第14回セビーリャ映画祭2017*結果発表2017年11月15日 15:46

           「金のヒラルダ賞」はポルトガルの A fábrica de nada 

 

   

★映画祭最終日の1111日夜にロペ・デ・ベガ劇場で結果発表がありました。審査員はトーマス・アルスラン、アガート・ボニゼール、フェルナンド・フランコ、パオロ・モレッティ、バレリエ・デルピエレの6人。スペインのメイン映画祭としては締めくくりとなるセビーリャ映画祭の金のヒラルダ賞Giraldillo de Oroを制したのは、ポルトガルのペドロ・ピニュPedro Pinho A fábrica de nadaThe Nothing Factory)でした。カンヌ映画祭併催の「監督週間」のFIPRESCI受賞作品。ドキュメンタリーとフィクションさらにミュージカルを大胆にミックスさせ、現代ポルトガルの複雑な経済状況をレトリックを排した詩的な視点で切り取り、そのオリジナル性が評価された。スペイン語映画ではありませんが、これは公開が待たれる映画の一つです。

 

 

 

★上映時間3時間に及ぶミュージカル・ドラマ A fábrica de nada 完成の道のりは困難を極めたと監督、本国ポルトガルでも9月下旬に公開できたのは映画祭の評価のお蔭とも語っていた。ヨーロッパといってもフランスのような映画大国とは異なり、ポルトガルの現状は厳しい。「経済危機は全ヨーロッパで起きている普遍的なテーマだから、海外の観客にも容易に受け入れられてもらえると思う」と、受賞の喜びを言葉少なに語っていた。また「ペドロ・コスタやセーザル・モンティロのような同胞が道を開いてくれたお蔭」と先輩監督への感謝も述べていた。若いが謙虚な人だ。映画祭上映以外では、目下のところアルゼンチンとフランスが公開を予定している。

 

(ペドロ・ピニュ監督)

 

審査員大賞:ドイツ映画 Western(監督ヴァレスカ・グリーゼバッハの第3作)カンヌ映画祭コンペティション外出品、多くの国際映画祭に出品されている。

    

審査員スペシャル・メンションルクレシア・マルテル『サマ』(アルゼンチン、スペイン他合作)、ベネチア映画祭コンペティション外出品、話題作ながら過去の映画祭受賞歴がなく、やっと審査員賞に漕ぎつけました。アカデミー賞外国語映画賞アルゼンチン代表作品。

『サマ』の紹介記事は、コチラ201710131020

 

   

 

監督賞:フランスのマチュー・アマルリック Barbara、カンヌ映画祭「ある視点」出品、シネマ・ポエトリー賞受賞作品。「映画はこの上なく強力になっている。(ヨーロッパ)映画の寿命が尽きたというのは間違いだ。私は楽観主義者なんだ」とアマルリック監督。彼は映画の将来性を信じているネアカ監督、独立系の制作会社で苦労したペドロ・ピニュとは対極の立場、互いの置かれた状況が鮮明です。「以前のようにはいかないが」カンヌ映画祭の後、15ヵ国で公開されたとも。新しい技術の導入でコストも下げられることを上げていた。

 

   

 (ヨーロッパ映画は死んでいないと語る、マチュー・アマルリック、セビーリャ映画祭にて)

 

男優賞:イタリアのジョナス・カルピニャーノの第2作目 A Ciambra 14歳の主人公を演じたピオ・アマトが男優賞を受賞しました。カルピニャーノの同名短編 A Ciambra201416分)、数々の受賞歴のあるデビュー作『地中海』(2015)にも出演しており、こちらはイタリア映画祭2016で上映された。家族の団結が最優先のシチリア島のチャンブラを舞台に、ロマの少年ピオと家族が遭遇する困難が語られる。キャスト陣も重なっており、いわば短編とデビュー作のスピン・オフ的作品。シチリア系移民の家庭に育ったマーティン・スコセッシがエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。個人的に金賞を予想していたのが本作でした。カンヌ映画祭併催の「監督週間」でラベル・ヨーロッパ映画賞受賞、アカデミー賞外国語映画賞イタリア代表作品。

 

     

                       (男優賞受賞のピオ・アマト、映画から)

 

      

 

★その他、女優賞はイタリア映画 Pure Hearts Selene Caramazza セレネ・カラマツァ、脚本賞はフランス映画 A Violent Life ティエリー・ド・ペレッティ撮影賞はデンマーク=アイスランド合作映画 Winter Brothers Maria von Hausswolff など、主要な賞はそれなりにばらけました。

 

アンダルシア・シネマライターズ連合ASECAN作品賞には、カルロス・マルケス=マルセ Tierra firmeAnchor and Hope)が受賞した。スペイン公開1124日。

Tierra firme の簡単な紹介記事は、コチラ2017117

 

    

    (左から、ナタリエ・テナ、ウーナ・チャップリン、ダビ・ベルダゲル、映画から)

 

Las nuevas Olas」いわゆるニューウエーブ部門はセビーリャ大学の関係者6名が審査に当たる。スペイン語映画をピックアップすると、作品賞にはアドリアン・オルのドキュメンタリー Niñato が受賞した。

 Niñato の紹介記事は、コチラ2017523

 

   

        (アドリアン・オルのドキュメンタリー Niñato のポスター

 

オフィシャル・コンペティション・レジスタンス部門の作品賞には、パブロ・ジョルカ Ternura y la tercera persona が受賞した。この受賞者にはDELUXEとして次回長編プロジェクトのためのマスターDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)最高6000ユーロが提供される。

 

DELUXEには、マヌエル・ムニョス・リバス El mar nos mira de lejos が受賞した。マスターDCPが提供される。

  

★主なスペイン語映画の受賞作は以上の通りです。1年で360日はどこかで開催されているのが映画祭、現在でもスペインではウエルバ映画祭が開催中、インディペンデントの映画祭がなければ埋もれてしまう作品が多数、受賞して運よく公開されても1週間で打ち切りになるケースもあるとか、映画の平均寿命は年々短くなっているというのが、映画祭関係者の悩みのようです。スクリーンでは観ないという観客が増えていく傾向にあり、鑑賞媒体の変化に対応する工夫が必要な時代になったのは確かです。

 

第14回セビーリャ映画祭開幕*ヨーロッパ映画賞ノミネーション発表2017年11月07日 15:11

         「金のヒラルダ」賞を競うコンペティション部門16作品は・・・

 

 

(実行委員会のアントニオ・ムニョス、ホセ・ルイス・シエンフエゴス、イサベル・オヘダ)

 

★今年で14回目を迎えたセビーリャ映画祭SEFF2017113日開幕しました(11日まで)。オープニング作品は、カルロス・マルケス=マルセ Tierra firme (スペイン、西語・英語・カタルーニャ語)でした。監督は 10,000km でマラガ映画祭2014の「金のビスナガ賞」を受賞している。今作の主役を演じたナタリア・テナダビ・ベルダゲルに加えてウーナ・チャップリンジェラルディン・チャップリンもカメオ出演している。ダビ・ベルダゲルは「ラテンビート2017」でドタキャンしたカルラ・シモン『夏、1993で少女フリーダの義父を演じた俳優。

 

  

               (Tierra firmeから

 

★チャップリン母子もレッド・カーペットに現れ、映画祭を盛り上げていたようです。他にベルト・ロメロ、マリオ・カサス、ホセ・コロナド、イレーネ・エスコラル、カロリナ・バング、監督では、カルロス・マルケス=マルセは当然のことだが、フランスからマチュー・アマルリックとティエリー・ド・ペレッティ、その他マヌエル・モソス、セルジ・ボソン・・・

 

★他には、ラテンビートでも上映されたベネチア映画祭の『サマZamaルクレシア・マルテル)、これは厳密にはアルゼンチン映画ですが、スペインも製作国、スペイン語映画ということで選ばれたのでしょうか。マヌエル・ムニョス・リバス El mar nos mira de lejosエバ・ビリャ Penélope が選ばれています。

 

(『サマ』から)

 

El mar nos mira de lejos から)

    

 

 Penélope から)

  

 

★話題になっているのが特別招待作品の Oro です。監督は『アラトリステ』アグスティン・ディアス・ヤネス、アルトゥーロ・ペレス・レベルテの未発表の短編の映画化です。ラウル・アレバロバルバラ・レニーオスカル・ハエナダホセ・コロナドフアン・ディエゴルイス・カジェホフアン・ホセ・バジェスタアントニオ・デチェントアンナ・カスティーリョなど、演技派の有名どころが集合しました。ロペ・デ・アギーレのようにエル・ドラドを探し求めてアメリカ大陸に渡ったコンキスタドールたちの物語、公開されるかな。

 

     

      (左端特別出演のフアン・ディエゴ、右端ホセ・コロナド、Oro から)

 

 

        ヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表になる映画祭

 

★セビーリャ映画祭はマラガと違ってヨーロッパ映画祭でもあり、例年フランス、イタリア、ポルトガル、ドイツ、イギリス、北欧各国から満遍なく選ばれます。11月上旬開催と時期的には遅いので、どこかの映画祭で既にエントリーされた作品が多いのは致し方ないのかもしれません。例えば東京国際映画祭のグザヴィエ・ボーヴォワ『ガーディアンズ』(仏・スイス)、『ショコラ』(88)で監督デビューしたクレール・ドゥニ『レッド・ザ・サンシャイン・イン』(仏)、カンヌ映画祭のBarbara(仏、マチュー・アマルリック)、同映画祭特別招待作品 A Violent Life(仏、ティエリー・ド・ペレッティ)など。今年はフランスが多い印象ですが、上記の参加国以外にも、チェコ、デンマーク、アイスランドなどから選ばれています。英語・西語の字幕入りで国際映画祭の基準を満たしています。

 

    

       (ジュリエット・ビノシュ、『レッド・ザ・サンシャイン・イン』から

 

★セビーリャ映画祭は、第30回になるヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表になる映画祭でもあり、今年は114日に発表になりました。下馬評ではパルムドール受賞のリューベン・オストルンド「The Square」、ライバルはイルディゴ・エンエディ「On Body And Soul」のようですが、蓋を開けてみないことには分かりません。一応、作品賞ノミネート5作品を英題で列挙しておきます。結果発表は129日、例年通りベルリンの予定です。

 

 1120 Battements Par Minute (仏)監督:ロバン・カンピヨ

 

  1. 2)Loveless (露、ベルギー、独、仏)アンドレイ・ズビャギンツェフ

     

    3On Body And Soul (ハンガリー)監督:イルディゴ・エンエディ

     

    4『希望のかなた』(フィンランド、独)監督:アキ・カウリスマキ

     

    5The Square (スウェーデン、独、仏、デンマーク)監督:リューベン・オストルンド

      

  1.   

  2.                    (リューベン・オストルンドの「The Square」から

     

  3. 9月に既に発表になっていた「ディスカバリー賞」に、カルラ・シモン『夏、1993がノミネーションされています。もしかすると・・・と期待しています。

       


 

第70回ロカルノ映画祭2017*ノミネーション発表2017年07月30日 17:26

    

         古稀を迎えた小規模ながら世界有数の国際映画祭ロカルノ

 

   

             (82日水曜日、いよいよ開幕されます)

 

70回目で思い出すのは、戦後間もない1946年に始まったカンヌ映画祭です。ロカルノ映画祭もカンヌと同じ年に生まれました。カンヌやベネチア、ベルリンやトロントのような大規模な映画祭ではありませんが、芸術と商業のバランスを上手く取りながら、今では夏本番8月に開催される世界有数の国際映画祭としてレベルAに成長しました。ベネチアやトロント、サンセバスチャンなど秋開催の先陣を切って開催され、特に新人監督に広く門戸を開いています。スイス南部イタリア語圏のロカルノ市という立地条件の良さ、世界最大の野外スクリーン「ピアッツア・グランデ」(7500席)の上映などで人気を集めています。しかしどの映画祭も直面しているのが資金難と若い人の映画に対する考え方の変化です。今年のカンヌでも感じたことですが、未来に向けての新しい戦略が待たれるところです。

 

   

    (1968年よりグランプリ作品には、トロフィー金豹が授与されるようになった)

 

★第1回のオープニング作品は、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』(Roma, Citta Aperta 1945)だったそうです。既にカンヌ映画祭でワールド・プレミアされていたが、特別賞を受賞しました。グランプリはルネ・クレールの『そして誰もいなくなった』で、ロッセリーニ自身も1948年に戦争三部作の第3作目『ドイツ零年』で受賞しています。彼のネオレアリズモと言われる映画手法は、スペインの若手シネアスト、ガルシア・ベルランガやアントニオ・バルデムにも大きな影響を与えました。日本も1954年に衣笠貞之助の『地獄門』が受賞しています。スペインは非常に遅くアルベルト・セラのHistoria de la meva mort2013、カタルーニャ語)が初めて受賞しました。

アルベルト・セラの金豹賞受賞の記事は、コチラ2013825

 

    

          (金豹賞のトロフィーを手にしたアルベルト・セラ)

 

★さて2017年のコンペティション部門には、ブラジル映画、フリアナ・ロハスマルコ・ドゥトラ As boas maneirasGood Manners 仏合作)と、チリのラウル・ルイスバレリア・サルミエント La telenovela erranteThe Wandering Soap Opera1990)の2作がノミネーションされています。後者の監督ラウル・ルイスは2011年に亡くなっており、サルミエントはルイス監督夫人で編集者だった。1973年のピノチェトの軍事クーデタ以降フランスに亡命しており、ピノチェト失脚後に帰国した。その帰国後の第1作が本作である。199011月にたったの6日間で撮影したままの未完成作品をこの度サルミエントが完成させた。米国やチリなどにばらばらに保管されていたネガを編集したようです。多作家だったラウル・ルイスの第121番目の作品になるはずです。彼はロカルノでは、長編第2作となる1968年の Tres tristes tigres が、翌年金豹賞を受賞している。そんな経緯もあって今回ノミネーションされたのかもしれない。

 

   

  (ラウル・ルイスとバレリア・サルミエント)

 

 (本作撮影中のルイス監督)

      

                         

 

(出演のパトリシア・リバデネイラ、フランシスコ・レイェス、ルイス・アラルコン、映画から)

 

BAFICI第19回作品賞はアドリアン・オルの「Ninato」*ドキュメンタリー2017年05月23日 15:44

           受賞作のテーマは多様化する家族像と古典的?

 

  

★インターナショナル・コンペティションの最優秀作品賞は、アドリアン・オルOrrのデビュー作Niñato2017)、どうやら想定外の受賞のようでした。本映画祭はデビュー作から3作目ぐらいまでの監督作品が対象で、4月下旬開催ということもあって情報が限られています。今年は20本、日本からもイトウ・タケヒロ伊藤丈紘の長編第2作「Out There」(日本=台湾、日本語142分)がノミネートされ話題になっていたようです。昨年のマルセーユ映画祭やトリノ映画祭、今年のロッテルダムに続く上映でした。審査員も若手が占めるからお互いライバル同士になります。スペインが幾つも大賞を取ったので審査員を調べてみましたら、以下のような陣容でした。

 

エイミー・ニコルソン(米国監督)、アンドレア・テスタ(亜監督)、ドゥニ・コテ(カナダ監督)、ニコラスWackerbarth(独俳優・監督)、フリオ・エルナンデス・コルドン(メキシコ監督)の5人、最近話題になった若手シネアストたちでした。アルゼンチンのアンドレア・テスタは、カンヌ映画祭2016「ある視点」に夫フランシスコ・マルケスと共同監督したデビュー作「La larga noche de Francisco Sanctis」がノミネートされた監督、ニコラスWackerbarthは、間もなく劇場公開されるマーレン・アデのコメディ『ありがとう、トニ・エルドマン』に脇役として出演しています。フリオ・エルナンデス・コルドンは、米国生れですが両親はメキシコ人、彼自身もスペイン語で映画を撮っています。2015年の「Te prometo anarquía」がモレリア映画祭でゲレロ賞、審査員スペシャル・メンション、ハバナ映画祭脚本賞、他を受賞している監督です。ということでスペインの審査員はゼロでした。

A・テスタ& F・マルケス「La larga noche de Francisco Sanctis」紹介は、コチラ2016511

 

Niñatoドキュメンタリー、スペイン、2017 

製作:New Folder Studio / Adrián Orr PC

監督・脚本・撮影:アドリアン・オル

編集:アナ・パーフ(プファップ)Ana Pfaff

視覚効果:ゴンサロ・コルト

録音:エドゥアルド・カストロ

カラーグレーディングetalonaje:カジェタノ・マルティン

製作者:ウーゴ・エレーラ(エグゼクティブ)

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2017年、ドキュメンタリー、72分、撮影地マドリード

映画祭・受賞歴:スイスで開催されるニヨン国際ドキュメンタリー映画祭Visions du Réel2017でワールド・プレミア、「第1回監督作品」部門のイノベーション賞受賞、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭Bafici2017「インターナショナル・コンペティション」で作品賞受賞

 

キャスト:ダビ・ランサンス(父親、綽名ニニャト)、オロ・ランサンス(末子)、ミア・ランサンス(次女)、ルナ・ランサンス(長女)

 

プロット・解説:ダビは3人の子供たちとマドリードの両親の家で暮らしている。定職はないが子育てをぬってラップ・シンガーとして収入を得ている。彼の夢は自分の音楽ができること、3人の子供たちを養育できること、自分の時間がもてて、それぞれあくびやおならも自由にできれば満足だ。重要なのは経済的な危機にあっても家族が一体化すること、粘り強さも必要だ。しかし時は待ってくれない、ダビも34歳、子供たちもどんどん大きくなり難しい年齢になってきた。特に末っ子のオロには然るべき躾と教育が必要だ。何時までも友達親子をし続けることはできない、ランサンス一家も曲がり角に来ていた。およそ伝統的な家族像とはかけ離れている、風変わりな日常が淡々と語られる。3年から4年ものあいだインターバルをとって家族に密着撮影できたのは、ダビと監督が年来の友人同士だったからだ。

 

           短編第3作「Buenos dias resistencia」の続編?

 

アドリアン・オルAdrián Orrは、マドリード生れ、監督。助監督時代が長い。ハビエル・フェセルの成功作『カミーノ』2008)、ハビエル・レボージョの話題作La mujer sin piano09、カルメン・マチ主演)、父親の娘への小児性愛という微妙なテーマを含むモンチョ・アルメンダリスのNo tengas miedo11)、劇場公開されたアルベルト・ロドリゲスの『ユニット7/麻薬取締第七班』12)と『マーシュランド』14)、フェデリコ・ベイロフのコメディEl apóstata15)などで経験を積んでいる。

 

    

★今回の受賞作は2013年に撮った同じ家族を被写体にしたドキュメンタリーBuenos dias resistencia20分)の続きともいえます。つまり何年かにわたってランサンス一家を追い続けているわけです。同作は2013年開催のロッテルダム映画祭、テネリフェ映画祭、Bafici短編部門などで上映、トルコのアダナ映画祭(Adana Film Festivali)の金賞、イタリア中部のポーポリ映画祭(Festival dei Popoli)、ポルトガルのヴィラ・ド・コンデ短編映画祭(Vila do Conde)ほかで受賞している。Bafici 2013の短編部門に出品されたことも今回の作品賞につながったのではないでしょうか。下の子供3人の写真は、短編のものです。他に短編「Las hormigas07)とDe caballeros11)の2作がある。 

 

      

(ランサンス家の3人の子供たち、中央がルナ)

 

     

                (ポーポリ映画祭でインタビューを受ける監督、201312月)

 

★タイトルになったniñatoは、若造、青二才の意味、普通は蔑視語として使われる。親がかりだから一人前とは評価されない。2013年ごろはスペインは経済危機の真っ最中、「EUの重病人」と陰口され、若者の失業率50パーセント以上、失業者など掃いて捨てるほどというご時世でした。しかし3人子持ちの父子家庭は珍しかったでしょう。少しは改善されたでしょうが、スペイン経済は道半ばです。別段エモーショナルというわけでなく、ダビが子供たちを起こし、着替えや食事をさせ、一緒に遊び、ベッドに入れるまでの日常を淡々と映しだしていく。オロがシャワーを浴びながら父親譲りのラッパーぶりを披露するのがYouTubeで見ることができます。現在予告編は多分まだのようです。 

      

               (niñatoダビ・ランサンス)

 

★純粋なドキュメンタリー映画というよりフィクション・ドキュメンタリーficdocまたはドキュメンタリー・フィクションficdocと呼ばれるジャンルに入るのではないかと思います。ドキュメンタリーもフィクションの一部と考える管理人は、ジャンルには拘らない。今カンヌで議論されているネットフリックスが拾ってくれないかと期待しています。


ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭2017*結果発表2017年05月20日 15:51

               スペイン映画が作品賞と監督賞を受賞しました!

 

     

        (映画祭ポスターを背にした作品賞受賞者アドリアン・オル)

 

★カンヌ映画祭も開幕、オープニング作品、アルノー・デプレシャンの「Ismael's Ghost」が評判を呼んでいるようです。出演者はマチュー・アマルリック以下キラキラ星だから話題性に事欠かない。翌日には「ある視点」のオープニング作品「Barbara」も上映され、今年のアマルリックは何かの賞に絡みそうですね。カンヌに比べればブエノスアイレス・インディペンデント映画祭BAFICIなど吹けば飛ぶような存在ですが、今年は当ブログに登場させたスペイン映画が作品賞や監督賞を受賞したのでアップいたします。

 

BAFICIBuenos Aires Festival Internacional de Cine Independiente)ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭、長いのでBAFICIで表記されることが多い。ブエノスアイレス市で1999年から始まった国際映画祭。今年19回を迎え、年々内容を充実させておりますが、国際映画製作者連盟FIAPF公認ではなく、現在に近い陣容になったのは2008年の第10回からです。最初はインターナショナル部門の作品賞・監督賞・男優賞・女優賞・観客賞の5個だけでした。現在のオフィシャル・セレクションインターナショナル部門とアルゼンチン部門に大別され、ほかにコンペティションは、ラテンアメリカアバンギャルド&ジャンル人権アルゼンチン短編6部門、回によってカテゴリーの名称変更が目まぐるしい。そのほか賞には絡まない特別上映があります。今年は昨年死去したイランのアッバス・キアロスタミ、生誕100&没後50年のビオレタ・パラ(チリ、191767)、没後25年のアストル・ピアソラ(アルゼンチン、1992)についてのドキュメンタリー映画が上映されたようです。2016年の入場者は約38万人、今年は大台の40万台に達しました。

 

★主な受賞作品、インターナショナル・コンペティション部門の作品賞は、アドリアン・オルOrrの長編ドキュメンタリーNiñato(西)の驚きの受賞、本作は当ブログ初登場です。マラガ映画祭2017の「金のビスナガ」受賞を果たしたカルラ・シモンのデビュー作Verano 1993(西)が監督賞とワールド・カトリックメディア協議会によるSIGNIS賞、さらに観客賞も受賞しました。オリジナル・タイトルはカタルーニャ語の「Estiu 1993です。キロ・ルッソViejo calavera(ボリビア=カタール)は審査員特別賞、撮影監督パブロ・パニアグアの撮影賞ADF受賞、これは納得です。本作はサンセバスチャン映画祭2016「ホライズンズ・ラティノ」部門のスペシャル・メンション受賞作、カルタヘナ映画祭2017の作品賞も受賞している。アルゼンチン・コンペティション部門の作品賞は、BAFICIの常連受賞者アレホ・モギジャンスキーLa vendedora de fósforosでした。またアバンギャルド&ジャンルでは、ガリシアのオリべル・ラシェ(またはオリヴェル・ラセ)のMimosas(モロッコ=西==カタール)がスペシャル・メンションを受賞、カンヌ映画祭2016「批評家週間」でのグランプリ受賞を皮切りに国際映画祭巡りをした異色作でした。 

   

カルラ・シモンの「Verano 1993」の紹介記事は、コチラ2017222

 

 

(今では本当の家族のようになったというシモン監督を囲む出演者たち、マラガ映画祭にて)

 

キロ・ルッソの「Viejo calavera」の紹介記事は、コチラ201695

 

 

                      (撮影賞を受賞した美しい映像、映画から)

 

オリベル・ラシェの「Mimosas」の紹介記事は、コチラ2016522

 

  

 

★次回に未紹介の主な受賞作、作品賞受賞のアナウンスに会場は驚きに包まれたというアドリアン・オルOrrの長編ドキュメンタリーNiñato」やアレホ・モギジャンスキーLa vendedora de fósforos」などのプロットや監督キャリア紹介をいたします。

  

第32回グアダラハラ映画祭2017*結果発表2017年04月01日 17:30

      エベラルド・ゴンサレス、作品賞とドキュメンタリー賞のダブル受賞

 

    

★グアダラハラ映画祭 FICG については、作品賞を受賞しても公開されるチャンスがないこともあり、目についた受賞作品をピックアップするだけです。昨年は作品賞を受賞したコロンビアのフェリペ・ゲレーロOscuro animalをご紹介しました。コロンビアにはびこる暴力について、コロンビア内戦の犠牲者3人の女性に語らせました。今年のメキシコ映画部門は、エベラルド・ゴンサレスLa libertad del DiabloDevils Freedom)が最優秀作品賞とドキュメンタリー賞の2冠に輝き、マリア・セッコが撮影賞を受賞しました。フィクション部門とドキュメンタリー部門の両方にノミネーションされていたなど気づきませんでした。プレゼンターは今回栄誉賞受賞のメキシコの大女優オフェリア・メディナ、これは最高のプレゼンターだったでしょう。

 

  

     (オフェリア・メディナからトロフィーを手渡されるエベラルド・ゴンサレス)

 

 

★ベルリン映画祭2017「ベルリナーレ・スペシャル」部門で、アムネスティ・インターナショナル映画賞を受賞した折に少しご紹介いたしました。こちらはメキシコのいとも簡単に振るわれる「メキシコの暴力の現在」について、犠牲者、殺し屋、警察官、軍人などに語らせています。各自報復を避けるため覆面を被って登場しています。衝撃を受けたベルリンの観客は固まって身動きできなかったと報じられたドキュメンタリーです。おそらく公開は期待できないでしょう。

 

    

     (覆面を着用した証言者、映画から)

 

Oscuro animal」の紹介記事は、コチラ2016319

La libertad del Diablo」の紹介記事は、コチラ2017222

 

     イベロアメリカ作品賞はカルロス・レチュガの「Santa y Andrés」が受賞

 

カルロス・レチュガSanta y Andrésは、サンセバスチャン映画祭2016「ホライズンズ・ラティノ」部門に正式出品されたキューバ、コロンビア、フランスの合作。他に脚本賞とサンタ役のローラ・アモーレスが女優賞を受賞。1983年のキューバが舞台、体制に疑問をもち、山間に隠棲しているゲイ作家のアンドレス、彼を見張るために体制側から送り込まれた農婦のサンタ、いつしか二人の間に微妙な変化が起きてくる。本作の物語並びに監督紹介、当時のキューバについての記事をアップしています。このカテゴリーには、同じキューバのフェルナンド・ぺレスの「Ultimos días en La Habana」やアルゼンチンの『名誉市民』、スペインからはアレックス・デ・ラ・イグレシアの『クローズド・バル』もノミネートされておりました。

 

 

★女優賞のローラ・アモーレスはシンデレラ・ガール、本作のため監督が街中でスカウトした。必要な時にはいつも留守の神様も、時として運命的な出会いを用意しています。人生は捨てたものではありません。本作のような体制批判の映画は、ラウル・カストロ体制下のキューバ映画芸術産業庁ICAICでは歓迎されないが、サンセバスチャンやグアダラハラ映画祭は評価した。この落差をどう受け取るかがキューバ映画の今後を占うと思います。

 

 

            (サンタとアンドレス、映画から)

 

Santa y Andrés」の作品紹介記事は、コチラ2016827

 

★早くもカンヌの季節が巡ってきました。第70回カンヌ映画祭2017の正式ポスターが発表され、今年のカンヌの顔はイタリアの往年の大スターCCことクラウディア・カルディナーレ、コンペティション審査委員長はペドロ・アルモドバル、期間は517日~26日です。

 

    

   (踊って笑って生き生きしたフェリーニのミューズ、クラウディア・カルディナーレ)