映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク緊急入院*ゴヤ賞2018 ③ ― 2018年01月09日 09:43
1月3日、脳卒中の発作でマドリードのラモン・カハル病院に入院
★確かな筋からの情報によると、ゴヤ賞2018の授賞式を目前にして、スペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイクが緊急入院したということです。目下経過はは安定しているが、予後の判断は難しい、と副会長マリアノ・バロッソは語っている。ブレイク会長はクリスマス休暇のあと仕事に復帰していたが、1月3日の午後、事務所で気分が悪くなり、即座にマドリードのラモン・カハル病院に搬送された。経過は安定しているとはいえ、ブレイクの担当医師団による予後の判断が難しいということで、翌日の4日正午、映画アカデミーは公式声明を出したようです。
(イボンヌ・ブレイク会長、2016年エルサレムにて)
★前芸術映画科学アカデミー会長アントニオ・レシノスの任期半ばの2016年7月14日の辞任を受け、9月15日に行われた選挙で選ばれ就任した。1940年マンチェスター生れのイギリス系スペイン人、国際的な衣装デザイナーとして活躍、しかしスペインでのキャリアは長い。ゴヤ賞も4回受賞している。ゴンサロ・スアレス「Remando al viento」(1988)、ホセ・ルイス・ガルシ「Canción de cuna」(94)、ビセンテ・アランダ『カルメン』(03)、メアリー・マクガキアン「The Bridge of San Luis Rey」(西題「El puente de San Luis」スペイン、フランス、イギリス合作)の4作である。1971年のフランクリン・J・シャフナー『ニコライとアレクサンドラ』でオスカー賞も受賞している。1983年にハイメ・チャバリの代表作「Bearn o la sala de las muñecas」を手掛けている。2012年には国民映画賞を受賞、これは女優以外では初めての受賞者。
(オスカー像とブレイク、『ニコライとアレクサンドラ』で受賞)
(「El puente de San Luis」でゴヤ賞2005衣装デザイン賞を受賞)
*イボンヌ・ブレイク関連記事は、コチラ⇒2016年10月29日/同年12月20日
★国際的な活躍として、上記以外ではフランソワ・トリュフォーの『華氏451』(66)、ジョン・スタージェスの遺作となった『鷲は舞いおりた』(76)、ポール・バーホーベン『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』(85、ビデオ)、ピーター・ボグダノヴィッチ、他にリチャード・レスターの『三銃士』(73)『四銃士』(74)あるいはオードリー・ヘップバーンとショーン・コネリーが共演した『ロビンとマリアン』(76)、ハビエル・バルデムがゴヤを演じたミロス・フォアマンの『宮廷画家ゴヤは見た』(06)などが上げられる。
(オードリー・ヘップバーンの衣装を整えるブレイク、『ロビンとマリアン』から)
★その後、悪い知らせは伝わってこないが、授賞式には元気な姿を見せてほしい。
イサベル・コイシェの「The Bookshop」*ゴヤ賞2018 ② ― 2018年01月07日 12:12
ノミネーション12個でも作品賞は難しいか
★イサベル・コイシェ(1960、バルセロナ)の「La librería」(原題「The Bookshop」)のノミネーション数は、作品賞を含む12個、残念ながら言語は英語、従ってキャストの顔ぶれも大方が英国、米国人です。長編、短編、ドキュメンタリー、オムニバス映画などを含めると30作を超えるから、資金不足で4~5年おきにしか撮れない監督が多いなかで飛びぬけている。自国での製作に拘らず、スペインを脱出して海外に軸足を置く、主に英語で撮る、などが理由として挙げられる。これらは多分に中央のマドリード派ではなくバルセロナ派に属していることが影響している。コイシェの映画はスペインというよりカタルーニャ映画といえる。また初期段階からアルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」の資金援助を得られたことも幸運だった。大の寿司好き、寿司に欠かせない山葵に因んで、2000年に自ら「ミス・ワサビ・フィルムズMiss Wasabi Films」という制作会社を設立している。
★1988年の長編デビュー作「Demaciado viejo para morir joven」(カタルーニャ語)が、ゴヤ賞1990新人監督賞ノミネート、初めて英語で撮った「Thing I Never Told You」(「Cosas que nunca te dije」)がゴヤ賞1997オリジナル脚本賞にノミネートされるなど、受賞には至らなかったがゴヤ賞とは縁が深い。後者は2004年から始まったヒスパニック・ビート映画祭(現ラテンビート)で『あなたに言えなかったこと』という邦題で上映されたが、監督名はイサベル・コヘットで、コイシェになるまで時間が必要でした。
(アンドリュー・マッカーシーとリリー・テイラー、『あなたに言えなかったこと』)
★日本でブレイクしたのは、同じ英語で撮ったスペイン=カナダ合作「My Life Without Me」(「Mi vida sin mí」)、邦題は『死ぬまでにしたい10のこと』でこれは公開された。ナンシー・キンケイドの短編の映画化、カナダ人のサラ・ポーリーを主役に起用、本作で初めてゴヤ賞2003脚色賞を受賞した。続いて2006年『あなたになら言える秘密のこと』(原題「The Secret Life of Wards」)で、オリジナル言語が英語ながら作品賞受賞に漕ぎつけた。コイシェ自身も監督賞・オリジナル脚本賞、他に「エル・デセオ」のエステル・ガルシアがプロダクション賞を取った。以降の活躍は日本語版ウイキペディアに詳しいから割愛しますが、当ブログでは、サイコ・スリラー「Another Me」(13、「Mi otro yo」)、「Learning to Drive」(14、『しあわせへのまわり道』)、「Nobody Wants the Night」(15、「Nadie quiere la noche」)の紹介をしています。
(サラ・ポーリーとティム・ロビンス、『あなたになら言える秘密のこと』から)
(ソフィー・ターナーと監督「Another Me」から)
*「Another Me」の紹介記事は、コチラ⇒2014年07月27日
*「Learning to Drive」の紹介記事は、コチラ⇒2015年08月29日 他
*「Nobody Wants the Night」の紹介記事は、コチラ⇒2015年03月01日 他
★最新作「La librería」は、第62回 Seminci(バジャドリード映画祭2017、10月21日開幕)のオープニング作品、イギリス作家ペネロピ・フィッツジェラルドの ”The Bookshop” の映画化です。時代は1959年、イギリスのサフォーク州ハーバーグの小都市が舞台です。ペネロピ・フィッツジェラルド(2016~2000)は、英国ではノーベル文学賞より話題になるというブッカー賞1979を『テムズ側の人々』(原作“Offshore”)で受賞している作家です。
(在りし日のペネロピ・フィッツジェラルド)
★主役のフローレンス・グリーンに『マッチポイント』や『レオニー』のエミリー・モーティマー、バイオレット・ガマールに『エレジー』『しあわせへのまわり道』のパトリシア・クラークソン、エドモンド・ブルンディッシュに『ラブ・アクチュアリー』(03)や主役を演じた『パレードへようこそ』(14)のビル・ナイと、ベテランの演技派を起用している。モーティマーは松井久子の『レオニー』(10)撮影で来日しています。また彼女はクラークソンとはスコセッシとディカプリオがタッグを組んだスリラー『シャッターアイランド』(10)で共演しています。
(撮影中のビル・ナイ、監督、パトリシア・クラークソン)
「The Bookshop」(スペイン題「La librería」)
製作:Diagonal TV / A Contracorriente Films / Zephyr Films / One Two Films / Green Films
監督・脚本:イサベル・コイシェ
原作:ペネロピ・フィッツジェラルドの同名小説
撮影:ジャン・クロード=ラリュー
編集:ベルナ・アラゴネス
プロダクション・デザイン:リョレンス・ミケル
美術:Marc Pouマルク・ポウ
音楽:アルフォンソ・デ・ビラリョンガ
衣装デザイン:メルセ・パロマ
製作者:ジョルディ・べレンゲル(西ライン・プロデューサー)、アレックス・ボイド(英ライン・プロデューサー)、ジャウマ・バナコローチャ、ジョアン・バ、アドルフォ・ブランコ、クリス・カーリング、他多数
メイクアップ&ヘアー:ラウラ・ガルシア(メイク)、ラウラ・バカス(メイク&ヘアー)他多数
データ:製作国スペイン=イギリス=ドイツ、英語、2017年、112分、撮影2016年8~9月、撮影地北アイルランド、バルセロナ他、製作資金約340万ユーロ。バジャドリード映画祭2017オープニング作品、ベルリン映画祭2018(コンペティション外)スペシャル上映。ゴヤ賞ノミネーション12個、ガウディ賞カタルーニャ語以外部門12個、フォルケ賞1個、フェロス賞3個、ノミネーション。スペイン公開2017年11月10日
キャスト:エミリー・モーティマー(フローレンス・グリーン)、ビル・ナイ(エドモンド・ブルンディッシュ)、パトリシア・クラークソン(バイオレット・ガマール)、ジェームズ・ランス(ミロ・ノース)、オナー・ニーフシー(クリスティン)、フランシス・バーバー(ジェシー)、マイケル・フィッツジェラルド(ミスター・レイヴン)、ハンター・トレマイネ(ミスターKeble)、ハーヴェイ・ベネット(ウォーリー)、他
(以上ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされた人)
プロット:1959年、フローレンス・グリーンはロンドンを離れ、サフォーク州の海岸沿いの眠り込んだような小さな町ハーバーグに移ってくる。彼女は先の大戦で夫を亡くしていたが、自由な精神と進取の気象に富んだ女性だった。そこで今まで胸の中に閉じ込めていた大きな夢を実現しようと決心する。それはかつてなかったような書店を開くこと、それは亡夫の思い出にも繋がっていた。長年使われていなかった古い家を借り受け、地元の冷淡や無関心という抵抗を受け、今まで気づくことのなかった社会的不公平を体験するが、彼女は自身の自立に向かって奮闘する。間もなくナボコフのスキャンダラスな『ロリータ』、レイ・ブラッドベリの近未来小説『華氏451度』などを店頭に並べ、この保守的で表面上は穏やかだが何世紀も変化のなかった活気の乏しい社会に波風が立ち始める。フローレンスのアクティブな行動が、やがて彼女を同じ開明的な精神の持ち主であるミスター・ブルンディッシュと出会わせるだろう。反面、店舗に不満をもつ土地の有力者ガマール夫人の非常に曖昧な理由による抵抗も受けることにだろう。権力の恣意性についての、本と言葉と孤独についての物語。 (文責管理人)
(フローレンス役のエミリー・モーティマー、映画から)
★前作「Nobody Wants the Night」のジュリエット・ビノシュが演じたヒロインは動の人だったが、フローレンスはどちらかというと静の人、監督と重なる部分が多いかもしれない。「出る杭は打たれる」の諺通り、ヒップスターは批判と侮辱を受けやすい。現在カタルーニャ自治州は独立問題で二派に分裂しているから、立ち位置がどちらでも相手側から批判される。本作は政治的な映画ではなく個人的色彩が濃いが、こういう厳しい現実を考えると、個人的にはカタルーニャ問題を連想してしまいます。前回のゴヤ賞2016は無冠に終わりましたが、今回は賞に絡みそうな予感がします。長年タッグを組んでいる撮影監督のジャン・クロード・ラリュー、音楽のアルフォンソ・デ・ビラリョンガは作曲と歌曲の両方にノミネーションを受けている。
(ジュリエット・ビノシュ、「Nobody Wants the Night」のポスター)
★『ロリータ』(1955)は1962年キューブリック、1997年エイドリアン・ラインと2回、『華氏451度』(1953)もトリュフォーが1966年に映画化している。テーマは共に権力の恣意性でしょうか。
第32回ゴヤ賞2018ノミネーション・リスト発表 ① ― 2017年12月21日 18:38
総合司会者はホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ
★去る12月13日、第32回ゴヤ賞2018のノミネーション全リストが発表になりました。総合司会者は3年連続のダニ・ロビラから喜劇俳優ホアキン・レイェス(アルバセテ、1976)と同郷のエルネスト・セビーリャ(1978)の二人に引き継がれました。
(総合司会者ホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ)
★ゴヤ栄誉賞は10月半ばにアナウンスされていたように女優マリサ・パレデス(マドリード、1946)です。ゴヤ賞にはノミネーションこそありますが、意外や受賞はゼロでした。アルモドバル・ガールズの一人として、『バチ当たり修道院の最期』(83)以下、フランス映画、ポルトガル映画など合計75作に出演、劇場公開作品も多数。授賞式までにキャリア紹介を予定しています。下の写真は2017年10月14日、フランスのリヨンで開催された「リュミエール・フェスティバル」のオープニングに出席したときのもの。
(マリサ・パレデス)
★例年通りノミネーションは、オスカー賞スペイン代表作品のカルラ・シモンの『夏、1993』など5~6作に集中しています。作品賞5作品のうちオリジナル言語が、スペイン語2、英語、バスク語、カタルーニャ語各1作とバラエティに富んでいます。スペインは多言語国なのだと今更ながら感じたことでした。最多の13カテゴリーがバスク語の「Handia」、12カテゴリーが英語の「La librería」、スペイン語の「El autor」が9個、「Verónica」が7個、カタルーニャ語の『夏、1993』が8個です。ノミネーション数の多寡にはあまり関係ないのが映画賞、今回はドングリの背比べか。初ノミネーションのパコ・プラサのホラー映画「Verónica」は意外でした、作品・監督・脚本賞ですから。共同監督を務めたジャウメ・バラゲロの成功作 [REC] シリーズでさえノミネーションはなかった。プラサ監督は2014年7月、セルバンテス文化センターで開催された「ホラー映画上映会」の折に来日、単独で撮った [REC 3] が上映されました。
(ノミネーションのプレゼンター、ダビ・ベルダゲルとバルバラ・レニー)
★カテゴリーは合計28部門です。中でラテンビートに関係の深い「イベロアメリカ映画賞」部門には、オスカー賞2018外国語映画賞プレセレクション9作に選ばれた、チリのセバスチャン・レリオの『ナチュラルウーマン』、アルゼンチンの『サマ』(ルクレシア・マルテル)、メキシコの「Tempestad」(タティアナ・ウエソ)、コロンビアの「Amazona」(Clare Weiskopt & Nicolas van Hemelryck)の4作がノミネーションされました。コロンビア以外はそれぞれオスカー賞代表作品でした。チリは受賞歴なしですがパブロ・ララインの『No』(2012)に続いて2度目です。本作は第4回イベロアメリカ・フェニックス賞の最優秀作品賞ほかの受賞作品ですから先頭を走っている印象です。
★以下主なカテゴリーをアップしておきます。(ゴチック体は当ブログ紹介作品)
◎作品賞
「El autor」9個
「Verano 1993」(『夏、1993』)8個
「Handia」13個
「La librería」12個
「Verónica」『エクリプス』7個
(13個の「Handia」)
◎監督賞
マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
イサベル・コイシェ 「La librería」
パコ・プラサ 「Verónica」
◎新人監督賞
セルヒオ・G・サンチェス 「El secreto de Marrowbone」
カルラ・シモン「Verano 1993」『夏、1993』
ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』5個
リノ・エスカランテ 「No sé decir adiós」3個
(8個の『夏、1993』)
◎オリジナル脚本賞
パブロ・ベルヘル 「Abracadabra」8個
カルラ・シモン 「Verano 1993」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
フェルナンド・ナバロ&パコ・プラサ 「Verónica」
◎脚色賞
ハビエル・セルカス&アレハンドロ・エルナンデス 「El autor」
コラル・クルス、ジョアン・サレス他 「Incierta gloria」
イサベル・コイシェ 「La librería」
ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
◎オリジナル作曲賞
パスカル・ゲーニュ 「Handia」
アルベルト・イグレシアス 「La cordillera」『サミット』(監督サンティアゴ・ミトレ)
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「La librería」
Chucky Namanera(エウヘニオ・ミラ)「Verónica」
◎オリジナル歌曲賞
「Algunas veces」 ホセ・ルイス・ペラレス「El autor」
「Feeling lonely on the Sunday aftermoon」 アルフォンソ・デ・ビラリョンガ「La librería」
「La llamada」 Leiva レイバ「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
「Rap zona hostil」 ロケ・バニョス「Zona hostil」
◎主演男優賞
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「Abracadabra」
ハビエル・グティエレス 「El autor」
ハビエル・バルデム 「Loving Pablo」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア
アンドレス・ヘルトルディス 「Morir」 監督フェルナンド・フランコ
(9個の「El autor」からアントニオ・デ・ラ・トーレとハビエル・グティエレス)
◎主演女優賞
マリベル・ベルドゥ 「Abracadabra」
エミリー・モーティマー 「La librería」
ペネロペ・クルス 「Loving Pablo」
ナタリエ・ポサ 「No sé decir adiós」
(12個の「La libreria」からエミリー・モーティマー)
◎助演男優賞
ホセ・モタ 「Abracadabra」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「El autor」
ダビ・ベルダゲル 「Verano 1993」
ビル・ナイ 「La librería」
◎助演女優賞
アデルファ・カルボ 「El autor」
アンナ・カスティーリョ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ベレン・クエスタ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ロラ・ドゥエニャス 「No sé decir adiós」
◎新人男優賞
ポル・モネン 「Amar」『禁じられた二人』 監督エステバン・クレスポ
エネコ・サガルドイ 「Handia」
エロイ・コスタ 「Pieles」『スキン あなたに触らせて』 監督エドゥアルド・カサノバ 3個
サンティアゴ・アルベル 「Selfie」 監督ビクトル・ガルシア・レオン
◎新人女優賞
アドリアナ・パス 「El autor」
ブルナ・クシ 「Verano 1993」
イツィアル・カストロ 「Pieles」『スキン あなたに触らせて』
サンドラ・エスカセナ 「Verónica」
(7個の「Verónica」)
◎プロダクション賞
ミレイア・グラエル・ビバンコス 「Verano 1993」
アンデル・システィアガ 「Handia」
アレックス・ボイド&ジョルディ・べレンゲル 「La librería」
ルイス・フェルナンデス・ラゴ 「Oro」 監督アグスティン・ディアス・ヤネス 6個
◎撮影賞
サンティアゴ・ラカRacaj 「Verano 1993」
ハビエル・アギーレ・エラウソ 「Handia」
ジャン・クロード・ラリュー 「La librería」
パコ・フェメニア 「Oro」
◎編集賞
ダビ・Gallart 「Abracadabra」
アナ・Pfaff プファフ& Didac Palou 「Verano 1993」
Laurent Dufreche &ラウル・ロペス 「Handia」
ベルナ・アラゴネス 「La librería」
◎美術賞(アートディレクター)
アライン・バイネー 「Abracadabra」
ミケル・セラーノ 「Handia」
リョレンス・ミケル 「La librería」
ハビエル・フェルナンデス 「Oro」
◎衣装デザイン賞
パコ・デルガド 「Abracadabra」
サイオア・ララ 「Handia」
メルセ・パロマ 「La librería」
タティアナ・エルナンデス 「Oro」
◎メイクアップ&ヘアー賞
シルビエ・インベルト&パコ・ロドリゲス 「Abracadabra」
アイノア・エスキサベル、オルガ・クルス、ゴルカ・アギーレ 「Handia」
エリ・アダネス、セルヒオ・ぺレス・ベルナル、ペドロ・デ・ディエゴ 「Oro」
ロラ・ゴメス、ヘスス・ジル、オスカル・デル・モンテ 「Pieles」『あなたに触らせて』
◎録音賞
ダニエル・デ・サヤス、ペラヨ・グティエレス、アルベルト・オベヘロ 「El autor」
セルヒオ・ブルマン、ダビ・ロドリゲス、ニコラス・デ・ポウルピケ 「El bar」
『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』
イニャーキ・ディエス&サンティ・サルバドル 「Handia」
アイトル・ベレンゲル、ガブリエル・グティエレス、ニコラス・ド・ピールピケ 「Verónica」
◎特殊効果賞
ジョン・セラーノ 「Handia」
レイェス・アバデス&イシドロ・ヒメネス 「Oro」
ラウル・ロマニリョス&ダビ・エラス 「Verónica」
レイェス・アバデス&クーロ・ムニョス 「Zona hostil」
◎ドキュメンタリー賞
「Cantábrico」ジョアキン・グティエレス・アチャ
「Dancing Beethoven」アランチャ・アギーレ
「Muchos hijos, un mono y castillo」グスタボ・サルメロン
「Saura(s)」フェリックス・ビスカレット
◎イベロアメリカ映画賞
「Amazona」(ドキュメンタリー)コロンビア、監督Clare Weiskopt & Nicolas van Hemelryck)
「Tempestad」(ドキュメンタリー)メキシコ、同タティアナ・ウエソ
「Una mujer fantástica」(『ナチュラルウーマン』)チリ、同セバスティアン・レリオ
「Zama」(『サマ』)アルゼンチン、同ルクレシア・マルテル
(セバスティアン・レリオ)
★その他、アニメーション(長編&短編)、短編(フィクション&ドキュメンタリー)、一時ガラに誰も来西しないからとヘソを曲げ中断していたヨーロッパ映画賞の5カテゴリーがあり、合計28部門です。
★ドキュメンタリー賞にカルロス・サウラの7人の子供が父親を語る「Saura(s)」がノミネートされました。以前ご紹介したこともあって目に留まりました。「イベロアメリカ映画賞」部門にドキュメンタリーが2本も選ばれるのはあまり記憶にありません。確かに最近面白いのがドキュメンタリー、そんなことを反映しているのでしょうか。
★作品賞候補のうち未紹介作品は別途アップしたいと考えています。イサベル・コイシェの「La librería」は、第62回 Seminci(バジャドリード映画祭2017)のオープニング作品、イギリス作家ペネロピ・フィッツジェラルドの ”The Bookshop” の映画化です。言語も英語、俳優も英国人ということで躊躇していましたが、コイシェ映画はほとんどが英語映画なのでした。ペネロピ・フィッツジェラルド(2016~2000)は、英国ではノーベル文学賞より話題になるというブッカー賞を『テムズ側の人々』(Offshore)で1979年に受賞している作家です。
(イサベル・コイシェ)
*授賞式は2018年2月3日です。
*追加「La libreria」2018年1月7日、記事をアップしました。
ルクレシア・マルテルの『サマ』を観てきました*ラテンビート2017 ⑥ ― 2017年10月20日 21:20
『サマ』は音と映像がしのぎを削っている!
A: 1回観ただけでアップは心もとないが、そうかと言って消化に時間をかけていると印象が薄れていくというわけで、勘違い覚悟で話すしかありません。ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』の主人公ミスター・クルツ、この小説を素材にしてフォード・コッポラが舞台をベトナム戦争に移して撮った『地獄の黙示録』のカーツ大佐などに思いを馳せる、観客を刺激する映画でした。
B: 各観客の受け止め方も、よく分からなかったが面白かった(!)という人、チロ・ゲーラの『彷徨える河』、ニュー・ジャーマン・シネマのヴェルナー・ヘルツォークの『アギーレ/神の怒り』を思い出したという人、当時の植民地支配の様子が興味深かったという人、さまざまでした。
A: アフリカで暮らしたことのあるフランスのクレール・ドニが撮った『美しき仕事』の主人公をドン・ディエゴ・デ・サマに重ねる批評家もいます。アルゼンチンでは、「チョー退屈」「半分寝ていた」「これをオスカー賞アルゼンチン代表作品に選ぶなんて」「良かったのは映像とショットだけ」と、批評家と観客の乖離が際立っています。
B: 観客に多くを要求する監督、メキシコのカルロス・レイガダス映画と同じように、好き嫌いがはっきり分かれる監督です。
A: マルテル映画では音がセリフと同じくらい重要と感想を述べたのですが、賛同を得られませんでした。しかし、デビュー作の『沼地という名の町』以来、マルテル・ワールドではサウンドはセリフや映像と同じくらい重要です。
B: 本作でも鳥の鋭い鳴き声、虫や小動物がたてる音、波の音か風の音か分からないざわめき、遠くから響いてくる馬の蹄の音などが、やがて起こるであろう凄惨なシーンを観客に予告していた。
A: 音の密度の高さが際立っていました。デビュー作以来、マルテル監督とタッグを組んでいるサウンド・デザイナーのグイド・ベレンブラムと音作りに苦心したということです。自然音と錯覚させるような鳥や虫の声も概ね電子音だそうで、ミミックだったなんて驚きます。サウンドやリズムは、撮影を容易にしてくれるとも語っています。
(サウンド・デザイナーのグイド・ベレンブラム)
B: 前作『頭のない女』でも、車に何か当たったような、または轢いたような鈍い音が印象的でした。それをきっかけにヒロインの心の崩壊が始まるのでした。
A: 恐ろしい映画でした。都合の悪いことは「見ないようにすれば、行ってしまう・・・ほら、行ってしまった」と、あったこともなかったことにしてしまう、アルゼンチン中流家庭の独善性を描いていた。前作と本作は時代も背景も全く異なりますが、自分の思い描いていた世界が崩壊しそうになっている主人公、ということでは似ています。前作では<待望>というテーマは語られませんでしたが。
B: 『サマ』の始まりも映像でなく音だったように思いますが。
A: 耳の錯覚を利用して不安を煽るシェパード・トーン、無限音階を使った。脳の勘違いを利用して聞く人に緊張を強いる。何か悪いことが起こるような予感を観客に与える効果がある。
B: ハリウッドではクリストファー・ノーランが好んで使用する。最近公開された『ダンケルク』もシェパード・トーンを多用、戦闘場面でCGは使用しなかったが、サウンドはシェパード・トーンだったそうです。
A: アントニオ・ディ・ベネデット(1922~86)の小説では、音はどのように表現されているのか興味が湧きます。邦訳は “Zama”(1956刊)も含めて1冊もないそうです。勿論誰かが翻訳中かもしれませんが、目下は皆無だそうです。前回データをアップしたときに書いたように、ボルヘスも認めている作家で、フリオ・コルタサルやエルネスト・サバトに並ぶ作家といわれているにしては寂しいかぎりです。
(原作者アントニオ・ディ・ベネデット、マドリードにて)
B: 最近作品集「ボラーニョ・コレクション」全8巻が完結したばかりのロベルト・ボラーニョも、1980年代に読んで影響を受けたそうです。
A: 文章が多義的で翻訳しにくいということがあるのかもしれません。映画では、サマのクローズアップに、彼の内言をナレーションのようにつぶやかせるが、詩的な内言に原文はどうなっているのか、かなり訳しづらいのではないでしょうか。英訳本ですら2016年にニューヨークで出版されたばかりということですから。スペイン語を母語とする人口は4万人を越えますが、やはりマイナー言語なのでしょう。
(クローズアップに内言が被さるシーン)
*『サマ』のデータ、監督フィルモグラフィー、原作者アントニオ・ディ・ベネデットの記事は、コチラ⇒2017年10月13日
2016年はアルゼンチン独立宣言200年、『サマ』刊行60周年・・・
B: スペインからアルゼンチンが独立したのは1817年7月8日、2016年は独立宣言200周年だった。さらに『サマ』刊行60周年、ディ・ベネデット没後30周年と節目の年でした。、
A: さらに言えば、1976年3月24日の軍事クーデタ勃発当日に、ディ・ベネデットが軍事評議会の手で即座に逮捕されてから40年目でもありました。彼は日刊紙「ロス・アンデス」の副編集長だったから、真相を暴かれることを封じるためにジャーナリストの逮捕は必然だった。
B: 逮捕後17ヵ月収監されており、釈放されたときは精神はずたずたにされていた。
A: 刑務所に閉じ込められ、拷問で痛めつけられ、銃殺刑で脅されても、平和的なヒューマニズムを貫いた作家だった、とボラーニョの評価も高いのですね。
B: 釈放の仲介をしたのが、ボルヘスとかエルネスト・サバトとか・・・
A: そんなことあり得ませんよ。「恐怖の文化」が蔓延していたアルゼンチンで信じる人はいないのではありませんか。ボルヘスはビデラ将軍を支持して体制側にいた人ですが、火中の栗を拾う人ではない。真相はドイツのノーベル文学賞(1972受賞)作家ハインリッヒ・ベルだったことが分かっています。当時ドイツでは、ディ・ベネデットの "El silenciero"(1964刊)の翻訳が出版されていた。
B: ノーベル賞作家、言語はドイツ語というわけでベルの翻訳書はたくさん出版されています。
A: 作家で翻訳家のエスター・アレンによって英訳が5年ほど前から企画されていた。しかしマルテル監督が2016年完成をメドに映画化を準備中ということで、刊行は2016年後半と決定した。ところが映画が予定通りに進捗せず、仕方なく映画に先行して出版されたそうです。マルテル監督は “Zama” を読み始めたら目が釘付けになって、一気呵成に読んだと語っていました。
B: 日本では、『サマ』で初めて原作者の名前を知った観客が殆どだったと思いますが、ラテンアメリカ文学の「アンチ・ブーム」の優れた作家として故国では有名だった。
A: スペインでは2011年に、先述した "El silenciero" と、1969年刊の “Los suicidas” を<待望の三部作>と銘打って刊行しています。勿論ディ・ベネデット自身に、そういう意図はなかった。
ビクーニャ・ポルトはディエゴ・デ・サマの分身か?
B: 観客は18世紀末のコロニアル時代のパラグアイに時間を遡っていく。そしてスペイン国王によってアスンシオンに赴任させられた、主人公ディエゴ・デ・サマの孤独と待望を共有する。
A: ラテンアメリカの伝統的価値観、男性優位のマチスモがはびこる世界でも、本国出身のスペイン人と植民地生れのクリオーリョには歴然とした格差があり、クリオーリョのサマは差別される。2世紀前も現代も差別や不寛容は連綿とつづく。
B: 不始末をした部下が、サマの切望していたブエノスアイレスに転任できたのに、上司である自分がないがしろにされている理不尽を総督に問い詰めると、「彼はスペイン生れだから」と軽くいなされてしまう。
A: 総督は「サマが本国生れpeninsularではない」と言っている。人事異動はスペイン国王の気まぐれで行われるのであるが、総督はサマの異動嘆願書を握りつぶしていたようで、いくら待っても信書が届けられるはずはなかった。
B: 本国生れの総督は「私はスペインに転任できる」と、国王からの異動信書を誇らしげにサマに読み聞かせる。サマが切れてしまう瞬間です。
A: 悪名高い無法者ビクーニャ・ポルトの人格とサマの人格は、深いところで繋がっている。ビクーニャも部下たちも新世界で一旗揚げようとしていた。社会の欄外に追いやられるのは、いくら待っても夢は実現しなかった結果なのだ。
B: ビクーニャは伝説と化し、一人ではないのかもしれない。一人が死ねば次のビクーニャが生れ、ビクーニャは永遠に生き続けている。複数のビクーニャが存在するようにサマも複数存在する。
A: ビクーニャ・ポルトを演じたマテウス・ナシュテルゲールは、ブラジルの俳優、下記にキャスト紹介をアップしましたが、公開作品としてフェルナンド・メイレレスの『シティ・オブ・ゴッド』、ウォルター・サレスの『セントラル・ステーション』などに出演しています。
B: ビクーニャ・ポルト討伐隊のキャプテンに扮したのがラファエル・スプレゲルブルド。
A: ラファエル・スプレゲルブルドは、ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンが共同監督した『ル・コルビュジエの家』の主人公、クルチェット邸に住んでいた建築家役を演じた俳優です。舞台俳優出身ですが、脚本家、舞台演出家のほうがメインです。戯曲集も出版している。『サマ』出演は意外でした。
(左端がサマ、中央の馬上の人がキャプテン、頭陀袋を持っているのがビクーニャ)
B: ビクーニャ討伐隊のはずが、討伐隊にビクーニャ本人が紛れ込んでいる。この地が魑魅魍魎の跋扈している世界であることを印象づける。
A: 本作ではビクーニャ・ポルトの人格はとても重要ですね。サマが最後にとった行動、功を焦るあまり討伐隊に志願する、これはあまりに愚かな行為、狂気の沙汰だった。結局サマは取り返しのつかない屈辱を受ける。かつての自分たちがしてきたことですが、既にスペインの栄光が瓦解していたことを暗示している。
B: 討伐隊の悲劇はシェパード・トーンによって、まず観客に届いてきます。悲劇の始まりはビクーニャではなかった。文明人と称するヨーロッパ人が、野蛮人と蔑んでいた先住民に翻弄されるというシニシズム。
A: サマにだけ身分を明かすビクーニャの狡猾さ。サマが裏切ることを見越して打ち明ける。悲劇はすでに準備されていた。時代に取り残され、社会の埒外に追いやられた、サマとビクーニャのフラストレーションは繋がっている。
サマのドラマは決して実現しない昇任を待っている男の物語
B: サマはいわば落伍者、どうして英雄でなく落伍者の映画を撮ろうとしたのか。
A: 『サマ』は決して実現しない何かを待っているマッチョな男の物語、ここでは国王からの昇任通知を待っている。この「待ちつづけている」というテーマが面白い。
B: マチスモ文化のラテンアメリカで、この落伍者の人生を描くというアイデアは、不愉快で困難が付きまといます。サマは文字通り何も手にすることができなかった。
A: 女性はどっちみち権力の欄外にいたわけで、生き方を変えるのに棒で殴られることはない。ロラ・ドゥエニャスが演じたブランデー中毒のルシアナのように、夫の目を盗んで愛人やサマと戯れたり、思う存分贅沢を楽しめる。
B: 幸運なことに両手を失ったりしないですむわけですね。
(サマをもてあそぶルシアナ・ピニャレス・デ・ルエンガ)
A: ロラ・ドゥエニャスは、スペイン女優としては認知度が高いほうです。なんと言っても代表作はアメナバルの『海を飛ぶ夢』(04)です。愛にあふれていたが情緒的に不安定な実在の女性を演じて、ゴヤ賞主演女優賞を受賞した。
B: 一時期アルモドバル映画の常連でもあったが、脇役でも光る女優。今回の出番は多くありませんでしたが、マチスモの世界で生き延びる術を心得た退廃的な女性を演じた。サマ役のダニエル・ヒメネス=カチョも、よく目にする俳優。
A: 今年のラテンビートでは、サンティアゴ・ミトレの『サミット』で、抜け目のないメキシコ大統領を演じた。出演本数の多いベテランですが、アルゼンチン映画は初めてでしょうか。
B: エンド・クレジットで流れたポップ調のBGMは、物語とアンバランスな印象ですが。
A: わざとでしょうね。以前耳にタコができるほど聴いた覚えのある懐かしい曲でした。見ながら同じアルゼンチンのパブロ・トラペロが撮った『エル・クラン』のアンバランスを思い出していました。
B: 誘拐殺人を家業にしていたモンスター家族を描いた映画からは、予想もできないアップテンポな曲が流れてきた。
A: わざと視覚と聴覚を混乱させることを狙って、当時流行していたブリティッシュ・ポップスを使用したのです。トラペロにしろマルテルにしろ若い監督たちの感性は、オールド・シネマニアの意表を突いてきます。
B: 最後に「どうしてサマの映画を撮ろうとしたのか」
A: 「それは音と映像を用いて、甘美な後戻りのできない小旅行に出かけることは、人生においてそうザラにあることではないから」と監督。
B: 製作国9ヵ国、ロケ地8ヵ国、製作者28人という大所帯の遠足、大分お金が掛かったのではありませんか。
A: 撮影監督ルイ・ポサス、編集者ミゲル・シュアードフィンガー他、スタッフの協力があって実行できた遠足でした。
◎主なキャスト紹介
ダニエル・ヒメネス=カチョ(ドン・ディエゴ・デ・サマ)、メキシコ、1961マドリード
代表作『クロノス』『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』『ブランカニエベス』『バッド・エデュケーション』『サミット』他
ロラ・ドゥエニャス(ルシアナ・ピニャレス・デ・ルエンガ)、1971バルセロナ
代表作『靴に恋して』『夢を飛ぶ夢』『ボルベール 帰郷』『トーク・トゥ・ハー』
マテウス・ナシュテルゲール(ビクーニャ・ポルト)、ブラジル、1969サンパウロ
代表作『クアトロ・ディアス』『セントラル・ステーション』『シティ・オブ・ゴッド』
ラファエル・スプレゲルブルド(キャプテン・イポリト・パリィリャ)、1970ブエノスアイレス。代表作『ル・コルビュジエの家』、脚本家・舞台演出家、戯曲翻訳を手掛ける。
フアン・ミヌヒン(ベントゥラ・プリエト)、アルゼンチン
ダニエル・ベロネセ(総督)、1955ブエノスアイレス、監督・脚本家・作家
ナウエル・カノ(マヌエル・フェルナンデス)
マリアナ・ヌネス、ブラジル(『ペレ 伝説の誕生』ペレの母親役)
ルクレシア・マルテルの新作『サマ』*ラテンビート2017 ⑤ ― 2017年10月13日 12:32
どうしてサマの人生を撮ろうとしたのか?
★ラテンビートのサイトでも、ルクレシア・マルテルの『サマ』が、第90回米アカデミー賞外国語映画賞のアルゼンチン代表作品に選ばれたニュースが掲載されました。もう、そういう季節なのでした。それはさておき、久々のマルテル映画がラテンビートにやってきます。出身地のサルタを舞台に撮った「サルタ三部作」の最終作『頭のない女』(2008)以来ですから約十年ぶりです。今年のブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭BAFICIに “Zama” が正式出品されたとき、記事にしようかどうか迷った作品。BAFICIは開催日がマラガとカンヌの両映画祭に挟まれているせいで優先順位が低い。アルゼンチンの作家アントニオ・ディ・ベネデットの同名小説 “Zama”(1956年刊)の映画化。最大の関心は、どうしてマルテルが自国の優れた小説の映画化という、後戻りのできない新しい分野に斬りこもうとしたか、です。
★『頭のない女』はカンヌでブーイングを受けた映画ですが、これは映画祭向きではなかったと思います。そもそも監督は上映後すぐのQ&Aは好きじゃないと語っています。彼女の映画は観客が咀嚼というか消化する時間が必要だからでしょうか。というわけかどうか分かりませんが、今年のカンヌは素通りしました。秋のベネチア映画祭には、コンペティション外でしたがエントリーされ、ベネチアには監督、ディエゴ・デ・サマ役のダニエル・ヒメネス=カチョ、共演者のロラ・ドゥエニャスが現地入りしておりました。製作国はアルゼンチン、スペイン、メキシコ、ブラジルを含めて9ヵ国、プロデューサーもエグゼクティブや共同、アシスタントを含めて総勢28人、まともじゃないが全部は紹介できない。ラテンビートでは追加作品だったから、カタログ掲載が間に合わなかったようです。東京会場バルト9では最終回上映、鑑賞後改めてアップするとして、今回はデータ中心にしました。
(左から、ロラ・ドゥエニャス、監督、ダニエル・ヒメネス=カチョ、ベネチアFFにて)
『サマ』 (“Zama”)2017
製作:Rei Cine(亜)/ Bananeira Films(ブラジル)/ LemmingFilm(蘭)/
Canana(メキシコ)/ El Deseo(西)/ KNM(スイス)/ Louverture Films(米)他
協賛:INCAA、ICAA、CNC(仏)、Netherland Filmfund(蘭)、Programa Ibermedia 他
監督・脚本:ルクレシア・マルテル
原作:アントニオ・ディ・ベネデットの小説 “Zama”
撮影:ルイ・ポサス
編集:カレン・ハーレー、ミゲル・シュアードフィンガー
キャスティング:ナタリア・スミルノフ、ベロニカ・ソウト
美術:レナータ・ピネイロ
衣装デザイン:フリオ・スアレス
メイクアップ&ヘアー:マリサ・アメンタ(メイク)、アルベルト・モッチア(ヘアー)他
音楽:グスタボ・モンテネグロ
プロダクション・マネージメント:フカ・ディアス、パブロ・Trachter
録音:グイド・ベレンブラム、マヌエル・デ・アンドレス、ホセ・カルダラロ、他多数
製作者:ヴァニア・カタニ、ベンハミン・ドメネク、サンティアゴ・ガリェリ、(エグゼクティブ)ガエル・ガルシア・ベルナル、アンヘリサ・ステイン、(共同)アルモドバル兄弟、エステル・ガルシア、パブロ・クルス、ルイス・ウルバノ、フアン・ベラ、他総勢28名
データ:製作国アルゼンチン、スペイン、フランス、オランダ、USA、メキシコ、ブラジル、ポルトガル、レバノン、スイス、言語スペイン語、2017年。映画祭上映BAFICI、ベネチア、トロント、ニューヨーク、ロンドン、ムンバイ、釜山、各映画祭2017、他。撮影地はアルゼンチンの他、ブラジル、スペイン、フランス、メキシコ、ポルトガル、オランダ、米国など。公開アルゼンチン9月28日、スペイン2018年1月26日
キャスト:ダニエル・ヒメネス=カチョ(ドン・ディエゴ・デ・サマ)、ロラ・ドゥエニャス(ルシアナ・ピニャレス・デ・ルエンガ)、マテウス・ナシュテルゲール(ビクーニャ・ポルト)、フアン・ミヌヒン(ベントゥラ・プリエト)、ナウエル・カノ(マヌエル・フェルナンデス)、マリアナ・ヌネス、ダニエル・ベロネセ(総督)、カルロス・デフェオ、ラファエル・スプレゲルブルド(キャプテン・イポリト・パリィリャ)他
解説:ドン・ディエゴ・デ・サマは知らせを待ちつづけている。サマはスペイン国王により植民地統治のためパラグアイに派遣されてきていた。ブエノスアイレスへの異動信書を運んでくるはずの船を待ち侘び、地平線を見つめるのが日課だった。妻や子供たちと切り離され、時が永遠に止まってしまったかのような未知の世界で孤独を募らせていく。18世紀末の植民地時代を背景に、自分が思い描いていた世界が壊れそうになっていく男の物語。先述したようにアントニオ・ディ・ベネデットの同名小説 “Zama”(1956年刊)の映画化。
(ドン・ディエゴ・デ・サマ、ダニエル・ヒメネス=カチョ)
(国王の信書を待ちわびるサマ)
(サマに戯れる役人の妻ルシアナ、ロラ・ドゥエニャス)
★物語も時代背景も全く異なるのに、前作『頭のない女』とテーマは似ているかなという印象です。これも運転中に何かを轢いたかもしれないという或るきっかけを境いに、自分の世界が壊れそうになっていく女性の話でした。『サマ』も自分が思い描いていた世界が壊れていく男の人生を描いている。孤独のなかで「待望に捉えられた」男の苦しさを描いている。
★原作者のアントニオ・ディ・ベネデットは、1922年メンドサ生れ、作家、ジャーナリスト、映画脚本家。日刊紙「ロス・アンデス」の記者として出発している。アルゼンチンのジャーナリズムで仕事をしていて、軍事独裁と無縁であった人は僅かでしょうか。彼は1976年3月24日の軍事クーデタ勃発当日に、ロス・アンデスの編集室で逮捕されている。1977年9月4日に釈放されたときには精神がずたずただったという。その後すぐにフランスに脱出、マドリードに移って6年間の亡命生活を余儀なくされた。名ばかりとはいえ民主主義になった1984年に帰国したが、1986年10月に63歳で死去している。ディ・ベネデットはドストエフスキーやルイジ・ピランデルロ(1934年、ノーベル賞受賞)に魅了されて作家の道に進んだという。アルゼンチンではボルヘスも評価していた作家だそうで、フリオ・コルタサル、エルネスト・サバトと並ぶようですが、それにしては翻訳書が目下のところないのが不思議です。『サマ』の英訳も最近出版されたばかりのようです。
★ルクレシア・マルテルLucrecia Martelの簡単紹介。1966年12月14日、アルゼンチン北部のサルタ州生れ。長編デビュー作が『沼地という名の町』(2001、La Ciénaga)、NHKが資金提供しているサンダンス映画祭でNHK賞を受賞した。他にハバナ映画祭サンゴ賞(作品賞)、ベルリン映画祭アルフレッド・バウアー賞、アルゼンチンのクラリン賞など受賞歴多数。日本では一度だけNHK(BS)で深夜放映された。2作目が『ラ・ニーニャ・サンタ』(2004、La niña santa)、カンヌ映画祭正式出品、クラリン賞、サンパウロ映画祭審査員賞など受賞している。本作は第1回ヒスパニック・ビート映画祭2004(現ラテンビート)で上映された。
(ルクレシア・マルテル監督、ブエノスアイレスにて)
★3作目がカンヌ映画祭でブーイングを受けたという『頭のない女』(2008、La mujer sin cabeza)、しかし国内での評価は高く、アルゼンチン・アカデミー賞、シルバー・コンドル賞、またリマ映画祭審査員賞、リオデジャネイロ映画祭FIPRESCI賞などを受賞、ラテンビート2008で上映されました。プロデューサーが来日、質疑応答の機会がもたれたが、通訳が上手く噛みあわなかった。以上3作は、生れ故郷サルタが舞台だったことから、「サルタ三部作」といわれている。第4作が『サマ』です。短編、TVドキュメンタリーを除いています。
(『サマ』撮影中のルクレシア・マルテル)
*第3作『頭のない女』については、現在休眠中のCabinaブログに感想をコメントしております。カビナさんのユニークな紹介記事は、コチラ⇒
http://azafran.tea-nifty.com/blog/2008/09/la-mujer-sin-ca.html
『ホーリー・キャンプ!』*ラテンビート2017 ④ ― 2017年10月07日 18:20
大ヒット・ミュージカルの映画化、4年間で30万人が劇場に足を運んだ!
★終了したばかりのサンセバスチャン映画祭2017「Gala TVE」部門で上映されたハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボの “La llamada” が、英題のカタカナ起こし『ホーリー・キャンプ!』の邦題で上映されます。サンセバスチャンでも少しご紹介しましたが、ラテンビート上映が決定したので追加いたします。2013年5月2日にLara劇場でスタート、4年間で30万人の観客動員数を誇るロングラン・ミュージカルの映画化。劇場版も二人のハビエルJavier(Javisハビス)が監督、脚本を手掛けました。二人ともTVシリーズに出演している俳優出身ですが、今回、揃って映画監督にデビューしました。ハビエル・アンブロッシ(1984年マドリード)、彼のパートナーであるハビエル・カルボ(1991年マドリード)の息の合ったミュージカルが楽しめます。
(左から、アンブロッシ監督、カルボ監督、マカレナ・ガルシア、ベレン・クエスタ、
アンナ・カスティーリョ、グラシア・オラヨ)
★キャスト陣は、『ブランカニエベス』のマカレナ・ガルシア、『オリーブの樹は呼んでいる』のアンナ・カスティーリョ、『KIKI~恋のトライ&エラー』のベレン・クエスタなどのぴちぴちガールズが出演します。グラシア・オラヨ(『気狂いピエロの決闘』)やセクン・デ・ラ・ロサ(『スガラムルディの魔女』)などアレックス・デ・ラ・イグレシア映画のメンバーが脇を固めています。いずれもラテンビートで上映された作品です。他に舞台から引き続いて出演しているディオス(神様)役をイギリス出身のリチャード・コリンズ・ムーアが演じ、舞台同様人気を博しています。必要な時にはいつも居留守をつかう神様が目で見られるなんてね。
“La llamada” (“Holy Camp !”) 2017
製作:Apache Films / Lo hacemos y ya vemos / Sábade Películas / スペイン国営放送TVE
監督・脚本:ハビエル・アンブロッシ & ハビエル・カルボ
音楽:Leiva
撮影:ミゲル・アモエド
編集:マルタ・ベラスコ
美術:ロヘル・ベリェス
衣装デザイン:アナ・ロペス・コボス
メイクアップ&ヘアー:シルビエ・インベルト、パブロ・モリリャス
プロダクション・マネージメント:ピラール・ロブラ
特殊効果:ラウル・ロマニリョス
視覚効果:ラモン・セルベラ、ギジェルモ・ゲレーロ
製作者:ホセ・コルバチョ、キケ・マイリョ、ホルヘ・ハビエル・バスケス
(エグゼクティブ)トニ・カリソサ、エンリケ・ロペス
データ:製作国スペイン、スペイン語、2017年、ミュージカル映画、109分、サンセバスチャン映画祭2017Gala TVE上映(9月27日)、スペイン公開9月29日、ラテンビート2017上映(10月8日)
キャスト:マカレナ・ガルシア(マリア・カサド)、アンナ・カスティーリョ(スサナ)、ベレン・クエスタ(シスター・ミラグロス)、グラシア・オラヨ(ベルナルダ尼)、リチャード・コリンズ・ムーア(ディオス)、セクン・デ・ラ・ロサ(カルロス)、マリア・イサベル・ディアス、エスティ・ケサダ、他
プロット・解説:セゴビアにある「ラ・ブルフラ」のキリスト教のキャンプ、最近当地にやってきたばかりのベルナルダ尼は、歌でこのキャンプを乗り越えたいと思っている。若いシスター・ミラグロスは疑問を抱え、まだ迷いが残っている。十代のマリアとスサナは「スマ・ラティナ」と呼ばれるグループに属していて、罰を受けてキャンプに参加していた。ところがある夜のこと、ディオスがマリアの前に現れてからというもの、事態は一変した。だってディオスはホイットニー・ヒューストンが大好きなのだ。
というわけで、ホイットニー・ヒューストンに大枚をはたいた
★神様に授けられた声とも天使の声とも称されたホイットニー・ヒューストンのレパートリー以外のカントリーやウエスタンも登場するようです。彼女のレパートリーを使うことは、2012年2月に世界を駆け巡った突然の訃報にも関係があるようです。直接の死因は薬物の多量摂取によるとしても、本当の理由はほかにあることはファンならずとも知っています。彼女は落ち着ける自分の居場所がなかったのですよ。さて、劇場版は大成功したとは言え、映画化への道は結構大変だったようです。それは「ホイットニー・ヒューストンの曲の権利が高額だったためだが、映画化のために最初に獲得した。劇場版と同じように『オールウェイズ・ラヴ・ユー』は許可されたが、『ステップ・バイ・ステップ』は難しかった。作曲家がヒューストンでなく、アニー・レノックスだったからです」とアンブロッシ監督。何度も手紙で熱烈に交渉して、数か月後にやっと許可が下りたということです。若い人だけでなく大衆に受け入れられたのは、似非信心ぶらない、お説教くさくない、クリスチャンのミュージカルだったからで、三つの鍵は、ほとばしる熱意、エネルギー、歓喜だと。物語は誠実で、魅力的、強さ、感謝に満ちている。
(ハビエル・カルボとハビエル・アンブロッシ、サンセバスチャン映画祭2017にて)
★劇場版は2013年5月2日、マドリードのララ劇場で初演され、予想外の大当たりに興行主も驚いたという。マドリードからパレンシア、バジャドリード、バレンシア、ソリアなど合計30都市を巡業して回り、メキシコにまで遠征しています。ブロードウェイに舳先を向けてオフ・ブロードウェイで始まったミュージカルが、スペインでここ数年間で最も成功した舞台の一つに仲間入りしたということです。劇場版では、既に数々の賞を受賞している作品ですが、映画版でも来年のゴヤ賞に早くも候補の噂が出ています。特にベルナルダ尼に扮して軽やかなステップと声を披露したグラシア・オラヨのノミネーションは当たらずとも遠からずかも。
★キャスト陣は劇場版で出演したメンバーだったので、新しいシーンも加味したとはいえ、脚本の筋そのものは熟知していた。半面、慣れからくる甘やかしを忘れさせねばならなかったとアンブロッシ監督。スペイン語以外の言語やカメラの移動を調整したり、劇場版のロジックを忘れさせねばならなかった。ジャンルが異なるのだから、当然といえば当然の話ですよね。それぞれ複数の俳優が交代で舞台に立った。アンナ・カスティーリョが『オリーブの樹は呼んでいる』(イシアル・ボリャイン)の撮影で、ベレン・クエスタが『KIKI~恋のトライ&エラー』(パコ・レオン)の撮影で降板したりした。その都度、涙の「さよなら公演」は大入り満員、観客が広くもない舞台に駆け上がり、舞台がはねた後も通りに繰り出し、朝まで騒ぎは静まらなかった由。つまり30万人のなかには3回、4回と見に来てくれたリピーターがいたということでしょう。経済不況と失業者の苛々ストレスが爆発したのかもしれませんが、舞台を見た観客はみんな喜びを分かち合い、幸せな気分になれたのでしょう。映画も同じだといいのですが。
(ベレン・クエスタ、アンナ・カスティーリョ、映画から)
ハビエル・アンブロッシ監督とマカレナ・ガルシアは実の兄妹
★作品の誕生は、「クリスチャンのキャンプで生まれるレズビアンの愛の物語を語りたかったからだ」とカルボ監督。そして「二人ともニューヨークのアンダーグラウンドのミュージカルが大好きだったからだ」とアンブロッシ監督。2012年のホイットニー・ヒューストンの訃報、ワールドユースデー(青年カトリック信者の年次集会)がスペインで開催され、ローマ教皇が訪問、マリア役のマカレナ・ガルシア(アンブロッシの実妹)の『ブランカニエベス』でのゴヤ新人女優賞受賞など、ヒットの種はあったようです。
(マリア役のマカレナ・ガルシア、映画から)
★とはいえ舞台と違って映画となると観客の規模が大きくなるから、「とても不安、舞台の失敗より映画の失敗が怖い」とカルボ、「同じことだよ、ハビ。信念をもって思い切って挑戦したんだから」ともう一人のハビ。最近アンブロッシがカルボに正式にプロポーズしたようです。公開したばかりのスペインでの批評家の評価はまずまず、ラテンビートの観客の評価はどうでしょうか。
バスク語映画 "Handia"*サンセバスチャン映画祭2017 ⑥ ― 2017年09月06日 15:16
オフィシャル・セレクション第3弾『フラワーズ』の監督が再びやってくる
★世界の映画祭を駆け巡った『フラワーズ』(“Loreak” 14)の監督ジョン・ガラーニョと、その脚本を手掛けたアイトル・アレギが、19世紀ギプスコアに実在したスペイン一背の高い男ミケル・ホアキン・エレイセギ・アルテアガ(1818~61)にインスパイアーされて “Handia” を撮りました。本名よりもGigante de Altzo「アルツォの巨人」という綽名で知られている人物です。前作でジョン・ガラーニョと共同監督したホセ・マリ・ゴエナガは、脚本&エグゼクティブ・プロデューサーとして参画しています。バスク自治州のサンセバスチャンで開催される映画祭ですが、オフィシャル・セレクションに初めてノミネートされたバスク語映画が『フラワーズ』だった。
(ワーキング・タイトルのポスター)
“Handia”(ワーキング・タイトル“Aundiya”、英題 ”Giant”) 2017
製作:Irusoin / Kowaiski Films / Moriarti Produkzioak / 他
監督:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ
脚本:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アンド二・デ・カルロス
音楽:パスカル・ゲーニュ
撮影:ハビエル・アギーレ
編集:ラウル・ロペス、Laurent Dufreche
キャスティング:ロイナス・ハウレギ
プロダクション・デザイン:ミケル・セラーノ
メイクアップ&ヘアー:オルガ・クルス、Ainhoa Eskisabel、アンヘラ・モレノ、他
衣装デザイン:サイオア・ララ
プロダクション・マネージメント:アンデル・システィアガ
製作者:ハビエル・ベルソサ、イニャキ・ゴメス、イニィゴ・オベソ、
(エグゼクティブ)ホセ・マリ・ゴエナガ、フェルナンド・ラロンド、コルド・スアスア
データ:スペイン、バスク語(スペイン語を含む)、2017年、歴史ドラマ、製作資金約200万ユーロ、サンセバスチャン映画祭2017正式出品、スペイン公開10月20日予定
キャスト:エネコ・サガルドイ(ミゲル・ホアキン・エレイセギ)、ホセバ・ウサビアガ(兄マルティン・エレイセギ)、ラモン・アギーレ(父アントニオ・エレイセギ)、イニィゴ・アランブラ(興行主アルサドゥン)、アイア・クルセ(マリア)、イニィゴ・アスピタルテ(フェルナンド)、ほか
プロット:マルティンは、第一次カルリスタ戦争からギプスコアの集落で暮らす家族のもとに戻ってきた。そこで彼が目にしたものは、出征前には普通だった弟ホアキンの身長が見上げるばかりになっていたことだった。やがて人々がお金を払ってでも、地球上で最も背の高い男を見たがっていることに気づいた二人の兄弟は、野心とお金と名声を求めて、スペインのみならずヨーロッパじゅうを駆けめぐる旅に出立する。家族の運命は永遠に変わってしまうだろう。19世紀に実在した「アルツォの巨人」ことミケル・ホアキン・エレイセギの人生にインスパイアーされて製作された。
スペイン海軍の将軍に扮した巨人ミゲル・ホアキン・エレイセギ
★実際のミゲル・ホアキン・エレイセギ・アルテアガ(バスク語ではMikel Jokin Eleizegi Arteaga)は、1818年12月23日、ギプスコア県のアルツォ村で9人兄弟姉妹の4番目の男の子として生まれた。母親は彼が10歳のころに亡くなっている。20歳で先端巨人症を発症して死ぬまで身長が伸びつづけたということです。記録によると身長が227センチ、両手を広げると242センチ、靴のサイズは36センチだったという(身長には異説がある)。当時のヨーロッパでは最も背が高く「スペインの巨人」として、イサベル2世時代のスペイン、ルイ・フィリップ王時代のフランス、ビクトリア女王時代のイギリスなどを興行して回った。たいていトルコ風の服装、あるいはスペイン海軍の将軍の衣装を身に着けて舞台に立った。1961年11月20日、肺結核のため43歳で死亡、遺体は生れ故郷アルツォAltzoに埋葬されたが、コレクターの手で盗まれてしまっている。映画は史実に基づいているようですが、やはりフィクションでしょうか。
(スペイン海軍の将軍の衣装を着たミゲル・ホアキン)
◎キャスト
★兄弟を演じるエネコ・サガルドイ(1994)もホセバ・ウサビアガも初めての登場、二人ともバスク語TVシリーズ “Goenkale” に出演している。2000年から始まったコメディ長寿ドラマのようで、エネコ・サガルドイは本作で2012年にデビュー、翌年までに57話に出演している。身長が高いことは高いが227センチのミゲル・ホアキンをどうやって演じたのか興味が湧きます。二人ともバスク語の他、スペイン語、英語の映画に出演している。
(ミゲル・ホアキン・エレイセギ役のエネコ・サガルドイ、映画から)
(左端が兄マルティン役のホセバ・ウサビアガ、映画から)
★第一次カルリスタ戦争は1933年に勃発、1939年に一応終息しました。兄マルティンが復員してから物語は始まるから、時代背景は1940年代となります。イニィゴ・アランブラ扮するアルサドゥンは、実在したホセ・アントニオ・アルサドゥンというナバラ在住の男で、ホアキンを見世物にして金儲けしようと父親に掛け合った。なかなか目端の利いた男だったようです。父親役のラモン・アギーレ(1949生れ)は、フェルナンド・フランコがゴヤ賞2014新人監督賞を受賞した “La herida”(13)、公開されたアルモドバルの『ジュリエッタ』、イニャキ・ドロンソロの『クリミナル・プラン~』、ミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』(2012パルム・ドール)などに出演しているベテラン。フェルナンド・フランコの新作 “Morir” が、今年の特別プロジェクションにエントリーされているので、時間的余裕があればアップしたい。
(映画の宣伝をする?アルサドゥン役のアランブラ、ネパールのプーンヒル標高3310mにて)
◎スタッフ
★製作者は、ラテンビート、東京国際映画祭で上映された『フラワーズ』や ”80 egunean”(”For 80 Days”)に参画したスタッフで構成されており、唯一人エグゼクティブ・プロデューサーのコルド・スアスアが初参加、過去にはフェルナンド・フランコの “La herida”、マルティネス=ラサロのヒット作 “Ocho apellidos vascos”(14)、アメナバルの “Regresión”(15、未公開)などを手掛けている。プロダクション・マネージメントのアンデル・システィアガも初参加、過去にはアレックス・デ・ラ・イグレシア映画『13 みんなのしあわせ』『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』他を手掛けている。音楽はフランス出身、1990年からサンセバスチャンに在住しているパスカル・ゲーニュと同じです。監督キャリア&スタッフ紹介は『フラワーズ』にワープしてください。
(『フラワーズ』のポスター)
★前作の脚本を担当、本作で監督にまわったアイトル・アレギAitor Arregi は、ジョン・ガラーニョとの共同でドキュメンタリー ”Sahara Marathon”(04、55分)を撮っている。他にイニィゴ・ベラサテギとアドベンチャー・アニメーション ”Glup, una aventura sin desperdicio”(04、70分)、“Cristobal Molón”(06、70分)を共同で監督している。また本作では脚本と製作を担ったホセ・マリ・ゴエナガとドキュメンタリー “Lucio”(07、93分)を撮り、グアダラハラ映画祭のドキュメンタリー部門で作品賞を受賞している。
(ジョン・ガラーニョとアイトル・アレギ)
マヌエル・マルティン・クエンカ*サンセバスチャン映画祭2017 ④ ― 2017年08月31日 15:11
オフィシャル・セレクション第1弾、マルティン・クエンカの “El autor”
★オフィシャル・セレクションの第1弾として、賞に絡みそうなマヌエル・マルティン・クエンカの第5作 “El autor” のご紹介。当ブログでは前作『カニバル』(2013)と、当映画祭2005のオフィシャル・セレクション部門に正式出品された第2作目『不遇』をアップしておりますが、コメディ要素たっぴりの最新作が一番観客にも受け入れやすいのではないかと思っています。『カニバル』は批評家と観客の乖離があり過ぎました。本作はハビエル・セルカスのデビュー作 “El móvil” (1987、仮題「動機」)の映画化、ワーキング・タイトルはこちらでした。ハビエル・セルカス(1964、カセレス)は、国際的な成功を収めた『サラミスの兵士たち』(01、邦訳08)の著者として専ら知られている。これはダビ・トゥルエバが、2003年に映画化して話題になりました。大著『2666』で世界を驚かしたロベルト・ボラーニョとも接点のある作家です。
(ワーキング・タイトルのポスター)
“El autor”(“The Mobile”)2017
製作:Icónica Producciones / La Loma Blanca P.C. / Alebrije Cine y Video /
Canal Sur Televisión 他多数
監督:マヌエル・マルティン・クエンカ
共同脚本:マヌエル・マルティン・クエンカ、アレハンドロ・エルナンデス、
ハビエル・セルカスの小説 “El móvil” の映画化
撮影:パウ・エステベ・ビルバ(『カニバル』『不遇』)
音楽:ホセ・ルイス・ペラレス
編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド
美術:ソニア・ノリャ
録音:ダニエル・デ・サヤス
衣装デザイン:ペドロ・モレノ、エステル・バケロ
メイク&ヘアー:アナベル・ベアト(メイクアップ)、ラファエル・モラ(ヘアー)
キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラーノ
プロダクション・マネージメント:エルネスト・チャオ
製作者:モニカ・ロサーノ、ダビ・ナランホ、ゴンサロ・サラサル・シンプソン、ホセ・ノリャ(エグゼクティブ)、マヌエル・マルティン・クエンカ(共)
データ:スペイン=メキシコ、スペイン語、2017年、コメディ・ドラマ、2016年9月クランクイン、撮影地セビーリャ、他。トロント映画祭2017スペシャル・プレゼンテーション部門出品、サンセバスチャン映画祭オフィシャル・セレクション出品、スペイン配給Filmax、スペイン公開11月17日
キャスト:ハビエル・グティエレス(アルバロ)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(フアン)、マリア・レオン(アマンダ)、テノッチ・ウエルタ(エンリケ)、アドリアナ・パス(イレネ)、アデルファ・カルボ(管理人)、ドミ・デル・ポスティゴ(エル・マヌ)、ラファエル・テジェス(セニョール・モンテロ)、ミゲル・アンヘル・ルケ(警官)、カルメロ・ムニョス・アダメ、他
プロット:アルバロはセビーリャの公証人事務所で書記として働いているが、人生は灰色に塗りつぶされている。純文学の作家になるのが夢だが、彼の小説は気取っているうえに退屈、失敗続きである。なかなか面白いアイディアが浮かばない、才能も想像力も枯渇しているからだ。彼とは対照的に、妻のアマンダは大地に根を張り、作家になろうなどとは夢にも思わないが、皮肉にも彼女はベストセラー作家になってしまった。今や二人の別居は避けられそうにない。そこで小説の基礎を研究、小説作法の教師をしているフアンに教えを請うことにする。あるときアルバロは、フィクションとは現実に立脚していなければならないことに気づいた。フィクションを超えたリアリティーある物語を創作するために、隣人や友人たちを操りはじめるが・・・
◎キャスト
★主役アルバロ役のハビエル・グティエレスは、今回コンペティション外ですが “La peste” がノミネートされたアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』や、イシアル・ボリャインの『オリーブの樹』、今年春に公開されたイニャキ・ドロンソロの『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』などに出演して知名度は上がっている。小説の書き方を伝授する先生フアンのアントニオ・デ・ラ・トーレは、しばしば登場してもらっている。
★アマンダ役のマリア・レオンは、ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』や兄パコ・レオンのコメディ「カルミナ」シリーズなどでご紹介していますが、久しぶりのブログ登場なのでおさらいしておきます。1984年セビーリャ生れ、監督パコ・レオンは実兄。TVシリーズ“SMS, sin miedo a soñar”(2006~07)でデビュー、フェルナンド・ゴンサレス・モリナの“Fuga de cerebros”(09)のチョイ役で映画デビュー。大きく飛躍したのがベニト・サンブラノの“La voz dormida”(11『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』)、本作でゴヤ賞2012新人女優賞を受賞した。スペイン内戦後、反フランコ活動をして収監されていた姉(インマ・クエスタ)が刑務所内で出産した姪を育てる妹に扮した。他にシネマ・ライターズ・サークル賞新人女優賞、サンセバスチャン映画祭2011最優秀女優賞、スペイン俳優組合賞などを受賞、フォルケ賞にもノミネーションされた。
*母カルミナと兄パコの三人で5万ユーロで撮った“Carmina o revienta”(12)でゴヤ賞2013助演女優賞ノミネーション、カルミナ第2弾“Carmina y amén”でフェロス賞2015助演にもノミネートされた。ベレン・マシアスの“Marsella”(14)では、ゴヤ賞とシネマ・ライターズ・サークル主演女優賞にノミネートされた。
(フアン先生とアマンダ)
★エンリケ役のテノッチ・ウエルタはキャリー・フクナガの『闇の列車 光の旅』やパトリシア・リヘンの『チリ33人 希望の軌跡』などに出演、イレネ役のアドリアナ・パスは、カルロス・キュアロンの『ルドとクルシ』や東京国際映画祭2013で上映されたアーロン・フェルナンデスの『エンプティ・アワーズ』で主役を演じている。共にメキシコの俳優です。ラファエル・テジェスはセビーリャ生れ、管理人のアデルファ・カルボはマラガ生れ、二人ともアンダルシアのことは知り尽くしている。
★アドリアナ・パスは、1980年メキシコ・シティ生れ。16歳で舞台デビュー、メキシコ自治大学文学哲学部で劇作法と演劇を学ぶ。映画修業のため一時期スペイン、ポルトガルに滞在、メキシコに帰国後、キューバのロス・バニョス映画学校で脚本を学ぶ。女優ではなく監督、脚本家志望だったらしい。在学中よりセミプロとして舞台に立つ。映画デビューはセサル・アリオシャの“Todos los besos”(07)、これはメキシコ・シティ国際現代映画祭、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭にも出品された。カルロス・キュアロンの『ルドとクルシ』(09)にディエゴ・ルナの妻役で出演、翌年のアリエル賞共演女優賞にノミネートされた。そのほか代表作にアリエル賞2010を総なめにしたカルロス・カレラのコメディ“El traspatio”、アントニオ・セラーノの“Morelos”(12)、アンドレス・クラリオンドのデビュー作“Hilda”(12)、『エンプティ・アワーズ』(13)など。役柄によって美しさが変化する女優として定評がある理論派、演技派の女優。
(撮影中のハビエル・グティエレス、監督、アドリアナ・パス)
◎スタッフ
★マヌエル・マルティン・クエンカ、1964年スペイン南部アルメリアのエル・エヒド生れ、監督、脚本家、製作者。グラナダ大学でスペイン哲学を学び、1989年マドリードのコンプルテンセ大学情報科学を卒業する。在学中の1988年から正式の監督アシスタントとして働き始め、マリアノ・バロッソ(1959)、ホセ・ルイス・クエルダ(1947)、イシアル・ボリャイン(1967)、ホセ・ルイス・ボラウ(1929)などとコラボする。短編、ドキュメンタリーなどを手掛けた後、2003年長編デビュー作 “La fraqueza del borchevique” がサンセバスチャン映画祭のオフィシャル・セレクションにノミネートされ高い評価を受けた。翌年のゴヤ賞2004では、脚色賞を受賞、主演のマリア・バルベルデが新人女優賞を受賞した。
(撮影中の監督とハビエル・グティエレス)
★第2作 “Mala temporadas”(『不遇』)もサンセバスチャン映画祭2005に正式出品、数々のノミネーションや賞を果たした。2010年 “La mitad de Oscar” はトロント映画祭だったが、2013年『カニバル』(2014年5月24日公開)は再びサンセバスチャン映画祭に戻って正式出品された。パウ・エステベ・ビルバが撮影賞(銀貝賞)を受賞、ゴヤ賞もゲットした。主役のアントニオ・デ・ラ・トーレが第1回フェロス賞の主演男優賞を受賞した作品。監督とサンセバスチャンは相性がよく、新作に期待が寄せられている。
★2004年に制作会社「La Loma Blanca producciones Cinematograficas」を設立、第3作 “La mitad de Oscar”から製作している。2009年には出版社「Lagartos Editores」を設立、若いアンダルシアの作家育成に尽力している他、映画関係書籍のコレクション、過去の映画テキストを刊行している。より詳しい監督キャリア&フィルモグラフィーについては『不遇』や『カニバル』を参照してください。キューバ出身スペイン在住の共同執筆者アレハンドロ・エルナンデスについても紹介しています。監督と二人三脚で執筆しているほか、アカデミー賞外国語映画スペイン代表作品の候補サルバドル・カルボの ”1898, Los ultimos de Filipinas” を単独執筆している。
★前2作、『カニバル』と “La mitad de Oscar” に音楽はなかったが、新作にはクエンカ生れ(1945)のシンガー・ソング・ライターのホセ・ルイス・ペラレスが担当して話題になっています。IMDbに記載がないのは、初めての経験で「できるかどうか分からなかったので伏せておくよう」依頼されていたから。レコーディング・スタジオで「ラテンジャズのメロディがちりばめられたシークエンスを監督と初めて観て、子供のように二人で笑ってしまった」と語っている。依頼を受けてからの9ヵ月間、まるで身重の女性のように大変だった。やっと無事に生まれてくれたようです。
(監督とホセ・ルイス・ペラレス)
*『カニバル』の記事は、コチラ⇒2013年9月8日
* “Mala temporadas”(『不遇』)の記事は、コチラ⇒2014年6月11日/7月2日
*マリア・レオン『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』の記事は、コチラ⇒2015年5月9日
*『エンプティ・アワーズ』の記事は、コチラ⇒2013年11月7日
『あなたに触らせて』あるいは『スキン』*ラテンビート2017 ② ― 2017年08月20日 15:39
末恐ろしいエドゥアルド・カサノバのデビュー作
(ピンクのシャツで全員集合)
★エドゥアルド・カサノバのデビュー作 “Pieles”(“Skins”)は、ラテンビートでは英題の『スキン』ですが、ネットフリックスで『あなたに触らせて』として既に放映されています。ネットフリックスの邦題は本作に限らずオリジナル・タイトルに辿りつけないものがが多く、これも御多分に漏れずです。セリフの一部から採用しているのですが・・・。ネットフリックスの資金援助とアレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バングの制作会社Pokeepsie Films、キコ・マルティネスのNadie es Perfectoの後押しで、1年半という新人には考えられない短期間で完成できた作品。新プラットフォームの出現でスクリーン鑑賞が後になるというのも、時代の流れでしょうか。なおカロリナ・バングはプロデュースだけでなく精神科医役として特別出演しています。
★ベルリン映画祭2017パノラマ部門、マラガ映画祭正式出品の話題作。デフォルメされた身体のせいで理不尽に加えられる暴力が最後に痛々しいメロドラマに変化するという、社会批判を込めた辛口コメディ、ダーク・ファンタジー。好きな人は涙、受けつけない人は苦虫、どちらにしろウトウトできない。
“Pieles”(“Skins”)『スキン』(または『あなたに触らせて』)2017
製作:Nadie es Perfecto / Pokeepsie Films / Pieles Producciones A.I.E.
協賛The Other Side Films
監督・脚本:エドゥアルド・カサノバ
撮影:ホセ・アントニオ・ムニョス・モリナ(モノ・ムニョス)
編集:フアンフェル・アンドレス
音楽:アンヘル・ラモス
録音:アレックス・マライス
録音デザイン:ダビ・ロドリゲス
美術・プロダクションデザイン:イドイア・エステバン
メイク&ヘアー:ローラ・ゴメス(メイク主任)、オスカル・デル・モンテ(特殊メイク)
ヘスス・ジル(ヘアー)
衣装デザイン:カロリナ・ガリアナ
キャスティング:ピラール・モヤ、ホセ・セルケダ
プロダクション・マネジャー:ホセ・ルイス・ヒメネス、他
助監督:パブロ・アティエンサ
製作者:キコ・マルティネス、カロリナ・バング、アレックス・デ・ラ・イグレシア、他
視覚効果:Free your mindo
データ:スペイン、スペイン語、2017年、コメディ、ダーク・ファンタジー、77分、ベルリン映画祭2017パノラマ部門出品、マラガ映画祭2017セクション・オフィシアル出品(ヤング審査員特別賞受賞)、ビルバオ・ファンタジー映画祭上映。配給ネットフリックス190ヵ国放映、スペイン公開6月9日、ラテンビート2017予定。
プロット:普通とは異なった身体のため迫害を受ける、サマンサ、ラウラ、アナ、バネッサ、イツィアルを中心に、周りには理解してもらえない願望をもつ、クリスティアン、エルネスト、シモン、後天的に顔面に酷い火傷を負い再生手術を願っているギリェなどを絡ませて、「普通とは何か」を問いかけた異色のダーク・ファンタジー。人は「普通」を選択して生まれることはできない。しかし人生をどう生きるかの選択権は他人ではなく、彼ら自身がもっている。ピンクとパープルに彩られたスクリーンから放たれる暴力と痛み、愛と悲しみ、美と金銭、父と娘あるいは母と息子の断絶、苦悩をもって生れてくる人々にも未来はあるのか。
キャスト:
アナ・ポルボロサ:消化器官が反対になったサマンサ(“Eat My Shit”『アイーダ』)
マカレナ・ゴメス:両眼欠損の娼婦ラウラ(『トガリネズミの巣穴』『スガラムルディの魔女』)
カンデラ・ペーニャ:顔面変形片目のアナ(『時間切れの愛』『オール・アバウト・マイ・マザー』)
エロイ・コスタ:身体完全同一性障害、人魚になりたいクリスティアン(TV”Centro mrdico”)
ジョン・コルタジャレナ:顔面火傷を負ったギリェ(米『シングル・マン』TV”Quantico”)
セクン・デ・ラ・ロサ:異形愛好家エルネスト(『クローズド・バル』 “Ansiedad”)
アナ・マリア・アヤラ:軟骨無形成症のバネッサ
ホアキン・クリメント:バネッサの父アレクシス(『クローズド・バル』)
カルメン・マチ:クリスティアンの母クラウディア(『クローズド・バル』『ペーパーバード』『アイーダ』)
アントニオ・デュラン’モリス’:クリスティアンの父シモン(『プリズン211』『月曜日にひなたぼっこ』)
イツィアル・カストロ:肥満症のイツィアル(『ブランカニエベス』『Rec3』“Eat My Shit”)
アドルフォ・フェルナンデス:(『トーク・トゥ・ハー』)
マリア・ヘスス・オジョス:エルネストの母?(『スガラムルディの魔女』『ペーパーバード』)
アルベルト・ラング:(『トガリネズミの巣穴』『グラン・ノーチェ』)
ハビエル・ボダロ:街のチンピラ(『デビルズ・バックボーン』)
ミケル・ゴドイ:2017年の娼館のアシスタント
特別出演
カロリナ・バング:精神科医(『気狂いピエロの決闘』)
ルシア・デ・ラ・フエンテ
マラ・バジェステロ:2000年の娼館経営者(『アイーダ』)
*監督キャリア&フィルモグラフィ*
★エドゥアルド・カサノバEduardo Casanova:1991年3月マドリード生れの26歳、俳優、監督、脚本家。人気TVシリーズ ”Aída”「アイーダ」(05~14)に子役としてデビュー、たちまちブレークして232話に出演した。他、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』や『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』、アントニア・サン・フアンの “Del lado del verano” などに脇役として出演している。
(「アイーダ」に出演していた頃のカサノバ、ダビ・カスティリョ、アナ・ポルボロサ)
★監督・脚本家としては、2011年ゾンビ映画 “Ansiedad”(Anxiety)で監督デューを果たす。この短編にはアナ・ポルボロサとセクン・デ・ラ・ロサを起用している。短編8編のうち、2014年の凄まじいメロドラマ “La hora del baño”(17分)にはマカレナ・ゴメス、2015年の“Eat My Shit” には再びアナ・ポルボロサが出演、長編 “Pieles”『スキン』のベースになっている。他に2016年にホセ・ルイス・デ・マダリアガをフィデル・カストロ役に起用して “Fidel”(5分)を撮る。短期間だがハバナのサン・アントニオ・デ・ロス・バニョスの映画学校でビデオクリップの制作を学んでいる。カサノバによるとキューバや独裁者たちや紛争対立に興味があるようです。「アイーダ」での役名は偶然にもフィデル・マルティネスだった。
("Eat My Shit"のイツィアル・カストロ、監督、アナ・ポルボロサ)
(エドゥアルド・カサノバ、ベルリン映画祭2017にて)
冒頭から度肝をぬくマラ・バジェステロの怪演
A: 物語はドール・ハウスのようにピンクに彩られた「愛の館」から始まる。マラ・バジェステロ扮する娼館の女主人は、「本能は変えられない」と客のシモンを諭す。先ず彼女の風体に度肝をぬかれる。シモンは妻クラウディアが無事男の子を出産したことを確認すると妻子の前から姿を消す。この男の子がクリスティアンです。この親子がグループ1。
B: クリスティアンは身体完全同一性障害BIIDという実際にある病気にかかっている。四肢のどれかが不必要と感じる病気です。彼の場合は両足がいらない、人魚のようになりたいと思っている。彼のメインカラーはパープルである。このピンクとパープルが一種のメタファーになっている。
(「本能は変えられない」とシモンを諭す娼館のマダム)
A: このプロローグには作品全体のテーマが網羅されている。娼館マダムのマラ・バジェステロの風体にも混乱させられるが、その病的な理念「美とノーマルが支配する無慈悲な社会秩序を支えているマヤカシ」を静かに告発している。
B: 深い政治的な映画であることがすぐ分かるプロローグ。ただ苦しむために生まれてくるかのような人々の存在が現実にある。
(人魚になりたいクリスティアンのエロイ・コスタ)
(息子の葬儀に17年ぶりに邂逅する、クラウディアのカルメン・マチとシモン)
A: シモンは身体的に普通でない女性が好きなことを恥じている。女主人が紹介するのが目が欠損している当時11歳というラウラにたじろぐが、ラウラに魅せられてしまう。シモンはラウラに2個のダイヤの目をプレゼントする。シモンにはアントニオ・デュラン’モリス’、ラウラには『トガリネズミの巣穴』のマカレナ・ゴメスが扮した。
B: ラウラのメインカラーはピンク、時代は17年後の2017年にワープして本当のドラマが始まる。
A: ラウラに肥満症のイツィアルが絡んでグループ2となる。イツィアル・カストロは、カサノバ監督のお気に入りで短編 “Eat My Shit”(15)にも出演している。
(シモンからダイヤの目をもらったラウラ)
(ラウラのダイヤを盗んだイツィアル)
B: この短編を取り込んで、サマンサを中心にしたグループ3に発展させた。サマンサのメインカラーはパープルです。
A: サマンサ役のアナ・ポルボロサが長短編どちらにも同じ役で出演している。消化器官が反対、つまり顔に肛門、お尻に口とかなりグロテスクだが、ポルボロサの美しさが勝っています。カサノバ監督とポルボロサは人気TVシリーズ「アイーダ」の子役時代からの親友、彼女のほうが2歳年上です。サマンサは外では人々の哄笑とチンピラの理不尽な暴力に屈している。なおかつ家では父親の見当はずれの過保護に疲れはて、悲しみのなかで生きている。
B: サマンサに倒産寸前の食堂経営者イツィアル、BIID患者のクリスティアンが絡んで、最終的にはエルネストに出会うことになる。
外見は手術によって変えられる―悪は自分の中にある
A: エルネストは外見が奇形でないと愛を感じられないシモンと同系列の人間。片目がふさがり頬が垂れ下がっているアナを愛している。母親はそんな息子を受け入れられない。エルネストはアナと一緒に暮らそうと家を出るが、賢いアナはエルネストが愛しているのは ”Solo me quieres por mi físico” 外見であって内面ではないと拒絶する。
B: 外見は手術によって変えられる。アナが愛しているのは、顔面頭部全体が大火傷でケロイドになってしまっているギリェだ。これがグループ4で、アナのメインカラーはピンクです。
(アナのカンデラ・ペーニャ)
(監督とエルネスト役のセクン・デ・ラ・ロサ)
A: しかしギリェは偶然手に入れたお金をネコババして再生手術を受け、終局的にはアナを裏切る。アナもやっと自立を決意する。エルネストはアナのときはピンク、サマンサに遭遇してからは、パープルに変わる。相手に流される人物という意味か。
(ギリェを演じたジョン・コルタジャレナ)
B: ギリェが愛していたのは美青年だった頃の自分自身だった。聡明なアナも見抜けなかった。アナ役のオファーをよく受けたと思いませんか。監督もカンデラ・ペーニャのような有名女優が引き受けてくれたことに感激していました。
A: 彼女はインタビューで、「エドゥアルドにはショックを受けた。こんな脚本今までに読んだことなかったし、比較にならない才能です。私の女優人生でも後にも先にもこんな役は来ないと思う」とベタ褒めでした。ラウラとアナの特殊メイクを担当したのがオスカル・デル・モンテ、2時間ぐらいかかるので、ヘアーも同時にしたようです。タイトルが「スキン」だから、常にスキン、スキン、スキンとみんなで唱えていたと、責任者のローラ・ゴメスは語っていた。冒頭に出てくる娼館マダムのヌードの意味もこれで解けます。
本当の家族を求めるバネッサ、娘の幸せより金銭を求める父親
B: 低身長のバネッサは軟骨無形成症という病気をもって生まれてきた。今はピンクーという着ぐるみキャラクターとしてテレビに出演、子供たちの人気者になっている。しかし欲に目のくらんだプロダクション・オーナーと父親に酷使され続けている。
A: 体外受精で目下妊娠しているから胎児のためにも番組を下りたい。しかし娘の幸せより金銭を愛する父親は断固反対する。こんな父親は本当の家族とは言えない。このバネッサと父親、札束で頬を叩くようなオーナーが最後のグループ5です。ここにギリェが絡んだことでアナは目が覚める。
B: このグループの社会批判がもっとも分かりやすい。バネッサのメインカラーはピンクです。
(ピンクーの着ぐるみを着せられるバネッサ)
A: この映画のメタファーは差別と不公正だと思いますが、こういう形で見せられると悪は自分の中にあると考えさせられます。
B: 固定観念にとらわれていますが、普通とは一体何かです。
A: 「常に母親という存在や先天的奇形に取りつかれている」という監督は、登場人物たちは自分の目的を手に入れるために乗り越えねばならない壁として先天的奇形を利用していると言う。肌に触れたい登場人物には目を取りのぞく(ラウラ)、あるいはキスをしたい登場人物には口を取り去ってしまう(サマンサ)ように造形した。
B: スクリーンがパステルカラーに支配されているとのはどうしてかという質問には、「なぜ、ピンク色かだって? いけないかい? 僕の家はピンク色なんだよ」と答えている。
A: 建築物がピンク色ではおかしいという固定観念に囚われている。
B: 影響を受けた監督としてスウェーデンのロイ・アンダーソンとブランドン・クローネンバーグを挙げていますが。
A: アンダーソン監督の『散歩する惑星』はカンヌ映画祭2000の審査員賞、『さよなら、人類』はベネチア映画祭2014の金獅子賞、本作は東京国際映画祭ではオリジナルの直訳「実存を省みる枝の上の鳩」といタイトルで上映された。シュールなブラック・ユーモアに富み、不思議な登場人物が次々に現れる恐ろしい作品。クローネンバーグはデヴィッド・クローネンバーグの息子、近未来サスペンス『アンチヴァイラル』(12)が公開されている。これまたSFとはいえ恐ろしい作品、今作を見た人は『スキン』のあるシーンに「あれッ」と思うかもしれない。カサノバ監督の第2作が待たれます。
パブロ・ベルヘルの新作コメディ「アブラカダブラ」*いよいよ今夏公開 ― 2017年07月05日 18:37
大分待たされましたが8月4日スペイン公開が決定
★『ブランカニエベス』の成功で国際的にも知名度を上げたパブロ・ベルヘルの第3作 ”Abracadabra” がいよいよ公開されることになりました(8月4日)。どうやら9月開催のサンセバスチャン映画祭を待たないようです。昨年の初夏にクランクイン以来、なかなかニュースが入ってきませんでしたが、YouTubeに予告編もアップされ笑ってもらえる仕上りです。モノクロ・サイレントの前作は、2012年のトロント映画祭を皮切りにサンセバスチャン、モントリオール、USAスパニッシュ・シネマ、ロンドン・・・と瞬く間に世界の各映画祭を駆け抜けました。サンセバスチャン映画祭では金貝賞こそ逃しましたが、審査員特別賞他を受賞、翌年のゴヤ賞は作品賞の大賞以下10冠を制覇、米アカデミーのスペイン代表作品、アリエル賞などなど受賞歴は枚挙に暇がありません。ということで2013年、はるばる日本にまでやってきてラテンビート上映後、公開に漕ぎつけたのでした。新作は果たして柳の下の二匹目のドジョウとなるのでしょうか。
”Abracadabra” 2017
製作:Arcadia Motion Pictures / Atresmedia Cine / Persefone Films / Pegaso Pictures / Movistar + Noodles Production(仏)/ Films Distribution(仏)
監督・脚本・音楽:パブロ・ベルヘル
撮影:キコ・デ・ラ・リカ
音楽:アルフォンソ・デ・ビラジョンガ
編集:ダビ・ガリャルト
衣装デザイン:パコ・デルガド
美術:アンナ・プジョル・Tauler
プロダクション・デザイン:アライン・バイネエAlain Bainee
キャスティング:ロサ・エステベス
メイクアップ&ヘアー:Sylvie Imbert(メイク)、ノエ・モンテス、パコ・ロドリゲス(ヘアー)他
製作者:サンドラ・タピア(エグゼクティブ)、イボン・コルメンサナ、イグナシ・エスタペ、アンヘル・ドゥランデス、ジェローム・ビダル、他
データ:スペイン=フランス、スペイン語、2017年、ブラック・コメディ、ファンタジー、サスペンス、カラー。公開:スペイン8月4日、フランス11月1日、配給ソニー・ピクチャー
キャスト:マリベル・ベルドゥ(カルメン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(カルロス)、ホセ・モタ(カルメンの従兄ペペ)、ジョセップ・マリア・ポウ(ドクター・フメッティ)、キム・グティエレス(ティト)、プリスシリャ・デルガド(トニィ)、ラモン・バレア(タクシー運転手)、サトゥルニノ・ガルシア(マリアノ)、ハビビ(アグスティン)、フリアン・ビジャグラン(ペドロ・ルイス)他
プロット:ベテラン主婦のカルメンとクレーン操縦士のカルロス夫婦は、マドリードの下町カラバンチェルで暮らしている。カルロスときたら寝ても覚めても「レアル・マドリード」一筋だ。そんな平凡な日常が姪の結婚式の当日一変する。カルロスが結婚式をぶち壊そうとしたので、アマチュアの催眠術師であるカルメンの従兄ペペが仕返しとして、疑り深いカルロスに催眠術をかけてしまった。翌朝、カルメンは目覚めるなり夫の異変に気付くことになる。霊が乗り移って自分をコントロールできないカルロス、事態は悪いほうへ向かっているようだ。そこで彼を回復させるための超現実主義でハチャメチャな研究が始まった。一方カルメンは、奇妙なことにこの「新」夫もまんざら悪くないなと感じ始めていた。果たしてカルロスは元の夫に戻れるのか、カルメンの愛は回復できるのだろうか。
(カルメンとカルロスの夫婦、映画から)
★大体こんなお話のようなのだが、監督によれば「新作は『ブランカニエベス』の技術関係のスタッフは変えずに、前作とは全くテイストの違った映画を作ろうと思いました。しかし、二つは違っていても姉妹関係にあるのです。私の全ての映画に言えることですが、中心となる構成要素、エモーション、ユーモア、驚きは共有しているのです」ということです。キコ・デ・ラ・リカやパコ・デルガド、アルフォンソ・デ・ビラジョンガなどは同じスタッフ、キャストもマリベル・ベルドゥ、ジョセップ・マリア・ポウ、ラモン・バレアなどのベテラン起用は変わらない。『SPY TIMEスパイ・タイム』のイケメンキム・グティエレスの立ち位置がよく分からないが、カルロスに乗りうつった悪霊のようです。監督はそれ以上明らかにしたくないらしい。コッポラの『地獄の黙示録』のカーツ大佐が手引きになると言われても、これでは全く分かりませんが「映画館に足を運んで確かめてください」だと。若手のプリスシリャ・デルガドは、アルモドバルの『ジュリエッタ』でエンマ・スアレスの娘を演じていた女優。
(撮影中の左から、ホセ・モタ、マリベル・ベルドゥ、ベルヘル監督)
★マリベル・ベルドゥ以下三人の主演者、アントニオ・デ・ラ・トーレ、ホセ・モタの紹介は以下にアップしています。アントニオ・デ・ラ・トーレは、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』やラウル・アレバロのデビュー作『物静かな男の復讐』で見せた内省的な暗い人格、デ・ラ・イグレシアの『気狂いピエロの決闘』の屈折した暴力男とは全く異なるコミカルな男を演じている。多分ダニエル・サンチェス・アレバロのコメディ『デブたち』のノリのようだ。どんな役でもこなせるカメレオン役者だが、それが難でもあろうか。デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』のホセ・モタについては、「アブラカダブラ」で紹介しております。
(ペペ役のホセ・モタ、映画から)
*「アブラカダブラ」の監督以下スタッフ&キャスト紹介は、コチラ⇒2016年5月29日
*マリベル・ベルドゥの紹介記事は、コチラ⇒2015年8月24日
*アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介記事は、コチラ⇒2013年9月8日
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