バスク版コメディ”8 apellidos vascos”5個*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑦ ― 2015年01月28日 11:50
興行成績ナンバー・ワン5600万ユーロ!
★リピーターの存在が大きかったのではないかと思いますが、観客1000万人という驚異的な数字が本当かどうか、俄かには信じられません。スペインに垂れ込めていた暗雲を吹き飛ばしてくれたかどうかはさておき、庶民は笑いを求めていたということです。本作については既に詳細をアップしておりますが、作品賞、監督賞が済みましたので、これからは受賞に絡むと予想される作品をおさらいしていきます。5600万ユーロに敬意を表してバスク版コメディから。
*スタッフ、キャスト、プロットのご紹介は、コチラ⇒2014年3月27日/同年6月13日
*“Ocho
apellidos vascos”*
オリジナル歌曲賞:“No te marches jamas” 作曲:フェルナンド・ベラスケス
撮影賞:カロ・ベリーディ
助演男優賞:カラ・エレハルデ
助演女優賞:カルメン・マチ
新人男優賞・ダニ・ロビラ
*以上5カテゴリーにノミネーションされています。
★撮影賞は『エル・ニーニョ』か“La isla mínima”を予想しています。オリジナル歌曲賞は皆目分かりません。新人男優賞は『エル・ニーニョ』のヘスス・カストロが一番近い。ダニ・ロビラは、今年の授賞式の総合司会者に抜擢され、本人も周囲もびっくりしています。そちらの準備で消耗しているのではないかな(笑)。というわけで、残れそうなのがカラ・エレハルデとカルメン・マチです。
(カラ・エレハルデとカルメン・マチ)
★助演男優賞:カラ・エレハルデ Karra Elejarde、1960年バスク州ビトリア生れ、俳優、脚本家、監督。職業訓練Formación Profesionalの時期に演劇学科のコースを選んで学ぶ。バスクのインディペンデントの演劇グループに参加、独り芝居で芸を磨く。映画デビューは1987年、ホセ・アントニオ・ソリージャの“A los cuatro vientos”。脇役が多く、公開、映画祭上映、テレビ放映、ビデオ・DVD発売を含めるとかなりの数になって驚く。モレがあるかもしれない。
1992年『バカス』フリオ・メデム(東京国際映画祭上映)
1992年『ハイル・ミュタンテ!電撃XX作戦』アレックス・デ・ラ・イグレシア(ビデオ)
1993年『赤いリス』フリオ・メデム(シネフィル・イマジカ、テレビ放映)
1993年『キカ』ペドロ・アルモドバル(劇場公開)
1994年『時間切れの愛』イマノル・ウリベ(劇場公開)
1996年『ティエラ―地―』フリオ・メデム(スペイン映画祭‘98上映)
1999年『ネイムレス―無名恐怖』ジャウマ・バラゲロ(劇場公開)
2007年『タイム・クライムス』ナチョ・ビガロンド(LBラテンビート2008上映)
2010年『ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(劇場公開)
2010年『雨さえも―ボリビアの熱い一日』イシアル・ボリャイン(LB2011上映)
★しかし、実はエレハルデが評価された作品は未紹介のものに多い。フアンマ・バホ・ウジョアの“Alas de mariposa”(1991)や“La madre muerta”(1993)、“Airbag”(1997)など、“La madre muerta”はポルトガルのファンタスポート映画祭で最優秀男優賞を受賞、自らが監督もした“Año mariano”(1999)では、2001年バスク俳優組合賞を受賞している。勿論、『雨さえも―ボリビアの熱い一日』の劇中劇でコロンブスを演じたアルコール中毒のアントン役で、ゴヤ賞2011助演男優賞を受賞しました。今回は2匹目を狙っています。本作では、既にトゥリア賞2014で特別賞を受賞しています。若いころからどんどん額が広くなり実年より老けてみえますが、まだ54歳、活躍はこれからです。話題作“Airbag”では、監督と脚本を共同執筆しています。フェロス賞で“Magical Girl”のホセ・サクリスタンが受賞していますから油断できない。
★助演女優賞:カルメン・マチ María del Carmen
Machi Arroyó、1963年マドリード生れ、女優。ファミリーはイタリア系で父親はジェノバ出身、イタリア風に発音すると「マキ」になる。芸名よりTVドラマ・シリーズ“7 Vidas”から独立した長寿ドラマ“Aida”のヒロイン名アイーダ・ガルシアのほうが有名。マドリード自治州ヘタフェで育ち、地元のサン・ホセ学校に通う。舞台女優としてシェイクスピア『ベニスの商人』、バリェ≂インクラン『貪欲、欲望と死の祭壇画』などの舞台に立つ。テレシンコの「アイーダ」がお茶の間で大ブレーク、数々の受賞を手にした。1998年“Lisa”で映画デビュー、アルモドバル映画にも出演、エミリオ・アラゴンの『ペーパーバード 幸せは翼にのって』がラテンビート2010で上映された折り、監督と一緒に来日、最優秀女優賞を受賞した。以下主なる出演映画は以下の通り:
2002年『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル
2003年『チル・アウト!』フェリックス・サブロソ&ドーニャ・アジャソ(未公開DVD)
2003年『トレモリーノス73』パブロ・ベルヘル(ゆうばり国際ファンタ映画祭上映)
2005年『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ
2009年『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
2009年“La mujer sin piano” ハビエル・レボージョ
2010年『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン
2013年『アイム・ソーエキサイテッド』ペドロ・アルモドバル
2014年本作(省略)
*“La mujer sin piano”は未公開だが、本作はサンセバスチャン映画祭2009正式出品、評価が高く、彼女が主役ロサを演じた。カセレスの「スペイン映画祭」で2009年活躍した女優に贈られる最優秀女優賞を受賞、アルバニアの「ティラナ映画祭」で審査員賞を受賞した。
*2015年は現在4作品が公開予定と目白押しである。
(新人男優賞ノミネートのダニ・ロビラとカルメン、映画から)
★どのカテゴリーにも言えることだが、特に助演賞は予想が難しい。『エル・ニーニョ』のバルバラ・レニーは主演が確実だから落ちるとして、“La isla minima”のメルセデス・レオンもないと思う。残るライバルは“Marsella”のゴヤ・トレドだろうか。ゴヤ賞ノミネーションは初登場。
(時計回りに、メルセデス・レオン、カルメン・マチ、ゴヤ・トレド、バルバラ・レニー)
本命か”La isla minima”17個*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑥ ― 2015年01月24日 21:22
銀貝賞、フォルケ賞作品賞、アルベルト・ロドリゲス
★作品賞最後の紹介はアルベルト・ロドリゲスの第6作“La isla mínima”です。ノミネーション17個とやたら数が多いが、何個くらい受賞できるのだろうか(カテゴリー的には主演男優賞に2人ノミネーションだから16です)。おおよそ『エル・ニーニョ』と競合しているから仲良く半分こするのか(笑)。監督賞、撮影賞、脚本賞は狙っているでしょうね。まだキャストが決まらない2013年夏から記事にしているので、個人的思い入れも大きくて冷静な判断できない。
★『7人のバージン』(2005)を「ラテンビート2006」で見て以来、第4作“After”(2009)、第5作“Grupo 7”(2012)と、ずっと気になっていた監督です。特に“Grupo 7”は実話に着想を得たフィクション、ゴヤ賞2013の話題作でしたが、不運にも対抗馬が『インポッシブル』と『ブランカニエベス』という大作に対抗できませんでした。しかし興行成績は『インポッシブル』には遠く及びませんでしたが、『ブランカニエベス』を倍以上引き離して映画界に貢献しました。今回ノミネーション17個は以下の通り:
*“La isla mínima”*
作品賞:Antena 3 Films(ミケル・レハルサ他)/Atipica Films(ホセ・アントニオ・フェレス)/
Sacromonte Films(ヘルバシオ・イグレシアス)
監督賞:アルベルト・ロドリゲス
脚本賞:ラファエル・コボス/アルベルト・ロドリゲス
編集賞:ホセ・M・G・モヤノ
撮影賞:アレックス・カタラン
オリジナル作曲賞:フリオ・デ・ラ・ロサ
プロダクション賞:マヌエラ・オコン
衣装デザイン賞:フェルナンド・ガルシア
メイク・ヘアメイク賞:ヨランダ・ピーニャ
美術賞:ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ
特殊効果賞:ペドロ・モレノ/フアン・ベントゥラ
録音賞:ダニエル・デ・サヤス/ナチョ・ロヨ≂ビリャノバ/ペラヨ・グティエレス
主演男優賞:ラウル・アレバロ/ハビエル・グティエレス
助演男優賞:アントニオ・デ・ラ・トーレ
助演女優賞:メルセデス・レオン
新人女優賞:ネレア・バロス
データ:スペイン、スペイン語、2014、スリラー、105分 撮影地セビーリャ他、配給:ワーナー・ブラザーズ・ピクチャー、2015年興行成績600万ユーロ(約100万人)、スペイン公開9月26日、DVD発売2015年1月23日
受賞歴:サンセバスチャン映画祭2014、審査員最優秀撮影賞(銀貝賞)アレックス・カタラン/最優秀男優賞(銀貝賞)ハビエル・グティエレス/Feroz
Zinemaldia 賞アルベルト・ロドリゲス
フォルケ賞2015、最優秀作品賞、最優秀男優賞(ハビエル・グティエレス)
キャスト:ラウル・アレバロ(刑事ペドロ)、ハビエル・グティエレス(刑事フアン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(ロドリゴ)、ネレア・バロス(ロシオ)、メルセデス・レオン、ヘスス・カストロ(キニ)、ヘスス・カロッサ、サルバドル・レイナ、マノロ・ソロ(新聞記者)、セシリア・ビジャヌエバ(マリア)、フアン・カルロス・ビジャヌエバ(アンドラーデ判事)、アナ・トメノ、他
プロット:1980年、アンダルシア、グアダルキビール河沿いの低湿地帯。時が止まったような打ち捨てられた小村のお祭りの最中、二人の少女が行方不明になる。しかし誰も気に留めなかった、若者たちはみんなこの重苦しい村から出たがっていたからである。少女たちの母親ロシオは、地方判事アンドラーデが失踪事件に関心を示していることを知る。やがてマドリードの殺人課の刑事ペドロとフアンが派遣されてくる。性格も捜査方法も非常に異なっていたが、二人とも警察主要部との関係が上手くいっていなかった。この地域の主産業であるコメの刈入れ時で、農民たちのストが起こり不穏な空気につつまれていた。捜査は「沈黙の壁」と嘘の情報に困難を極めたが、次第に以前から若者の多くが行方不明になっていることが分かってくる。更に主産業がコメ以外に麻薬密売であることも明らかになってくる。ペドロとフアンは死の恐怖に直面しながらも、重要なことは犯人を上げることであった。
★以上のプロットから推察できるように、性格の異なる二人の刑事が事件の裏側から真相を突き止めていくアメリカの人気TVドラマ『トゥルー・ディテクティブ』“True Detective” シリーズを思い浮かべる人が多いかもしれない。マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンのダブル主演、事件解決だけではなく、地方の町に潜んでいる日常的な深い闇を暴きだして、政治のみならず貧困、差別、汚職、麻薬取引などを描いて全米の話題作となっている。骨格が相似していますね。
★しかし、ロドリゲス監督によると、「2009年の数ヵ月、(共同執筆の)ラファエル・コボスとロベルト・ボラーニョの小説『2666』やジョン・スタージェスの『日本人の勲章』(1955米国)、ラディスラオ・バフダの“El cebo”(1958西独)などから着想を得て、フィルム・ノワールの共同執筆を考えていた」と語っています。ボラーニョの小説はメキシコのシウダー・フアレスの女性連続殺人事件をめぐる第4部「犯罪の部」、『日本人の勲章』は真珠湾攻撃を理由に日本人移民が人種差別で殺害される事件、スペンサー・トレイシーがアカデミー男優賞を受賞、吹替え版でテレビ放映もされた映画です。またバフタはハンガリー生れの監督ですが各国で映画を撮っており、これは西ドイツ映画、スイスの片田舎で少女が殺害される。(1942年にスペインに帰化、日本では『汚れなき悪戯』が公開されている。)いずれも孤立した地方の共同体で起きた陰惨な殺人事件の裏側を主人公が解明していくストーリー。
★「私とコボスはフィルム・ノワールと探偵小説の大ファンなんだ。1930~40年代を舞台にした映画ピラール・ミロとか“El cebo”のラディスラオ・バフタ、『日本人の勲章』などを見ていった。共に背景に社会政治的な内容の濃いスリラーで、これらは本作に大きな影響を与えています」と、サンセバスチャン映画祭のインタビューで語っています。ミロの作品は多分『クエンカ事件』などを指していると思う。外部からやってきたスペンサー・トレイシーが本作の二人の刑事に重なるわけです。監督はレイモンド・チャンドラーやマヌエル・バスケス・モンタルバンの推理小説の熱狂的なファンで、その影響が随所に現れているとも語っています。
★この映画には大きく分けて二つの視点がある、デモクラシーを支持する側の視点、フランコの旧体制を守ろうとする側の視点。スペインの1980年代というのは、いわゆる「民主主義移行期」にあたるが、都会と違ってアンダルシアのような地方のコミュニティは、40年代とあまり変わっていなかった、とセビーリャを舞台に映画を撮りつづけている監督は指摘している。また、セビーリャの写真家アティン・アヤAtin Aya*の展覧会で見たグアダルキビールの湿地帯で暮らす人々の素晴らしい写真に打たれたという。これも映画製作の大きな理由であった。
*1955年セビーリャ生れ(2007年没)、写真家。グラナダ大学で心理学、ナバラ大学で社会科学を専攻、1981年、マドリードのフォト・センターで写真を学んだ。1992年セビーリャ万博の正式に選ばれた写真家のメンバーだった。
監督賞:アルベルト・ロドリゲス Alberto Rodriguez Librero、1971年セビーリャ生れ、監督、脚本家。セビーリャ大学の情報科学部で映像と音響学を専攻、アマチュア・レベルのビデオを撮り始める。1997年、サンティアゴ・アモデオと3万ペセタで短編“Banco”を撮り、1999年に400万ペセタをかけ別バージョンで撮ったものが評価され15個の賞を受賞する。長編は以下の通り:
2000年“El factor Pilgrim” サンセバスチャン映画祭2000新人監督に与えられる審査員スペシャル・メンションを受賞
2002年“El traje”
2005年 “7 Virgenes” サンセバスチャン映画祭2005に正式出品、主演のフアン・ホセ・バジェスタが最優秀男優賞(銀貝賞)を受賞。(『七人のバージン』の邦題でラテンビート上映)
2009年“After” ローマ映画祭、トゥルーズ映画祭に出品
2012年“Grupo 7” フィルム・ノワール、 サンセバスチャン映画祭2012「メイド・イン・スペイン」上映、ゴヤ賞2013ノミネーション16個(受賞は2個)。
2014年 本作
★撮影賞:アレックス・カタラン、サンセバスチャン映画祭「審査員最優秀撮影賞」(銀貝賞)を受賞している。ロドリゲス監督のデビュー作を除いて5作品を専属的に手掛けている。最近の代表作は。イシアル・ボリャイン(『雨さえも~』)、フリオ・メデム(『ローマ、愛の部屋』)、ハビエル・フェセル(『カミーノ』)など。
*撮影は、2013年10月から11月にかけて行われた。この湿地帯には三つの島があり、その中で一番小さい島‘la isla mínima’が舞台となっている。クランクインの10月の昼間の気温は42度、11月下旬の夜間には零下4度にまで下がり、高温、乾燥、寒さ、おまけに都会にはいない虫の存在もスタッフ、キャスト両方を苦しめ、かなり過酷なものだったという。稲刈りなんかもしたらしい。セビーリャの中心地から30キロ南方の湿地帯で主に撮影された。水田地帯というのは春から夏にかけて緑一面に被われ、収穫時の秋には黄金色に染まる。このさびれた湿地帯、ジメジメした水田、河も登場人物の一つであるようだ。ドキュメンタリーの手法で撮られているが全くのフィクション、監督はサンセバスチャンでアレックスが評価されたことが「特に嬉しかった」と述べていた。
(登場人物の一つ、グアダルキビール河の低湿地帯)
主演男優賞:ハビエル・グティエレスJavier Gutiérrez :1971年、ガリシアのア・コルーニャ生れ、俳優、サウンドトラック、監督。2000年テレドラに出演、映画デビューはエミリオ・マルティネス≂ラサロの“El otro lado de la cama”(2002)。受賞歴は、2012年シリーズTVドラ“Aguila Roja”(2009~14)でスペイン俳優組合賞男優賞を受賞。本作によりサンセバスチャン映画祭2014最優秀男優賞、フォルケ賞2015最優秀男優賞を貰っているほか、フェロス賞及びシネマ・ライターズ・サークル賞にもノミネートされており、一番受賞に近い。俳優たちのセリフ、表情、視線、間の取り方に釘付けになった批評家も多く、中でもグティエレスの演技は飛びぬけていた由。酷暑の撮影中、疲れと脱水症状で倒れた甲斐がありました。その他代表作は以下の通り:
2004年“Crimen ferpecto”監督アレックス・デ・ラ・イグレシア
2005年“Torrente 3”同サンチャゴ・セグラ
2006年『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト:ベビー・ルーム』同デ・ラ・イグレシア
2011年“Torrente 4”同サンチャゴ・セグラ
*ラウル・アレバロRaúl Arévalo は、1979年マドリード生れ、俳優。ダニエル・サンチェス・アレバロの『漆黒のような深い青』『デブたち』『マルティナの住む街』、イシアル・ボリャイン『雨さえも~』、アルモドバル『アイム・ソー・エキサイテッド』などでお馴染みの俳優、ゴヤ賞2010『デブたち』で助演男優賞を受賞している。本作でフェロス賞にもノミネートされており、コメディでの演技を嫌う向きも、今回は合格点をつけている。
(主役二人がノミネーション、グティエレスとアレバロ)
助演男優賞・同女優賞・新人女優賞:出番の少ない脇役連の演技が光っていると評判の3人、アントニオ・デ・ラ・トーレ、メルセデス・レオン、ネレア・バロスの評価が高く、揃ってノミネーションを受けた。
*アントニオ・デ・ラ・トーレは、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』(2013)ほか何回か紹介しているし、今回は受賞はないと思います。“Ocho apellidos vascos”のカラ・エレハルデの手に渡ると予想。
*メルセデス・レオンMercedes Leónは、コルド・イサギーレの“Amor en off”(1992)でデビュー、主にシリーズのTVドラに出演している。ゴヤ賞ノミネーションは初。
*ネレア・バロスNerea Barrosは、1981年、サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、女優。代表作としてハビエル・ベルムデスの“León y Olvido”(2004)、TVドラ“Matalobos”(2009~10)や“Volver
a casa”(2010)に出演、今回は失踪した少女の母親役です。1月25日発表の第2回フェロス賞助演女優賞にもノミネートされている。ゴヤ賞は初。このカテゴリーは予測が難しい、誰が取ってもおかしくないし、4人全員に挙げたいくらいです。
(夫婦役アントニオ・デ・ラ・トーレとネレア・バロス、映画から)
(メルセデス・レオン、映画から)
*脚本賞:共同脚本執筆のラファエル・コボスは“7 Virgenes”“Grupo 7”でも監督とタッグを組んでいる脚本家。今回は期待しているでしょう。
*関連記事・管理人覚え
“Grupo 7”紹介⇒2013年8月18日
“La isla mínima”予告記事 ⇒2013年8月20日
サンセバスチャン映画祭2014 ⇒2014年9月16日/9月30日
フォルケ賞2014 ⇒2015年1月14日
『カニバル』トロント映画祭⇒2013年9月8日
”Magical Girl” 7個*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑤ ― 2015年01月21日 14:25
サンセバスチャンの「金貝賞」受賞作品
★作品賞ノミネーション第4作目は、カルロス・ベルムトの第2作“Magical Girl”、ジャンルはミステリーです。サンセバスチャン映画祭のオフィシャル・セレクションに正式出品され、なんと最優秀作品賞(金貝賞)と最優秀監督賞(銀貝賞)両方を受賞してしまった。元来、本映画祭はカンヌ同様、作品賞とその他の銀貝賞をダブらせないのが基本方針と聞いている。とにかく、1997年のクロード・シャブロルの『最後の賭け』以来のことだそうですから17年ぶりです。当然、この奇妙なダダイズム映画のダブル受賞を非難する観客の声も出たようです。当ブログではサンセバスチャン映画祭で紹介しています。
(サンセバスチャンの「金貝賞」は作品賞のみで以下は全て銀貝賞です)
*カテゴリー7部門ノミネーションは以下の通り:
* Magical Girl *
Films Distribution / Canal+España 1 / TVE 他
監督・脚本:カルロス・ベルムト
主演男優賞:ルイス・ベルメホ
主演女優賞:バルバラ・レニー
助演男優賞:ホセ・サクリスタン
新人男優賞:イスラエル・エレハルデ
*以下は最終ノミネーションに残れなかったカテゴリー
撮影賞:サンティアゴ・ラカRacaj、
編集賞:エンマ・トゥセル
プロダクション賞:モンセ・ラクルス
メイク・ヘアメイク賞:イニャーキ・マエストレ
特殊効果賞:ゴンサロ・コルト
助演女優賞:エリザベト・ヘラベルト
データ:スペイン=フランス、スペイン語、2014、スリラー、撮影地:マドリード、セゴビア、
製作費:約50万ユーロ
映画祭上映:2014年(サンセバスチャン、トロント、チューリッヒ、シッチェス、釜山プサン、テッサロニキ)、2015年(パーム・スプリングス、ロッテルダム)他
受賞歴:サンセバスチャン映画祭金貝賞、監督(銀貝)賞、アルカラ・デ・エナレス映画祭観客賞
スペイン公開10月17日、テッサロニキ映画祭上映後ギリシャで公開11月18日
キャスト:ルイス・ベルメホ(ルイス)、ホセ・サクリスタン(ダミアン)、バルバラ・レニー(バルバラ)、イスラエル・エレハルデ(アルフレド)、エリザベト・ヘラベルト(アダ)、ルシア・ポリャン(アリシア)他
プロット:文学教師のルイスは失業中、彼の12歳になる娘アリシアは末期ガンで余命いくばくもない。アリシアの最後の願いは日本のアニメTVシリーズ『マジカル・ガールYukiko』の衣装を着ること、なんとか叶えてやりたい。その高価な衣装のためルイスは恐ろしいネットに深く入り込むことになる。ダミアンとバルバラを巻き添えに、彼らの運命も永遠に変えてしまうだろう。
(『マジカル・ガールYukiko』 映画から)
★作品賞:ペドロ・エルナンデス・サントスは、2010年設立の製作会社Aquí
y Allí Filmsの代表者。若い才能を発掘して社会変革をモットーにしている。第1作は、アントニオ・メンデス・エスパルサの“Aquí y allá”(2012、西=米=メキシコ)、サンセバスチャンで上映された後、東京国際映画祭2012「ワールド・シネマ」部門でも『ヒア・アンド・ゼア』の邦題で上映され、本作が第2作目になります。
*評価の高い割には興行成績は伸びず17万ユーロ、製作費を回収できていません。スリラー好きの国民ですが、2014年ランキング150位にも入っていないという厳しさです(この数字は外国映画も含んでいると思います)。サンセバスチャン映画祭の快挙を裏切る数字ですが、ゴヤ賞如何では伸びるかもしれません。“Ocho apellidos vascos”、セグラの「トレンテ5」、『エル・ニーニョ』、“La lsla
minima”などに流れてしまったのでしょう。
(金貝賞、監督賞ダブル受賞を喜ぶ二人、サンセバスチャン映画祭授賞式にて)
マンガ愛好家、出発はイラストレーター
★監督賞・脚本賞:カルロス・ベルムトCarlos Vermutは、1980年マドリード生れ、監督、脚本家、漫画家、プロデューサー。美術学校でイラストを学び、「エル・ムンド」紙のイラストレーターとして働く。2006年、最初のコミック“El banyan rojo”がバルセロナのコミック国際フェアで評価された。彼の漫画家としての才能と経験は本作にも活かされている。デビュー作はミステリー・コメディ“Diamond flash”(2011)。他に短編映画3作、コミック3作、2012年刊行の“Cosmic Dragon”は、鳥山明の『ドラゴンボール』のオマージュとして描かれたようです。
「スター誕生」となるか
★主演女優賞:バルバラ・レニー Barbara Lennie Holguín は、1984年マドリード生れ、女優、舞台俳優。生れはスペインだが家族はアルゼンチン人、誕生後一家でブエノスアイレスに帰国、6歳のとき再びスペインに戻っている。王立演劇学校で演技を学び、16歳でビクトル・ガルシア・レオンの“Más pena que gloria”(2001)で映画デビュー。フェルナンド・トゥルエバの長男ホナス・トゥルエバが脚本デビュー、監督と共同執筆している。ダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』で助演女優賞にもノミネートされていますが、本命は当然こちらです。フォルケ賞最優秀女優賞を受賞したばかりで、流れとしては受賞の可能性が高く、各紙「スター誕生」を予想しており、2014年最も輝いた女優の一人。過去にダブル受賞は1回だけあり、1987年ベロニカ・フォルケが“La vida alegre”で主演、“Moros y Cristianos”で助演を受賞しています。
代表的な出演作は以下の通り:
2005年“Obaba”モンチョ・アルメンダリス、ルルデス役でゴヤ賞2006新人女優賞ノミネート。
2007年“Las 13 rosas”エミリオ・マルティネス≂ラサロ (スペイン内戦物)
2008年“Todos los días son tuyos”ホセ・ルイス・グティエレス・アリアス
2009年“Los condenados”イサキ・ラクエスタ(サン・ジョルディ映画賞で女優賞)
2010年“Todas las canciones hablan de mí”ホナス・トゥルエバ(コメディ)
2011年“La piel que habito”ペドロ・アルモドバル(『私が、生きる肌』の邦題で2012公開)
2012年“Dictado”アントニオ・チャバリアス(『フリア、よみがえりの少女』邦題で2012公開)
同 “Miel de naranjas”イマノル・ウリベ
2014年“Stella cadente” リュイス・ミニャロ(サンセバスチャン「メイド・イン・スペイン」)
同 “El Niño”ダニエル・モンソン(『エル・ニーニョ』の邦題でラテンビート2014上映)
同 “Magical Girl”省略
同 “Murieron por
encima de sus posibilidades” イサキ・ラクエスタ(コメディ)
(最近のバルバラ・レニー)
★以上でも分かるように、脇役が多いが傾向の異なる監督からオファーを受けている。歴史物からシリアス・ドラマ、コメディまでこなせるマルチ俳優。アルモドバルの『私が、生きる肌』のチョイ役で合格点を貰ったようで、次回作“Silencio”がアナウンスされたばかりですが、噂ではオファーがあるのではないかということです。新作は「ウーマンもの」に回帰するとか。ホナス・トゥルエバ(1981マドリード)とは一時恋人同士だったが、現在は本作にも共演して新人賞ノミネートのイスラエル・エレハルデが恋人、舞台でも共演している。ガラのレッド・カーペットは彼のエスコートが期待されている(笑)。
(舞台“Misántropo”でのイスラエル・エレハルデとバルバラ・レニー)
*2007年より間断なくシリーズTVドラにも出演、歴史物“Isabel”(2012~13)で人気を博す。今年から始まった“El incidente”にも出演している。2008年からは舞台でも活躍しており、特に“Misántropo”は、2013年以来のロングランを続けている。バルバラにとって2014年は素晴らしい年になったが、「自分が演じたいと思うような役柄に出会うことは、そんなに簡単なことではない」、本作については「スペインの危機的な現実をダイレクトにテーマにした作品ではないが、どの時代にもある表面には現れてこない危機が、気分的にも経済的にも落ち込んでいるマドリードが描かれている」と語っている。
*今年公開される予定の映画は、ウルグアイの監督フェデリコ・ベイロフの“El apóstata”、『アクネACNE』(2008)がカンヌやトロントなど有名映画祭に招待された。4年後短期間だが劇場公開されている。
★本ブログお馴染みの助演男優賞のホセ・サクリスタン、今回受賞は難しい主演男優賞のルイス・ベルメホ、ヘスス・カストロ受賞確実の新人男優賞のイスラエル・エレハルデは割愛。
(ホセ・サクリスタン、映画から)
(ルイス・ベルメホ、映画から)
サンセバスチャン映画祭2014⇒9月16日
”Relatos Salvajes”驚きの9個*ゴヤ賞2015ノミネーション ④ ― 2015年01月19日 11:14
作品賞・監督賞含めて9個とは!
★“Relatos salvajes”(英題“Wild Tales”)は、スペイン映画でなくアルゼンチン≂スペイン合作のアルゼンチン映画だと思っていました。アカデミー賞外国語映画賞のアルゼンチン代表作品だったからね。従って「イベロアメリカ映画賞」には当然ノミネーションを予想していたし、受賞も太鼓判でした(笑)。作品賞は製作会社が主としてアルモドバル兄弟の「エル・デセオ」だから分かるとして、監督賞には違和感があります。しかし、2014年のスペイン興行成績が第5位の400万ユーロ(約72万人)と貢献したから無視できないか。かつてマルセロ・ピニェイロの『瞳の奥の秘密』(2009)が同じケースとして記憶にありますが、オスカー賞外国語映画賞を受賞したんでした。
★大物監督が我も我もと押しかけ、新人監督のエントリーが珍しくなったカンヌ映画祭のコンペティションに選ばれたのが快進撃の始まりでした。アグスティン・アルモドバルが、「彼のような若い監督の作品がカンヌのコンペに持って来られたのは、神の恩恵かもしれない」と語っていたように、カンヌのコンペティションは新人を寄せつけなくなっている。アルゼンチンでは有名でも国際的には新人。エル・デセオの後押しがあったからでしょうか、プレス会見では、アルモドバル監督も最前列で「我が子」を見守っていましたからね。結局カンヌは無冠に終わりましたが波及効果は絶大でした。
(アルモドバル兄弟に挟まれて、カンヌ映画祭2014授賞式にて)
★アカデミー賞2015の最終ノミネーションもやっと出揃い、本作もアルゼンチン代表作品として「外国語映画賞」5作品に踏み止まりました。現在は製作者も監督もロスに集合してプロモーションに大わらわですが、下馬評では受賞は難しい。投票には政治的なことも左右されるから、会員に会うことは重要なことで、クチコミはここでも有効です。アグスティン・アルモドバルは「多分『イーダ』が受賞するでしょうが、(受賞しなくても」決して不名誉なことではありません。ノミネーションだけでも素晴らしい」と語っています。オスカー賞にノミネートされるということはそういうことなんですね。当ブログでもカンヌ映画祭、トロント映画祭、オスカー賞プレセレクションと数回にわたって、スタッフ、キャスト、プロット、監督紹介をしてきました。それらと内容が重なる部分もありますがノミネーション9個は以下の通りです。
作品賞:El Deseo S.A.(西、アウグスティン& ペドロ・アルモドバル、エステル・ガルシア)/
Kremer & Sigman Films(アルゼンチン、ウーゴ・シグマン)、
他 Corner Producciones / Televisión Federal (後援)INCAA / ICAA
監督賞・オリジナル脚本賞:ダミアン・シフロン Szifron
主演男優賞:リカルド・ダリン(エピソード“Bombita”シモン役)
オリジナル作曲賞:グスタボ・サンタオラジャ
プロダクション賞:エステル・ガルシア、アナリア・カストロ・バルセッチ、他
編集賞:パブロ・バルビエリ・カレラ、ダミアン・シフロンSzifron
メイク&ヘアメイク賞: マリサ・アメンタ、ネストル・ブルゴス
イベロアメリカ映画賞:監督ダミアン・シフロン Szifron
★なかで確実なのがイベロアメリカ映画賞、混戦が予想されるが「もしかしたら」がオリジナル作曲賞でしょうか。主演男優賞のリカルド・ダリンは『瞳の奥の秘密』でもノミネートされましたが、『プリズン211』と同じ年だったから不運でした。今回は主演といっても6話構成の1話だけの主人公だし、このカテゴリーは“La isla mínima”の主役2人のどちらかに決定しているようなものだから受賞できない。多分サンセバスチャン映画祭、フォルケ賞の男優賞を受賞したハビエル・グティエレスの手に渡るでしょう。アルゼンチンのアカデミー賞と言われる「スール賞*」では、主演男優賞はリカルド・ダリンでなくオスカル・マルティネス、女優賞はエリカ・リバスが受賞しました。アルゼンチンでは8月14日に公開されてから10月までにチケットが約300万以上売れたということで、スピードは1997年、統計を公式に撮り始めてからでも異例の速さと報じています。(写真下:カンヌ映画祭に参加したときのもの)
*作品賞、監督賞、主演男優、主演女優(エリカ・リバス)以下10部門を制覇した。因みに『瞳の奥の秘密』は13部門制覇でした。どこもここも一極集中は流行りです。
(エリカ・リバス、アルモドバル、オスカル・マルティネス)
★作品賞は、スペイン部門とラテンアメリカ部門に分かれていたフォルケ賞では受賞しましたが、ゴヤ賞はまず考えられない。“La isla minima”か『エル・ニーニョ』のどちらか。エル・デセオにアレルギー症状をおこす会員が結構多いから難しい(笑)。2005年の“Tiempo de valientes”(長編第2作)以来9年ぶりの映画界復帰を説得したのは、アグスティン・アルモドバルでした。「じゃ、やりましょう」となるまでには紆余曲折があったようで、2013年3月に製作発表があったときには、既に上記の製作会社と配給ワーナー・ブラザーズが決まっているという幸運な出発でした。
(アグスティン・アルモドバルとエステル・ガルシア フォルケ賞授賞式にて)
★しかし2013年のカンヌのメルカードに脚本を見せたときの反応は必ずしも良くなかった。コメディ、スリラー、ホラーとジャンルが多義に渡り分類が難しかったからのようです。「それは最初から怖れていたことで、自分たちの心配通りになった」とアグスティン。しかし各エピソードには自信があり、2014年のカンヌ本番の反応は期待以上だった。つまり「快進撃はカンヌで始まった」というわけです。各国どこでも社会的な問題を抱えており、その背後には暴力が潜んでいて、その暴力は熱伝導のように伝わっていくから、結果ジャンルの分類など観客には不必要だったというわけ。
*監督キャリア&フィルモグラフィー*
★ダミアン・シフロン Damián Szifron:1975年ブエノスアイレス州のラモス・メヒア市生れ、脚本家、監督、エディター、プロデューサー(シフロンまたはジフロン?)。名前から分かるようにユダヤ系アルゼンチン人。父親が大の映画好きでその影響がある由。ユダヤ系の私立校Escuela Tecnica ORTでマスメディア学を専攻。その後、映画理論を学び、ブエノスアイレスの私立の映画大学(Fundacion Universidad del Cine FUC)で監督演出を学んでいる。1992年“El tren”で短編デビュー(短編多数)、1994年テレビ界に進出、TVドラ“Atorrantes”(1996~99)をプロデュースする。このとき知り合った女優マリア・マルルと結婚、2女の父親である。彼女は本作の「パステルナク」にイサベル役で出演している。長編は以下の通り:
2003年 “El fondo del mar”(“Bottom Sea” 長編第1作)ブラック・コメディ
*2001年から脚本に取りかかり、マル・デル・プラタ国際映画祭で上映、イベロアメリカ部門の「銀のオンブー」賞、国際映画批評家連盟賞を受賞。サンセバスチャン映画祭で審査員特別メンション、トゥールーズ映画祭でフランス批評家賞など多数。アルゼンチンの「クラリン賞」では最優秀作品・脚本・監督を受賞している。
2005年“Tiempo de
valientes”( “On Probation” 長編第2作)アクション・コメディ
*本作がビアリッツ映画祭(ラテンアメリカ部門)で観客賞、マラガ映画祭(同)では主役2人のうちルイス・ルケが男優賞(銀賞)を受賞し、ペニスコラ・コメディ映画祭では、作品賞、監督賞、もう一人の主役ディエゴ・ペレッティが男優賞を受賞した。
(カンヌでのツーショット、当時妊娠中、2ヵ月後に次女誕生)
★2006年よりテレビ界で活躍、シリーズ物のTVドラでヒットを飛ばし、映画界復帰が待たれていた。残りのノミネーションは予想つきません。というわけで可能性が残されている「オリジナル作曲賞」のグスタボ・サンタオラジャの紹介だけしておきます。
★最初音楽担当は、『私の秘密の花』(1995)以降アルモドバル映画の全作を担当しているアルベルト・イグレシアスがアナウンスされていた。彼はゴヤ賞最多の受賞歴があり、ゴヤの胸像を10個もコレクションしている。オスカー賞にもフェルナンド・メイレレスの『ナイロビの蜂』でノミネートされている実力派。しかし何かの事情で変更になったか、蓋を開けたらサンタオラジャになっていた。出演者が変わるとか、時々こういうことはありますね。
*グスタボ・サンタオラジャ*
★アメリカで活躍中だが、故郷ブエノスアイレスに戻って音楽を担当した。サンタオラジャによれば、ロック、ソウル、アフリカのリズム、ラテンアメリカのポピュラー音楽をミックスさせたとのこと。劇場公開になった映画の代表作は以下の通り:
2000年『アモーレス・ペロス』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
2003年『21グラム』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、
2004年『モーターサイクル・ダイアリーズ』ウォルター・サレス
2005年『ブロークバック・マウンテン』アン・リー、2006年アカデミー作曲賞を受賞
2006年『バベル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、2007年アカデミー作曲賞を受賞
2010年『ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
2013年『8月の家族たち』ジョン・ウェルズ
(監督とサンタオラジャ)
★関連記事:管理人覚え
カンヌ映画祭:2014年5月1日/5月22日
トロント映画祭:2014年8月15日
アカデミー賞プレセレクション:2014年12月21日
フォルケ賞受賞:2015年1月14日
『フラワーズ』驚きの作品賞*ゴヤ賞2015ノミネーション ③ ― 2015年01月16日 22:41
作品賞ノミネーションには驚きました!
★バスク語映画がゴヤ賞にノミネーションされるのは初めてのことらしいが、それも「作品賞」だからセンセーショナルなことです。作品賞に選ばれると監督賞、または新人監督賞に選ばれるのが恒例だが、今回はパスカル・ゲーニュの「オリジナル作曲賞」の二つだけ。「うん?」が正直な感想です。「作品賞」受賞は、まず考えられませんね。でも意味深いノミネーションです。
★車道のガードレールに飾られた花束には、美しさと同時に「死」の匂いが漂っている。かつてそこで悲劇が起こったことを知らせているからです。回想と喪失についての明快でエモーショナルな、そして非常に奥深い寓話として観客を熟慮させる。きわどいベッドシーンはないが、中年にさしかかった男と女の危ういラブストーリー 助演女優賞に事故死したベニャトの母親役イジアル・アイツプルがノミネートされてもおかしくなかった。ラテンビート2014でバスク語と日本語字幕で見られたことを幸運と思います。何故ならスペインでの一般公開はスペイン語の吹替え上映でしたから。(写真下:イジアル・アイツプル)
『フラワーズ Loreak』
製作:Irusoin / Moriarti Produkzioak
監督:ジョン・ガラーニョ& ホセ・マリ・ゴエナガ
脚本:アイトル・アレギAitor Arregi /ジョン・ガラーニョ/ホセ・マリ・ゴエナガ
プロデューサー:(エグゼクティブ)アイトル・アレギ/(同)フェルナンド・ラロンド
/ハビエル・ベルソサ
撮影:ハビエル・アギーレ
音楽:パスカル・ゲーニュ
★製作会社のIrusoin Moriarti とProdukzioakは、前作“80 egunean”(英題“For 80 Days”)を手掛けています。フェルナンド・ラロンドとハビエル・ベルソサは前作を共にプロデュース、アイトル・アレギは監督でもあり、本作には脚本家として共同執筆している。今回初めてエグゼクティブ・プロデューサーとして参加。
(“80 egunean”のポスター)
★後者の「オリジナル作曲賞」は可能性ありでしょうか。管理人も『フラワーズ』紹介記事でノミネーションを予想、その通りになって嬉しい(コチラ⇒2014年11月9日)。彼は以前、エドゥアルト・チャペロ≂ジャクソンの“Vervo”で、ゴヤ賞2012「オリジナル歌曲賞」にノミネートされています。ただし、このカテゴリーは例年になく激戦区になっています。『エル・ニーニョ』のロケ・バーニョス、“Relatos salvajes”のグスタボ・サンタオラジャ(アメリカからブエノスアイレスに帰郷して参加)、“La isla mínima”のフリオ・デ・ラ・ロサ、彼はロドリゲス監督のデビュー作『7人のバージン』以来全作の音楽監督を担当、“Grupo 7”で、ゴヤ賞2013「オリジナル作曲賞」にノミネーション、今回が2度目になります。ロドリゲスはスタッフを殆ど変えないタイプの監督です。誰が貰っても文句が出ないカテゴリーの一つ。
★パスカル・ゲーニュPascal Gaigne:1958年フランスのカーン生れ、1990年よりサンセバスチャン移住。作曲家、映画音楽監督、演奏家。ポー大学で音楽を学ぶ。トゥールーズ国立音楽院でベルトラン・デュプドゥに師事、1987年、作曲とエレクトロ・アコースティックの部門でそれぞれ第1等賞を得る。映画音楽の分野では短編・ドキュメンタリーを含めると80本を数える(初期のアマヤ・スビリアとの共作含む)。演奏家としてもピアノ、シンセサイザー、ギター、バンドネオン他多彩。『マルメロの陽光』ではバンドネオンの響きが効果的だった。以下は話題作、代表作です(年代順)。
1992『マルメロの陽光』 監督:ビクトル・エリセ(劇場公開)
1998“Mensaka” 監督:サルバドール・ガルシア・ルイス
1999『花嫁の来た村』 監督イシアル・ボリャイン(シネフィルイマジカ放映)
2001 “Silencio roto” 監督:モンチョ・アルメンダリス
2002『靴に恋して』 監督:ラモン・サラサール(劇場公開)
2003“Las voces de la noche” 監督:サルバドール・ガルシア・ルイス
2004“Supertramps” 監督:ホセ・マリ・ゴエナガ(デビュー作)
2006『漆黒のような深い青』 監督:ダニエル・サンチェス・アレバロ(ラテンビート2007)
2007“Siete mesas de billar
francés” 監督:グラシア・ケレヘタ
2009『デブたち』 監督:ダニエル・サンチェス・アレバロ(スペイン映画祭2009上映)
2010“Perurena” 監督:ジョン・ガラーニョ(バスク語、デビュー作)
2010“80 egunean” 監督:ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガ(長編第1作)
2011“Vervo” 監督:エドゥアルト・チャペロ≂ジャクソン(ゴヤ賞2012歌曲賞ノミネート)
2014“En tierra extraña” 監督イシアル・ボリャイン
2014『フラワーズ』 省略
2014“Lasa y Zabala” 監督:パブロ・マロ
*管理人覚え
サンセバスチャンFF⇒2014年9月22日
東京国際FF⇒2014年11月9日
モンソンの『エル・ニーニョ』16個*ゴヤ賞2015ノミネーション ② ― 2015年01月15日 17:28
『エル・ニーニョ』は何個取れる?
★トータル110作から選定された(フィクション64、ドキュメンタリー42、アニメーション4)。イベロアメリカ映画賞部門は15作から。ノミネーション・フィエスタは1月19日にマドリードのTeatros del Canal で開催される。授賞式は2月7日の土曜日夜から翌朝にかけて、マドリードのホテル・オーディトリアムで開催。総合司会ダニ・ロビラ、演出フアン・ルイス・イボラ、実行プロダクションはエミリアノ・オテギ。
ダニエル・モンソン『エル・ニーニョ』16個!
★授賞式が近づいてきましたので、しばらくゴヤ賞中心にアップします。今年はラテンビート上映作品が3作あり、マラガ、カンヌ、サンセバスチャン、モントリオール、トロントなどの映画祭で既に紹介している作品も多く、加えて『エル・ニーニョ』と“La isla mínima”の2作にノミネーションが集中しているので比較的ラクと踏んでますが、時間切れになるかも。作品賞(5作品)と監督賞(4作品)が重なるのも恒例になっています。毎年この季節になると、「いったい誰が、どういうポリシーで、ノミネーションしているのかしら?」と考え込んでしまいます。
★フォルケ賞では無冠におわりましたモンソンの『エル・ニーニョ』(邦題ラテンビート2014)については、スタッフ・キャスト紹介、プロット、鑑賞後のコメントも既にアップ済み、詳細はこちらへワープして下さい。 (⇒2014年9月20日/11月3日)
El Niño 『エル・ニーニョ』ノミネーション16カテゴリー
作品賞:Telecinco
Cinema / IkiruFilms / Vaca Films 他
監督賞:ダニエル・モンソン
脚本賞:ホルヘ・ゲリカエチェバリア/ダニエル・モンソン
撮影賞:カルレス・グシ
編集賞:クリスティナ・パストール
オリジナル作曲賞・オリジナル歌曲賞:ロケ・バーニョス
美術賞:セラフィン・ゴンサレス
衣装デザイン賞:タティアナ・エルナンデス
メイクアップ・ヘアーメイク:ラケル・フィダルゴ/ノエ・モンテス、他多数
特殊効果賞:フェリックス・ベルヘス/ダビ・カンポス/DDT SFX クルー、他多数
録音賞:オリオル・タラゴー/アルベルト・リバス/ジョルディ・リバス、他多数
プロデューサー:ホルヘ・ツゥカ(テレシンコ代表)/Ghislain バロイス(テレシンコ)/ハイメ・オルティス・デ・アルティニャノ/(エグゼクティブ)ビクトリア・ボラス(IkiruFilms)/(同)ジョルディ・ガスル/(同)エマ・ルストレス、他多数
キャスト
新人男優賞:ヘスス・カストロ(エル・ニーニョ)
助演女優賞:バルバラ・レニー(エバ)
助演男優賞:エドゥアルド・フェルナンデス(セルヒオ)
★以上がスタッフ、キャスト合計16カテゴリーにノミネートされた。スタッフ陣は、モンソンの前作『プリズン211』、アメナバルの『アレキサンドリア』、バヨナの『インポッシブル』、最近ではパコ・レオンの“Carmina y amén”、マルティネス= ラサロの“Ocho apellidos vascos”を手掛けたTV局テレシンコ・シネマやプロダクションのメンバーたちです。「他多数」としたカテゴリーは数が多いためピックアップして載せています。
★アルベルト・ロドリゲスの“La isla mínima”がフォルケ賞「作品賞」と「男優賞」を獲得しているので、『プリズン211』のように主要な賞を独占することはないと予想しています。このスリラー2作の一騎打ちになることは間違いありません。『エル・ニーニョ』は8月末に封切られて既に5ヵ月経ちましたが、未だ45館で上映中ということなので、作品賞と監督賞が分かれることもあり得ると思っています。「お金の掛けすぎだなぁ」がラテンビート鑑賞後の第一印象、中だるみも気になってスリラーの136分は長すぎるのではないかと感じた。『プリズン211』を見たときの高揚感、実はトサールはこういう役がやりたかったんだという驚きもなかった。ハリウッド嫌いのアカデミー会員の反発があるかもしれないし、個人的には監督賞はロドリゲスにとって欲しい。
★撮影賞、特殊効果賞、録音賞などは確率が高いと思われるが、撮影賞は“La isla mínima”のアレックス・カタラン、特殊効果賞は唯一ノミネートされた“Trente 5”のグループに、など個人的な感情が入るので予想できない。
★キャストで最短距離にいるのが、新人男優賞のヘスス・カストロ、ライバルは“Ocho apellidos vascos”のダニ・ロビラ、ガラの総合司会者でもある。
★助演女優賞のバルバラ・レニーは、“Magical Girl”で主演女優賞にノミネーションを受けているので多分そちらが本命(フォルケ賞を受賞)、そもそもダブル・ノミネーション自体好ましいことではないと思っている。(写真下、映画『エル・ニーニョ』から)
★助演男優賞のエドゥアルド・フェルナンデス、このカテゴリーは誰が貰ってもおかしくない。アントニオ・デ・ラ・トーレ、ホセ・サクリスタン、カラ・エレハルデと拮抗している。中でサクリスタンは2013年“El muerto y ser feliz”で主演男優賞を受賞しているので外れるかな。“La isla mínima”のデ・ラ・トーレは、2007年『漆黒のような深い青』で助演を受賞、“Ocho apellidos vascos”のカラ・エレハルデは、2011年『雨さえも―ボリビアの熱い一日―』で助演を受賞している。エドゥアルド・フェルナンデスも2002年に“Fausto 5.0”で主演、2004年“En la ciudad”で助演を受賞している。各自受賞歴はありますが、作品賞が“La isla mínima”ならデ・ラ・トーレが貰うかも。
(エドゥアルド・フェルナンデス)
ゴヤ賞2015ノミネーション発表 ① ― 2015年01月08日 20:12
★1月7日にノミネーション発表がありました。昨年は日曜日の夜でしたが、今年は2月7日の土曜夜から翌朝にかけてと変更になって開催されます(以前は土曜日でしたから元に戻ったわけです)。テレビ視聴率は19.8%(約357万人)と最低を記録いたしました。2014年のスペイン映画界はかつてないほどの活況を呈しましたので、翌日の仕事を気にせず楽しめる土曜の夜に変更になったようです。そのほうが視聴率も取れるからですね。総合司会者は昨年大ブレークした“Ocho apellidos vascos”の主人公ダニ・ロビラ、自身も新人男優賞にノミネートされています。強敵は『エル・ニーニョ』のへスス・カストロです。
★予想通りというか3極集中というか、あまり芳しくない印象のノミネーションです。アルゼンチン=スペイン合作とはいえ、“Relatos salvajes”がイベロアメリカ映画賞とダブってノミネートされている。以前にも『瞳の奥の秘密』が同じケースだったが釈然としない。取りあえず作品名と人名だけ列挙、順次アップしていきます。そんなに多くありませんが、未紹介だが受賞に絡みそうな作品をできるだけ多くアップしていきます。(ノミネーションを発表する左から、マリアン・アルバレス、キケ・マイリョ、ブランカ・スアレス)
★“Autómata”は1月23日一般公開だから来年回しになると思っていましたが、ノミネートされているのでビックリ、確かに授賞式前の公開ですけど。主演のバンデラスが栄誉賞を受賞するからでしょうか。マラガ映画祭で「これはゴヤ賞に絡む」と予告した作品のうち“10.000 km”、“Carmina y amén”、“Anochece en la India”などが目につきました。ラテンビートで上映された『トガリネズミの巣穴』のマカレナ・ゴメスも予告通り主演女優賞にノミネート、ここは混線するでしょう。。(ゴチック体は当ブログで紹介している作品です)。
最優秀作品賞
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LBラテンビート2014)
○ La isla mínima
○ Loreak (Flores) 『Flowers &フラワーズ』(邦題LB& 国際東京映画祭2014)
○ Relatos
salvajes
○ Magical Girl
最優秀監督賞
○ Daniel Monzón ダニエル・モンソンEl Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ Carlos Vermut カルロス・ベルムトMagical Girl
○ Alberto Rodrígue, アルベルト・ロドリゲスLa isla mínima
○ Damián Szifrón ダミアン・シフロンRelatos salvajes
最優秀新人監督賞
○ Carlos Marqués-Marce カルロス・マルケス≂マルセ10.000
km
○ Juanfer Andrés y Esteban Roel フアンフェル・アンドレス&エステバン・ロエル
Musarañas 『トガリネズミの巣穴』(邦題LB 2014)
○ Curro Sánchez Varela クーロ・サンチェス・バレラPaco de Lucía: La búsqueda
○ Beatriz Sanchís ベアトリス・サンチスTodos están muertos
最優秀主演男優賞
○ Javier Gutiérrez ハビエル・グティエレスLa isla mínima
○ Raúl Arévalo ラウル・アレバロLa
isla mínima
○ Ricardo Darín リカルド・ダリンRelatos
salvajes
○ Luis Bermejo ルイス・ベルメホ
Magical Girl
最優秀主演女優賞
○ Bárbara Lennie バルバラ・レニー
Magical Girl
○ María León マリア・レオン Marsella
○ Macarena Gómez マカレナ・ゴメスMusarañas 『トガリネズミの巣穴』(邦題LB 2014)
○ Elena Anaya エレナ・アナヤTodos están muertos
最優秀助演男優賞
○ Eduard Fernández エドゥアルド・フェルナンデスEl
Niño 『エル・ニーニョ』
○ Antonio de la
Torreアントニオ・デ・ラ・トーレ La
isla mínima
○ José Sacristán ホセ・サクリスタンMagical Girl
○ Karra Elejalde カラ・エレハルデOcho apellidos vascos
最優秀助演女優賞
○ Bárbara
Lennie
バルバラ・レニーEl Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ Mercedes León メルセデス・レオンLa isla mínima
○ Goya Toledo ゴヤ・トレド Marsella
○ Carmen Machi カルメン・マチOcho apellidos vascos
最優秀新人男優賞
○ David Verdaguer ダビ・ベルダゲル10.000
km
○ Jesús Castro ヘスス・カストロEl Niño 『エル・ニーニョ』(邦題ラテンビート2014)
○Israel Elejalde イスラエル・エレハルデMagical Girl
○ Dani Rovira ダニ・ロビラOcho apellidos vascos
最優秀新人女優賞
○ Natalia
Tena ナタリア・テナ10.000 km
○ Yolanda Ramos ヨランダ・ラモスCarmina y amén
○Nerea Barros ネレア・バロスLa isla mínima
○ Ingrid García
Jonsson イングリッド・ガルシア・ヨンソン Hermosa juventud
最優秀オリジナル脚本賞
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Magical Girl
○ Relatos salvajes
最優秀脚色賞
○ A Esmorga
○ Anochece en la India
○ Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo
○ Rastros de sándalo
最優秀オリジナル作曲賞Mejor música original
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Loreak (Flores) 『Flowers &フラワーズ』(邦題LB& 国際東京映画祭2014)
○ Relatos salvajes
最優秀オリジナル歌曲賞
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ Haz de tu vida
una obra de arte
○ Ocho apellidos vascos
○ Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo
最優秀プロダクション賞
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Relatos salvajes
○ Mortadelo y Filemón
contra Jimmy el Cachondo
最優秀編集賞Mejor montaje
○ La isla mínima
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ Paco de Lucía: La búsqueda
○ Relatos salvajes
最優秀衣装デザイン賞
○ Autómata
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Por un puñado de besos
最優秀録音賞
○ Autómata
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Mortadelo y Filemón
contra Jimmy el Cachondo
最優秀長編アニメーション賞
○ Dixie y la rebelión zombi
○ La tropa de trapo en la selva del arco iris
○ Mortadelo y Filemón
contra Jimmy el Cachondo
最優秀イベロアメリカ映画賞
○ Kaplan (2014、西=ウルグアイ=独)
○ Conducta (2014、キューバ)
○ Relatos Salvajes (2014、アルゼンチン=西)
○ La distancia más
larga (2013、ベネズエラ=西)
最優秀撮影賞
○ Autómata
○ Ocho apellidos vascos
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
最優秀美術賞Mejor dirección
artística
○ Autómata
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Mortadelo y Filemón
contra Jimmy el Cachondo
最優秀メイク&ヘアメイク賞
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Musarañas 『トガリネズミの巣穴』(邦題LB 2014)
○ Relatos salvajes
最優秀特殊効果賞Mejores efectos
especiales
○ El Niño 『エル・ニーニョ』(邦題LB 2014)
○ La isla mínima
○ Torrente 5: Operación
Eurovegas
○ Open Windows
*以下省略です。
今年はスペイン映画界は「黄金の年」だった ― 2014年12月30日 23:07
スペイン製映画が健闘した1年だった
★間もなく2014年も幕を閉じますが、ハリウッドに負けず劣らずメイド・イン・スペイン映画が健闘した年でした。全体の25.5%は37年ぶり「夢でしか見たことのない」数字だそうです。37年前の1977年がどういう年であったかといえば、フランコ没後2年、民主主義移行期、検閲制度廃止(1976年4月)後に作られた映画が上映された年ということです。
1977年にブレークした映画
★まず、スペイン映画界を長らく牽引してきたフアン・アントニオ・バルデム(1922~2002)監督のシリアス・ドラマ“El puente”(仮題「夏季休暇」)、これはゴヤ賞2014作品・監督賞を含めて6賞を勝ちとったダビ・トゥルエバの“Vivir es fácil con los ojos cerrados”(ラテンビート上映)にアイデアを与えたという作品です。マヌエル・グティエレス・アラゴン(1942~)の“Camada negra”(映画講座邦題『黒の軍団』、ベルリン映画祭監督部門の銀熊賞)、フェルナンド・フェルナン≂ゴメスの“Mi hija Hildegart”(仮題「わが娘ヒルデガルト」)、ビセンテ・アランダの“Cambio de sexo”(同「性転換」)、ほかハイメ・チャバリ、フェルナンド・コロモ、エトセトラ。
★また今年“Ocho
apellidos vascas”で5600万ユーロという驚異的な収益金を上げたエミリオ・マルティネス≂ラサロが“Las palabras de Max”(同「マックスの言葉」)でデビューしている。他にもホセ・ルイス・ガルシが“Asignatura pendiente”(同「保留科目」)でデビューし、しばらく検閲に苦しんでいた、スペインで一番愛された映画監督と言われるルイス・ガルシア・ベルランガ(1922~2009)の「ナシオナル」三部作の第1作ブラック・コメディ“La escopeta nacional”(78、仮題「国民銃」)がクランクインして話題を呼んだ年でもあった。
25.5%は今年だけ?
★25.5%は2013年の89%増、金額的にいうと、1億2300万ユーロだそうで、2100万人がスペイン映画を見た勘定になるらしい(消費税増税21%は2013年4月からだから単純に比較できないと思うが)。その内訳がびっくりもの、第1位“Ocho apellidos vascos”が前述のように5600万(約1000万人)、第2位モンソンの『エル・ニーニョ』1620万ユーロ(270万人)、第3位セグラのトレンテ・シリーズ“Torrente V”1070万ユーロ(180万人)、第4位アルベルト・ロドリゲスの“La isla mínima”600万ユーロ(100万人)、最近公開されたハビエル・フェセルのシリーズ“Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cochondo”が11月28日封切りわずか12日目でチケット売上げが48万枚にも驚きます(3Dのアニメーション)。日本でもいずれ劇場公開間違いなしです。
(フェセル監督を挟んでモルタデロとフィレモン)
全館満席だった「映画フィエスタ」
★ベスト・テンが大方を占めたということはこれまた由々しきこと、ほうっておいていいのかどうか。誰がみても2015年が25.5%を超えられないことは自明のことですから知恵を絞らないといけない。2009年から始まった映画フィエスタ(年1回)を今年は3月末と10月末の2回開催した。これは3日間に限り半額以下の2.90ユーロで見られるという「映画の日」(第7回は10月27日~29日の3日間、平日にもかかわらず最高の219万6000人が全国361館のスクリーンで見た!)。これは値段が手頃なら観客を映画館に呼び戻せるということです。
(マドリードの映画館での行列、10月28日)
★また“Ocho apellidos vascos”の快進撃にはバスク自治州政府の熱意と努力も大いに功績があった。マドリード公開時には、「バスクの食と映画」のようなキャンペーン行事を行い、ビトリア市長、バスクの有名シェフ、出演者のカラ・エレハルデが応援に駆け付けて宣伝に一役買った。他にも「ロケ地巡り」の撮影バスツァーを企画、映画のリピーターが押し寄せたとか(笑)。パコ・レオンが“Carmina y amén”の「1日限定の無料上映会」をしたり、それなりの新機軸を出したお蔭だと思います(コチラ⇒12月27日)。
(左ビトリア市長ハビエル・マロト、右カラ・エレハルデ、料理は残念ながらフォト)
トレンタッソ torrentazo とは?
★サンチャゴ・セグラのトレンテ・シリーズは毎回大当たりする、それでトレンタッソという新造語ができてしまった。新作“Torrente V:Operación Eurovegas”は、ハリウッド・スターのアレック・ボールドウィンを起用したり、盛大に物を壊したせいか製作費が850万ユーロ掛かっている。1070万ではとても喜べない。もっとも10月初めの公開だからこれから数字は伸びると思います。『トレンテ4 』(2011、ラテンビート上映)は、封切り3日間で110万人、840万ユーロを叩きだした。トータルでは1957万ユーロ(製作費1000万)、これは2011年のスペイン製映画の総売上高の5分の1に相当するという。ウディ・アレンのアカデミー賞脚本賞受賞の『ミッドナイト・イン・パリ』でさえ790万ユーロと後塵を拝した。
(サンチャゴ・セグラ監督とアレック・ボールドウィン)
★ゴヤ賞2012の大賞(作品・監督・脚本・主演男優など6部門)制覇のエンリケ・ウルビスの『悪人に平穏なし』(400万)、アルモドバルの『私が、生きる肌』(460万)などと比較しても、貢献度はピカイチだった。しかしゴヤ賞はノミネーションさえゼロだった。「清く正しく美しく」はありませんが、多くの観客が楽しんだのです。トレンテ・シリーズにはもっと敬意をはらってほしい。
★第1作にあたる“Torrente, el brazo tonto de la rey”(98)で新人監督賞を受賞しているからゴヤ賞無冠というわけではありませんが、ハビエル・カマラのコメディアンとしての才能に目が止まった作品でした。ゴヤ賞がらみでは、1993年に撮った短編“Perturbado”で短編映画賞、今年のラテンビートで再上映されたアレックス・デ・ラ・イグレシアの『ビースト獣の日』(95)で新人男優賞を貰っている。この二人ほど才能豊かなシネアストは他にそんなにいないのではないか。2015年には揃って50歳になる、大暴れして欲しい。
鬼が笑うノミネーション予想
★“Ocho apellidos vascos”は、フォルケ賞に作品賞と男優賞(カラ・エレハルデ)、今年から始まったフェロス賞に作品賞(コメディ部門)、助演男優・女優とトレーラー賞の4個にノミネートされている。ゴヤ賞の作品賞はドラマとコメディに分かれていないのでノミネーションはアリと思うが受賞は難しいかな。期待できるのは助演の2人カラ・エレハルデとカルメン・マチでしょうか。主演の2人ダニ・ロビラとクララ・ラゴもノミネーションはアリでしょう。作品賞はフォルケ賞に重なるような気がする。発表前にアレコレ言っても始まらないから新春を待つことに。
アントニオ・バンデラス*ゴヤ賞2015の栄誉賞に決定 ― 2014年11月05日 13:56
★去る10月20日、アントニオ・バンデラス(マラガ1960)の第29回ゴヤ賞2015の「栄誉賞」受賞発表がありました。いやぁ驚きました。こんな若いシネアストが受賞するなんて、ゴヤ賞始まって以来のことです。更にバンデラスはノミネートこそ5回ありますが(データ参照)、未だ無冠でした。うち3回はペドロ・アルモドバル作品です。彼をスカウトして『セクシリア』でデビューさせ、『欲望の法則』、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』と起用した育ての親より先に受賞してしまった。アントニオが『マンボ・キングス/わが心のマリア』出演のためハリウッドに渡ったときのアルモドバル監督の失望は大きかったと言われています。別に他の監督作品に出演しなかったわけではないけれど。(写真下、プレス会見場で)
★スペイン・アカデミー発表の受賞理由:大西洋を挟んだ二つの大陸で、俳優として、監督として、製作者として、諸々の輝かしいキャリアでもってわが国の価値を高めるのに寄与してくれた。受賞は選考員の満場一致だった。・・・彼は、危険や厳しい状況を乗り越え、演技者の<戦士>として、国境を越えて活躍するマラガ人であり、幅広い優れた経歴の持ち主である(抜粋)。
★ハリウッドの重い扉を開けてくれたパイオニアの一人に違いありませんね。『セクシリア』(1982)から最新作のSF映画“Autómata”(2014)まで、トータルで90作以上に出演は、チョイ役でなかっただけに改めて感心いたします。当ブログで、メラニー・グリフィスと離婚して故郷マラガに新居を購入という記事を書いた時には、想像もしませんことでした(⇒6月21日)。ハリウッド作品では『フィラデルフィア』(93)、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)、『デスぺラード』(95)、『エビータ』(96)、『マスク・オブ・ゾロ』(98)・・・と1990年代の活躍は目覚ましい。
★監督デビュー作品“Crazy in Alabama”(99、英語)が翌年のヨーロッパ・フィルム賞、サン・ジョルディ賞他を受賞、第2作“El
camino de los ingleses”(06)は、ベルリン映画祭2007ヨーロッパ・シネマ賞を受賞、ラテンビート2007で『夏の雨』の邦題で上映されました。
★主なる受賞:ゴヤ賞は無冠でしたが、2004年アカデミー「金のメダル」賞、2008年サンセバスチャン映画祭「ドノスティア」賞、2014年シッチェス・カタロニア映画祭「栄誉賞」をそれぞれ受賞しています。またペンシルバニア大学やマラガ大学の名誉博士号も貰っております。
★54歳とはいえ、二十代の初めに故郷マラガを後にマドリードに出て、ハリウッドを目指して既に35年のキャリアがある。90年代のスペインには、ハリウッドに行って自分を試すなんて慣例はなかった時代でした。「海外からやってくるものは、映画といわず全てが驚きだった。長い独裁政が終わって、社会全体を覆っていた、ある種のコンプレックスを打ち壊した。ハリウッドでの勝利は、多分一粒の種を播いたことになった」と、控えめながら自分もスペイン映画界に貢献しているという自負を受賞会見で覗かせました。
★「どんな資金難にも、決して降参しないぞ」と、決意のほどを熱く語ったバンデラス、「みんな、賞など重要じゃないと言いますが、それは貰うまでの話だ」と。貰ってみればその大きな威力というか素晴らしさに驚くというわけです。自分の経歴についての評価は他人がすることで、自分はあれこれ言う立場じゃない。しかしスペインの「偉大な巨人たち、フェルナンド・フェルナン・ゴメス(07没)、アグスティン・ゴンサレス(05没)、ホセ・ルイス・ロペス・バスケス(09没)など、私たち映画界の<バッファロー>に出会えて一緒に仕事ができたことは望外な<喜び>であった」と。最後にメラニー・グリフィスのことを訊かれたバンデラス、「彼女との関係は仕事だけ、遥か昔に彼女に出会い女優として感嘆した、その気持ちは今でも同じだよ」と応じていました。もう終わったことだよ、記者の皆さん。
★現在、三本の脚本を執筆中。サンセバスチャン映画祭コンペティションにサイエンス・フィクション“Autómata”(⇒9月16日)が公開された(これはゴヤ主演男優賞にノミネートされる確率が高い?)。テレンス・マリックの“Knight of Cups”(15英語)、カルロス・サウラの“33 dias”(15西・仏語)、ここではパブロ・ピカソになり、愛人の一人ドラ・マールにはグウィネス・パルトローが扮する。彼女は10代にスペインで暮らしたことがありスペイン語は堪能だそうです。ヒュー・ハドソンの“Altamira”(15英語)が目下撮影進行中という。ハドソン監督は『炎のランナー』(81)でアカデミー賞作品賞を受賞している。
*ゴヤ賞ノミネート作品*
1987 Matador『マタドール<闘牛士>炎のレクイエム』ペドロ・アルモドバル 助演男優賞
1991 Atame!『アタメ』ペドロ・アルモドバル 主演男優賞
1997 Two Much『あなたに逢いたくて』フェルナンド・トゥルエバ 主演男優賞
2012 La piel que habito『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル 主演男優賞
2014 Justin and the Knights of Valour(Justin y la espada del valor)言語:英語
*長編アニメーション賞(ヴォイス出演)作品賞なので製作者がノミネートされました。
ゴヤ賞授賞式もマラゲーニョのダニ・ロビラに決定
★栄誉賞に先だって、ゴヤ賞2015授賞式の総合司会者もアナウンスされました(10月14日)。当ブログで何回か登場してもらったエミリオ・マルティネス・ラサロのコメディ“Ocho apellidos vascos”(2014)の主役ダニ・ロビラです。1980年マラガ生れの34歳とこちらも若返り。マラガは熱くなっている? 発表予定はもっと後だったようですが、マラガのメディアが嗅ぎつけて騒ぎだしたせいで急遽正式発表とあいなった。メイン司会者の資格は明記されているわけではないが「進行役として1年以上のキャリアがあること」が慣例になっていて、ロビラはそれを満たしていなかったという事情もあったらしい。ただし過去にもカルメン・マチやアントニア・サン・フアンが同じケースだった。
(嬉しさ半分、怖さ半分のダニ・ロビラ)
★現アカデミー会長エンリケ・ゴンサレス・マチョ自らが公表しました。例年通りテレビション・エスパニョーラがライブ放映する。
★ダニエル・ロビラは、「プッシュがあったとき思わずオーケーと言ってしまったが、後で考えてみたら怖くなってしまった。いまは嬉しさと恐怖が半々だが、ガラが近づいてきたら恐怖でいっぱいになると思う。責任重大なのは分かってるよ」と正直です。アタマの回転の速い人だし、舞台負けしない自信がある由、コメディアンの素質は“Ocho
apellidos vascos”で証明済み、本作で主演男優賞ノミネートは確実です(!)。2015年は栄誉賞受賞者と司会者がノミネートされるという大変な年になりそう。
★例年、政治的発言が取りざたされる授賞式ですが、ガラのシナリオはやはり欠かせません。ロビラはブラック・ユーモアというより「アイボリー・ホワイト」のユーモア派だそうです。オブラートに包んでやんわりやるのでしょうか。当日が楽しみです。
*大成功によりシリーズ化されるのか、続編が決まった“Ocho apellidos vascos”は、コチラにアップしております(⇒3月27日/5月13日)。
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