『ノー・エスケープ 自由への国境』*ホナス:キュアロン2017年04月23日 14:46

            トランプのお蔭で公開されることになりました?

 

★トロント映画祭2015の折に原題Desiertoとしてご紹介していた少し古い映画ですが、トランプの壁のお蔭か公開がアナウンスされました。ホナス・キュアロンの長編第2『ノー・エスケープ自由への国境』、キュアロン一家が総出で製作しました。トロント映画祭「スペシャル・プレゼンテーション」部門で国際批評家連盟賞を受賞したこともあって話題になっていた作品。これから公開されること、スリラーであることなどから、比較的詳しい公式サイトから外れないように注意してアップしたいと思います。なかでもキャスト紹介は主役の二人、ガエル・ガルシア・ベルナルとジェフリー・ディーン・モーガンしか紹介されておりませんので若干フォローしておきます。

 

    

                (オリジナル・ポスター)

 

 『ノー・エスケープ 自由への国境』(原題Desierto英題「Border Sniper」)2015

製作:Esperanto Kino / Itaca Films / CG Cinema

監督・脚本・編集・製作者:ホナス・キュアロン

脚本(共):マテオ・ガルシア

音楽:Woodkid、ヨアン・ルモワンヌ

撮影:ダミアン・ガルシア(『グエロス』)

プロダクション・デザイン:アレハンドロ・ガルシア

衣装デザイン:アンドレア・マヌエル

キャスティング:ベヌス・カナニ、他

メイクアップ・ヘアー:ヒメナ・キュアロン(メイク)、エマ・アンヘリカ・カンチョラ(ヘアー)他

製作者:ニコラス・セリス、サンティアゴ・ガルシア・ガルバン、ダビ・リンデ、ガエル・ガルシア・ベルナル(以上エグゼクティブ)、アルフォンソ・キュアロン、カルロス・キュアロン、アレックス・ガルシア、エイリアン・ハーパー、他多数

 

データ:製作国メキシコ=フランス、言語スペイン語・英語、2015年、スリラー・ドラマ、94分(日本88分)、撮影地バハ・カリフォルニア、映倫G12IMD5.9

映画祭・受賞歴:トロント映画祭2015国際批評家連盟賞受賞(スペシャル・プレゼンテーション部門)、ロンドン映画祭201510月)正式出品、(仏)ヴィルールバンヌ・イベロアメリカ映画祭20163月)正式出品、イベロアメリカ・フェニックス賞2016録音賞ノミネーション、以下2016年、ロスアンジェルス(6月)、シッチェス(10月)、オースティン(10月)、ダブリン、リマ(8月)、ハバナ(12月)他、各映画祭正式出品、第89回アカデミー賞メキシコ代表作品(落選)

公開:メキシコ20164月、フランス同4月、米国限定同10月、スペイン限定20171月、香港同1月、ハンガリー同4月、日本同5月、他多数

 

キャスト:ガエル・ガルシア・ベルナル(モイセス)、ジェフリー・ディーン・モーガン(サム)、アロンドラ・イダルゴ(アデラ)、ディエゴ・カタニョ(メチャス)、マルコ・ぺレス(ロボ)、ダビ・ペラルタ・アレオラ(ウリセス)、オスカル・フロレス・ゲレーロ(ラミロ)、エリク・バスケス(コヨーテ)、リュー・テンプル(国境パトロール)、他多数

 

プロット:正規の身分証明書を持たない、武器を持たない、ただリュック一つを携えたモイセスを含む15人のグループが、メキシコとアメリカを隔てる砂漠の国境を徒歩で越えようとしていた。それぞれ愛する家族との再会と新しいチャンスを求めていた。しかし、不運なことに越境者を消すことに生きがいを感じている錯乱した人種差別主義の<監視員>サムに発見されてしまった。不毛の砂漠の中で残忍な狩人の餌食となるのか。星条旗をはためかせたトラックに凶暴な犬トラッカーを乗せたサムは、祖国への侵略者モイセスたちを執拗に追い詰めていく。砂漠は武器を持つ者と持たざる者の戦場と化す。生への執着、生き残るための知恵、意志の強さ、人間としての誇りが、ダミアン・ガルシアの映像美、ヨアン・ルモワンヌの音楽をバックに語られる。  (文責:管理人)

 

            監督は何を語りたかったのか?

 

A: 監督が何を語りたかったのかは、観ていただくしかないが、まず製作のきっかけは10年ほど前に異母弟と一緒にアリゾナを旅行したことだったという。アリゾナ州Tucsonツーソン(トゥーソン)にあるメキシコ領事館に招待され、移民たちに起きている悲劇を生の声で聞いたことが契機だったという。

B: アリゾナ州の人口の37パーセントがヒスパニック系、もともと米墨戦争に負けるまでメキシコ領だった。そのアリゾナ体験から脚本が生まれたわけですね。

 

A: しかし、どう物語っていけばいいのか、なかなか構想がまとまらなかった。既に同じテーマでたくさんの映画が撮られていた。例えばキャリー・フクナガの『闇の列車、光の旅』09Sin nombre」)、ディエゴ・ケマダ=ディエスの『金の鳥籠』13La jaula de oro」)など、それぞれ評価が高かった。しかし、それらとは違った切り口で、もっと根深い何かを描きたかった。

B: 辿りついたのが子供の頃から大好きだった1970年代のハリウッド映画のホラーやスリラーだった。セリフを抑えたカー・アクションの不条理な追跡劇、スピルバーグの『激突!』71)や、リチャード・C・サラフィアンの『バニシング・ポイント』71)を帰国するなり見直した。

 

A: それにアンドレイ・コンチャロフスキーの『暴走機関車』85)も挙げていた。人間狩りというショッピングなテーマを描いた、アーヴィング・ピチェルの『猟奇島』32)、コーネル・ワイルドの『裸のジャングル』66)も無視できなかったと語っている。ダイヤローグを抑えるということでは、ロベール・ブレッソンの『抵抗(レジスタンス)~死刑囚の手記より』56)も参考にしたという。

B: 死刑囚の強い意志は、モイセスの強さに重なります。

 

          ネットにあふれた人種差別主義者のコメントに恐怖する!

 

A: 構想から10年、間には父親の『ゼロ・グラビティ』の脚本を共同執筆、撮影でも一緒だったからいろいろ相談に乗ってもらった。同業の有名人を父に持つのは大変です。「父の存在は重く、時には鬱陶しいこともある」と笑っています。

B: しかし「すごく力になってくれるし、叔父のカルロスも同じだが、私にとって大きなマエストロです」とも。アカデミー賞メキシコ代表作品に選ばれると、500以上のコピーを作りアメリカでの上映を可能にした。最初の16作に残れたのも、このコピーの多さのお蔭です。

 

 

(父アルフォンソ・キュアロンと、『ゼロ・グラビティ』が上映されたサンセバスチャン映画祭)

 

A: それでも「この映画の扉を開けてくれたのはガエル、彼が脚本を気に入ってくれたことだ」ときっぱり語っている。彼への信頼は揺るがない。ワールド・プレミアしたトロント映画祭にも駆けつけてくれ、素晴らしいスピーチをしてくれた。

 

  

  (スピーチをする監督とガエル・ガルシア・ベルナル、第40回トロント映画祭にて)

 

B: トロントでの批評家の反応は正直言ってさまざまだったが、それぞれ主観的なものが多かった。しかし、観客の反応は違った。

A: 苦しそうに椅子にしがみついて一心にスクリーンを観ていた。他人事ではないからね。これはリマでもハバナでも同じだった。しかしYouTubeで予告編が見られるようになると、メキシコから押し寄せる移民に反対する人種差別主義者のコメントで飽和状態になった。「何が言いたいんだよ」など大人しいほうで、なかには「みんな殺っちまえ!」とかあり、「楽天家の私でも、父親になっているのでビビりました」と監督はインタビューで語っていた。

B: トランプにとっては、本作は悪夢なんでしょうか。

 

A: しかし数日経つと、そんな雰囲気は下火になり、自然と収束していったという、当然ですよね。アメリカ公開の20161014日は、大統領選挙3週間前で両陣営とも一触即発だったから、何か起こってもおかしくない状況だった。

B: 星条旗、トラック、ライフル銃、獰猛に訓練された犬、国境沿いで起こる祖国を守るための人間狩り、お膳立てはできていた。

  

 

   (星条旗をはためかせて疾走するトラック、御主人に服従するトラッカー)

 

A: 狙撃者サム役にジェフリー・ディーン・モーガンを選んだ理由は、「彼がもっている強力な外観がパーフェクトだったから。映画の中ではサムの動機の多くを語らせなかったが、彼を念頭に置いて脚本を書いた。あのような人格にしたのが適切かどうかは別にしてね。あとはジェフリーがそれを組み立ててくれたんだ」と監督。

B: 完璧に具現化してくれたわけですね。

 

       

            (サバイバル・ゲームでモイセスを見失うサム)

 

A: 公開前なので後は映画館に足を運んでください。付録としてスタッフ&キャスト紹介を付しておきます。

 

 スタッフ紹介

ホナス・キュアロンJonás Cuarónは、19811128日メキシコシティ生れ、監督、脚本家、編集者・製作者。父親アルフォンソは『ゼロ・グラビティ』(13)のオスカー監督、叔父カルロスも監督、脚本家(『ルドandクルシ』)、製作者エイリアン・ハーパーは監督夫人。家族は神が授けるものだから選べません、というわけで「親の七光り」組です。友人は自分で選ぶ、それで主役にガエル・ガルシア・ベルナルを選びました。長編監督デビュー作Año uña(「Year of the Nail」メキシコ=英=西79分、スペイン語・英語)は、グアダラハラ映画祭2007で上映され高評価だった。父親と脚本を共同執筆した『ゼロ・グラビティ』のスピンオフムービーAningaaq13、米、7分、グリーンランド語、英語)、アニンガーはイヌイットの漁師の名前、サンドラ・ブロックが同じライアン・ストーン博士役でボイス出演している。他短編ドキュメンタリーがある。次回作Z(「El Zorro」)が進行中、ガエル・ガルシア・ベルナルが怪傑ゼロに扮します。 

  

               (本作撮影中のキュアロン監督とガエル・ガルシア・ベルナル)

 

   

(次回作Z」のポスターと主役のガエル・ガルシア・ベルナル) 

 

ダミアン・ガルシアは、1979年メキシコシティ生れ、撮影監督。メキシコシティの映画研修センターとバルセロナのESCACで撮影を学ぶ。2003年広告や多数の短編を手掛け、長編デビューは2006年、アンドレス・レオン・ベッカー&ハビエル・ソラルのMás que a nada en el mundo、アリエル賞の撮影賞にノミネートされた。アルフォンソ・ピネダ・ウジョアのViolanchelo08)、フェリペ・カサレスのChicogrande10)では、再びアリエル賞ノミネート、ハバナやリマでは撮影賞を受賞した。アリエル賞を独り占めした感のあったルイス・エストラーダの『メキシコ地獄の抗争』10、「El infierno」未公開、DVD)ではノミネートに終わった。ルイス・マンドキのLa vida precoz y breve de Sabina Rivas12)もアリエル賞を逃した。モノクロで撮影したアロンソ・ルイスパラシオスのコメディ『グエロス』14、「Güeros」ラテンビート上映)でアリエル賞の他、トライベッカ映画祭の審査員賞を受賞している。最新作にディエゴ・ルナのSr. Pig16)がある。本作上記。オスカー賞を3個も持っているエマニュエル・ルベツキ、ギジェルモ・ナバロ(『パンズ・ラビリンス』)、ロドリゴ・プリエト(『バベル』)の次の世代を代表する撮影監督である。現在はメキシコシティとバルセロナの両市に本拠地をおき、大西洋を行き来して仕事をしている。

バルセロナ大学に1994年付設されたカタルーニャ上級映画学校Escola Superior de Cinema i Audiovisuals de Catalunya の頭文字、バルセロナ派の若手シネアストを輩出している。

 

 

『グエロス』でアリエル賞撮影監督賞(銀賞)のトロフィーを手にしたダミアン・ガルシア

 

 

            (撮影中のダミアン・ガルシア)

 

 キャスト紹介

★出演者のうち、公式サイトに詳しいキャリア紹介のある、ガエル・ガルシア・ベルナル、アメリカ側のスナイパー役ジェフリー・ディーン・モーガンは割愛しますが、悪役サムがしっかり機能していたことが本作の成功の一因だったといえそうです。またスクリーンに少しだけ現れた国境パトロール隊員のリュー・テンプルは、1967年ルイジアナ州生れの俳優。犬のトラッカーは俳優犬ではなく警備の訓練を受けた犬だった由、トラッカーが出てくるとアドレナリンがドクドクの名演技でした。もう一つが2年間にわたって探し回ったという乾いた砂漠の過酷さと美しさだった。主な不法移民役のメキシコ人俳優をご紹介すると、

 

      

            (サムにショットガンを構えるモイセス)

    

ディエゴ・カタニョは、1990年クエルナバカ生れ、フェルナンド・エインビッケのデビュー作『ダック・シーズン』04)や『レイク・タホ』08、東京国際映画祭2008)に出演、ホナス・キュアロンの長編デビュー作Año uña07Year of the Nail」)では、アメリカから休暇でやってきた年上の女性モリーに淡い恋心を抱くティーンエイジャーを演じた。モリーを演じたのがエイリアン・ハーパー2007年、監督と結婚して1児の母。第2作ではプロデューサーとして参加している。他にロドリゴ・プラの話題作「Desierto adentro08)にも出演している。

 

   

                    (ディエゴ・カタニョ、『レイク・タホ』から

  

 

  (エイリアン・ハーパー、Año uña」から

 

マルコ・ぺレスは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『アモーレス・ペロス』99)、マルコ・クロイツパイントナーのTrade07)、クリスチャン・ケラーのグローリア・トレビのビオピックGloria14)では、グロリアのマネジャーに扮した。最後までモイセスと運命を共にするアデラ役のアロンドラ・イダルゴは、本作が長編映画デビュー、テレビドラマに出演している。

 

                    

                  (ケラー監督とマルコ・ぺレス、「Gloria」から)

 

   

(モイセスに助けられながら追跡を逃れるアデラ)

 

   関連記事・管理人覚え

トロント映画祭2015の本作の紹介記事は、コチラ2015925

アロンソ・ルイスパラシオス『グエロス』の紹介記事は、コチラ2014103

ディエゴ・ケマダ=ディエス『金の鳥籠』の紹介記事はコチラ201465

キャリー・フクナガ『闇の列車、光の旅』の紹介記事は、コチラ20131110



『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』*オリオル・パウロ2017年04月14日 15:15

   

            

★長編デビュー作『ロスト・ボディ』(12)に続くオリオル・パウロの第2『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』は、比較的知名度のあるベテランを起用しての密室殺人劇でした。原題Contratiempoの意味は「不慮の出来事、または災難」ですが、「シネ・エスパニョーラ2017では、英題のカタカナ起こしに今流行りの法律用語「悪魔の証明」を副題にしています。二転三転しながらも最後には証明されるのですが、本作も既に内容は紹介済みです。基本データを繰り返しておきますが、映画評論家と一般観客の評価が見事に乖離した作品だったと言えるかもしれません。 

     

         (ホセ・コロナドに演技指導をするオリオル・パウロ監督)

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2016106分、スリラー、撮影地バルセロナ自治州テラサTerrassa、ピレネー山地のVall de Núria映画祭歴:米国ファンタスティック・フェスト(2016923日)、ポートランド映画祭20172月、ベルグラード映画祭20173月、スペイン公開201716日、日本公開同325日、他IMDb評価7.8

 

キャスト:マリオ・カサス(実業家アドリアン・ドリア)、アナ・ワヘネル(弁護士グッドマン/エルビラ)、バルバラ・レニー(ドリアの愛人ラウラ・ビダル、写真家)、ホセ・コロナド(ダニエルの父トマス・ガリード)、フランセスク・オレリャ(ドリアの顧問弁護士フェリックス・レイバ)、パコ・トウス(運転手)、ダビ・セルバス(ブルーノ)、イニィゴ・ガステシ(ダニエル・ガリード)、マネル・ドゥエソ(ミラン刑事)、サン・ジェラモス(ソニア)、ブランカ・マルティネス(グッドマン弁護士)

 

          二転三転、先が読めなかったミステリー・ホラー

 

A: スリラーを集めた「シネ・エスパニョーラ2017」の他作品は、およそ予想した通りの結末を迎えますが、なかで本作は先が読めなかった。というのも筋運びの不自然さが後半にかけて増していったせいです。前作『ロスト・ボディ』より強引でしたから、前作を見ていた観客もあっけにとられたのではありませんか。

B: キャスト欄を注意深く読めば分かりますが、観客は普通、そこまで細かいところに目を通しません。特にキャスト欄に役柄を明記しません。何気ないセリフが伏線になっていましたが、それは結末近くになって分かることです。

A: パウロ監督は、製作者にメルセデス・ガメロ、ミケル・レハルサ、キャストにホセ・コロナドを起用した以外、前作とはがらりと変えてきました。本作ではお気に入りのコロナドを主役級の脇役に仕立てました。

 

  

       (突然失踪した息子を探す執念の父親ガリード、ホセ・コロナド)

 

B: 青年実業家ドリアのマリオ・カサス、いまや売れっ子俳優になって引っ張り凧です。若くして権力と金力を手にしたが頭脳明晰があだになる。いつもの動の演技ではなく静の演技を求められ難しかったのではないか。父親役はもしかして初めてか。

 

   

             (逃げ道を模索するアドリアン・ドリア、マリオ・カサス)

 

A: グッドマン弁護士のアナ・ワヘネル、脇役専門かと思っていた彼女の主役は珍しい。事件の経過より二人の対決場面がこの映画のクライマックスです。対決シーンはまるで舞台を見てるようなもので、舞台女優歴の長いワヘネルの独壇場でした。 

B: 二人はドリアの無実を証明するために対策を練るのですが、互いに嘘をつき合って駆け引きしているので、タイムリミットが目前なのに真実が見えてこない。

 

A: しかし次第に目的の食い違いが観客にも見えてくる。スリラー大好き人間を取り込むには、殺人、不運・偶然、復讐、大混乱は大きな武器になる。本作にはこれがてんこ盛り、右往左往させられたあげく、大騒ぎは不合理な結末を迎える。第一級のスリラーとは言えないのではないか。

 

B: いっぱい食わされたのを面白いとするか、それはないよ、バカにすんなとへそを曲げるか、どっちかになる。監督はヒッチコックの信奉者ということですが、二役ということで『めまい』(58)を想起した観客もいたのでは。

A: 『めまい』へのオマージュというブライアン・デ・パルマの『愛のメモリー』(76)、スペイン映画ファンならネタバレになるかもしれないが、フアン・アントニオ・バルデムの『恐怖の逢びき』(55)、クラシック映画の代表作ですね。脚本はただ複雑にすればいいというわけではなく、騙すにもある一定の論理性がないと納得しない観客が出てくる。それはともかくとしてワヘネルには何か賞を上げたい。

 

B: ドリアの愛人役バルバラ・レニーは相変わらず美しい。クローズアップのシーンにまだまだ耐えられる。ダブル不倫という設定で二人とも薬指に嵌めた指輪を気にしている。

A: アルゼンチン訛りを克服して、今やスペインを代表する女優に成長した。ゴヤ賞2017では、ネリー・レゲラのデビュー作「María (y los demás)」で主演女優賞にノミネートされましたが、アルモドバルの『ジュリエッタ』主役エンマ・スアレスに苦杯を喫した。

 

B: 『マジカル・ガール』で受賞したばかりですからもともと無理だった。3作とも酷い目にあう役ばかりでしたが、昨今の美人はいじめられ役を振られるのが流行なのかな。

A: ワヘネル同様舞台との掛け持ち派、モデルもこなし貪欲に取り組んでいる。最後になるが監督のオリオル・パウロ、期待が大きかっただけに専門家からは厳しい注文が相次いだ。背景に社会問題を取り込んではいるが尻切れトンボになっている。また俳優の演技がどんなに優れていても、ある程度専門家を納得させられないと賞レースに残れない。

B: 評論家と観客の好みが一致するのは滅多にないことですが、前者の評価が平均5つ星満点で1.5、対して後者が10点満点の7.8とかけ離れている。日本の観客には楽しんでもらえたでしょうか。

 

   

         (不運な死を遂げるラウラ・ビダル、バルバラ・レニー)

  

アナ・ワヘネルは、1962年カナリア諸島のラス・パルマス出身、セビーリャの演劇上級学校を出て舞台女優として出発、舞台と並行してテレビドラマに出演、映画デビューは2000年、アチェロ・マニャスのデビュー作El Bolaと遅かった。ラテンビートが始まっていたら絶対上映された映画でした。主人公のフアン・ホセ・バジェスタが子役ながらゴヤ賞新人男優賞を受賞した話題作でした。ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~』(11)の看守役でゴヤ賞助演女優賞を受賞脇役に徹して出演本数多く日本登場も意外と早い。アルベルト・ロドリゲスの『7人のバージン』サンティアゴ・タベルネロの『色彩の中の人生』ラテンビート2006で上映され、翌年同映画祭のダニエル・サンチェス・アレバロの『漆黒のような深い青』で俳優組合助演女優賞を受賞している。他に『バードマン』でオスカーを3個もゲットしたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『ビューティフル』では、バルデム扮する主人公と同じ死者と会話ができる能力の持主になった本作『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』での弁護士役は迫力があり、舞台で培った演技力が活かされている。映画、舞台、テレビの三本立てで活躍している。

 

  

  (「無罪を勝ち取りたいなら真実を話せ」と迫るグッドマン弁護士、アナ・ワヘネル)

 

作品・監督の紹介は、コチラ2017217

ホセ・コロナド紹介記事は、コチラ2014320

バルバラ・レニー紹介記事は、コチラ2015327

  

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』*アドリアン・カエタノ2017年04月09日 16:37

         

「シネ・エスパニョーラ2017で一番面白かったのがイスラエル・アドリアン・カエタノの本作でした。作品・監督紹介は大分前にアップ済みですが、一応基本データを繰り返すと、原題はEl otro hermano(仮題「もう一人の兄弟」)英題は「The Lost Brother」、原作カルロス・ブスケドの小説Bajo este sol tremendoの映画化、製作国アルゼンチン=ウルグアイ=スペイン=フランス合作アルゼンチン映画、言語スペイン語、2017年、スリラー、113分、マイアミ映画祭2017ワールド・プレミア、マラガ映画祭正式出品、アルゼンチン公開330日、日本公開325

 

    

キャスト:ダニエル・エンドレル(ハビエル・セタルティ)、レオナルド・スバラグリア(ドゥアルテ)、アンヘラ・モリーナ(モリーナ先妻マルタ)、アリアン・デベタック(ダニエル・モリナ)、パブロ・セドロン(屑鉄エンソ)、アレハンドラ・フレッチェネル(エバ)、マックス・ベルリネル、ビオレタ・ビダル(銀行出納係)、エラスモ・オリベラ(死体安置所職員)他

 

プロット:長らく音信の途絶えていた母親と弟の死を発端に闇の犯罪組織に否応なく巻き込まれていくセタルティの物語。セタルティは打ちのめされた日々を送っていた。仕事もなく、何の目的も持てず、テレビを見ながらマリファナを吸って引きこもっていた。そんなある日、見知らぬから母親と弟がアルゼンチン北部のラパチトで内縁の夫モリーナから猟銃で殺害されたという知らせがもたらされる。ブエノスアイレスからその寂れた町ラパチトに家族の遺体の埋葬と僅かだが掛けられていた生命保険金を受け取る旅に出発する。ラパチトではドゥアルテと名乗る顔役が彼を待ち受けていた。元軍人で家族殺害したモリナの友人であり遺言執行人もあるという。しかしこの謎めいた男の裏の顔は複雑に入り組んだ町の闇組織を牛耳るボス、誘拐ビジネスで生計を立てているモンスターであった。セタルティは保険金欲しさにずるずると予想もしなかったドゥアルテのワナにはまっていく。

 

        冷血漢が灼熱の太陽のもとで繰り返す悪のメタファーは何か?

 

A: 原題と邦題のタイトルがこれほどかけ離れているのも最近では珍しい。英題「The Lost Brother」のカタカナ起こしのほうがよほどぴったりしている。多義的な「lost」には「otro」の意味はありませんが内容的に優れたタイトルになっています。

B: 邦題は悪すぎ、「キリング・ファミリー」と副題の「殺し合う一家」のどこがどう違うのやら。アドリアン・カエタノ監督(モンテビデオ1969)が邦題を知ったら「?!」でしょうね。

 

A: タイトルは自由に付けていい決まりですが、作品の顔ですからただセンセショーナルだけではいただけない。邦題の悪口は言わない主義ですが、これは残念です。前回の『クローズド・バル~』同様メタファーが多く、アルゼンチン=サッカー王国、マラドーナ、メッシ、タンゴの豆知識だけでは映画のすごさは分かりにくい。少なくとも3万人の行方不明者を出したと言われる軍事独裁政権時代(197683)が背景にあることだけは押さえておきたい。

B: お金目当ての誘拐、地下室監禁、脅しの手口、性的虐待、ディオニソス症候群など、汚職まみれの残酷すぎるアルゼンチン社会のメタファーが分からないと、単なる平凡で陳腐な殺人ごっこにしか見えません。

 

    

      (新しい獲物セタルティの値踏みをするドゥアルテの下卑た笑い顔)

 

A: 小悪党ドゥアルテと行き当たりばったりの人生を送っているセタルティは同世代、生き方は違うように見えるが同じ穴の狢の似た者同士です。彼らは法が機能しなかった独裁政権時代の犠牲者あるいは継承者、いわゆる「道に迷った子供たち」を象徴しています。

B: 「くそったれ」しか学んでこなかった。大体40歳前後に設定されているようです。この世代はきちんとした教育を受けられず、悪事や憎しみを正当化し、裏切りやレイプは当たり前、愛を語ることなど人間のもろさだと思わされて育った特異な世代です。

 

A: 誘拐してきたエバを地下室に監禁して、自分の排泄物を処理するがごとくレイプする。このシーンはかつての独裁政権があちこちに散在していた強制収容所で行っていたことの再現ですね。ラパチトはチャコ州にある実在の町、原作者カルロス・ブスケド1970)はチャコ州の出身、この地方を熟知している。

B: 夏は日差しが強く、埃りの舞い上がる寂れた町でメタボ気味のセタルティは汗まみれになる。この猛暑もメタファーでしょうか。

 

A: 脚本を見せられ即座に出演を決めたダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976、セタルティ役)が、アルゼンチン公開前のインタビューで「監督から体重を増やしてくれと頼まれた」と語っていた(笑)が、家族の埋葬は口実、保険金が目当てでやってきた意志の弱い男が次第に欲に釣られて深入りしていくプロセスが面白い。

B: 初対面からドゥアルテの危険な悪事に気づきながら、かけらだが良心は残っているのに、ずるずると深みにはまっていく。

 

 

  (左から、スバラグリア、監督、メタボが若干解消されたエンドレル、公開前の記者会見)

 

A: 早くブラジルで人生をやり直そうと未来が見えてきたのに弱さが勝つ。彼らのようなアウトサイダーは、民主化されても真面な労働力と見なされない。殺害者モリーナの息子ダニエルもきちんとした教育を受けていないから、ドゥアルテに不信を抱きながらも悪事に手を染めていく。関係を切りたくても、その後の人生設計が思い描けない。

B: 母マルタはスペインからの移住者、モリーナの先妻という設定でした。モリーナは内縁の妻と息子を殺害したあと自殺したことになっているが事実かどうか分からない。邪魔者になって消されたのかもしれない。息子ダニエルは父親の埋葬のさい、幼くして死んだ同名の兄がいたことを初めて知る。

 

A: もう一人の兄弟の存在ですね。長男のクリスチャン・ネームは父親と同じにする仕来りがある。長男は「お前が生まれる前に死んだので、同じ名前を付けた」と母親は説明する。墓碑銘には「19831987」とあり、次男ダニエルが1987年以降に生まれたことを観客は知る。

B: ハビエル・セタルティとダニエル・モリーナに血縁関係はなく異母兄弟でもない。セタルティの母親とモリーナは内縁関係だから法的にも義理の兄弟にはならないわけですね。

 

A: 母親と一緒に殺害された弟の存在をセタルティは知らなかったようで、この弟はモリーナが父親かもしれない。セタルティにももう一人の兄弟がいたことになる。ドゥアルテは「el otro haemano」というセリフを何回か口にした。原題のキイポイントです。ワーキング・タイトルは原作と同じでしたが、最終的に変更したのでした。

B: マルタ役にスペインの大女優アンヘラ・モリーナ(マドリード1955)を起用できたことを監督は幸運だったと語っています。

 

A: 映画の中で唯ひとり人間性をもち続けたいと思っている人間、運命に翻弄されながらも息子ダニエルの更生を願う母親、捨てられながらも元夫を埋葬するという、吐き気を催すような登場人物のなかでは稀有の存在でした。

B: 掃き溜めに鶴、冒頭から薄命が暗示されていた。ダニエル役のアリアン・デベタックは初めて見る俳優ですが、自分の生き方に確信がもてないことが狂暴性に直結するという悪循環を断ち切れない青年を好演していた。センチメンタルで動揺しやすい青年役でした。

 

   

     (長男が眠る墓に夫の遺灰を撒くマルタと息子ダニエル、映画から)

  

        父親のいない孤児たち、アンチヒーローしか登場しない映画

 

A: 軍隊では先輩モリーナから様々なことを教えてもらったという小悪党ドゥアルテを好演したのがレオナルド・スバラグリア(ブエノスアイレス1970)でした。イケメンを卒業してマラガ映画祭2017では、大賞のマラガ賞、本作で銀の男優賞を受賞した。

B: マラガ賞はリカルド・ダリンも貰っていないはず、快挙に近い。軽薄に聞こえる声、薄汚い表情、お喋りだが内容は空っぽ、全てはお金のため、愛など無用の長物、病的なほど残酷なアンチ・ヒーローを体現した。これで女性ファンを大分失いましたが、役者として一皮剥けました。

 

A: ご安心ください。マラガに現れたスバラグリアはにこやかなイケメン、エンドレルもメタボを若干解消してお腹は引っ込んでいました。アンヘラ・モリーナも皺こそ深くなりましたが相変わらず美しい。カエタノ監督は欠席したのか、プレス会見にも姿がなかった。

B: ヒーローが出てこないのがカエタノ作品の特徴ですが、本作のもう一つのカギは移動父親不在です。これはラテンアメリカ文学の特徴の一つですね。

 

    

     (左から、スバラグリア、モリーナ、エンドレル、マラガ映画祭にて)

 

A: ドゥアルテには父親どころか全く家族の姿が見えない。セタルティも故郷トゥクマンを出てからは家族は不在、ダニエルは母子家庭同然だった。さらに誘拐されたエバに夫はなく、つまり電話にボイスで出演するエバの息子にも父はいない。息子には母親を救い出したいという意思がない。セタルティはトゥクマンからブエノスアイレス、さらにラパチトに流れてくる。そして最終目的地はブラジルということでした。

B: 崩壊した家族は崩壊したアルゼンチンをシンボル化しており、かつてセタルティの家族が住んでいた家は、今や廃屋となっている。鉄屑のガラクタ・コレクターの弟の存在も不気味です。

A: ディオニソス症候群らしい弟の存在と、それを買い取る屑鉄商エンソのメタファーは何でしょうか。エンソを演じたパブロ・セドロン(マル・デル・プラタ1958)は、人気テレビドラマで活躍しているベテランのようです。精彩を欠くセタルティを手玉に取る、世故に長けた屑鉄商を飄々と演じていた。

 

      

       (屑鉄商エンソにガラクタの値段交渉をするぱっとしないセタルティ)

 

              

B: トラクターの売却代金を狙われ、ドゥアルテの餌食になるエバを演じたのは、アレハンドラ・フレッチェネルでした。

A 脇役に徹して映画とテレドラで活躍している。今回は猿ぐつわをされている役なのでセリフが少なく難しい役だったと語っている。目で演技ですから、ごまかしが効かない。独裁政権下で地下室に押し込められ犯された多くの犠牲者のメタファーです。パブロ・トラペロの『エル・クラン』15を思い出した観客もいたはずです。

B: あちらの時代背景もポスト軍事独裁時代でしたが、誘拐ビジネスの根は前の軍事独裁政にありました。アルゼンチンの負の遺産はナチス同様、現代でも生き延びています。

 

 

 (左から、エンドレル、監督、デベタック、フレッチェネル、公開前の講演会にて)

 

          フレーミングの取り方、カメラの位置

 

A: カエタノ監督は、いわゆるアルゼンチン・ニューシネマ世代に属している。画面の切り取り方やカメラの位置に拘っていることがよく分かる作品でした。「構図は成り行き任せにしなかった。大変苦労したがその甲斐はあった」と。

B: フレーミングに拘ったレオポルド・トーレ・ニルソン(192478)に捧げられている。

A: 日本では『天使の家』(57)と『MAFIA血の掟』(72)が公開されている。アルゼンチン映画史では避けて通れない監督、脚本家です。

 

   

  (州都レシステンシアの銀行窓口で生命保険料の支払いを待つドゥアルテとセタルティ)

 

B: 原作を損なわずに、しかしかなり自由に映画化したようですが。

A: 読者と観客の違いを考えたということですかね。いずれにしろ小説と映画は別作品です。

 

作品紹介とアドリアン・カエタノのキャリア紹介は、コチラ2017220

レオナルド・スバラグリアのキャリア紹介は、コチラ2017313

アンヘラ・モリーナのキャリア紹介は、コチラ2016728

ダニエル・エンドレルのキャリア紹介は、コチラ2017220

 

『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』*デ・ラ・イグレシア2017年04月04日 21:03

         ドタバタ密室劇はメタファー満載のホラー・コメディ

 

 

            (監督も閉じ込められて出られません)

 

A: 「シネ・エスパニョーラ2017」という、スペイン語をちょっと齧っただけの人でも「?」なタイトルのミニ映画祭、タイトルこそヘンテコですが、スペイン語映画の最新話題作5を纏めて見られる貴重な映画祭でした。ラテンビートと違って字幕は英語版からで不満は残りますが、それを言ったらきりがないと割り切るしかありません。それでも作品それぞれに付いた長たらしい副題は蛇足だと言いたい。

B: スペイン語はまだまだマイナー言語、上映してもらえるだけで感謝したい、邦題になどイチャモンつけてる余裕がない(笑)。新作をこれだけまとめたラインナップはなかなか企画してもらえない。スリラー、アクション・コメディ好きは、そこそこ楽しめたのではないか。 

 

A: まずベルリン映画祭の特別招待作品(コンペティション外)でワールド・プレミアしたアレックス・デ・ラ・イグレシア『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』、ベルリンで監督が「この映画のテーマは思考停止だ」と語っていたように、ドッキリ映画を装いながら、普通の人間が死の恐怖にさらされたらどうなるかを描いている。

B: 前半の15分ほどはシリアス・コメディ・タッチだが、それ以降は笑うに笑えない。登場人物たちは各自現状に不満を抱いているが、そう取りたてて悪人ではない。ところが本当のテキが分からないから、一人の「思考停止」が全員に伝染病のごとく広がってしまう。敵がバルの外にいるだけなのか中にもいるのか分からない。人間のエゴイズムもテーマの一つです。

 

A: スペイン人はチームプレイが得意ではない。デュマの『三銃士』の合言葉じゃないが、「万人は一人のために、一人は万人のために」とはいかない。疑心暗鬼も伝染病のように広がります。恐怖はカビのように増殖する。ちょうど1980年代のエイズ患者バッシングのように、ハグしあった親友同士も「見知らぬ人」と握手も拒んだ。

B: 現在のマドリードのバルが舞台ですが、スペインで過去に起こったこと、また未来に起こりうることでもあり、メタファーの取り方で面白さは変わってくる。

 

         「社会的問題を描くのが第一の目的ではないが・・・」 

 

A: 監督の生れ故郷バスクでは過去に起こったテロ事件、対する国民大衆の無関心などに思いを馳せた観客もいたと思いますね。当時大人たちは、銃声が聞こえてきても関わり合いになりたくないから聞こえなかったことにした。監督によれば「社会的問題を描くのが第一の目的ではないが、背景にそれなくして私の映画は成立しない」と語っている。

B: 一瞬にして無人となった繁華街の不気味さ、国家権力に烏合するメディアの情報操作、謎の狙撃者の狙いは何か、グロテスクを排除しないアレックスの映画手法を堪能できます。

 

A: 作品紹介でも触れたように**、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』スティーヴン・キングの『ミスト』、またはブニュエルの『皆殺しの天使』からヒントを得ている。

B: いわゆる「クローズド・サークル」の代表作品ですね。

A: 特にブニュエル作品では知識階級に属する全員が思考停止になってしまう。知識など役に立たない。誰もいなくなってしまうのか、あるいは誰か残れるのか、チームプレイの不得手な人々の生き残りをかけた椅子取りゲームが後半の見所です。

 

B: スリラー劇ですからネタバレは御法度ですが、主役ブランカ・スアレスの下着姿にくぎ付けになっていると本質を見失います。今後どんな映画が公開されるか分かりませんが、少なくとも来年のゴヤ賞ノミネートは決まりだね。

A: 主役はマリオ・カサスではなさそうですね。際立っていたのがイスラエル役のハイメ・オルドーニェス、襤褸着のなかから現れる筋骨隆々にはびっくりしました。いつでも闘えるように肉体は鍛えておかねばなりませんし、見掛けで人を判断してはいけないという道徳教育の映画でもあります。 

 

  (サディスティックな監督に油まみれの下着姿にさせられたブランカ・スアレス)

 

B: 役に立つ教訓的なお話でもあります。アレックス映画ではお馴染みのセクン・デ・ラ・ロサの言い分には泣けてきます、使用人は常に辛くて弱い立場です。

A: 特に老いてますます盛んなテレレ・パベスのような強権的な雇い主の下で働くのは「一に辛抱、二に忍耐、三四が無くて、五に我慢」です。

 

B: 『グラン・ノーチェ! 最高の大晦日』につづいて出演のカルメン・マチ、頭の回転が速くてどんな役でもこなすカメレオン女優です。

A: エミリオ・アラゴンの『ペーパー・バード幸せの翼にのって』(10)がラテンビートで上映されたとき監督と一緒に来日、気軽に来場者との写真撮影にも応じていました。公開が確実なアルモドバル映画の常連さんでもあるから、ファンも多いほうかもしれない。本作はマラガ映画祭2017のオープニング作品でした。

 

    

  (セクン・デ・ラ・ロサ、マリオ・カサス、ハイメ・オルドーニェス、カルメン・マチ)

  

  *主な出演者紹介*

キャストブランカ・スアレス(客エレナ)、マリオ・カサス(客ナチョ)、セクン・デ・ラ・ロサ(バル店員サトゥル)、ハイメ・オルドーニェス(浮浪者イスラエル)、テレレ・パベス(バル店主アンパロ)、カルメン・マチ(客トリニ)、ホアキン・クリメント(客アンドレス)、アレハンドロ・アワダ(客セルヒオ)他

 

ベルリン映画祭のインタビュー記事は、コチラ2017226

**作品紹介の記事は、コチラ2017122

  

『ベルエポック』が「金の映画」受賞*マラガ映画祭20172017年03月19日 16:35

         フェルナンド・トゥルエバのオスカー受賞作『ベルエポック』

 

 

フェルナンド・トゥルエバのオスカー受賞作『ベルエポック』1992)が「金の映画」に選ばれました。昨年、『美しき虜』(98)の続編La reina de Españaが公開され、ベルリン映画祭2017のベルリナーレ・スペシャル部門で上映されこと、『ベルエポック』も第43回ベルリン映画祭の正式出品、そして節目の25周年にあたることも受賞理由かもしれない。昨年の「金の映画」は、前年20156月に鬼籍入りしたビセンテ・アランダに哀悼の意をこめて、彼の代表作『アマンテス/ 愛人』が受賞しているからです。

 

 

★『ベルエポック』は、ホセ・ルイス・ガルシの『黄昏の恋』以来10年ぶりに、スペインに2個目のオスカー像をもたらした。もはや古典映画入りしているが、その活力あふれた、魅力的な語り口で内戦勃発5年前の「ベルエポック」良き時代を語りながら、時として悲劇をも入り込ませている。シュルレアリスムでメランコリックでさえある。本作でトゥルエバは自身の自画像を描いたと評されたが、例えば美に対する厚い尊敬の念、人間の知恵、喜び、寛容さ、そして自由意志である。価値ある生き方とは何か、彼が考えている愛国心が何であるかを語った作品です。

 

  

 (オスカー像を手にした製作者アンドレス・ビセンテ・ゴメスとフェルナンド・トゥルエバ)

  

★長編第5作『目覚めの年』(86)で初めてコンビを組んだ、名脚本家ラファエル・アスコナは既に鬼籍入りしており、そのほかにもフェルナンド・フェルナン・ゴメス、アグスティン・ゴンサレスやチュス・ランプレアベなどの名優たちが旅立った。当時若さにあふれていた脱走兵ホルヘ・サンス、ペネロペ・クルス(四女)、アリアドナ・ヒル(次女)などは実人生では父親や母親になり、マリベル・ベルドゥ(三女)はドラマやコメディに出ずっぱり、ミリアム・ディアス・アロカ(長女)はテレドラ出演と、各自キャリアを積んでトゥルエバが予測した通りの活躍をしている。

 

        

       (美しい4人姉妹に囲まれて幸せいっぱいの脱走兵ホルヘ・サンス)

 

『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』12)がラテンビート2013で上映されたとき初の来日を果たしている。2015年の国民賞(映画部門)受賞の折に紹介記事を書いております。ビリー・ワイルダーを映画の神様と尊敬して、オスカー受賞スピーチで「ミスター・ワイルダー、ありがとう」と述べ、後日「もしもし、こちらは神様です」とお茶目な神様からお祝いの電話をもらった。スペインではガルシア・ベルランガを師と仰ぎ、彼の「Plácido」(61)と『死刑執行人』(63)をスペイン映画2大傑作と語っている。ベルランガとトゥルエバの共通項は脚本家のラファエル・アスコナとタッグを組んだことでしょう。

 

★今年のベルリン映画祭のインタビューでも語っていたことですが、「大切なのは物語を語ること、自分にとって映画を作れることはそれぞれ奇跡に近いのです。それで感謝するのは、特に私のプロデューサー、クリスティナ・ウエテです。年がら年中彼女と格闘しています」。クリスティナ・ウエテとは監督夫人のこと、夫唱婦随の反対とか(笑)。

 

『ふたりのアトリエ~』のラテンビートQ&Aの記事は、コチラ20131031

国民賞(映画部門)受賞とフィルモグラフィーの記事は、コチラ2015717

La reina de España」の記事は、コチラ2016228


『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年03月04日 17:52

         スペイン本国より一足先に日本で公開される!

 

イニャキ・ドロンソロの長編第2『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』のスペイン公開は428日と日本より1か月先になります。劇場公開は早くて半年後か1年後が常識のスペイン映画が、期間限定とはいえ本国より先とは前代未聞ではないか。201510月にバスク自治州ビスカヤ県の県都ビルバオでクランクインした。イバニェス通りに面したビスカヤ地方評議会都市開発省本部をスイス・クレジット銀行に早変わりさせて、マドリード警察犯罪捜査部の突入シーンで撮影を開始した。交通制限をしての撮影はマドリードでは不可能、ましてや小規模ながら交通量の多い街中で火災を起こすなどもっての外、ビルバオでも撮影時間の制限を受け大勢のヤジウマに取り巻かれての撮影だったようです。 


     

   

 『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』(原題「Plan de fuga」、英題「Escape Plan」)

製作:Atresmedia Cine / Euskal Irrati Telebista(EiTB) / Lazonafilms / Scape Plan

監督・脚本:イニャキ・ドロンソロ

撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン

音楽:パスカル・ゲイニュ

美術:セラフィン・ゴンサレス

プロダクション・デザイン:アントン・ラグナ

衣装デザイン:クララ・ビルバオ

メイクアップ:ナチョ・ディアス、ラケル・アルバレス(特殊メイクアップ)、

       セルヒオ・ぺレス、カルメレ・ソレル(メイクアップ)

製作者:ゴンサロ・サラサル=シンプソン(エグゼクティブ)、ダビ・ナランホ

 

データ:スペイン、スペイン語、2017年、アクション・スリラー、105分、撮影地バスク州ビルバオとマドリードの数か所、撮影期間20151012日より約8週間、配給元ワーナー・ブラザース・ピクチャー・スペイン、スペイン公開2017428日、日本公開325

 

キャスト:アライン・エルナンデス(ビクトル)、ルイス・トサール(警察犯罪捜査官リーダー)、ハビエル・グティエレス(ラピド)、アルバ・ガローチャ、フロリン・オプリテスク(ダミール)、イスラエル・エレハルデ(弁護士)、イツィアル・アティエンサ(マルタ)、エバ・マルティン(経済犯罪係官)、マリオ・デ・ラ・ロサ(消防士)、トマス・デル・エステ、ペレ・ブラソ(尋問官)、ほか

 

プロット:金庫破りのプロフェショナル、ビクトルの物語。ヨーロッパ旧共産圏の元軍人たちで概ね組織された犯罪グループは、仲間の一人を失って活動休止に陥っていた。銀行に押し入り金庫室を掘削機で穴を開けるには、どうしてもプロをリクルートする必要があった。こうして一匹狼のビクトルに白羽の矢が立ち、彼も合流する決心をする。しかし何者かの通報で強盗一味は一網打尽に逮捕されてしまった。事件はあっけなく終わったかに見えたが、ビクトルが請け負ったミッション、金庫室の穴開け作業は開始されることになるだろう。ビクトルの本当の狙い、警察犯罪捜査部の本当の狙いとは果たして何だったのか。ここから本当のドラマが始まる。「罠に落ちるのは誰か?」「結末はどうなるか?」何人も100パーセント安全なものはいない。

 

     

             (ビルバオでの撮影初日、20151012日)

 

★最近日本で公開される映画でルイス・トサールほど出演本数が多い俳優はいないのではないか。公開が始まったダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』、キケ・マイジョの『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「シネ・エスパニョーラ2017」上映)、ダニ・デ・ラ・トーレの『暴走車 ランナウェイ・カー』、ダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』、少し古いがイシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』10)などです。1999年、同監督の『花嫁のきた村』の主役で登場以来、『テイク・マイ・アイズ』など、誠実だが不器用にしか生きられない屈折した男を好演してきた。転機が訪れたのは声帯をつぶし肉体改造をしてまで取り組んだ、ダニエル・モンソンの『プリズン21109)のマラ・マドレ役だったと思う。「こういうトサールを見たかった」と興奮したのを思い起こします。役者になることを反対し続けてきた父親から「やっと認めてもらえた」と彼も当時インタヴューで語っていた。しかしこの成功が役柄のマンネリ化をきたしているのではないかと個人的には危惧しています。

 

  

            (指揮を執るルイス・トサール、映画から)

 

★主役ビクトル役のアライン・エルナンデスは、1975年バルセロナ生れ、ということでカタルーニャ語とのバイリンガル、2007年、舞台俳優として出発、同時にTVシリーズドラマ「La Riera」(1521話)、「Mar de plástico」(151614話)などで演技の実績を積んでいる。代表作はフェルナンド・ゴンサレス・モリナのPalmeras en la nieve15)、これは2015年暮れに公開され翌年ブレイクして2016年興行成績がフアン・アントニオ・バヨナの新作『ア・モンスター・コールズ』(6月公開予定)についで第2位となったヒット作。主役はマリオ・カサスとアドリアナ・ウガルテ、彼は準主役を演じた。ゴヤ賞2017新人監督賞ノミネートのマルク・クレウエトのEl rey tuerto16)では、機動隊所属の警察官に扮した。エミリオ・マルティネス=ラサロのOcho apellidos catalanes15)にも少しだけ顔を出していた。『ホテル・ルワンダ』の英監督テリー・ジョージの「The Promise」(16)にも出演しているが目下は未公開、つまり日本初登場ということになるのでしょうか。

 

   

      (金庫室の穴開けのヘルメット姿のアライン・エルナンデス、映画から)

 

★ラピド役のハビエル・グティエレスについてはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』やイシアル・ボリャインのThe Olive Treeご紹介済み、彼も『暴走車 ランナウェイ・カー』で出番は少なかったが存在感を示した。アルバ・ガローチャは、1990年サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラー』やマリア・リポルの新作No culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas16)に出演、これはゴヤ賞2017で衣装デザイン賞にノミネートされていた作品。弁護士役のイスラエル・エレハルデ『マジカル・ガール』で既に登場、バルバラ・レニーの現恋人、演技には定評があります。かなり期待していいキャスト陣です。尚キャスト、スタッフの人名表記は公式サイトと若干異なります。当ブログではスペイン語に近い発音を採用しています。

 

   

        (アラン・エルナンデスとハビエル・グティエレス、映画から)

 

   監督キャリア&フィルモグラフィ紹介

イニャキ・ドロンソロIñaki Dorronsoro は、1969年バスク自治州ビトリア生れ、監督、脚本家。スリラーEl ojos del fotógrafo9350分)でデビュー、本作を長編とするか中編とするかで数え方が変わる。当ブログでは次回作La distancia06)を第1回作品としています。ジャンルはスリラー、サンセバスチャン、グアダラハラ、トゥールーズ・シネエスパーニャ、カルロヴィ・ヴァリー、コペンハーゲン、各映画祭に出品、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(トゥールーズ・シネエスパーニャ映画祭新人男優賞受賞)、ホセ・コロナド、フェデリコ・ルッピ、リュイス・オマールなどが共演している。グアダラハラ映画祭ではダニエル・アランジョが撮影賞を受賞した。10年ぶりに『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』を撮った。TVドラも手掛けている。 

(撮影中のイニャキ・ドロンソロ監督)

  

(休憩中の監督とルイス・トサール)

 

デ・ラ・イグレシア、新作ホラー・コメディを語る*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年02月26日 18:06

       「信用できる唯一の武器は笑いである」とアレックス

 

★ベルリン映画祭も閉幕しました。アレックス・デ・ラ・イグレシアの新作『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』はコンペティション外でしたから賞には絡みませんでしたが、監督はベルリン入りしてプロモーション活動に努めました。スリラーなのかホラーなのか、またはその両方なのか分かりませんが、「死の恐怖」についてのかなりシリアスなコメディ群集劇であるようです。彼はデビュー作以来オーディオビジュアルの致命的な退屈に反旗を翻して終わりなき闘いを続けています。ベルリン映画祭の後、第20マラガ映画祭317日~26日)のオープニング上映が内定しています(ベルリンと同じコンペティション外)。スペイン公開は324日、これは「シネ・エスパニョーラ2017と時差を考えると同日になります。マラガ映画祭については後日大枠をアップいたします。ベルリンの第1回作品賞受賞のカルラ・シモンVerano 1993はセクション・オフィシャルでジャスミン賞を狙います。

 

  

  (エレガントな黒の背広姿のアレックス・デ・ラ・イグレシア、ベルリンFF 211日)

 

1965年ビルバオ生れの監督は、子供時代に一度もサッカーボールを蹴ったことがなかったという変り種、社会学教授の父親、肖像画家で活動的な母親のもと自由で国家主義的でない家庭環境のなかで育った。政治的な不安は感じなかったが、街路での小競り合いや警官の銃声のなかで、つまりテロリストたちと隣り合って暮らしていた。当時のバスクの流行語は「何かあったのだろう」という一言、何が起ころうとも誰かがそう話すことで終わりだった。フランコ体制が名目上終わるのは10年後の1975年末のこと、しかし同じような思考停止は今でも続いていると監督。

 

★監督によれば、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』やスティーヴン・キングの『ミスト』、または『皆殺しの天使』からヒントを得ている。「ブニュエルの『皆殺しの天使』は、形而上学的な結末になる。知識などはどこかへ行ってしまって、閉じ込められて抜け出せないという苦痛だけを話し合っている。自分を取り巻く現実を前にして思考停止に陥ってしまっている。現実というのは時には殻のようなもので中身がよく分からない。私たちが度々経験するショーウィンドー越しの商品と同じです」と。登場人物が監禁される場所は、アガサ・クリスティーのは離れ小島、スティーヴン・キングはスーパーマーケット、ブニュエルのは或るブルジョワジーの大邸宅の居間、いわゆる「クローズド・サークル」の代表作品と言われる。邦題が「クローズド・バル」となった延線上には、これがあったかもしれない。

 

★本作ではマドリードのバルが舞台になった。どうしてバルにしたのか、バルは監督にとってどんな意味をもつのか。彼と脚本家のホルヘ・ゲリカエチェバリアは、毎朝9時にマドリードの「エル・パレンティノ」というバルで朝食を摂りながら執筆している。「バルは他人と一緒に居心地のいい時間を過ごせる空間でもあるが、反対に突然人を怯えさせるようなことが起こる場所でもある。隣に座っている客が暗殺者である可能性もあるし、反対に自分が抱えている問題を解決してくれる人かもしれない。あるとき、浮浪者入ってきて、店の女主人が平手打ちを食わせるまで皆を罵りはじめた。一人の客が『何か食べるものを与えるべきだった』と言うと、彼女は『そうしたくなった人に与える』と応酬した。そして彼にコーヒーをついだ。それでみんな黙り込んで固まってしまった」のがアイディアの発端だったそうです。映画にも浮浪者が登場する。

 

  

 

 

 (バルに監禁状態になったマリオ・カサス、ブランカ・スアレス、カルメン・マチ、他)

 

★「現実逃避は映画人として死を意味します。それぞれみんな頭の中に手本があるが、一歩家を出たら身体的強さをもたねばならない」とも。「私たちが暮らしている社会は恐怖が支配しているが、これは現実でなく悪い夢を見ているんだ、と思いたい。しかし実際は悪夢でなく現実、あるとき人生は突然ひっくり返る」と。諺にあるように「男(女も)は敷居を跨げば七人の敵あり」というわけです。「社会的問題を描くのが第一の目的ではないが、背景にそれなくして私の映画は成立しない。私を不安にさせる密室に登場人物を閉じ込める話は魅力的、現実には起こらないことを通して真実を浮き上がらせたい」と。人間は憎しみで出来上がっている。グロテスクを排除せず、死の恐怖、本能的な衝動、アイデンティティについて語ったホラー・コメディ。

 

★既に次回作Perfectos desconocidosの撮影も終了して今年公開が決定しているようです。イタリア映画『おとなの事情』(2016、パオロ・ジェノベーゼ)のリメイク。イタリアのアカデミー賞ドナテッロ賞を受賞した話題作、間もなく3月公開されます。イネス・パリスの悲喜劇「La noche que tu madre mató a mi padre」(16、マラガ映画祭正式出品)でコメディ女優としての力量を発揮したベレン・ルエダ、『スモーク・アンド・ミラー』のエドゥアルド・フェルナンデス、他にエドゥアルド・ノリエガペポン・ニエトエルネスト・アルテリオダフネ・フェルナンデスフアナ・アコスタなど7人の芸達者が顔を揃えている。ちなみに「La noche que tu madre mató a mi padre」では、ルエダとフェルナンデスは息の合った夫婦役を演じていた。ペポン・ニエト以外はデ・ラ・イグレシア作品は初めての出演かもしれない。こちらはラテンビートに間に合うだろうか。

   

   

                    (監督を挟んで7人の出演者たち)

 

 

 (演技を指導中の監督とベレン・ルエダ)

 

イネス・パリスの悲喜劇の紹介記事は、コチラ2016425

  

『キリング・ファミリー』アドリアン・カエタノ*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年02月20日 15:10

       『キリング・ファミリー 殺し合う一家』は犯罪小説の映画化

 

325日から2週間限定で開催される「シネ・エスパニョーラ20175作品の一つ、アドリアン・カエタノ『キリング・ファミリー 殺し合う一家』のご紹介。前回アドリアン・カエタノ映画はオール未公開と書きましたが、未公開には違いないのですが、2013年の前作「Mala」が『イーヴィル・キラー』の邦題でDVD発売(20139月)されておりました。本作の原題「El otro hermano」が『キリング・ファミリー 殺し合う一家』と、いささかセンセーショナルな邦題になった遠因かもしれません。新作はアルゼンチンの作家カルロス・ブスケドの小説Bajo este sol tremendoに着想を得て映画化されたもの。

 

 

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』(「El otro hermano」英題「The Lost Brother」)2017

製作:Rizoma Films(アルゼンチン) / Oriental Films(ウルグアイ) / MOD Producciones(西) / Gloria Films()    協賛:Programa Ibermedia/ INCAA / ICAU / ICAA

監督・脚本:イスラエル・アドリアン・カエタノ

脚本():ノラ・Mazzitelli(マッツィテッリ?) 原作:カルロス・ブスケド

撮影:フリアン・アペステギア

音楽:イバン・Wyszogrod

編集:パブロ・バルビエリ・カレラ

製作者:ナターシャ・セルビ、エルナン・ムサルッピ

 

データアルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス合作、スペイン語、2017年、犯罪スリラー、113分、撮影地:サン・アントニオ・デ・アレコ(ブエノスアイレス)、ラパチト(アルゼンチン北部のチャコ州)など、撮影は2016125日から311日の約7週間、これから開催される第34マイアミ映画祭2017がワールド・プレミア、第20マラガ映画祭2017の正式出品が決定しています。

 

キャスト:ダニエル・エンドレル(ハビエル・セタルティ)、レオナルド・スバラグリア(ドゥアルテ)、アンヘラ・モリーナ(マルタ・モリナ)、パブロ・セドロン(古物商)、アリアン・デベタック(ダニエル・モリナ)、アレハンドラ・フレッチェネル(エバ)、マックス・ベルリネル、ビオレタ・ビダル(銀行出納係)、エラスモ・オリベラ(死体安置所職員)他

 

プロット・解説ラパチトで暮らしていた母親と弟エミリオの死を機に闇の犯罪組織に否応なく巻き込まれていくセタルティの物語。セタルティは打ちのめされた日々を送っていた。仕事もなく、何の目的も持てず、テレビを見ながらマリファナを吸って引きこもっていた。そんなある日、見知らぬ人から母親と弟が猟銃で殺害されたという情報がもたらされる。ブエノスアイレスからアルゼンチン北部の寂れた町ラパチトに、家族の遺体の埋葬と僅かだが掛けられていた生命保険金を受け取る旅に出発する。そこではドゥアルテと名乗る町の顔役が彼を待ち受けていた。元軍人で家族の殺害者モリナの友人で遺言執行人もあるという。しかしドゥアルテの裏の顔はこの複雑に入り組んだ町の闇組織を牛耳るボス、誘拐ビジネスを手掛けるモンスターであった。セタルティは次第に思いもしなかったドゥアルテのワナにはまっていく。

 

   

        (ドゥアルテ役のスバラグリアとセタルティ役のエンドレル)

 

★まだワールド・プレミアしていないせいか、現段階ではプロットが日本語公式サイトとスペイン語版にかなりの齟齬が生じています。映画化の段階で変更したとも考えられます。監督が小説にインスピレーションを受けて映画化したと語っているので、映画化の段階で変更したとも考えられます。プロットも映画のほうが複雑になっています。原作と映画は別作品ですから人名やプロットの変更は問題なしと思います。

 

  

              (ダニエル・エンドレル、映画から)

 

本作クランクイン時のインタビューで「登場人物の行動を裁く意図はなく、むしろアウトサイダー的な生き方しかできない彼らに寄り添いながら旅をして支えていく、そういう彼らの紆余曲折を語りたい。そうすることが政治的な不正や反逆の方向転換になると考えるから」と語っている。存在の空虚さ、責任感のなさ、拷問についての政治的な倫理観の欠如、これらは過去の監督作品Un oso rojo『イーヴィル・キラー』の通底に流れるテーマと言えます。

 

 

             (フリオ・チャベスが好演したUn oso rojoのポスター)

 

イスラエル・アドリアン・カエタノIsrael Adorián Caetanoは、1969年モンテビデオ生れのウルグアイの監督、脚本家。ウルグアイは小国でマーケットが狭く主にアルゼンチンで映画を撮っている。デビュー作Bolivia01)がカンヌやロッテルダム映画祭で高評価を受け、その後Un oso rojo02A Red Bear)、Crónica de una fuga06Chronical of an Escapa)、Francia09Mala13、英題「Evil Woman『イーヴィル・キラー』DVDなどの問題作を撮っている。その他、短編、長編ドキュメンタリー、シリーズTVドラなどで活躍している実力者。

 

    

                      (イスラエル・アドリアン・カエタノ監督)

 

 

(本作撮影中の監督とダニエル・エンドレル)

 

原作者カルロス・ブスケドは、1970年チャコ州のロケ・サエンス・ペニャ生れ、現在はブエノスアイレス在住。小説執筆の他、ラジオ番組、雑誌「El Ojo con Dientes」に寄稿している。

 

   

               (原作者カルロス・ブスケド)

 

キャスト陣、ドゥアルテ役のレオナルド・スバラグリアは、1970年ブエノスアイレス生れ、エクトル・オリヴェラの『ナイト・オブ・ペンシルズ』(86)でデビュー、TVドラで活躍後、1998年スペインに渡り活躍の場をスペインに移す。マルセロ・ピニェイロの『炎のレクイエム』(00)、フアン・カルロス・フレスナディジョの『10億分の1の男』(01)、ビセンテ・アランダの『カルメン』(03)のホセ役、マリア・リポルの『ユートピア』(03)など、スペイン映画出演も多い。最近ヒットしたダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(14)の第3話「エンスト」でクレージーなセールスマンを演じてファンを喜ばせた。

『人生スイッチ』やキャリア紹介は、コチラ2015729

 

  

                      (レオナルド・スバラグリア、映画から)   

 

★母親役アンヘラ・モリーナはパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』の祖母役、アルモドバルの『抱擁のかけら』の母親役、細い体にもかかわらず5人の子だくさんは女優として珍しい。海外作品の出演も多く、昨2016年の国民賞(映画部門)を受賞した。仕事と家庭を両立させていることが、ペネロペ・クルスのような若手女優からも「将来なりたい女優」として尊敬されている。

アンヘラ・モリーナの紹介記事は、コチラ2016728

 

  

      (最近のアンヘラ・モリーナ)

 

★当ブログ初登場のダニエル・エンドレルは、1976年モンテビデオ生れのウルグアイの俳優、監督、脚本家、製作者。本作のカエタノ監督同様アルゼンチンで活躍している。2000年、ダニエル・ブルマンのいわゆる「アリエル三部作」の主人公アリエル役でデビュー。第一部『救世主を待ちながら』は東京国際映画祭で特別上映され、2004年、第二部僕と未来とブエノスアイレスは、ベルリン映画祭の審査員賞グランプリ(銀熊)、クラリン賞(脚本)、カタルーニャのリェイダ・ラテンアメリカ映画祭では作品・監督・脚本の3を独占した。第三部Derecho de familia06)は未公開、今作ではかつてのアリエル青年も結婚した父親役を演じた。公開作品ではパブロ・ストール&フアン・パブロ・レベージャのウルグアイ映画『ウイスキー』04)にも脇役で出演、両監督の25 Wattsでも主役を演じた。

 

 

    (邦題僕と未来とブエノスアイレス』と訳された「El abrazo partido」のポスター

 

  

(父親役を演じたアリエル、Derecho de familia」の一場面

 

『インビジブル・ゲスト』オリオル・パウロ*「シネ・エスパニョーラ2017」」2017年02月17日 14:04

       『ロスト・ボディ』オリオル・パウロ2作目、早くも劇場公開!

  

325日から始まる「シネ・エスパニョーラ2017の上映作品の一つ『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』のご紹介。先日ベルリン映画祭に出品されるアレックス・デ・ラ・イグレシアの新作をご紹介ついでに、「こちらは公開されるかもしれない」と予想した通りになりました。こちらとは本作のこと、スペイン公開が16日、まだDVD発売もクローズ期間中に公開されるとは思いませんでした。現在デ・ラ・イグレシア監督のお気に入りマリオ・カサスがやり手の実業家アドリアン・ドリアを演じる。彼は愛人殺害の容疑者として突然逮捕される。その愛人ラウラにバルバラ・レニー『マジカル・ガール』)、息子の復讐に燃える父親にホセ・コロナド『悪人に平穏なし』『スモーク・アンド・ミラー』)、重要人物の辣腕弁護士ビルジニア・グッドマンにベテランのアナ・ワヘネル『ビューティフル』『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』)という申し分のないキャスト陣で展開されます。

 

 

 

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』Contratiempo 英題 The Invisible Guest2016

製作:Atresmedia Cine / Think Studio / Nostromo Pictures / TV3 Films / ICAA / Movister / ほか

監督・脚本:オリオル・パウロ

撮影:ハビ・ヒメネス(『アレクサンドリア』Palmeras en la nieves

音楽:フェルナンド・ベラスケス(『インポッシブル』Gernika

編集:ジャウマ・マルティ(『インポッシブル』Un monstruo viene a verme

美術:エバ・トーレス

衣装デザイン:ミゲル・セルベラ

メイクアップ&ヘアー:ルベン・マルモル

製作者:ソフィア・ファブレガス(エグゼクティブ)、メルセデス・ガメロ、サンドラ・エルミダ、アドリアン・ゲーラ、他多数

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2016106分、スリラー、製作費約400万ユーロ、撮影地バルセロナ自治州テラサTerrassa、ピレネー山地のVall de Núria、期間201512月ほか、配給元ワーナー・ブラザース・ピクチャー・スペイン。米国ファンタスティック・フェスト(2016923日)、ポートランド映画祭20172月、ベルグラード映画祭20173月、スペイン公開201716日、日本公開同325日、他

 

キャスト:マリオ・カサス(実業家アドリアン・ドリア)、アナ・ワヘネル(弁護士ビルジニア・グッドマン/エルビラ)、バルバラ・レニー(ドリアの愛人ラウラ・ビダル、写真家)、ホセ・コロナド(ダニエルの父トマス・ガリード)、フランセスク・オレリャ(ドリアの顧問弁護士フェリックス・レイバ)、パコ・トウス(運転手)、ダビ・セルバス(ブルーノ)、イニィゴ・ガステシ(ダニエル・ガリード)、マネル・ドゥエソ(ミラン刑事)他

 

物語:突然災難に見舞われるハイテク企業の経営者アドリアン・ドリアの物語。アドリアンは山岳ホテルの部屋に踏み込まれた警察によって目覚める。傍らには愛人ラウラの死体があり、ラウラ殺害容疑者として逮捕される。彼は辣腕弁護士ビルジニア・グッドマンを雇い入れることを決心する。二人は無実を証明するべく事件解明に着手するが、彼は昨晩のことをよく思い出せない。どうしても刑務所への収監を逃れたいアドリアンは、愛人ラウラとの関係、自動車衝突事故によるダニエル・ガリードの死に二人が苦しんでいたことを語った。そこで弁護士は新証人を登場させて混乱させる戦略に出る。ほとんど完成が不可能と思われるジグソーパズルの真実と嘘を嵌めこむことになるだろう。

 

  

 

                                           (アドリアン・ドリア役のマリオ・カサス)

 

 

(ラウラ・ビダル役のバルバラ・レニー)

  

 

             (グッドマン弁護士役のアナ・ワヘネル)

 

 

                    (ダニエル・ガリードの父親役のホセ・コロナド)

 

 

(マリオ・カサスとバルバラ・レニー)

 

オリオル・パウロOriol Pauloは、1975年バルセロナ生れ、監督、脚本家。1998年「McGuffin」で短編デビュー、カタルーニャTVのドラマ・シリーズ「El cor de la ciutat」(カタルーニャ語20040970エピソード)を執筆して脚本家として経験を積む。2010年ギリェム・モラレスの『ロスト・アイズ』の脚本を監督と共同執筆、2012『ロスト・ボディ』で長編デビュー、ゴヤ賞2013の新人監督賞にノミネートされた。本作が第2作となる。

 

  

         (ホセ・コロナドに演技指導をするオリオル・パウロ監督)

 

★原タイトルの「Contratiempo」の意味は、不慮の出来事、災難のこと、邦題は英語題のカタカナ起こしです(多分字幕は英語訳と思います)。いずれにせよ、フアン・アントニオ・バヨナやアメナバル作品を手掛けているスタッフ陣、スペインでもベテラン中堅若手と実力派で固めたキャスト陣、特に脇役の弁護士フェリックス・レイバ役のフランセスク・オレリャ『ロスト・アイズ』)、ミラン刑事役のマネル・ドゥエソ(『EVAエヴァ』『ロスト・ボディ』)はバルセロナ派のベテランです。デ・ラ・イグレシアの『クローズド・バル~』やキケ・マイジョの『ザ・レイジ~』主演のマリオ・カサス以下は当ブログでも度々登場させています。映画祭上映、公開作品も多いので既にスペイン映画ファンにはお馴染みの面々かと思います。

公式サイトと固有名詞の表記が若干異なりますが、当ブログではスペイン語読みに近い表記でアップしております。


スペイン映画公開作品*2017年前半2017年02月15日 17:45

         かつてのホラーからスリラー&アクション映画へ?

 

2月末から3月にかけて短期間ながら公開されるスペイン映画(11回上映、レイトショーを含む)スリラー2本のご紹介。ヒューマントラストシネマ渋谷、上映スケジュールが変則です。特に『バンクラッシュ』の上映時間は要確認です。

 

『スモーク・アンド・ミラー 1000の顔を持つスパイ』(「El hombre de las mil caras」)

 監督:アルベルト・ロドリゲス(『マーシュランド』)、サスペンス、2016、123

 ヒューマントラストシネマ渋谷、レイトショー2105

 225日(土)~27日(月)、31日(水)~33日(金)、37日(火)

 DVD発売201745

当ブログの主な作品・監督紹介記事は、コチラ2016924

 

 

 

    (左から、ロルダン役のカルロス・サントス、カモエス役のホセ・コロナド)

 

  

 (ロルダンとその妻マルタ・エトゥラ)

 

『バンクラッシュ』(「Cien años de perdón」)スペイン・アルゼンチン・フランス、2016

 監督:ダニエル・カルパルソロ(『インベーダー・ミッション』)、スリラー、96

 ヒューマントラストシネマ渋谷

 228日(火1915)、34日(土1140)、35日(日1520)、36日(月1930)、

 38日(水1930)、39日(木2130)、310日(金1140

 DVD発売201733

当ブログの主な作品・監督紹介記事は、コチラ201673

 

   

 

325日(土)よりシネマート新宿とシネマート心斎橋にて、2週間限定で公開される「シネ・エスパニョーラ2017のご紹介。アレックス・デ・ラ・イグレシアの最新作を含む5本です。『キリング・ファミリー 殺し合う一家』は、アルゼンチン、ウルグアイ他の合作映画、アドリアン・カエタノ監督は1969年モンテビデオ生れのウルグアイの監督、脚本家。デビュー作「Bolivia」(01)がカンヌやロッテルダム映画祭で高評価、その後「Un oso rojo」(02)、「Cronica de una fuga」(06)、「Francia」(09)などすべて未公開ながら問題作を撮っている実力者。新作はカルロス・ブスケドの小説「Bajo este sol tremendo」の映画化、邦題が凄まじいがお薦め作品です。またデ・ラ・イグレシアの新作は今秋のラテンビート上映はなくなりそうですね。

 

上映スケジュール、紹介記事はコチラ

  http://www.albatros-film.com/movie/cineespanola2017/

 

 

『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「Toro」)2016 

 監督:キケ・マイジョ(『EVAエヴァ』)、マラガ映画祭2016コンペティション外上映作品、

 スリラー・アクション、107

当ブログの主な作品・監督紹介記事は、コチラ2016414

 

    

     (ポスター左から、ルイス・トサール、マリオ・カサス、ホセ・サクリスタン)

 

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(「Contratiempo」)2016

 監督:オリオル・パウロ(『ロスト・ボディ』)、サスペンス、106

 

  

 (ポスター左から、ホセ・コロナド、マリオ・カサス、アナ・ワヘネル、バルバラ・レニー)

 

『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』(「Plan de Fuga」)2017

 監督:イニャキ・ドロンソロ、サスペンス・アクション、105

 

 

 (ポスター左から、アライン・エルナンデス、アルバ・ガローチャ、ルイス・トサール、

  ハビエル・グティエレス)

 

『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』(「El bar」)2017

 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア(『スガラムルディの魔女』)、107

 ベルリン映画祭2017コンペティション外上映作品、スリラー群集劇

当ブログの簡単な紹介記事は、コチラ2017122

 

   

        (バルに閉じ込められた8人と中央にデ・ラ・イグレシア監督)

 

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』El otro hermano」、英題The Lost Brother」)、2017

 アルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス合作、マイアミ映画祭2017上映

 監督:イスラエル・アドリアン・カエタノ、犯罪ドラマ、113

 

  

      (ポスター左から、ダニエル・エンドレル、レオナルド・スバラグリア)