ボルハ・コベアガの新作”Negociador”*2015年公開予告 ④2015年01月11日 22:41

 4弾*ETAのコメディ

17日にゴヤ賞2015のノミネーション発表があり中断しました。“La isla mínima17個(カテゴリーは16ですが、主演男優に2人ノミネーション)、『エル・ニーニョ』16個に、「ご冗談でしょ」と腰が引けてしまいましたが、なかには「何で?」「まさかぁ!」もあったり、短編では見るチャンスがなかったりもして、例年ノミネーションに不満が聞こえてきます。取りあえずNegociadorが済んだら気分を変えて「ラテンビート2015」なども視野に入れてニュースを更新していきます。 

                                                                                 (映画のワンシーン)

★さて、ボルハ・コベアガって名前、初めて聞くけど、どんな監督なの。当ブログではエミリオ・マルティネス≂ラサロのコメディOcho apellidos vascosの脚本をディエゴ・サン・ホセと共同執筆した人として紹介しております。今年ゴヤ賞では5個ノミネーションされましたが、残念ながら脚本は選ばれませんでした。

 

    Negociador

製作Sayaka Producciones Audiovisuales

監督・脚本・プロデューサー:ボルハ・コベアガ

撮影:ジョン・D・ドミンゲス

編集:カロリーナ・マルティネス・ウルビナ

美術:リエルニ・イザギレ

衣装:レイレ・オレリア

プロデューサー(エグゼクティブ):ナヒカリ・イピニャNahikari Ipiña

データ:スペイン、スペイン語、201479分、ETAの悲喜劇、撮影地:サンセバスチャン/
    ビアリッツ/サンフアン・デ・ルス、スペイン公開
2015313

受賞歴:サンセバスチャン映画祭2014 Zabaltegi部門上映、最優秀バスク映画賞Irizar賞受賞

 

キャスト:ラモン・バレア(マヌ・アラングレン)、ジョセアン・ベンゴエチェア(ジョキン)、カルロス・アセレス(パチ)、メリナ・マシューズ(ソフィー)、ラウル・アレバロ(ソフィーの恋人)、セクン・デ・ラ・ロサ(ボーイ)、サンティ・ウガルデ(ボディガード)、オスカル・ラドレイ、ゴルカ・アギナガルデ、ジュリー・ダクキン、他

 

   (左から、カルロス・アセレス、ラモン・バレア、ジョセアン・ベンゴエチェア)

 

プロット:バスクの政治家マヌ・アラングレンの物語。2005年、アラングレンはスペイン政府とETAとの「平和プロセス」の難しい交渉に立ち合っていた。もう黒ネクタイをしめて友人知人の告別式に出席するのは終りにしたいと思っていたからだ。しかし会談はプロフェッショナルな形式に基づいたプロセスとはほど遠く、意見の相違、誤解、偶然に強く左右されがちで進展しなかった。ただ交渉人たちの個人的な関係だけは明るい結末を得るために損なわないようにしていたのだが・・・

 

★事実に着想を得て作られたフィクションだが、実在のモデルが存在するということです。ですからコメディといってもテーマがテーマだけに辛口の悲喜劇のようです。ラモン・バレア扮する主役のマヌ・アラングレンのモデルは、ヘスス・マリア・エギグレン(1954年ギプスコア生れ)、法学者で政治家、現在はバスク大学の法学部教授。舞台背景となる200506年は、バスク社会党(Partido Socialista de Euskadi-Euskadiko Ezkerra PSE-EE)の党員だった。「平和を取り戻そうとする主人公の夢に惹かれる。エギグレンの熱意がエタを終わらせた。ラモン・バレアが映画に息を吹き込んでくれたんだ。エギグレンのオピニオンを知ることができて満足している。ドキュメンタリーで撮ることは考えていなかったし、フィクションで少しも支障は感じなかった。だって彼を批判したりからかったりする意図は全くなかったからね、その反対だよ」とコベアガ監督。

 

          (ETAとの交渉についての著書を手にしたエギグレン)

 

ジョセアン・ベンゴエチェアのモデルは、ホセ・アントニオ・ウルティコエチェア・ベンゴエチェア(1950年ビスカヤ生れ)だが、ホス・テルネラのほうが知られている。テロ組織ETAの歴史に残る代表的な指導者の一人だった。199010月、武器の不法所持や偽造身分証明書利用の廉で10年の刑を受けている。2011年アメリカはテロリスト名簿に載せているが、詳しい現況は分かっていない。カルロス・アセレスのモデルは、バスク分離独立ITAの元リーダー、ハビエル・ロペス・ペニャ、別名「ティエリー」(1958年ビスカヤ生れ)。休戦協定を台無しにした張本人。20085月、ボルドー潜伏中に逮捕されフランスで服役中だったが、2013330日、心臓障害で治療を受けていたパリの病院で脳溢血のため死去している。

 

            (ボルドーで逮捕されたときの「ティエリー」)

 

★この交渉は結果的には失敗するわけですが、だからといって無駄だったわけではなく、20134月、エギグレンは平和と和解に寄与したとして「ゲルニカ賞」を受賞している。コベアガ監督は書籍、新聞記事、ドキュメンタリーを徹底的に精査して脚本を作り上げたと語っています。実際の会談では「何が話し合われ、どう推移したのか、何を食べ、飲み物は何を飲んだのか」。彼はこの平和プロセスの厳粛さを取り除いて自由に夢想しているようです。つまり「交渉のプロセスを描くストーリーではなく、その副次的な側面や家庭を取りまく細部について語った物語です。政治的な会談に集中したくなかった」とサンセバスチャン映画祭で語っています。

 

                (ボルハ・コベアガ監督

 

ボルハ・コベアガBorja Cobeaga Eguillor 1977年、サンセバスチャン生れ、監督、脚本家、製作者。脚本家として出発、監督デビューはPagafantas”(2009、ゴヤ賞新人監督賞ノミネート)2作目No controles”(2010、本作が3作目です。TVシリーズ、短編多数、うち2002年“La primera vez”がゴヤ賞ノミネート、2007年“Eramos pocos”がオスカー賞にノミネート、2014年“Democracia”がナント映画祭で短編映画賞を受賞している。エミリオ・マルティネス≂ラサロの“Ocho apellidos vascos”の続編をディエゴ・サン・ホセと共同執筆中、今春クランクインが予告されている。

ルイス・マリアスのスリラー”Fuego”*暴力の連鎖2014年12月11日 19:14

2015年公開予定が早くも今月公開に早まりました。いわゆるETAものという範疇に入りますが、テロは終息しつつあるとはいっても、当事者にとって「傷口は開いたまま」ということでしょうか。本作については製作発表のとき既に記事にしており、プロット、監督、主演のホセ・コロナドなどの紹介を簡単にしております(コチラ⇒2014320)。製作発表段階の意図と完成作品に大きな違いがない印象ですので、参照頂けると嬉しい。

 

     Fuego

製作:Deparmento de Cultura del Gobierno Vasco / Fausto Producciones Cinematograficas 他

監督・脚本:ルイス・マリアス

撮影:パウ・モンラスPau Monras

音楽:Aritz Villodas

美術:ギジェルモ・リャグノLlaguno

製作者:エドゥアルド・カルネロス

データ:スペイン、スペイン語、2014、スリラー、ETA、撮影地ビルバオ、第52回ヒホン国際映画祭2014コンペティション、20141128日スペイン公開

キャスト:ホセ・コロナド(カルロス)、アイダ・フォルチ(カルロス娘アルバ)レイレ・ベロカル(テロリスト妻オイアナ)、ゴルカ・スフィアウレ(同息子Aritz)、ハイメ・アダリド(マリウス)他 


プロット:元警察官カルロスの復讐劇。エタの自動車爆弾テロで妻を殺され、当時10歳だった娘は両脚を失う。11年後、カルロスは服役中のテロ実行犯に復讐を誓いながらバルセロナで暮らしている。自分の家族が受けた苦しみを同じだけ犯人の妻と息子に与える、「私こそが正義である」。憎しみと復讐で始まるがやがて内面の炎は悲しみとパッションに移ろっていく。登場人物たちは、それぞれ社会的イデオロギー的に異なった立場にいるため、その苦しみも複雑に交錯しながら物語は進行する。

 

52回ヒホン国際映画祭20141122日~29日)

★第52回ヒホン映画祭で唯一コンペに残ったスペイン映画、会場にはスタッフ、キャスト陣が揃って登場した。主役の三人のうち、コロナド、フォルチは既に登場、テロ実行犯の妻役ベロカルはまだ日本では未紹介です。スペインでもあまり知られていない女優、監督自身も脚本を手掛けたラファエル・モンレオンの“Questión de suerte”(96)で知り合った由。

 

  (左から、ベロカル、中央監督、隣りフォルチ、最右翼コロナド、ヒホン映画祭にて)

 

「傷口は開いたまま」

★本作について、「このスリラーは、バスクの歴史に基づいているが、どこでも起こりうる事件であり、特別エタものとして撮ったわけではない。何故なら激しい苦痛を感じている人の憎しみや暴力、痛みがもたらす結果を描いているからです」と、ヒホンのプレス会見で語っています。ETAの暴力について撮ることには「はっきりしたタブー」があったが、やっと解禁された。未来志向の観客が、この映画を見ることで共生を深く考えるきっかけになればと願っている。「テロの犠牲者の傷口は開いたまま癒えていない」とも語っていました。難しいですね。

 

テロの犠牲者も幸せになる価値がある

★撮影は厳しかったそうだが、結果には満足している。しかし心にしこりをもったままで希望を抱くのは厳しい。それぞれ抱えている過去、傷痕、将来への考え方が異なるから当然です。ホセ・コロナドによると「寛容で乗り越えるのは容易なことではないが、でも乗り越えようという動きが出はじめている。この映画が皆の心を動かし、よい影響を与えあうようになることを期待している」と、既にこの30年間で40作の映画に出演しているベテランもコメントを寄せている。カルロスは元警察官だから正義を行う人だが、現在は復讐者である。実際まるで「ジギルとハイド」のモデルのような役だから、最後までどちら側に自分を置いたらいいのか難しかった。役柄を落ち着かせるため、<尊敬している>エンリケ・ウルビスがやるようにバスクをあちこち歩き回りながら観察してまわったそうです。結果的には、どちら側でもない第三の生き方を見つけることになるんでしょうね。監督からは凄い集中力を求められたが関係は素晴らしかったそうで、撮影は納得いくものになったということでしょう。ゴヤ賞に絡むと予想しますが、『悪人に平穏なし』に近すぎるかな

 

ルイス・マリアスLuis Marias Amando:脚本家・監督・俳優・プロデューサー。1988年、脚本家として出発、映画&テレビの脚本多数。なかでホセ・アンヘル・マニャスの同名小説を映画化したサルバドール・ガルシア・ルイスの“Mensaka”(1998)の脚色が評価された。監督デビュー作は“X”(2002)とかなり前の作品、“Fuego”が第2作になります。TVミニシリーズ“Gernika bajo las bombas”(2エピソード2012)は、その年のサンセバスチャン映画祭で上映されました。1937426日のゲルニカ爆弾投下をテーマにしたドラマ。


1作“X”にはエンリケ・ウルビスの『貸し金庫5072002」でホセ・コロナドと共演したアントニオ・レシネスが主役を演じている。そんな繋がりで出演したのかもしれない。ウルビスは昨年『悪人に平穏なし』で登場、日本でも認知度の高い監督になりました。

 

ホセ・コロナドJosé Coronadoは、1957年マドリード生れ。つまりフランコ時代の教育を受けて育ったマドリッ子ということです。父親がエンジニアで比較的裕福な家庭環境で育った。大学では最初法学を4年間学んだが卒業できず、次に医学を志すもこれまた2年で挫折した。本人によれば大学を諦めて旅行会社、レストラン、モデル、トランプのギャンブラーなどを転々、要するにプータローをしていた。フランコ没後(1975)から約5年間の民主主義「移行期」というのは混乱期でもあった。映画の世界に入ったきっかけは、「ウィスキーのテレビ・コマーシャルのモデルに誘われ、マジョルカで撮影すると言うし、出演料が破格だったので引き受けた」そうです。その後30歳になる直前に演技の勉強を思いたち、キム・デンサラットの第1作“Waka-Waka”(87)で映画デビュー、1989『スパニッシュ・コネクション』の邦題でビデオが発売されている。初期の話題作では、イマノル・ウリベの“La luna negra”(89)、ビセンテ・アランダの“La mirada del otra”(98)、カルロス・サウラの『(ボルドーの)ゴヤ』(99)では青年時代のゴヤになった。

 

                  (撮影中のコロナド)

 

やはり今世紀に入ってからの活躍が目立ちます。主役を演じたエドゥアルド・コルテスの“La vida de nadie”(02)、エンリケ・ウルビスの『貸し金庫507』(02)、“La vida mancha”(03)とゴヤ賞主演男優賞受賞の『悪人に平穏なし』(11)、ミゲル・コルトワのETAの実話を基にした“El Lobo”(04)と“GAL”(06)、アレックス&ダビ・パストール兄弟の『ラスト・デイズ』13)、オリオル・パウロの『ロスト・ボディ』13)など、公開作品も多いほうですね。

 

アイダ・フォルチAida Folch1986年、カタルーニャのタラゴナ生れ、女優。子役でフェルナンド・トゥルエバの“El embrujo de Shanghai”(02)でデビュー、フェルナンド・レオン・デ・アラノアの『月曜日にひなたぼっこ』(02)、マヌエル・ウエルガの『サルバドールの朝』(06)、公開されたF・トゥルエバの『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』12)、本作でゴヤ賞2013主演女優賞ノミネート、トゥリア賞2013女優賞を受賞した。他にアントニオ・チャバリアスの“Las vidas de Celia”(06)、Patxi Amescuaの“25 kilates”(08)で翌年のマラガ映画祭の女優賞を受賞している。来年になるが、ホセ・コルバチョ&フアン・クルスのコメディ“Incidencias”(15)に出演している。他、短編、TVドラ多数。




レイレ・ベロカル
Leyre Berrocal1973年ビルバオ生れ、女優、脚本家。フアン・ビセンテ・コルドバの“Entre con sol”(95)、前出のラファエル・モンレオンの“Questión de suerte”、ペドロ・ペレス・ロサドの“Agua con sal”(05)など。

 

              (レイレ・ベロカル、“Fuego”から)

イマノル・ウリベ*新作のテーマはETA2014年11月30日 20:33

9月初めにイマノル・ウリベの新作Lejos del marの発表があり、10月末か11月半ばには舞台となるアルメリアでクランクインするとアナウンスされていました。予定通り1110日に監督、主演者エドゥアルド・フェルナンデス(サンティ役)が現地入りして撮影が始まりました。12月中旬までかかる由、カンヌ映画祭2015に間に合わせたい、とプロダクション・マネージャーのエルネスト・チャオ氏。スペインでの公開は秋になります。

 

       (ウリベ監督、エレナ・アナヤ、エドゥアルド・フェルナンデス)

 

★物語は、「パロット・ドクトリン」が適応されてソト・デル・レアル刑務所を出所したETAの元テロリストのサンティが、かつて同房だった友人と再会するためアルメリアへの旅を決意する。彼らのテロで犠牲になった男の娘マリナ(エレナ・アナヤ)をサンティは愛するようになるだろう。他にもこういうラブ・ストーリーあったのではないかと突っ込みたくなりますが、まだ全体像が明らかになっておりません。キャスト陣も二人の主役とホセ・ルイス・ガルシア・ぺレス、ナチョ・マテオしかアップされておりません(IMDb)。ウリベのETA物は、『ミケルの死』(84)にしろ『時間切れの愛』(94)にしろ「愛」がテーマでしたが。

パロット・ドクトリンDoctrina Parot2006228日にスペイン最高裁判所が判決に基づいて制定された一般名称。ETAのテロリスト組織のメンバー、アンリ・パロットの上告によって制定されたことから彼の名がついた。いわゆる複数の罪を足し算して禁固1000年とか科するのは国家にとっても不利益とする考え方。1973年制定された刑法でも、既に刑期は最長30年とされていた。200873日、禁固2700年のイネス・デル・リオ・プラダ(ETAメンバー)が18年間の刑期で自由の身になった(スペインは死刑廃止国)。

 

イマノル・ウリベImanol Uribe1950年、エルサルバドルの首都サンサルバドル生れ、両親はバスクのギプスコア出身でスペインに戻った。マドリードの公立ジャーナリズム学校卒、マドリード国立映画研究所の監督科の学位を取る。1975年プロダクションZeppo Films設立、1979Cobra Films、他を設立した。1979年のドキュメンタリー“El proceso de Burgos”でデビュー、これは1970年ブルゴスで行われたETAメンバー6人の軍事裁判を再現したもの。第2作がセゴビアの刑務所を脱獄するLa fuga de Segovia”(81、バスクの急進的政党abertzaleのメンバーであるミケルの不可解な死を描いたLa muerte de Mikel”(84『ミケルの死』の邦題で第1回スペイン映画祭1984で上映)が、バスク三部作と言わる初期の代表作品。この映画祭には故ピラール・ミロー団長以下、故アントニオ・バルデム、カルロス・サウラ、ハイメ・デ・アルミニャン、他若いウリベ監督も来日した。 

     (ミケルを演じたイマノル・アリアスもギプスコア出身、『ミケルの死』より


 
★一番の成功作が再びETAをテーマにした『時間切れの愛』(“Dias contados”)で、1995年のゴヤ賞を総なめにしたこともあって、1996年劇場公開された。サンセバスチャン映画祭1994の金貝賞受賞作品でもある。他に1996年の“Bwana”もサンセバスチャン映画祭1996金貝賞受賞作品。アフリカからの移民排斥運動、人種差別がテーマ。日本スペイン協会主催の「スペイン映画祭1997」で『ブワナ』として上映された。第1回ラテンビート上映の“El viaje de Carol”(02『キャロルの恋』)は、キャロルに扮したクララ・ラゴが来日したり、その愛くるしさも幸いしたのか公開された。ただ『ミケルの死』や『時間切れの愛』を見ていた観客には物足らなかったかもしれない。以上の4作が字幕入りで見られた作品。他にコメディ“El rey pasmado”(91)も、ゴヤ賞1992のオリジナル脚色賞、音楽・美術・音響・衣装デザイン・メイクアップ賞の他、フアン・ディエゴが助演男優賞を受賞した。ウリベは寡作のほうですが、下準備も入念にするタイプ、比較的賞に恵まれている。(写真下は、揃ってゴヤ賞にノミネートされた『時間切れの愛』の出演者たち、ゴチック体は受賞者

 

  (カンデラ・ペーニャ、ペポン・ニエト、主演ルス・ガブリエル、主演カルメロ・ゴメス
   助演ビエル・バルデム

 

★ウリベ監督にとってアルメリアは思い出深い土地、18年前に『ブワナ』をここ国立公園のガータ岬(Cabo de Gata)で撮影した。その折り歩き回ったので公園内は隅々まで知り尽くしているとか。今回は難しい立場に立つ主人公のテロリズムについての考えを語ることになる。『時間切れの愛』を完成した後の1996年ごろから構想していたテーマだったが、撮るには時代が早すぎることもあって、今日まで持ち越してきてしまったという。監督としては『ミケルの死』、続く『時間切れの愛』の集大成として“Lejos del mar”を撮りたいと考えているようです。この3作が後には「バスク三部作」と言われるようになるのではないか。

 

★プロデューサーのアントニオ・ペレスによると、自分は仕事柄「多くの脚本を読んでいるが、一読してこれはイケルと直感した」、完成度の高い脚本で、間違いなく来年の話題作になるだろうと、獲らぬ狸の皮算用、製作費は約200万ユーロ、製作は『エル・ニーニョ』も手掛けたセビーリャのMaestranza Films社。プロダクション・マネージャーのエルネスト・チャオも「全面的にウリベを信頼している」と断言、主役二人の演技は折り紙つき、予想通りになることを期待したい。

 

ホセ・コロナド、ルイス・マリアスの新作”Fuego”出演2014年03月20日 17:17

★ネストルF. デニスのデビュー作Crisisを撮影中と思っていたら、2015年公開予定のFuegoの撮影も開始されるようで、先日ビルバオでルイス・マリアス監督以下出演者一同揃ってのお披露目がありました。(写真:中央が挨拶をするコロナド、真後ろがマリアス監督、左から2人目がアイダのようです)

 

11年前にETAのテロリストに妻を殺害され、娘は両脚切断という悲劇に見舞われた警察官の復讐劇。この警察官カルロスにコロナド、娘アルバにアイダ・ホルチ、テロリストの妻オイアナOhianaにレイレ・ベロカル、その息子アリツァAritzGorka Zufiaurreという布陣です。

 

★脚本も手がけるマリアス監督によると、「テロの暴力で犠牲になった側とテロ行為をした側を交錯させて物語を進行させたい」。テロを受けた側の苦しみと心理的葛藤、テロで解決しようとした側の政治的理由の複雑さ、その両面を描きたいということです。「登場人物はそれぞれ社会観、政治信条、イデオロギーが異なっており、各々の過去とその傷を抱えている。物語のベースはそれに対峙する人々の未来を描きたい」とも語っています。「テロリストに法の裁きを受けさせたい」という主人公カルロスの考えはタテマエでしかない。自分の妻と娘が味わった苦しみを「テロリストの妻と息子にも同じように与えたい」がホンネである。ただの復讐劇ではないようです。

 

★ストーリーは、復讐仕立てのスリラーとして始まるが、だんだん悲しみの感情とパッションの物語に変わっていく。「プロジェクトは最初からよく考慮され合格点だ。ETAのテロを終わらせ平和と共生を目的に設置された事務局(Secretaria de Paz y Convivencia)も、将来の共生に役立つと喜んでくれている。幸いにテロは終息しつつあるように思える」と監督。

 

★コロナドのスピーチ:私たちは小さな宝石を手にしている。この映画は大胆で非情なストーリーだが、幸運なことに今日、語ることができるようになった。感受性を傷つけないようにしたいが、やはり現れてしまうだろう。しかしそれが重要なのだ。・・・私たちはこのプロジェクトを完成させたいと願っており、絶対できると信じている。多分上手くいくでしょうし、数ヵ月後にはその成果をお見せできると期待しています。

 

★ビルバオ観光局の市議会議員によると、Fuegoの撮影が順調に運ぶようバスクのプロフェッショナルな技術者&アーティストの提供を明確にしており、バスク自治州も本腰を入れての協力体制を組んだようです。来年のサンセバスチャン映画祭が楽しみです。

 

ルイス・マリアスLuis Marias Amando:脚本家・監督・俳優・プロデューサー。脚本家として出発、映画&テレビの脚本多数。なかでホセ・アンヘル・マニャスの同名小説を映画化したサルバドール・ガルシア・ルイスのMensaka1998)の脚色が評価された。監督デビュー作はX2002)とかなり前の作品、Fuegoが第2作になります。TVミニシリーズGernika bajo las bombas2エピソード2012)は、その年のサンセバスチャン映画祭で上映されました。1937426日のゲルニカ爆弾投下をテーマにしたドラマ。
(写真:ゲルニカの出演者、中央がマリアス監督)

 


1Xにはエンリケ・ウルビスの『貸し金庫507』(2002「バスク映画祭2003」で上映)でコロナドと共演したアントニオ・レシネスが主役を演じています。そんな繋がりで出演したのかもしれない。ウルビスは昨年『悪人に平穏なし』で登場、日本でも認知度の高い監督になりました。
(写真:『貸し金庫507』(La caja 507)のジャケ写、手前がレシネス、後方がコロナド)

 


ホセ・コロナドJose Coronadoは、1957年マドリード生れ。つまりフランコ時代の教育を受けて育ったマドリッ子ということです。父親がエンジニアで比較的裕福な家庭環境で育った。大学では最初法学を4年間学んだが卒業できず、次に医学を志すもこれまた2年で挫折した。本人によれば大学を諦めて旅行会社、レストラン、モデル、トランプのギャンブラーなどを転々、要するにプータローをしていたのでしょう。フランコ没後(1975)から約5年間の民主主義移行期というのは何でもアリの混乱期でもあったわけです。

 


賭博師と聞いてエンリケ・ウルビスのLa vida mancha2003)を思い浮かべた人は相当なコロナド・ファンです。半分は地で演っていたのね。映画の世界に入ったきっかけは、「ウィスキーのテレビ・コマーシャルのモデルに誘われ、マジョルカで撮影すると言うし、出演料が破格だったので引き受けた」そうです()。その後30歳になる直前に演技の勉強を始め、キム・デンサラットの第1作“Waka-Waka”(1987)で映画デビューを果たしました。今回どんな映画か検索したら、なんとナント『スパニッシュ・コネクション』という邦題でビデオが発売されているのでした(1989)。それもこれ1作しか撮っていない監督なのでした。

 

ゴヤ賞主演男優賞受賞の『悪人に平穏なし』、『ラスト・デイズ』、『ロスト・ボディ』**など、昨年は3作も公開されました。今回は助監督も務める由、既に50歳も半ばを過ぎて貫禄充分、新作に期待したい。

アレックス&ダビ・パストール兄弟の『ラスト・デイズ』は、「ガウディ賞ノミネーション発表」(2014・1・9)でご紹介済み、**オリオル・パウロの『ロスト・ボディ』は「シッチェス映画祭*ファンタスティック・セレクション2013」で上映されました。これは『悪人に平穏なし』も受賞した「銀のフィルム賞」受賞作品です。