・シンブロン

メイクアップ:ルチアナ・ディアス

プロダクション・マネージメント:カレン・フラエンケル

助監督:フラビア・ビレラ

製作者:セバスティアン・ペーニャ・エスコバル、他共同製作者多数

 

データ:製作国パラグアイ・独・ウルグアイ・ブラジル・ノルウェー・仏、言語スペイン語・グアラニー語(パラグアイの公用語)、2018年、ドラマ、95分、撮影地首都アスンシオン、製作費約514.000ユーロ、ベルリン映画祭上映は216

 

キャスト:アナ・ブルン(チェラ)、マルガリータ・イルン(チキータ)、アナ・イヴァノーヴァ(アンジー)、ニルダ・ゴンサレス(家政婦パティ)、マリア・マルティンス(ピトゥカ)、アリシア・ゲーラ(カルメラ)、イベラ、ノルマ・コダス、マリッサ・モヌッティ、アナ・バンクス、他多数

 

プロット:裕福な家柄の生れのチェラとチキータの物語。内気だが誇り高いチェラ、外交的なチキータ、居心地よく暮らすに充分な資産を相続した二人はアスンシオンで30年間も一緒に暮らしていた。しかし60代になり時とともに経済状態は悪くなる一方だった。いずれこのままでは相続した多くの資産を売らざるを得なくなるだろう。そんな折も折、チキータが詐欺で逮捕されてしまうと、チェラは予想もしなかった現実に直面する。初めて車の運転を習い、ひょんなことから裕福なご婦人方のグループ専用の白タクの無免許ドライバーになる。新しい人生が始まるなかで、チェラはやがて若いアンジーと出会い絆を強めていく。このようにして孤独のなかにもチェラの親密で個人的な革命が始まることになるだろう。                  (文責:管理人)

 

   

         (チキータ役マルガリータ・イルンとチェラ役アナ・ブルン、映画から)

     

     

       (アンジー役アナ・イヴァノーヴァとチェラ、映画から)

   

  監督フィルモグラフィー      

マルセロ・マルティネシMarcelo Martinessiは、1973年アスンシオン生れの監督、脚本家。アスンシオンのカトリック大学でコミュニケーション学を学び、その後ニューヨーク、ロンドン、マドリードで映画を学んだ。社会的なテーマ、アイデンティティを模索する短編やドキュメンタリーを撮る。2009年にモノクロで撮った短編Karai Norteは、パラグアイの詩人カルロス・ビリャグラ・マルサルの作品をもとにしている。1947年に起きたパラグアイ内戦中に偶然出会った男と女の物語。ベルリナーレの短編部門に初めて出品されたパラグアイ映画である。他にグアダラハラ映画祭2009イベロアメリカ短編作品賞受賞、グラウベル・ローシャ賞、AXN映画祭2010短編作品賞を受賞、5000米ドルの副賞を貰った。フィルモグラフィーは以下の通り:

 

2009Karai NorteMan of the North)短編19分グアラニー語、監督・脚本・編集

2010Calle última Ultima Street)短編20分グアラニー語、監督

   ベルリナーレ2011ジェネレーション部門、ウエルバ・イベロアメリカ映画祭2011

        短編映画賞、ビアリッツ映画祭ラテンアメリアシネマ部門出品

2012El Baldio、短編10

2016La voz perdida The Lost Voice)短編ドキュメンタリー12分、監督・脚本・編集・製作

2018Las herederas 省略

 

           

         (短編ドキュメンタリー「La voz perdida」のポスター)

 

★第73回ベネチア映画祭2016オリゾンティ部門の短編作品賞を受賞したドキュメンタリーLa voz perdidaが最も有名。クルグアティCuruguatyの農民大虐殺について、インタビューで構成されたドキュメンタリー、パラグアイ現代史の負の部分を描いた。予想外の受賞と述べた監督、海外暮らしが長いが子供のときから聞きなれた言葉でパラグアイの暗黒の政治を描きたいとインタビューに応えている。 

        

         (トロフィーを手に喜びの監督、ベネチア映画祭2016にて)

       

★コンペティション部門は初めてながら以上のようにベルリナーレの常連の一人、初監督作品が金熊賞に輝く例は皆無ではない。何かの賞に絡むことは間違いないと予想します。キャストの殆どが女優、主役のチェラ役アナ・ブルンは、映画は初出演だが舞台女優としてのキャリアは長いということです。チキータ役のマルガリータ・イルンも舞台が長く映画は2作目、若い女性アンジー役のアナ・イヴァノヴァ、この3人が絡みあってドラマは進行する。

 

      

                 (本作撮影中の監督)

 

★今年の審査委員長は、ドイツの監督トム・ティクヴァ(『ラン・ローラ・ラン』1998)、他スペイン・フィルモテカのディレクターであるホセ・マリア(チェマ)・プラド(マリサ・パレデスの夫君)は、スペインの顔として各国際映画祭に出席している。日本からは坂本龍一が審査員に選ばれている。当ブログではパラグアイ映画はアラミ・ウジョンのドキュメンタリー「El tiempo nublado」(20151作だけという寂しさです。本作が金熊賞以外でも何かの賞に絡んだら、秋のラテンビートも視野に入れて改めてアップいたします。

パラグアイ映画の紹介記事は、コチラ⇒2015年12月13日

追記: 『相続人』 の邦題でラテンビート2018上映が決定しました。

パブロ・ベルヘルの新作コメディ「アブラカダブラ」*いよいよ今夏公開2017年07月05日 18:37

           大分待たされましたが84日スペイン公開が決定

 

   

『ブランカニエベス』の成功で国際的にも知名度を上げたパブロ・ベルヘルの第3Abracadabra がいよいよ公開されることになりました(84日)。どうやら9月開催のサンセバスチャン映画祭を待たないようです。昨年の初夏にクランクイン以来、なかなかニュースが入ってきませんでしたが、YouTubeに予告編もアップされ笑ってもらえる仕上りです。モノクロ・サイレントの前作は、2012年のトロント映画祭を皮切りにサンセバスチャン、モントリオール、USAスパニッシュ・シネマ、ロンドン・・・と瞬く間に世界の各映画祭を駆け抜けました。サンセバスチャン映画祭では金貝賞こそ逃しましたが、審査員特別賞他を受賞、翌年のゴヤ賞は作品賞の大賞以下10冠を制覇、米アカデミーのスペイン代表作品、アリエル賞などなど受賞歴は枚挙に暇がありません。ということで2013年、はるばる日本にまでやってきてラテンビート上映後、公開に漕ぎつけたのでした。新作は果たして柳の下の二匹目のドジョウとなるのでしょうか。

 

 Abracadabra  2017

製作:Arcadia Motion Pictures / Atresmedia Cine / Persefone Films / Pegaso Pictures / Movistar +  Noodles Production(仏)/ Films Distribution(仏)

監督・脚本・音楽:パブロ・ベルヘル

撮影:キコ・デ・ラ・リカ

音楽:アルフォンソ・デ・ビラジョンガ

編集:ダビ・ガリャルト

衣装デザイン:パコ・デルガド

美術:アンナ・プジョル・Tauler

プロダクション・デザイン:アライン・バイネエAlain Bainee

キャスティング:ロサ・エステベス

メイクアップ&ヘアー:Sylvie Imbert(メイク)、ノエ・モンテス、パコ・ロドリゲス(ヘアー)他

製作者:サンドラ・タピア(エグゼクティブ)、イボン・コルメンサナ、イグナシ・エスタペ、アンヘル・ドゥランデス、ジェローム・ビダル、他

 

データ:スペイン=フランス、スペイン語、2017年、ブラック・コメディ、ファンタジー、サスペンス、カラー。公開:スペイン84日、フランス111日、配給ソニー・ピクチャー

 

キャスト:マリベル・ベルドゥ(カルメン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(カルロス)、ホセ・モタ(カルメンの従兄ペペ)、ジョセップ・マリア・ポウ(ドクター・フメッティ)、キム・グティエレス(ティト)、プリスシリャ・デルガド(トニィ)、ラモン・バレア(タクシー運転手)、サトゥルニノ・ガルシア(マリアノ)、ハビビ(アグスティン)、フリアン・ビジャグラン(ペドロ・ルイス)他

 

プロット:ベテラン主婦のカルメンとクレーン操縦士のカルロス夫婦は、マドリードの下町カラバンチェルで暮らしている。カルロスときたら寝ても覚めても「レアル・マドリード」一筋だ。そんな平凡な日常が姪の結婚式の当日一変する。カルロスが結婚式をぶち壊そうとしたので、アマチュアの催眠術師であるカルメンの従兄ペペが仕返しとして、疑り深いカルロスに催眠術をかけてしまった。翌朝、カルメンは目覚めるなり夫の異変に気付くことになる。霊が乗り移って自分をコントロールできないカルロス、事態は悪いほうへ向かっているようだ。そこで彼を回復させるための超現実主義でハチャメチャな研究が始まった。一方カルメンは、奇妙なことにこの「新」夫もまんざら悪くないなと感じ始めていた。果たしてカルロスは元の夫に戻れるのか、カルメンの愛は回復できるのだろうか。

 

        

             (カルメンとカルロスの夫婦、映画から)

 

★大体こんなお話のようなのだが、監督によれば「新作は『ブランカニエベス』の技術関係のスタッフは変えずに、前作とは全くテイストの違った映画を作ろうと思いました。しかし、二つは違っていても姉妹関係にあるのです。私の全ての映画に言えることですが、中心となる構成要素、エモーション、ユーモア、驚きは共有しているのです」ということです。キコ・デ・ラ・リカパコ・デルガドアルフォンソ・デ・ビラジョンガなどは同じスタッフ、キャストもマリベル・ベルドゥジョセップ・マリア・ポウラモン・バレアなどのベテラン起用は変わらない。『SPY TIMEスパイ・タイム』のイケメンキム・グティエレスの立ち位置がよく分からないが、カルロスに乗りうつった悪霊のようです。監督はそれ以上明らかにしたくないらしい。コッポラの『地獄の黙示録』のカーツ大佐が手引きになると言われても、これでは全く分かりませんが「映画館に足を運んで確かめてください」だと。若手のプリスシリャ・デルガドは、アルモドバルの『ジュリエッタ』でエンマ・スアレスの娘を演じていた女優。

 

  

       (撮影中の左から、ホセ・モタ、マリベル・ベルドゥ、ベルヘル監督)

 

★マリベル・ベルドゥ以下三人の主演者、アントニオ・デ・ラ・トーレ、ホセ・モタの紹介は以下にアップしています。アントニオ・デ・ラ・トーレは、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』やラウル・アレバロのデビュー作『物静かな男の復讐』で見せた内省的な暗い人格、デ・ラ・イグレシアの『気狂いピエロの決闘』の屈折した暴力男とは全く異なるコミカルな男を演じている。多分ダニエル・サンチェス・アレバロのコメディ『デブたち』のノリのようだ。どんな役でもこなせるカメレオン役者だが、それが難でもあろうか。デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』のホセ・モタについては、「アブラカダブラ」で紹介しております。

 

         

               (ペペ役のホセ・モタ、映画から)

 

「アブラカダブラ」の監督以下スタッフ&キャスト紹介は、コチラ2016529

マリベル・ベルドゥの紹介記事は、コチラ2015824

アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介記事は、コチラ201398


*追記『アブラカダブラ』の邦題でラテンビート2018上映が決定しました。

『ブランカニエベス』の次は『アブラカダブラ』*パブロ・ベルヘルの第3作2016年05月29日 14:57

             アクセル踏んで5年ぶりに新作発表

 

★昨年10月に「第3作はファンタスティック・スリラーのコメディAbracadabra、クランクインは来年夏、公開は2017年」とアナウンスがありましたが、いよいよクランクインしました。大当たりした第2『ブランカニエベス』から5年が経ちましたが、5年というのは監督にしては破格の速さではないでしょうか。デビュー作『トレモリノス7302)と第2作の間隔は2倍の10年でした。思いっきりアクセル踏んでスピードを上げ、55日にマドリードで撮影開始、現在はナバラ州のパンプローナに移動しています。IMDbもアップされましたが、まだ全容は分かりません。撮影地はマドリードとナバラ、約2ヶ月の9週間が予定されています。

 

   

    (左から、ホセ・モタ、ベルドゥ、監督、デ・ラ・トーレ、パンプローナにて)

 

 ◎キャスト陣

★主役のカルメンに前作のマリベル・ベルドゥ、その夫カルロスにアントニオ・デ・ラ・トーレ、カルメンの従兄にホセ・モタ、他にキム・グティエレス、ホセ・マリア・ポウ、フリアン・ビジャグラン、サトゥルニノ・ガルシア、ベテランのラモン・バレアまで曲者役者を揃えました。マリベル・ベルドゥアントニオ・デ・ラ・トーレはグラシア・ケレヘタのFelices 14015)で既にタッグを組んでいる。どんなお話かというと、カルメンはマドリードのカラバンチェルに住んでいる主婦、近頃夫カルロスの挙動がおかしいことに気づく。どうやら悪霊か何かにとり憑かれているようだ。そこで従兄のペペに助けを求めることにする。

    

Felices 140”の紹介記事は、コチラ⇒201517

マリベル・ベルドゥの紹介は、コチラ⇒2015824など

アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介は、コチラ⇒201398など

 

     

               (私たち夫婦になりますが・・・)

 

★カルメンの従兄ペペ役のホセ・モタは、1965年シウダレアル生れ、コメディアン、俳優、声優、監督、脚本家。サンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズの常連、アレックス・デ・ラ・イグレシアのダーク・コメディ『刺さった男』12)で、不運にも後頭部に鉄筋が刺さってしまった男を演じた。TV界ではチョー有名な存在だが、再び映画に戻ってきた。今回は催眠術にハマっている役柄のようで、カルロスに乗り移ってしまった悪霊を払おうとする。写真下はホセ・モタがアントニオ・デ・ラ・トーレに催眠術をかけている絵コンテ、『ブランカニエベス』も手がけたイニゴ・ロタエチェのデッサンから。 

    

                       (イニゴ・ロタエチェの絵コンテ)

 

 

       (ホセ・モタ)

 

キム・グティエレスは、今年公開されたハビエル・ルイス・カルデラのSPY TIMEスパイ・タイム』でエリート諜報員アナクレト(イマノル・アリアス)の息子アドルフォに扮しアクションも披露したばかり。今回の役は、「コッポラの『地獄の黙示録』(79)でマーロン・ブランドが演じたカーツ大佐のように物語の一種の道しるべ的な存在になる」とか、詳しいことは現段階ではバラしたくないと監督。ダニエル・サンチェス・アレバロの『漆黒のような深い青』06)でブレークした後、ドラマ、コメディ、アクションと確実に成長している。

SPY TIMEスパイ・タイム』とキム・グティエレスの紹介は、コチラ⇒201622

 

      

         (アナクレトとアドルフォ父子、映画から)

 

ホセ(ジョセップ)・マリア・ポウは、1944年バルセロナ生れ、『ブランカニエベス』、アメナバル『海を飛ぶ夢』(04)、イネス・パリス“Miguel y William”(07)、ベントゥラ・ポンセ“Barcelona (un mapa)”など、今作ではホセ・モタが熱中する催眠術の先生役。フリアン・ビジャグランは、マラガ映画祭2016でご紹介しています。ベテランのラモン・バレアは、1949年ビルバオ生れ、監督の大先輩、『トレモリノス 73』、ボルハ・コベアガのETAのコメディ“Negociador”(14)では主役の〈交渉人〉を演じた大ベテラン。

フリアン・ビジャグラン紹介は、コチラ⇒“Gernika420Quatretondeta422

ラモン・バレア紹介は、コチラ⇒“Negociador2015111

 

 ◎スタッフ紹介

★撮影監督にキコ・デ・ラ・リカ、衣装デザインにパコ・デルガト、編集にダビ・ガリャルトなど国際的評価の高い一流どころがクレジットされています。監督夫人Yuko Haramiは日本人、プロデューサー、カメラ、音楽家、ニューヨークで知り合ったとか。監督デビュー作以来二人三脚で製作に関わっている。『トレモリノス 73』の頃、娘が生まれている。『ブランカニエベス』の白雪姫カルメンシータを10歳に想定したのは娘の年に合わせたようです。ゴヤ賞のガラには着物姿で出席していた。

 

           「私はシネマニア、これは不治の病です」

 

 ◎監督紹介

★『ブランカニエベス』を検索すれば簡単にキャリアは検索できます。詳細は完成の折に紹介するとして、1963年ビルバオ生れ、監督、脚本家、製作者。デビュー作『トレモリノス 73は、「バスク・フィルム・フェスティバル2003」で上映されたあと、「ゆうばり国際ファンタステック映画祭2005」でも上映された。第2『ブランカニエベス』、第3作が来年公開のAbracadabraと極めて寡作です。

 

★第2作を企画中の2003年には、「無声モノクロ」はクレージーな企画でどこからも相手にされなかったことが、ブランクの大きな要因だった(モノクロは現在では高価でカネ食い虫)。つまり資金が集まらなかったということ。アカデミー賞作品賞をもらったミシェル・アザナヴィシウスの『アーティスト』(11)に影響を受けてモノクロにしたわけではない。今回はオールカラー、前作の成功もあって資金が比較的早く集まったからで、特別エンジンをふかしたわけではない。クランクイン予告の記者会見では、「ロシア人形のマトリューシュカのように、ホラーのなかにファンタジー、ファンタジーのなかにコメディ、コメディのなかにドラマと、入れ子のようになっている映画が好き。ウディ・アレンのファンで、特に『カイロの紫のバラ』(85)、『カメレオン』(83)、『スコルピオンの恋まじない』(01)などが気に入っている」と語っていた。

 

    

              (新作を語るパブロ・ベルヘル監督)

 

★映画のなかに、「エモーション、ユーモア、驚き、これから何が起きるか予想できないような物語を観客に楽しんでもらいたい。いつもこれが最後の作品になると考えている。自分を本職の監督だとは思っていないから、私にとって映画を撮ることはいわば命知らずのミッションに近い、時にはうまくいくこともあるが、時にはうまくいかないこともある」。「ベルドゥの役はドン・キホーテ的、ホセ・モタの役はサンチョ・パンサ的です。またはベルドゥは泣きピエロ、ホセ・モタは人気のある陽気なピエロとも形容できます」。「マドリード的な映画で、私の大好きな映画、アルモドバルの『グローリアの憂鬱』やビガス・ルナの“Angustia”に関連しています」ということなのですが、何やらややこしくなってきました。私の映画の源泉は映画館にあるという、シネマニアです。

 

原題は“¿Qué he hecho yo para merecer esto?”(84)です。マドリードの下町に暮らす主婦(カルメン・マウラ)がグータラ亭主を殺してしまうが事件は迷宮入りになる傑作コメディ、どうしてこんな平凡な邦題をつけたのか理解できない(笑)。“Angustia”はビデオが発売されているようですが未見です。

*追記:『アブラカダブラ』の邦題でラテンビート2018上映が決定しました。