「監督週間」にペルー映画*カンヌ映画祭2019 ⑤2019年05月01日 20:21

            メリナ・レオンの「Canción sin nombre」は80年代の実話に基づく

 

    

423日、第51回「監督週間」のノミネーション発表がありました。今年からディレクターがイタリアのパウロ・モレッティに変わりました。ノミネーションも24作と増え、うち16作が長編デビュー作です。スペイン語映画ではペルーのメリナ・レオンのデビュー作Canción sin nombre(「Song Without Name」スイス合作)と、アルゼンチンのアレホ・モギジャンスキイPor el dinero(「For the Maney」)がノミネートされました。共にワールドプレミアです。先ずはレディファーストとして前者からご紹介。「監督週間」のオープニングは515日。

 

        

メリナ・レオンの「Canción sin nombre」は、1988年リマで実際にあった乳児誘拐事件にインスパイアされて製作されました。ペルーの1980年代は、政治経済のみならず社会全体が長い内戦状態でした。この時代を背景にしたペルー映画は数多く、例えばクラウディア・リョサ『悲しみのミルク』09金熊賞受賞作品)や、当ブログ紹介のバチャ・カラベドチノン・ヒガシオンナ監督のPerro guardián14)他、内戦の瑕をテーマにした映画が多い。

Perro guardián」の紹介記事は、コチラ20140904

 

 Canción sin nombre(「Song Without Name」)

製作:Bord Cadre Films / La Vida Misma Films / Mgc Marketing / Torch Films 

監督:メリナ・レオン

脚本:メリナ・レオン、マイケル・ホワイト

編集:マヌエル・バウアー

撮影:インティ・ブリオネス

音楽:パウチ・ササキ

美術:ギセラGisela・ラミレス

録音:オマル・パレハ

キャスティング:ルス・タマヨ

製作者:ティム・ホッブズ、Ori Dav Gratch、メリナ・レオン、ヘスス・ピメンテル

 

データ:製作国ペルー=スイス、言語スペイン語・ケチュア語、スリラードラマ、モノクロ、撮影地ビリャ・エル・サルバドール、リマ中心街、イキトス。2014年長編映画プロジェクト・ナショナル・コンクール優勝、ニューヨークのジェローム基金、グアダラハラ共同マーケット、クラウドファンディングで製作資金を得て製作された。

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2019「監督週間」正式出品、

 

キャスト:パメラ・メンドサ(ヘオルヒナ・コンドリ)、トミー・パラガ(記者ペドロ・カンポス)、ルシオ・ロハス(レオ)、マイコル・エルナンデス(イサ)、ルス・アルマス(マルタ)、他

 

ストーリー1988年アンデス出身のヘオルヒナは、リマのサン・ベニト・クリニックで女の子を出産するが、娘の姿は突如消えてしまい誘拐されたことを知る。必死で探すうちある新聞社のジャーナリストのペドロ・カンポスに出会うことができ、彼は娘の捜索を引き受けてくれる。1980年代のペルーは内戦のさなかで社会はカオス状態であった。実際にリマで起きた乳児誘拐事件にインスパイアされて製作された。

 

      

  

★公式サイトに製作国が「ペルー、スイス」だが、ペルーでの紹介記事では「ペルー、米国、スペイン、メキシコ」、IMDbでは「ベル―、米国」と若干食い違う。メインの制作会社Bord Cadre Films の本社はジュネーブにあり、最近のラテンアメリカ諸国映画に力を注いでいる。クリスティナ・ガジェゴ&チロ・ゲーラ『夏の鳥』、アマ・エスカランテ『触手』、カルロス・レイガーダス『われらの時代』、スペイン映画ではイサ・カンポ&イサキ・ラクエスタ『記憶の行方』など話題作に出資している。

 

★ニューヨークの制作会社 Torch Filmsはドキュメンタリーを得意とし、ドラマではアントニオ・メンデス・エスパルサの『ヒア・アンド・ゼア』などメキシコとの合作映画に出資しており、メインプロデューサーのティム・ホッブズは本作も手掛けている。もう一人のOri Dav Gratchは監督の短編El Paraíso de Liliがニューヨーク映画祭2009で上映されたときに知り合ったプロデューサーで、ホッブズ同様『ヒア・アンド・ゼア』を手掛けている。本作には米国の資金が入っていることは明らかです。ヘスス・ピメンテルはメキシコの製作者、Mgc Marketingはスペイン、La Vida Misma Filmsはメリナ・レオン監督が出資先が見つからないCanción sin nombre」のために2012年に設立した。

 

★監督によると「ヘオルヒナ・コンドリは、貧しい移民で身寄りのない女性だったが、アーティストでファイターだった」と語っている。ヘオルヒナ役のパメラ・メンドサとレオ役のルシオ・ロハスは初出演、ジャーナリスト役のトミー・パラガは「El Paraíso de Lili」、マリアネラ・ベガの短編「Payasos」(0920分)、スペインからはマイコル・エルナンデスが出演、サルバドル・カルボの『1898:スペイン領フィリピン最後の日』、アルバロ・フェルナンデス・アルメロの『迷えるオトナたち』などに出演、マルタ役のルス・アルマスもスペイン女優、オスカル・サントスの『命の相続人』(10)、ホルヘ・ナランホの「Casting」(13)ではマラガ映画祭「銀のビスナガ助演女優賞」をグループで受賞している。

    

          

 (ヘオルヒナ役のパメラ・メンドサと新聞記者役のトミー・パラガ)

 

         

                       (本作撮影中のメリナ・レオン監督)

 

 監督キャリア&フィルモグラフィー

★リマ大学で映画&ビデオを学び、その後2009年ニューヨークのコロンビア大学映画監督科の修士号を取得する。監督、脚本家、製作者、編集者。コロンビア大学卒業後もニューヨークに留まって、アンダーグラウンドのアーティストたちとのコラボ、『エル ELLE』のようなモード雑誌のイベントを手掛けた。リマに戻ってからは、グーグルが支援するユニセフのためのビデオを製作、2012年制作会社「La Vida Misma Films」を設立、長編デビュー作「Canción sin nombre」を製作する。本作で音楽を担当した日系ペルー人パウチ・ササキとの共同監督でShoというドキュメンタリーを企画中。パウチ・ササキは作曲家フィリップ・グラスに師事しているヴァイオリニスト、カーネギー・ホールでの演奏経験をもち来日もしている。現在は主にアメリカで活躍中。前述のバチャ・カラベド&チノン・ヒガシオンナの「Perro guardián」の音楽も手掛けている。

 

(メリナ・レオン監督)

   

    

 (パウチ・ササキとフィリップ・グラス) 

 

Una 45 para los gastos del mesEl Paraíso de LiliConacine(ペルーの文化省主催)によって最優秀短編賞を受賞した。特に後者はニューヨーク映画祭2009に正式出品され受賞歴多数。うちサンパウロ短編映画祭ラテンアメリカ部門で短編賞を受賞している。

 

2000Una 45 para los gastos del mes」短編

2007Girl with a Walkman」短編、監督・脚本・製作

2009El Paraíso de Lili」短編、モノクロ、監督・脚本・製作

2019Canción sin nombre」本作


追加情報『名もなき歌』の邦題で劇場公開になりました。

     東京はユーロスペース、2021年7月31日(土)~

 

ハビエル・バルデム、新作はスピルバーグ製作のTVミニシリーズ2018年10月17日 14:05

         Todos lo saben」の次はTVミニシリーズ「Cortés

 

★去る914日、カンヌ映画祭2018のオープニング作品だったアスガー・ファルハディTodos lo saben(「Everybody Knows」)が、やっとスペインで公開された。オープニングに選ばれたスペイン映画は、過去にはアルモドバルの『バッド・エデュケーション』(04)があります。オスカー賞2冠に輝くイランの監督(『別離』『セールスマン』)、日本でも知名度のあるスペインのエリート俳優+アルゼンチン俳優、おまけに子供誘拐のミステリーとくれば公開は決まりです。日本公開は来年6月になりますが、邦題はエブリバディ・ノウズになるようです。当ブログでは2016年の製作発表段階から記事にしていましたが、カンヌまでなかなかプロットが見えてこなかった。苦悩する母国イランを離れて、独自の視点で映画を撮り続けている監督を無視することはできません。出来はどうあれ百聞は一見に如かずです。

追記:邦題『誰もがそれを知っている』で2019年6月1日公開決定。

Todos lo saben」の作品・キャスト・スタッフ紹介は、コチラ20180508

         

      

(幸せに酔う結婚式のシーンを入れた、スペイン公開のポスター)

   

         

                         (カンヌ映画祭の英語ポスター)

 

スペイン公開日にエルパイスの編集室を訪れたハビエル・バルデムが撮影余話を語ってくれた。

本作のアイデアは、ファルハディ監督が4歳だったお嬢さん連れでスペインを家族旅行したとき、行方不明になっている子供の「尋ね人」の張り紙を見たとき浮かんだという。「私は嫉妬心が強く妬みぶかい。しかし少なくともそのことを自覚している」とバルデムは笑いながら告白。監督が映画を撮りたいと最初にコンタクトをとってきたのは(自分でなく)ペネロペ・クルスだった。自分にオファーがあったのは1か月半後、「とても気分がよかったし、私の自惚れも満たされた」とジョークを飛ばした。

 

      

          (エルパイス紙の編集室で冗談をとばすハビエル・バルデム、2018914日)

 

★バルデムは、監督が準備期間中にスペインに居を移しスペイン語をマスター、完璧なスペイン映画を撮ることに力を注いでいたことを指摘した。監督がクランクイン時に既に「マドリード近郊の、ラ・マンチャの乾いた風土や生粋の村民の、逞しく、親切な、愛すべき気質を理解していた」と、その抜きんでた才能と努力を褒めていた。妹の結婚式に出席するため家族を伴って、ブエノスアイレスから故郷ラ・マンチャに里帰りした女性が払う過去の請求書。踊り好きお祭り好きの村民が披露宴で幸福感に酔いしれているとき誘拐事件が起きる。犯人が隣人であることがはっきりしてくる。一見仲睦まじく見えた共同体の重さは未来永劫に続くのか。時には嘘も方便、共生には必要なんですが。

 

★クルス、バルデムほかの主な共演者は、リカルド・ダリンエドゥアルド・フェルナンデスラモン・バレアバルバラ・レニーインマ・クエスタエルビラ・ミンゲスとエリート演技派が集合している。それぞれがエゴをむき出すこともなく撮影はスムーズだった。それは「各人とも台本を読み込んでいて、人物のつながりをよく理解していたからだ」とバルデムは語っていた。

        

         

 (カンヌ映画祭オープニングに勢揃いしたスタッフとキャスト)

 

               

                (共演中でも仕事を家庭に持ち込まないという賢いカップル)

      

★監督をする可能性についての質問には、「その気はない。多くの俳優が挑戦してることは知ってるが、取り巻く状況を考えると、自分にはきつすぎる。優柔不断な人間だから耐えられないだろう。さしあたっては監督業は考えていない」、特別撮りたいテーマがあるなら別だが、別にないようです。

 

★新しい作品は、スピルバーグ製作のTVミニシリーズCortés4エピソード)でスペインの征服者エルナン・コルテス役。二つの文明の衝突、二人の戦略家、メシカ族アステカ帝国の第9代君主モンテスマとコルテスの遭遇を描く歴史ドラマだそうです。まだ詳細は不明です。スピルバーグの大ファンで『ET.』はスクリーンで24回観た由(!)、「監督は理知的で謙虚、印象深い映画を撮る可能性を秘めている」と絶賛している。


12月公開『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』のご案内2018年10月14日 18:41

        『ビヘイビア』の監督エルネスト・ダラナスの新作「Sergio & Sergei

   

    

★マラガ映画祭2018で作品紹介をしたエルネスト・ダラナス・セラノの新作Sergio & Sergeiが、『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』という長たらしい邦題で121日公開が決定したようです。キューバ=スペイン=米国の合作映画、スペイン語、英語、ロシア語が入り乱れ、ナイナイ尽くしの両国が繰り広げる辛口コメディ。前作の『ビヘイビア』(「Conducta」)はマラガ映画祭2014のラテンアメリカ部門の作品・監督・観客賞などを受賞しましたが、新作はブラジルのグスタボ・ピッツィ『ベンジーニョ』(「Benzinho」)が作品賞「金のビスナガ」を受賞、無冠に終わりました。『ベンジーニョ』ラテンビート2018で上映が決定しています(タイム・テーブルは目下未定)。    

   

 

★キャストは大部分がキューバ人(『ビヘイビア』のキャストが起用されており、セルゲイ役エクトル・ノアス、ウリセス役アルマンド・ミゲル・ゴメス他)、ロシア生まれだがスペインで仕事をしているローランド・ライヤーハノフ、ダブリン生れだが子供のとき家族とカナダに移住、もっぱらアメリカのTVシリーズに出演しているA.J. バックリー、最も異色なのがアメリカのロン・パールマンでしょうね。公式サイトと当ブログの俳優名・役名のカタカナ表記が異なりますが、当たらずとも遠からず、所詮外国語表記には限界がありますから悪しからず。それにしても「セルジオ」というのは何語読みでしょうか。

 

        

             (左から、セルゲイ、セルヒオ、ピーター) 

 

作品&監督キャリア紹介は、コチラ20180412

公開劇場:新宿武蔵野館、20181201日~


ペルラス部門にハイメ・ロサーレス新作*サンセバスチャン映画祭2018 ⑨2018年08月08日 16:01

           3 作ともカンヌ映画祭2018のノミネーション作品です!

    

       

   

★ペルラス(パールズ)部門は、かつてはサバルテギ部門に含まれていたセクションでした。今年はアルゼンチンとの合作、ルイス・オルテガEl Ángelハイメ・ロサーレスPetraと、スペイン人とポーランド人の監督ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・NenowのアニメーションUn día más con vida(ポーランド合作)の3作がエントリーされました。うち「El Ángel」はカンヌ映画祭2018「ある視点」部門に、「Petra」はカンヌ映画祭と同時期に併催される「監督週間」に正式出品された作品で、最後のアニメーションはカンヌのコンペティション外上映でした。「El Ángel」はカンヌで既にアップしておりますので割愛いたしますが、「死の天使」と恐れられた美貌の青年殺人鬼カルロス・ロブレド・プッチのビオピックです。

 

El Ángel(アルゼンチン、スペイン)2018 ルイス・オルテガ

 

    

El Ángel」の記事・監督紹介は、コチラ20180515

 

 

Un día más con vida/Another Day of Life(西、ポーランド)2018 アニメ

 ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・Nenow

 

    

 

       5度目のカンヌに挑戦したハイメ・ロサーレスの新作「Petra

    

 

       

Petra(スペイン、フランス、デンマーク)ハイメ・ロサーレス 2018

キャスト:バルバラ・レニー(ペトラ)、ジョアン・ボテイ(造形芸術家ジャウマ)、マリサ・パレデス(ジャウマの妻マリサ)、アレックス・ブレンデミュール(ジャウマの息子ルカス)、ペトラ・マルティネス(ペトラの母フリア)、カルメ・プラ(テレサ)、オリオル・プラ(パウ)、チェマ・デル・バルコ(フアンホ)、ナタリエ・マドゥエニョ(マルタ)、ほか

 

スタッフ:監督・脚本ハイメ・ロサーレス、共同脚本ミシェル・ガスタンビデ、クララ・ロケ、製作者(エグゼクティブプロデューサー)ホセ・マリア・モラレス、(プロデューサー)アントニオ・チャバリアス、カトリン・ポルス、音楽クリスティアン・エイドネス・アナスン、撮影エレーヌ・ルバール、編集ルシア・カサル、美術ビクトリア・パス・アルバレス、衣装イラチェ・サンス

 

物語:ペトラの父親の素性は彼女には全て秘密にされていた。母親の死をきっかけにペトラは危険な探索に着手する。真相を調べていくうちに、権力をもつ無慈悲な男、著名な造形芸術家ジャウマ、ジャウマの息子ルカスと妻マリサに出会う。次第に登場人物の人生は、ぎりぎりの状況にまで追いこまれ、悪意、家族の秘密、暴力のスパイラルに捻じれこんでいく。運命は希望と贖罪のための窓が開くまで、残酷な筋道を堂々巡りすることだろう。カタルーニャのブルジョア家庭の暗い内面が語られるが、悲劇は避けられるのでしょうか。

 

データ:製作国スペイン(Fresdeval Films / Wanda Visión / Oberón Cinematográfica)、フランス(Balthazar Productions)、デンマーク(Snowglobe Films)、言語スペイン語・カタルーニャ語、2018年、107分、協賛TVETV3Movistar+他。スペイン公開20181019

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2018併催「監督週間」正式出品、サンセバスチャン映画祭2018「ペルラス」部門上映

 

       

             (ペトラ役のバルバラ・レニー)

 

      

        (ペトラとルカス役のアレックス・ブレンデミュール)

 

★「監督週間」では時間切れでご紹介できなかったハイメ・ロサーレスの第6作「Petra」のご紹介。もっぱらカンヌに焦点を合わせているカンヌの常連ハイメ・ロサーレス監督(バルセロナ、1970)だが、サンセバスチャン映画祭2008に長編第3Tiro en la cabezaが正式出品されている。バスク原理主義者によって殺害されたスペインの2人の警察官の物語ということで、カンヌでは拒まれ、サンセバスチャンに持ってきたのだが、こちらでも散々な評価だった。唯一評価したのがフォトグラマス・デ・プラタ作品賞のみでした。自然の音以外音声のない無声映画のような、ドキュメンタリー手法で望遠レンズで撮影された。今作以外はすべてカンヌでワールドプレミアされ、新作「Petra」が5回目のノミネーションだった。

 

★デビュー作Las horas del día03)が「監督週間」に出品され、いきなり国際映画批評家連盟賞を受賞した。ここで主役を演じたのが今回ジャウマの息子ルカスになったアレックス・ブレンデミュールで、15年ぶりに監督と邂逅した。欲に眩んだ造形芸術家ジャウマに扮したジョアン・ボテイは、偶然監督と知り合いリクルートされた自身もアーティスト、カメラの前に立つのは初めてだそうです。女性陣の二人バルバラ・レニーマリサ・パレデスは割愛、ペトラの母親フリアを演じたペトラ・マルティネスは、ロサーレス監督の第2作目『ソリチュード:孤独のかけら』で3人姉妹の母親役をしたベテラン、アルモドバルの『バッド・エデュケーション』でもガエル・ガルシア・ベルナルの母親になった。地味な役柄が多いが存在感のある実力派女優です。

   

国際色豊かなのがスタッフ陣、名前からも分かるように、撮影監督エレーヌ・ルバールはフランスのポンタルリエ生れ(1964)、アニエス・ヴァルダの『アニエスの浜辺』(08)、ヴィム・ヴェンダースの『Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』(11)、アリーチェ・ロルヴァケルの『夏をゆく人々』(14)などの美しい映像は今でも心に残っている。音楽のクリスティアン・エイドネス・アナスンはデンマーク出身、高い評価を受けたパウェウ・パヴリコフスキの『イーダ』(13)やアマンダ・シェーネルの『サーミの血』(16)などを手掛け、国境を超えて活躍している。監督キャリア紹介は以下にまとめてあります。

  

2作目La soledad」(『ソリチュード:孤独のかけら』)紹介は、

   コチラ20131108

5作目Hermosa juventud」と監督紹介記事は、

  コチラ20140504同年0526

 

     

(マリサ役マリサ・パレデスとジャウマ役ジョアン・ボテイ)

      

 

            (監督を挟んで撮影中のマリサ・パレデスとバルバラ・レニー)

  

*追加:邦題『ペトラは静かに対峙する』で、2019年6月29日より劇場公開

ミシェル・フランコ『母という名の女』*メキシコ映画2018年07月07日 13:36

        ミシェル・フランコの『母という名の女』は「ある視点」の審査員賞受賞作品

 

         

★「カンヌのナイス・ガイ」と言われるミシェル・フランコは、2017年、Las hijas de Abrilを携えて4度目のカンヌ入りを果たしました。過去にはデビュー作「Daniel & Ana」(09「監督週間」)、2作目『父の秘密』(12「ある視点」グランプリ)、3作目『或る終焉』(15「コンペティション部門」脚本賞)、4作目となるLas hijas de Abrilは「ある視点」の審査員賞を受賞した。メキシコの若手監督としてノミネーションだけでも破格、受賞となれば尚更のこと異例中の椿事でした。メキシコの監督はカンヌに焦点を合わせている人は多くなく、他に4回出品はカルロス・レイガダス唯一人です。

 

★邦題のつけ方が難しい作品でしたが、『母という名の女』はどうでしょうか。オリジナル題の直訳「アブリルの娘たち」でよかったと思うのですが、これから公開予定のカルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』(「Verano 1993」)よりは余程まし、いずれにしろ英題の直訳「四月の娘」でなかったことを幸いとします。当ブログではカンヌ映画祭2017以降3回にわたって内容紹介をしておりますが、この度スクリーンで観てきましたので感想をアップいたします。以下は以前にアップしたデータに最近の情報を追加してコンパクトに纏めたものです。

 

Las hijas de Abril(「April's Daughter2017

製作:LUCIA FILMS / Trebol Stone 協賛EFICINE PRODUCCION

監督・脚本・編集・製作者:ミシェル・フランコ

撮影:イヴ・カープ

編集():ホルヘ・ワイズ

録音:マヌエル・ダノイ、フェデリコ・ゴンサレス・ホルダン、アルド・カンディア、パウリナ・ゴンサレス、チェマ・ラモス・ロア

美術:ミゲル・ラミレス

メイクアップ:ベロニカ・セフド

衣装デザイン:イブリン・ロブレス

音楽:ハビエル・ヌニョ

サウンドデザイン(音響):アレハンドロ・デ・イカサ

製作者:ロドルフォ・コバ、ダビ・ソナナ、ティム・ロス、ガブリエル・リプスタイン(以上エグゼクティブ)、ロレンソ・ビガス、モイセス・ソナナ、他

 

データ:製作国メキシコ、スペイン語、2017年、ドラマ、103分、撮影2016172ヵ月、撮影地プエルト・バジャルタ、グアダラハラ、メキシコシティ。配給元Videocineビテオシネ。公開メキシコ2017623日、日本2018616日、ほかスペイン、オランダ、ギリシャ、インド、トルコ、台湾、ポルトガルなどで公開されている。

 

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2017「ある視点」審査員賞受賞。カルロヴィ・ヴァリ、エルサレム、メルボルン、トロント、チューリッヒ、釜山、ロンドン、タイペイ、パームスプリングス、各映画祭正式出品。第60回アリエル賞2018新人女優賞(アナ・バレリア・べセリル)、ディオサ・デ・プラタ2018脚本賞、メキシカン・シネマ・ジャーナリスト2018脚本賞・助演男優賞(エルナン・メンドサ)などを受賞、ノミネーション多数。

   

キャスト:エンマ・スアレス(アブリル)、アナ・バレリア・べセリル(バレリア)、ホアンナ・ラレキ(クララ)、エンリケ・アリソン(マテオ)、エルナン・メンドサ(マテオの父グレゴリオ)、イバン・コルテス(ホルヘ)、モニカ・デル・カルメン、ホセ・アンヘル・ガルシア、マリア・E・サンドバル(DIF職員)、他

 

プロット17歳になるバレリアは妊娠7ヵ月、異父姉のクララとプエルト・バジャルタで暮らしている。クララはストレスからか肥満でふさぎ込みがちである。姉妹は離れて暮らしている母親アブリルとは長らく会っていない。バレリアは母親に妊娠を知られたくなかったのだが、クララは生まれてくる赤ん坊の父親マテオが同じ17歳であること、これからの経済的負担や育児という責任の重さから母に知らせようと決心する。アブリルは娘たちの力になりたいとやってくるが、どうしてバレリアが母親と距離をおきたかったのか、観客はすぐに理解することになるだろう。

 

            4つの視点で描いた初めての映画 

   

A: 母と娘たちの相克映画は掃いて捨てるほどはありませんが、結構あります。最近アップしたラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』、本作でアブリルを演じたエンマ・スアレスが主演したアルモドバルの『ジュリエッタ』もそうでした。

B: ジュリエッタとアブリルは、撮影時期が近いこともあって見た目も似ていますが、テーマは本質的に別のものです。母娘物を一度手掛けると、女は魔物というわけで男性監督はハマるらしい(笑)。「鬼母」もここまで徹底すると怖ろしさを通りこして却って滑稽で笑えます。

 

               

               (マテオ、バレリア、クララ)

 

A: もしかしてコメディ?と茶化す人もありそう。フランコはユーモアの乏しい監督ですが、本作では人間の自己愛、狡さと滑稽さを描いていますから、視点をずらすと笑えます。いつもの手法ですが、特に本作は物語のバックを観客に極力知らせない工夫を凝らしているので気が抜けない。妹とボーイフレンドの喘ぎを聞きながら表情一つ変えずに料理をするクララ、こと終わって喉が渇いたのか、水飲みに大きなお腹を突き出しすっぽんぽんで現れるバレリア、続いて汗を光らせて現れたマテオはバレリアの差し出すゆで卵をぱくつく。この只ならぬシーンから観客は、これからの悲劇の到来を予感します。ダイニングの窓から太平洋が望めますが、ダイニングの3人は閉じ込められているように見える。そこで初めてLas hijas de Abrilのタイトルが挿入される。

 

B: カンヌのインタビューで、今まで自分は「2つの視点で映画を撮ってきた、例えば『或る終焉』のように。しかし今作ではアブリル、バレリア、クララの母娘にマテオを加えて4つの視点で描いた」と語っていました。

A: 『父の秘密』も父と娘という2つの視点、『或る終焉』も多くの患者が出てきますが、看護師と患者という2つの視点でした。テーマがかなりきわどいこともありますが、「禁じられていることがもつ魅力から遠ざかるべきではないと考えている」とも語っていた。先輩監督カルロス・レイガダスと同じく「好きな人は好き、嫌いな人は嫌い」がはっきりする監督です。考えさせたり痛みを感じさせたりするのを嫌う観客は多く、何事も十人十色です。

 

              

          (喘ぎを黙殺して料理をするクララ、冒頭シーンから)

     

B: クララのなげやり、バレリアの幼女のような厚かましさ、マテオの不甲斐なさなどが、どこからやって来るのか。母娘が離れて暮らしている理由、何年も会っていないというが3年なのか10年なのか、そもそも姉妹が何故メキシコでも屈指のリゾート地プエルト・バジャルタの別荘で暮らしているのかが判然としない。

A: まもなく現れる、フライトで疲れているという母親アブリルはどこから飛んで来たのか。観客に示される情報は、クララの押し殺したフラストレーション、バレリアの心と体の発達の不均衡、マテオの自信のない無責任ぶり、アブリルの見せかけの大袈裟な優しさ、明確なのはバレリアとマテオの年齢だけ。こうして物語は切れ切れの情報のまま観客を挑発してくる。

 

           

  (アメリカやカナダからの観光客で人気のリゾート地、ハリスコ州のプエルト・バジャルタ)

 

           手加減しない母性、男性のモラル的貧困

  

B: ストーリーの進行役は、最初にスクリーンに現れるクララですかね。仕掛け人は彼女です。ストレスから過食症気味の肥満体、20代後半か30歳ぐらいに見えるが、勿論実年齢は最後まで明かされない。クララとバレリアが異父姉妹であることも解説を読んでいないと分からない。

A: クララは母親に遠隔操作されているようだが、アブリルは自らをコントロールできずに太るに任せている自尊心の低いクララに苛々する。ストレスの原因が母親の自分にあるとは思っていない。クララを17歳で生んだ責任は娘のせいではないのに、青春を奪われたとクララを無意識に復讐している。

 

B: クララはクララで母親業を放棄したアブリルから妹の世話を押し付けられ、自分の青春を簒奪した母を恨んでいる。ボーイフレンドができないのも母と妹のせいだ。このまま老いてしまいたくない。バレリアは母親の「鬼面仏心」ではなく「仏面鬼心」を本能的に見抜いて警戒する。しかし今は母を利用して従順にするしかない。

A: 両親から勘当され経済力のない、みなしご同然になってしまったマテオにとって、姑とはいえアブリルに忠誠を誓えさえすれば、赤ん坊とも遊べ、やらしてくれないバレリアとは違ってセックスも処理してくれる。まさに後顧の憂いなく楽しく、居心地よく、責任を負わないですむ人生は捨てがたい。

 

B: 州都グアダラハラに住んでいるらしいバレリアの父親オスカルは、娘の援助を乞うアブリルに、面倒事はまっぴら御免と門前払いを食わす。

A: 自分を捨て若い女に走った憎い元夫の無責任ぶりに、アブリルの怒りが炸裂する。こうしてドラマはアブリルの欲望のまま暴走しはじめる。しかし引き金は、マテオの父親が息子の荷物をわざわざ別荘に運んできて「勘当した」と親の責任回避をしたことです。そのあと直ぐアブリルは元夫の家目指して車を走らせる。

 

          

            (怒りを殺して元夫の家に向かうアブリル)

 

B: 両方の男親の無責任ぶりがアブリルの怒りに火を注いだ。この映画はセリフではなく、一見何でもないように見える行動を見逃さないようにと観客に要求する。

A: グレゴリオは孫を里子に出すことで厄介払いができると躊躇することなく書類にサインする。監督はメキシコ社会に蔓延するこのような男の無責任ぶり、ずる賢さに警鐘を鳴らしているようだ。男性たちの健全な社会化もテーマの一つでしょうか。麻薬密売、誘拐、殺人だけがメキシコの病いではなく、男性のモラルの低さこそ根源的な悪なのです。

 

           老いの恐怖、不安を煽るような車の移動

 

B: 監督は「メキシコでは経済的に自立していない学業半ばの十代の妊娠は珍しくない。メキシコに限らずラテンアメリカ諸国の病根の一つです」とカンヌで語っていました。

A: 若くして子供を生むことは、たちまち老いが訪れることで、お金があってもアブリルが直面しているような老いの恐怖に晒される。20代はとっくの昔に過ぎているのに、過ぎた時間を受け入れることを拒み、娘はライバルとなる。母娘の相克の大きな理由の一つです。アブリルはパンフレットにあるような「怪物」ではなく、青春を楽しむこともなく、崩れかけた体形のまま一人で朽ち果てていくことの恐怖に怯えている女性ともいえます。  

 

A: 全編を通じてまともに思える登場人物の一人が、かつてのアブリルの家政婦だったベロニカ、彼女の自然な生き方は救いです。もっともアブリルが孫カレンの里親に彼女を選ぶのは、「わたしはちゃんと責任を果たしている」という、元夫への当てつけでしょう。

B: アブリルはお金に不自由しているわけではないから、金銭的援助が目的で訪ねたのではなく、離婚しても父親の責任は免れないと言いに行った。

 

A: これは真っ当な意見です(笑)。フランコ映画では移動に車がしばしば登場しますが、どこに向かっているのか最初は分からない。さらにアブリルの運転ぶりは観客の不安をことさら煽る。『父の秘密』ではフォルクスワーゲンが使用されたが、今回の車種は何でしょうか。

B: この車はクララが仕事に使っていた車ですが、クララは母が来たことで得るものはなく失うものばかりです。最後に別荘の所有者が母親だと知らされて売却が提示されるから、当然住む家も失うわけですね。やはりとんでもない鬼母だ。

 

A: でも結果的には、クララは妹には復讐できたのではないか。バレリアは自分に嘘をつき母親とままごと遊びをした裏切り者マテオを許さない。今度は自分が嘘をついて罰する番だ。しかし赤ん坊を取り戻しても一寸先は闇、無一物のシングルマザーが辿る先は何処でしょうか。本作では各自それぞれが嘘をつく。嘘はついてもいいけど、せめて一つにしてください。

B: するとクララの傷が一番軽いのかな。図々しく居候しているマテオも追い出せたし、母親の完全犯罪も挫折した。これは人生をやり直すチャンスかもしれない。

 

     

     (取り戻したカレンを呆然と抱きしめるバレリア、最後のタクシーのシーン)

 

A: ざらざら神経を逆なでするシーンが多いなかで、どれが記憶に残るかといえば、アブリルが興味を亡くした孫をカフェに置き去りにするシーンですね。圧巻でした。赤ん坊役は成長に合わせて双子も含めて4人だったそうですが、あのシーンの赤ん坊は演技しているのではなく本当に怖かったわけで、トラウマとして残らなければと思ってしまいました。

 

       忽然と消えるアブリルは、邪悪で無慈悲な貪欲な女の典型

 

B: キャストに触れると、アブリル役のエンマ・スアレス1964)の「仏面鬼心」の悪女ぶりはなかなかよかった。しかし、母親の祖国をスペインにした理由は何でしょうか。

A: バレリアが母親を探すシーンで、写真をかざしながら「スペイン人」を連呼するのですが、唐突で若干違和感を覚えた。最初から母親役はスペイン女性と決めていたらしい。うがった意見かもしれませんが、メキシコ人がかつての宗主国に抱くアンヴィヴァレンツな感情があるのかもしれない。アブリルの邪悪で無慈悲な貪欲さは、かつての宗主国スペインと重なっている?

 

B: バレリア役のアナ・バレリア・べセリル1997)は、お腹のメイクに5時間もかかったそうですが、やはりお腹だけが大きい偽物妊婦でした。クララ役のホアンナ・ラレキは製作発表時よりかなり増量させられたのかたっぷりしていて驚いた。カンヌではまだ元に戻っていなかった。

 

A: パンフに未紹介ながら重要人物なのが、マテオの父親役エルナン・メンドサ、出番は少なくとも存在感のある俳優、『父の秘密』の主役を演じたベテラン。もう一人が家政婦役、多分モニカ・デル・カルメンだと思うのですが、IMDbのフルキャスト欄に記載がない。彼女はフランコと妹ビクトリアが共同監督した「A los ojos」(14)の主役、『父の秘密』にも教師役で出演しているほか、イニャリトゥの『バベル』(06)、マイケル・ロウの『うるう年の秘め事』(10)の主役、ガブリエル・リプスタインの「600 Millas」(15)などの話題作に多数出演している。

 

B: 気の毒な役柄でしたが、マテオ役のエンリケ・アリソン1993)、甘いマスクで女性ファンを獲得できそうです。アブリルからバイクまで買ってもらって嬉しそうに乗り回していましたが。

A: 17歳役はいかにも厳しい。当然とはいえ少年ぽさが出せなかった。女優なら23歳でも17歳は演じられるが、これはキャスティングの責任です。機能不全で崩壊する家族にしても、年増の姑がまだ少年である婿と孫を加えて似非家族になるなど悲しすぎます。しかし、監督は誰のことも裁きません。そこがいいのです。

 

      

  (バレリアに内緒でビールを楽しむマテオとアブリル、周到な準備に着手するアブリル)

      

     会いたい監督は「ルイス・ブニュエル以外にあり得ない」とフランコ監督

 

B: 会いたい監督は「ルイス・ブニュエル以外にあり得ない」とブニュエルの影響を語っているからか、ブニュエル作品に結びつける批評が目に付きます。

A: ブニュエルのどの時代の作品が好みなのか具体的に知りませんが、メキシコ時代(194660)の『スサーナ』(50)の影響はあるでしょうね。人間の肉欲と嫉妬をテーマにしていた。こちらは母ではなく若く美しい性悪娘の話、女囚スサーナは刑務所を奇跡的に脱走、雨のなか大牧場に辿りつく。信心深い農場一家を騙して、エロティシズムを武器に農場主、その息子、牧童頭を次々と誘惑、愚かな男どもをいがみ合わせて居座る話。最後には天罰が下って塀の中に逆戻り、大農場は平穏を取り戻すのですが、果たして前と同じかどうかという物語。

 

B: スサーナは「邪悪で無慈悲な性悪女」の古典的原型です。こちらにはブニュエル流のユーモアが漂っていた。いったん農場主の家族は崩壊寸前になるのですが、最後にはスサーナに罰が下って大団円、観客は安心して映画館を後にできた。

A: 農場主の信仰心篤い妻が辛抱強く耐える姿がクララとダブった。メキシコ時代に合作を含めると20数本も撮れた理由は、彼の職人的な律義さだそうです。製作会社が決めた製作費と期間を守ったので量産できたようです。本作も20日間という短期間で撮影した。

 

B: スペイン映画はハリウッドに渡る前に撮ったドキュメンタリー『糧なき土地』(32)ぐらいですね。ヨーロッパに回帰してから撮った作品でも、すべてフランスやイタリアとの合作です。

A: 遺作となった『欲望のあいまいな対象』(77)もフランスとの合作、活躍期間がフランコ時代と重なり故国では撮れなかった。それが良かったのか悪かったのか分かりません。

 

B: フランコはメキシコでは数少ないミヒャエル・ハネケの影響が指摘される監督の一人です。今作ではベネズエラのロレンソ・ビガス監督が製作者として協力しました。カンヌにも同行していました。

A: ラテンアメリカに初めてベネチア映画祭の「金獅子賞」をもたらした『彼方から』(15)の監督、このときはフランコが製作者として参画していた。二人は作品の傾向は似ていないが親密、ビガスの新作「La caja」(ワーキングタイトル)の製作を手掛けている。メキシコのチワワ州で既に撮影に入っており、完成が待たれます。

 

       

          (フランコとビガス、カンヌ映画祭2016授賞式にて)

 

B: ビガスは子供ときから恐怖映画やホラーに魅せられていたそうで、いずれホラー映画も撮る計画で、脚本を二人で執筆している。

A: フランコはホラーには興味がなく、再び『父の秘密』のような映画を構想しているそうです。ベネズエラとメキシコの社会環境は、カオス状態という点でよく似ており、『彼方から』はベネズエラの現実を描いているとも語っていた。次回作はティム・ロスと再びタッグを組むそうで、すると英語映画になるのでしょうか。

 

 

  ミシェル・フランコの主な関連記事

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カンヌ映画祭2017「ある視点」部門の結果発表は、コチラ20170530

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『モルタデロとフィレモン』のハビエル・フェセル*「Campeones」が大ヒット2018年06月12日 16:24

          主人公は知的障害をもつ10人のバスケットボール選手たち

   

     

★『モルタデロとフィレモン』のハビエル・フェセルが、Campeonesで長編コメディに戻ってきました。主人公は初出演の10人の知的障害者と、『マーシュランド』や「El autor」で、ゴヤ賞の主演男優賞を2回受賞したハビエル・グティエレス、本作の演技で3回目の受賞も夢ではない。46日の封切り以来、9週目にして興行成績1600万ユーロ、観客動員数は既に270万人を突破、今なお快進撃を続行中。この記録を超えるのは、2014年公開されたエミリオ・マルティネス=ラサロの大ヒット作「オーチョ・アペジードス・バスコス」だけということで、公開以来トップ3をキープしている。

 

 Campeones(「Champions」)2018

製作:Morena Films / Movistar+ / Pelicula Pendelton/ RTVE / ICO / ICAA (以上スペイン)

      / Realizaciones Sol S.A.(メキシコ)

監督:ハビエル・フェセル

脚本:ダビ・マルケス、ハビエル・フェセル

撮影:チェチュ・グラフ

編集:ロベルト・ボラド、ハビエル・フェセル

音楽:ラファエル・アルナウ、歌曲「Este es el momento」演奏Coque Malla

キャスティング:ホルヘ・ガレオン

美術:ハビエル・フェルナンデス

衣装デザイン:アナ・マルティネス・フェセル

メイクアップ&ヘアー:エリ・アダネス(チーフ)、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ(特殊メイク)、リュイス・ソリアノ(ヘアー)

製作者:ルイス・マンソ、アルバロ・ロンゴリア、ガブリエル・アリアス=サルガド

 

データ:製作国スペイン=メキシコ、スペイン語・不明言語、2018年、コメディ・ドラマ、124分&118分、製作資金約450万ユーロ、撮影地マドリード、ウエルバ、撮影期間;2017年4月10日~7月6日、配給元ユニバーサル・ピクチャー(スペイン)、公開マドリード限定43日、スペイン公開46日、メキシコ518日、フランス66日、ドイツ726日、他

 

キャスト:ハビエル・グティエレス(マルコ・モンテス)、フアン・マルガージョ(フリオ)、アテネア・マタ(マルコの妻ソニア)、ルイサ・ガバサ(マルコの母アンパロ)、ラウラ・バルバ(裁判官)、ダニエル・フレイレ(カラスコサ)、ルイス・ベルメホ(ソニアの同僚)、(他「ロス・アミーゴス」の選手として)セルヒオ・オルモ、フリオ・フェルナンデス、ヘスス・ラゴ、ホセ・デ・ルナ、グロリア・ラモス、フラン・フエンテス、ヘスス・ビダル、ステファン・ロペス、アルベルト・ニエト・フェランデス、ロベルト・チンチジャ、ほか決勝戦対戦チーム「ロス・エナノス」の選手多数、ハビエル・フェセルも新聞記者役で出演している。

    

  

   

物語:マルコ・モンテスはスペイン・バスケット・ナショナルリーグのチームABCの副監督である。マナーが悪く横柄なことから他のコーチとは上手くいってない。プロとしてのキャリアも人間的にも多くの問題を抱えこんでお先真っ暗である。むしゃくしゃして飲酒運転、あげくの果てに事故ってしまい解雇されてしまった。裁判官は懲らしめの罰金として2年間の服役か、または90日間の奉仕活動「ロス・アミーゴス」という知的障害者のバスケットボール・チームの監督のどちらかを選択するよう言い渡した。後者を選んだマルコにとってこんな罰則は好みではなかったが、やがてこの奇妙なチームの面々から、学ぶべき事柄の多さに気づいていく。彼らの病気のイメージからは程遠い、率直で独立心の強い、肩ひじ張らずに生きていく姿に我が人生を見つめ直していく。

 

         「フツウ」の定義、「幸せ」の定義、誰が決めるの?

 

ハビエル・フェセルと言えば『モルタデロとフィレモン』(03)、古くからのファンなら『ミラクル・ぺティント』(98)、あるいは未公開ながらラテンビート上映の『カミーノ』(08)、短編ドキュメンタリー『ビンタと素晴らしきアイディア』(04)が、スペイン新進作家5人のオムニバス映画「En el mundo a cada rato」(邦題『世界でいつも・・・』ユニセフ制作)に採用され上映されました。『カミーノ』はゴヤ賞2009の作品・監督・脚本賞以下6冠制覇の話題作でした。ラテンビート上映時に来日、Q&Aでの飾らない人柄から多くのファンを獲得しました。1985年暮に14歳という短い生涯を閉じたアレクシア・ゴンサレス=バロスの実話にインスピレーションを受けて製作されたフィクションでしたが、家族が敬虔なオプス・デイの信者だったことから、後々訴訟問題に発展、監督は長らく長編から遠ざかっておりました。

 

2014年アニメーションMortadelo y Filemon contra Jimmy el Cachondo以外は、すべて短編(11作)で、うちBienvenidos28分)がアルカラ・デ・エナレス短編映画祭2015の観客賞を受賞、ほか国際映画祭での受賞が相次ぎました。もう長編ドラマは撮らないのかと気になっていたところでした。『カミーノ』から10年の歳月が流れた昨年11月に、監督がTV番組に宣伝を兼ねて出演、「3月公開」をアナウンスしました。ファンが心待ちにしていた結果が、この興行成績にストレートに出ているようです。コメディCampeonesは、上記したように目下快進撃を続けています。映画祭、DVD、あるいは公開を期待しても良さそうです。

 

   

             

        (新作をプレゼンするフェセル監督とグティエレス)

 

★予告編からも充分面白さが伝わってきますが、本作のテーマの一つが、「フツウ」の定義、「幸せ」の定義、障害を大いに楽しもうという視点が観客を虜にしている。エル・パイスによると、成功の秘密は3つあるという。一番目は、スペインで興行成績がよい映画は民放テレビ局がお膳立てした映画が多いが、本作は該当しない。二番目は、知名度のある俳優はマルコ・モンテス役のハビエル・グティエレス唯一人、それ以外は知的障害のあるアマチュアたち、三番目は、テーマの切り取り方、人間的にもコーチとしても、社会的信用が失墜したダメ男マルコが主人公、ハビエル・グティエレスの魅力が大きいようです。7歳以下は保護者同伴だが、なかには子供に分からないジョークもある由、しかし全く問題ではないそうで、子供たちは楽しんでいると家族連れは口を揃える。

 

      

                     (チャンピオンの表彰台に立つ監督&選手一同)

   

      

(ロス・アミーゴスの選手に演技を指示するフェセル監督)

 

★フェセル監督曰く「私たちはキャスト選定の段階で、実際の知的障害者を起用すべきか、あるいは役者に演じてもらうほうがよいか事前に決めていなかった。しかしオーディション初日に、彼らが発する誠実さと信頼性に出会ってしまった」ので彼らに出演依頼をしたようです。「私は根っからの楽観主義者なんだ、それに最初から登場人物たちの能力が観客と繋がっていると信仰のように確信していたんですよ」「私は若者たちのエモーショナルな知性や人生を大いに楽しんじゃおうという考え方に魅了された」「何が何だか分からない感情に満たされ泣いたり笑ったりしているうちに、幸せな2時間が過ぎてしまう」エトセトラ、ということです。笑う門には福来る、つかの間の幸せでも充分ですから浸りたい。

 

    

          (ハビエル・グティエレスと「ロス・アミーゴス」)

 

★まだ先の話ですが、2009年『カミーノ』を上映してくれたラテンビートが今年15周年を迎えるそうです。アグスティン・アルモドバルをゲストに開催された第1回、当初は「ヒスパニックビート」でした。2回目が開催されるかどうか危ぶみましたが、どっこい15年間続いているのでした。ということで今年の目玉に「チャンピオンズ」は打ってつけではないでしょうか。他に2018年興行成績トップ3の一つ、アレックス・デ・ラ・イグレシアのシリアス・コメディPerfectos desconocidosもスクリーンで鑑賞したい。

 

 

 

  *劇場公開映画*

ミシェル・フランコLas hijas de Abril『母という名の女』の邦題でスケジュールが決定しました。劇場は『父の秘密』や『ある終焉』を公開したユーロスペース2018616日(土)~です。カンヌ映画祭2017「ある視点」部門の審査員賞受賞作品。

 

    

カルラ・シモンのデビュー作Verano 1993『悲しみに、こんにちは』の邦題で、同じユーロスペースで7月下旬公開です(日時は未定)。以前ラテンビートで『夏、1993』として上映予定だった映画です。まったくの的外れとまで言わないが、どうしてこんな陳腐な邦題にしたのか理解に苦しむ。ゴヤ賞2018新人監督賞受賞作品。

 

     

Perfectos desconocidos」の紹介記事は、コチラ20171217

Las hijas de Abril」の紹介記事は、コチラ20170508

El verano 1993」の主な紹介記事は、コチラ20170222

「ある視点」にアルゼンチンの「El Ángel」*カンヌ映画祭2018 ⑤2018年05月15日 17:48

             ルイス・オルテガの第7作目「El Ángel」は実話の映画化

 

             

            (映画祭用のフランス語のポスター)

 

ルイス・オルテガEl Ángel(アルゼンチン=スペイン合作)は、アルゼンチンの1971年から72年にかけて、金品強盗を目的に11人もの人間を殺害した美青年カルロス・ロブレド・プッチの実話に材をとったビオピックです。既にカンヌでは上映され、観客並びに批評家の評判はまずまずのようでした。当時その美しい風貌から「死の天使」または「黒の天使」と恐れられた殺人鬼カルリートスに扮したロレンソ・フェロの妖しい魅力も大いに役立ったのではないか。お披露目にはスペイン・サイドの製作を手掛けたエル・デセオのペドロ・アルモドバルも登壇してサプライズを提供したようです。彼は昨年のコンペティション部門の審査委員長を務めたカンヌの常連です。

 

    

  (赤絨毯に勢揃いした出席者、左から、ピーター・ランサニ、メルセデス・モラン、

チノ・ダリン、オルテガ監督、セシリア・ロス、ペドロ・アルモドバル、ロレンソ・フェロ)

   

El ÁngelThe Angel」)2018

製作:El Deseo / Kramer & Sigman Films / Underground Contenidos / Telefé

   協賛INCAA

監督:ルイス・オルテガ

脚本(共):セルヒオ・オルギン、ルイス・オルテガ、ロドルフォ・パラシオス

撮影:フリアン・アペステギア

編集:ギリェ・ガッティGuille Gatti

メイクアップ:マリサ・アメンタ

衣装デザイン:フリオ・スアレス

美術:フリア・フレイド

プロダクション・マネージメント:メルセデス・タレジィ

製作者:(エグゼクティブ)ハビエル・ブライアー、ミカエラ・ブジェ。ウーゴ・シグマン、セバスティアン・オルテガ、マティアス・モステイリン、Axel Kuschevatzky、レティシア・クリスティ、パブロ・クレル(以上アルゼンチン)、アグスティン・アルモドバル、ペドロ・アルモドバル、エステル・ガルシア(以上スペイン)

 

データ:製作国アルゼンチン=スペイン、スペイン語、2018年、ビオピック、犯罪、120分、撮影地ブエノスアイレス、配給20世紀フォックス。カンヌ映画祭2018「ある視点」正式出品、公開アルゼンチン201889

  

キャスト:ロレンソ・フェロ(カルリートス、カルロス・ロブレド・プッチ)、セシリア・ロス(カルリートスの母親アウロラ)、チノ・ダリン(ラモン)、ピーター・ランサニ(ミゲル・プリエト)、ルイス・ニェッコ(エクトル)、マレナ・ビリャ(マリソル/マグダレナ)、ダニエル・ファネゴ(ホセ)、メルセデス・モラン(ラモンの母親アナ・マリア)、ウィリアム・Prociuk、他

 

ストーリー・解説:カルリートスは天使のような顔をした17歳、その魅力には皆まいってしまう。欲しいものすべてを手にできる。高校でラモンと知り合い、彼らはコンビを組んで危険だが素晴らしいゲームに取り掛かる。手始めに盗みと詐欺で腕を磨きつつ、ホシが割れるのを警戒して目撃者を殺害、たちまち連続強盗殺人へとエスカレートするのに時間はかからなかった。ストーリーは差別的な社会を風刺しながら、タランティーノ・スタイルで終始軽快に進行するだろう。

 

        スクリーンの殺人劇はフィクションの世界で起きたことらしい?

 

★実在の連続強盗殺人犯カルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチ1952122日、ブエノスアイレス生れ)のビオピックという触れ込みだが、どうやら映画の殺人劇はフィクションの世界で起きたことらしい。1971年5月3日を皮切りに、無関係な人々11名の殺害、数えきれない強盗、万引き、誘拐レイプ、とアルゼンチン犯罪史上稀にみるモンスターを、映画は単なる悪者と決めつけていないようです。天使のような顔をした青年の犯罪は当時のアルゼンチン社会を震撼させるに十分だったのだが。197224日、最後となった強盗殺人の翌日逮捕されたときには20歳になったばかりだった。

 

      

           (カルリートス役のロレンソ・フェロ、映画から)

 

★カルロス・ロブレド・プッチのビオピックとは言え、何処から何処まで史実と重なるのか、監督が描きたかったテーマが充分に見えてこない段階での紹介は危険かもしれない。ウイキペディアにも詳しい情報が掲載されているが、スペイン語版、英語版で若干食い違いもあり、11名殺害の詳細を語っても意味がないようです。しかしその殺害方法は残忍である。泣き叫ぶ生後23か月ばかりの赤ん坊にさえ銃弾を浴びせたり、殺害前にレイプしたり、足手まといになりそうな共犯者まで殺害する邪悪さには吐き気を催す。被害者家族の多くがまだ存命していることから、終身刑で服役中とはいえ、単なるエンターテインメントでないことを祈りたい。監督は取材に刑務所に通いつめ、10回ほどインタビューしたということです。ラテンアメリカ諸国はEU諸国と同様に死刑廃止国、66歳になるカルロスは健康不安を抱え何度も恩赦を請求しているが当然却下、獄中46年はアルゼンチン犯罪史上最長だそうです。

  

   

    (197224日、逮捕されたときのカルロス・ロブレド・プッチ)

 

    オルテガ家はアーティスト一家、兄弟が協力して製作した「El Ángel

 

ルイス・オルテガ Luis Ortega Sslazarは、1980年ブエノスアイレス生れの37歳、監督、脚本家。シンガーソングライターで俳優の父パリート・オルテガと女優の母エバンヘリナ・サラサールの6人兄弟姉妹の5番目、それぞれ映画プロデューサーであったり歌手であったりの有名なアーティスト一家。父親は後に政界に進出、1990年代出身地ツクマンの州知事になった。映画はブエノスアイレスの映画大学で学んだ。現在『パウリナ』や『サミット』の監督サンティアゴ・ミトレ5回目の結婚をしたドロレス・フォンシとは一時期(19992004)結婚していた。ガエル・ガルシア・ベルナルと結婚する前ですね。

 

          

       (オルテガ兄弟、左が製作者の兄セバスティアン、右が弟ルイス)

 

2002年にCaja negra(「Blackbox」)で長編デビューする。本作のヒロインが当時結婚していたドロレス・フォンシである。第2Monobloc04)には母親が出演して銀のコンドル賞助演女優賞を受賞した。2009Los santos sucios(「The Dirty Santos」)、2011Verano maldito2012Dromómanos2014Lulú、最新作となるEl Ángelは第7作目になる。若い監督だが親のバックもあり、年齢に比して経験は豊かです。

  

2015年のTVミニシリーズ全6Historia de un clanは、パブロ・トラペロがベネチア映画祭2015で監督賞を受賞した『エル・クラン』のテレビ版である。映画の長男アレハンドロ役を演じたピーター・ランサニTVではチノ・ダリンが演じ、母親エピファニア役を本作カルリートスの母親役セシリア・ロスが演じた。TVミニシリーズも最新作も監督の兄セバスティアン・オルテガが製作している。セシリア・ロスは息子にピアノを習わせ溺愛する母親役、劇中でもピアノのシーンが出てくるが、カルロス本人は嫌いだったようです。本作では音楽が重要な意味をもつとか。

    

  

          (デビュー作Caja negra」のポスター

 

    

   

 (TVミニシリーズ「エル・クラン」、左から2人目長男役のチノ・ダリン、

  母親役のセシリア・ロス、主人公プッチオ役のアレハンドロ・アワダ)  

 

★カンヌにはチノ・ダリンの父親リカルド・ダリンアスガー・ファルハディの「Todos lo saben」で現地入りしており、上映日11日には夫妻で息子の晴れ姿を見に馳せつけた。アルゼンチンの日刊紙「クラリン」によると、オルテガ監督が「このような(素晴らしい)プロデューサーたち、俳優たちと映画を撮れるとは夢にも思わなかった」とスペイン語で挨拶、次にマイクを手渡されたスペイン・サイドのプロデューサー、アルモドバルは英語で「今宵はアルゼンチンの人々のためにあり、私が横取りしたくない」と口にしつつ、例のごとく長引きそうになるのを「映画祭総代表のティエリー・フレモー氏がからかったので2分で終わった」と記者は報じていた。アルモドバルは「どうぞ皆さん、お楽しみください」と締めくくった。

 

     

         (少々緊張して神経質になっていたルイス・オルテガ監督)

 

    

   (左から、ロレンソ・フェロ、アルモドバル、セシリア・ロス、オルテガ監督)

 

     

(左から、ピーター・ランサニ、メルセデス・モラン、監督、L.フェロ、C. ロス、C. ダリン)

 

★ルイス監督インタビューなど情報が入りはじめています。多分今年のアルゼンチン映画の目玉になりそうです。公開は無理でも映画祭上映、またはDVDはありかなと思っていますので、いずれアップすることに。

*追記:邦題『永遠に僕のもの』で2019年8月16日より劇場公開

  

アスガー・ファルハディの「エブリバディ・ノウズ」*カンヌ映画祭2018 ③2018年05月08日 17:53

            イランの監督が撮っても「Everybody Knows」はスペイン映画です

    

    

 (ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を採用した第71回カンヌ映画祭ポスター)

 

★「批評家週間」にはポルトガル映画だけでスペイン語映画はノミネートなしです。コンペティションのオープニング作品Everybody Knowsは、イランの監督アスガー・ファルハディがスペインの大物俳優を起用して、言語はスペイン語、スペイン、フランス、イタリアが製作国になって約10,000,000ユーロで製作、スペイン語題はTodos lo sabenです。アカデミー外国語映画賞2冠の監督がスペイン語で撮るということで、2016年の製作発表時から鳴り物入りで逐一報道され話題を提供してきた。監督はカンヌ映画祭の常連でもあるからノミネーションは確実視されていたが、オープニング作品とは驚きました。ジャン=リュック・ゴダールの「The Image Book」を差し置いて選ばれたわけですから。今年のカンヌ映画祭ポスターは彼の『気狂いピエロ』です。スペイン映画が選ばれるのは、2009年アルモドバルの『バッド・エデュケーション』以来だそうです。

 

★カンヌ映画祭は英語題が基本ですが、一応スペイン映画なので西語タイトルにします(IMDbを採用)。まだ日本語データが揃っておりませんので、情報源は西語、英語のウイキペディアです。IMDbではペネロペ・クルスが扮するヒロインの名前が、キャスト欄ではラウラ、ストーリーラインではカロリナとチグハグですが、ウイキペディアと予告編を見る限りではラウラなのでこちらを採用します。

 

          

              (スペイン語タイトル採用のポスター)

 

Todos lo sabenEverybody Knows2018

製作:Memento Films(仏)/ Morena Films(西)/ Lucky Red(伊)/ El Deseo / France 3 Cinéma

監督・脚本:アスガーファルハディ(イラン)

撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ(スペイン)

音楽:アルベルト・イグレシアス(スペイン)

編集:ハイデー・サフィヤリ(イラン、『別離』『セールスマン』)

衣装デザイン:ソニア・グランデ(スペイン、『アザーズ』『ミッドナイト・イン・パリ』)

メイクアップ:アナ・ロサノ、マリロ・オスナ

プロダクション・デザイン美術:マリア・クララ・ノタリ

プロダクション・マネージメント:アルバロ・サンチェス・ブストス

製作者:アレバロ・ロンゴリア(スペイン)、アレクサンドル・マレ=ギ(フランス)、アンドレア・オキピンティ(イタリア)、他

 

データ:製作国スペイン=フランス=イタリア、スペイン語、2018年、スリラードラマ、130分、撮影地マドリード北方トーレラグナ、グアダラハラ、撮影期間2017821日クランクイン、12月まで。カンヌ映画祭2018オープニング作品。

 

キャスト:ペネロペ・クルス(ラウラ)、ハビエル・バルデム(ラウラの元恋人パコ)、リカルド・ダリン(ラウラの夫アレハンドロ)、バルバラ・レニー(パコの妻ベア)、インマ・クエスタ(ラウラの妹アナ)、エルビラ・ミンゲス(ラウラの姉マリアナ)、エドゥアルド・フェルナンデス(マリアナの夫フェルナンド)、ハイメ・ロレンソ、ロジェール・カザマジョール(アナの花婿ジョアン)、ラモン・バレア(ラウラの父)、サラ・サラモ(マリアナの娘ロシオ)、カルラ・カンプラ(ラウラの娘イレネ)、ホセ・アンヘル・エヒド(フェルナンドの友人、元警官ホルヘ)セルヒオ・カステジャーノス、ネイジャ・ロハス、パコ・パストル・ゴメス(ガブリエル)他

 

物語:ブエノスアイレスに住んでいるラウラは、妹の結婚式に出席するため家族を連れて、生れ故郷であるマドリード北方の小さな町に帰郷する。ラウラの元恋人であるパコとその妻ベアも出席するという。しかし、ラウラの娘イレネの失踪事件を切っかけに予期せぬ突発事件が起き、巻き込まれた全員の人生を徹底的に変えてしまうことになる。過去の秘密が次第に明らかになっていく。

 

★本作の舞台となる小さな町は、マドリード北方に位置するトーレラグナという、現在人口5000人に満たない町です。町中央の広場プラサ・マジョールに面して「サンタ・マリア・マグダレナ教会」があり、映画にも出てくる教会はここではないかと思います。他には市民戦争で破壊された建造物が文化遺産としてそのまま残されているようです。こんな小さな町で事件が起きればどうなるか? 秘密は誰も口にしないだけで「エブリバディ・ノウズ」である。作中のセリフ「Todos lo saben」がタイトルになっている。

 

      

               (再会した元恋人、ラウラとパコ)

 

★ヒロイン役のペネロペ・クルス、ゴヤ賞2018で主演女優賞にノミネートされて来マドリードしていたとき、本作の撮影中のエピソードを語っていた。「ファルハディ(監督)から、私を主役にした脚本を書いている、という電話を貰ったの・・・アスガーは感性がとても特別な監督で、例えば私がパニックの発作を起こして救急車に乗るシーンがあった。撮影が済んで救急車から下りてくると私を抱きしめて、別のシーンも撮りたいと頼むの。やり直すとそれが気に入った。私のキャリアの中でも非常に難しい登場人物でした」。気に入らないと不機嫌になって怒鳴る監督もいるからね。ハビエル・バルデムとの結婚10周年を迎えたクルス、7歳と4歳の子供の母親、親しい友人たちは「女優として女性として、今が最も充実している」と口を揃える。間もなく開幕するカンヌ初日、最も輝く女性は彼女でしょう。

 

          

               (44歳になったペネロペ・クルス)

 

アスガー・ファルハディフィルモグラフィーは、劇場公開作品では2009『彼女が消えた浜辺』2011『別離』2013『ある過去の行方』2016『セールスマン』4作でしょうか。タイトルがネタバレしていて頂けないが、個人的には最初の『彼女が~』には衝撃を受けた。厳しい検閲を掻い潜ってイランでもこんな素晴らしい映画が撮れるのだという驚きでした。アカデミー外国語映画賞を受賞した『別離』や『セールスマン』も悪くないが、『彼女が~』ほどではなかった。家庭のもめごとを軸にして、社会全体の闇を炙り出すテーマが大好きな監督、今度はスペインの何が炙り出されるのでしょうか。

 

         

            (本作撮影中のアスガー・ファルハディ監督)

 

★主なキャスト以外では、リカルド・ダリン(『サミット』『瞳の奥の秘密』、)バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』『家族のように』)、ラウラの妹役インマ・クエスタ(『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』『ブランカニエベス』)、その結婚相手になるロジェール・カザマジョール(『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』)、エドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』)、ハイメ・ロレンテNetflix配信TVシリーズ『ペーパー・ハウス』)、エルビラ・ミンゲス(『暴走車 ランナウェイ・カー』『時間切れの愛』)、ブドウ栽培をしているラウラの父役ラモン・バレア(『ブランカニエベス』Netflix配信『となりのテロリスト』)など、演技派のベテラン、新人を取り揃えています。

  

           

     (ラウラと夫アレハンドロ)

     

        

        (パコと妻ベア、後ろ向きのバルバラ・レニーで残念)

 

      

                        (ラウラと妹アナ役のインマ・クエスタ)

     

★フランスのプロデューサーのアレクサンドル・マレ=は、『ある過去の行方』と『セールスマン』を手掛けており、俳優としても活躍中のミラノ出身のアンドレア・オキピンティは、『イル・ディーヴォ』、『少年と自転車』、『海を飛ぶ夢』など。アルバロ・ロンゴリアは、フリオ・メデム映画を手掛ている製作者で、クルスが乳がん患者を演じた『あなたのママになるために』(「Ma ma」)、『ローマの部屋』、『セブン・デイズ・イン・ハバナ』、古くはサウラの『イベリア』などをプロデュースしている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、サウラ、今は亡きビガス・ルナ、アルモドバルを撮っているベテラン、音楽のアルベルト・イグレシアスは毎年ゴヤ賞にノミネートされ、ゴヤ胸像のコレクター、やはりお金が掛かっているなぁという印象です。

 

            

       (左から、バルデム、ファルハディ監督、ダリン、フェルナンデス)

*追記:『誰もがそれを知っている』の邦題で、2019年6月01日から公開

 

チリ映画『ナチュラルウーマン』セバスティアン・レリオ2018年03月16日 17:15

                  「私らしく」自分に正直に生きるのは難しい

 

     

セバスティアン・レリオUna mujer fantástica『ナチュラルウーマン』の邦題で公開されました(公開中)。ベルリン映画祭2017にノミネートされて以来、監督フィルモグラフィーを含めて紹介記事を書いてきましたが、第90アカデミー賞外国語映画賞受賞を機に改めて再構成いたしました。先日発表された第5イベロアメリカ・プラチナ賞2018(メキシコのリビエラ・マヤで4月開催)にも作品賞を含めて最多の9部門にノミネートされるなど、依然として勢いは止まりません。前作『グロリアの青春』とメイン・テーマは繋がっています、それは一言でいえば威厳をもった<不服従>でしょうか。

 

  

(オスカー像を手にスピーチする監督、後列左から、フアン・デ・ディオス・ラライン、

ダニエラ・ベガ、フランシスコ・レイェス、パブロ・ラライン、アカデミー賞授賞式にて)

 

 『ナチュラルウーマン』(原題Una mujer fantástica英題「A Fantastic Woman」)

製作:Fabula(チリ)/ Participant Media(米)/ Komplizen Film(独)/ Setembro Cine(西)/

    Muchas Gracias(チリ)/ ZDFARTE(独)

監督:セバスティアン・レリオ

脚本:セバスティアン・レリオ、ゴンサロ・マサ

音楽:マシュー・ハーバート、ナニ・ガルシア(コンポーザー)

撮影:ベンハミン・エチャサレッタ

編集:ソレダード・サルファテ

美術・プロダクション・デザイン:エステファニア・ラライン

衣装デザイン:ムリエル・パラ

 

製作者:フアン・デ・ディオス・ラライン、パブロ・ラライン、セバスティアン・レリオ、ゴンサロ・マサ、(共同)ヤニーネ・ヤツコフスキ、ヨナス・ドルンバッハ、フェルナンダ・デ・ニド、マーレン・アデ、(エグゼクティブ)ジェフ・スコール、ベン・フォン・ドベネック、ジョナサン・キング、ロシオ・ジャデュー、マリアン・ハート

 

データ:製作国チリ=ドイツ=スペイン=米国、スペイン語、2017年、ドラマ、104分、撮影地チリのサンティアゴ。映画祭・限定上映をを除く公開日:チリ201746日、ドイツ同年77日、スペイン同年1020日、米国201822日、日本同年224

 

映画祭・受賞歴:第67回ベルリン映画祭2017正式出品(脚本銀熊賞、エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンション、テディー賞)、第65回サンセバスチャン映画祭2017(セバスティアネ・ラティノ賞)、リマ映画祭2017審査員賞、女優賞)、イベロアメリカ・フェニックス賞(作品賞、監督賞、女優賞)、インディペンデント・スピリット賞(外国映画賞)、ナショナル・ボード・オブ・レビュー2017(外国語映画Top 5)、ハバナ映画祭(審査員特別賞、女優賞)、フォルケ賞2018(ラティノアメリカ映画賞)、ゴヤ賞(イベロアメリカ映画賞)、パームスプリングス映画祭(シネラティノ審査員栄誉メンション、外国映画部門の女優賞)、米アカデミー賞外国語映画賞受賞、以上が主な受賞歴。ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞ノミネート以下、多数の国際映画祭ノミネーションは割愛。

 

主なキャスト(『』は公開・映画祭などで紹介された作品)

ダニエラ・ベガ(マリーナ・ビダル)

フランシスコ・レイェス(オルランド・オネット・パルティエル)、『マチュカ』『ネルーダ』『ザ・クラブ』

ルイス・ニェッコ(オルランドの兄弟ガボ)、『ネルーダ』『No』『泥棒と踊り子』

アリネ・クッペンハイム(オルランドの元妻ソニア・ブンステル)、『マチュカ』『サンティアゴの光』

ニコラス・サアベドラ(オルランドの長男ブルーノ・オネット・ブンステル)

アントニア・セヘルス(レストラン店主アレサンドラ)、『No』『ネルーダ』『ザ・クラブ』

トリニダード・ゴンサレス(マリーナの姉ワンダ・ビダル)、『ボンサイ盆栽』『ネルーダ』

アンパロ・ノゲラ(刑事アドリアナ・コルテス)、『トニー・マネロ』『No』『ネルーダ』

セルヒオ・エルナンデス(声楽教師)、『聖家族』『泥棒と踊り子』『No』『グロリアの青春』

アレハンドロ・ゴイク(医師)、『家政婦ラケルの反乱』『ザ・クラブ』

クリスティアン・チャパロ(マッサージ師)、『モーターサイクル・ダイアリーズ』『ネルーダ』

ディアナ・カシス(サウナ受付)

エドアルド・パチェコ(パラメディコ)、『サンティアゴの光』『見間違うひとびと』

ネストル・カンティリャーノ(ガストン)、『No』『ネルーダ』

ロベルト・ファリアス(警察医)、『サンティアゴの光』『No』『ザ・クラブ』『ネルーダ』

ディアブラ(マリーナの愛犬)

 

物語:心と体の性が一致しないトランスのマリーナ・ビダルの自己肯定と再生の物語。サンティアゴ、マリーナは昼間はレストランのウエイトレス、夜はナイトクラブの歌手として働いている。父親ほど年の離れたパートナーのオルランドと平穏に暮らしていた。二人でマリーナの誕生日を祝った夜、オルランドは激しい発作のあと脳動脈瘤のため帰らぬ人となった。マリーナを待ち受けていたのは、理不尽な社会の偏見、彼の家族の非難と暴力の的になることだった。すべてを失ったマリーナの反逆と尊厳を目にした観客は、亡き人の幻影に導かれ風雨に立ち向かう毅然としたマリーナと共に旅に出ることになる。                     (文責:管理人)

 

      時代で変わる「トランスジェンダー」の語義―「みんなトランスです」

 

A: アカデミー賞外国語映画賞最有力候補、公開前のダニエル・ベガ来日など、チリ映画としては話題の豊富な作品でした。日本でのセバスティアン・レリオの知名度がどれくらいか分かりませんが、前作の『グロリアの青春』を気に入った方にはお薦め作品です。

B: ヒロインのマリーナ・ビダルがトランスジェンダー、ベガ自身も同じということですが、この現在使われている「トランスジェンダーTG」という用語は、スペイン語では比較的最近使われだしたもので、語義の捉え方が一定しているのかどうか疑問です。

 

A: パンフ掲載のインタビューでも来日インタビューでも、ベガは「トランスジェンダーTG」とありますが、スペインで最も重要なゲイのグループが出している雑誌「SHANGAY」のインタビューでは、ベガ自身は「私は女性でトランスであることに誇りに思っている」と言ってるだけです。レリオ監督はマリーナを性転換者を意味する「una mujer transexualトランスセクシュアルの女性)」というTSを使用している。ベガ自身とマリーナが同じかどうか、TGなのかTSなのかはっきりしません。

B: 映画ではセリフから性別適合手術を受けた印象でしたが、「心と体の性別に差がある人」、または「誕生時に割り当てられた性別と異なる性で生きている人」という意味では同じですかね。

 

A: オルランドの死の関与を疑うコルテス刑事と医師の会話からは、まだマリーナの身分証明書が男性のままなのが分かる。そこで法的には男性でも「女性として扱ってやって」という刑事のセリフになる。マリーナも申請中だと法的には男性であることを認める。

B: TGの語義は時代とともに変化していて今は過渡期なのかもしれない。日本語の訳語は定まっていませんが、直訳すれば「性別越境者または移行者」になるのでしょうか。

 

A: ベガは「世間が私をどのように分類するか気にしません。自分の名前がトランスというレッテルで括られる必要のない日が来るかもしれませんし、来なくても構わない、どうせ同じことですから。レッテルは洋服のようなもので、脱いだり着たりする。つまり私は妊娠した女性の役でも男性の役でも演じられるということです」と。

B: 「生まれてきたばかりの赤ん坊の肌はすべすべですが、老いて死ぬときには皺だらけです。日々私たちは変化しています。私たちはみんなトランスなんです」とも発言している。映画の中でも愛犬ディアブラDiablaを取り返すときに見せたドスを効かせた声と、敏捷な動きに観客は唖然とする。

         

A: ジェンダーは社会的性別のことで生物学的な性別とは異なる。TSは「法的に戸籍も移行した性別に変えられるTS」とは全く別だと思うのですが、TS の人も広義のTGに含めて使用しているのかもしれません。

 

             映画の構想は「トロイの木馬」だった

  

B: 本作はLGBTがテーマではありません。ベルリナーレでプレミアしたとき、こんなインディ映画がオスカー像をチリにもたらすなんて誰が想像したでしょうかね。

A: 本映画祭の脚本銀熊賞が大きかったと思います。レリオ監督によると、そもそもの出発は「もし愛していた人が自分の腕の中で急に死んでしまったら何が起きるか、予想もつかない悪いことが起こるに違いないという問いが自分を突き動かした」と、昨年のサンセバスチャン映画祭で語っていた。

 

B: 脚本が「トランスセクシュアルの女性に行き着くまで試行錯誤の連続だった」というから、発想の順序が逆ですね。

A: 「トロイの木馬」だったようです。TSの女性は後から飛び出してきて勝利した。クラシック映画を超現代的にコーティングして、社会が価値のある人間と認めていない誰かを主人公にして撮ったら面白いのではないか。例えば、トランスセクシュアルの女性をヒロインにして、あたかも1950年代のジャンヌ・モローのようにエレガントに演じさせたらと考えた。

 

B: そこで当時暮らしていたベルリンからチリに帰国して主人公探しを始め、辿りついたのがダニエラ・ベガだったわけですね。

A: 起用されるまでの経緯は、ベガがあちこちのインタビューで語っているので割愛しますが、監督によるとチリの知人に取材したところ、二人の別々の人物が「それならダニエラ・ベガだよ」と即座に推薦したと。それまでにベガは、マウリシオ・ロペス・フェルナンデスのLa visitaTSのため家族からも疎んじられる女性を演じ、マルセーユ映画祭のような国際映画祭では女優賞を受賞していたからです。

 

        

     (TS の女性エレナ役のベガ、ロペス・フェルナンデスの「La visita」から)

   

B: それにシンガー・ソング・ライターのマヌエル・ガルシアのビデオクリップMaríaに登場したことが大きいのではないか。以来TV出演が増えるなど存在が知られるようになっていた。多分エリート保守派が幅を利かせるチリでも、少しずつ社会変革が進んでいるのでしょう。

A: ベガ自身も「14歳でカミングアウトした時と、13年後の現在では雲泥の差がある」と語っている。社会の壁を破るのは「法より芸術のほうが早かった」とアートの力を実感している。出演を受けたとき、ハリウッドで脚光を浴びるとは夢にも思わなかったはずです。

 

      

      (ダニエラ・ベガ、マヌエル・ガルシアのビデオクリップ《María》から)

 

 

       『ナチュラルウーマン』にはドン・ペドロはおりません

  

B: ルイ・マルやヒッチコック映画へのオマージュ、目配せのシーンが多数あるとパンフのインタビューにありました。マリーナがマイケル・ジャクソンみたいに風に向かって前傾して歩くシーンはバスター・キートンからの連想とか。スペイン語圏の人はチャップリンよりキートン好きが多い。

A: ルイ・マルのデビュー作『死刑台のエレベーター』58)のジャンヌ・モロー、ヒッチコックの『めまい』(58)、撮影中常に頭にあったのはブニュエル『昼顔』66)だったそうです。

 

B: 大勢からアルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』99)他、アルモドバルの影響を質問されるが、「とても光栄なことだが無関係」と否定していますね。

A: 「登場人物にトランスセクシュアルな女性が出てきたり、メロドラマへの目配せやスリラーを交差させることなどあると観客はアルモドバルを連想するけれど、『ナチュラルウーマン』にはドン・ペドロはおりません」と言ってます。

B: ダニエラ・ベガが演じたマリーナには、モンローのエレガントな雰囲気が漂っている。多分監督がベガに50年代のクラシック映画に現れたヒロインたちを研究するよう示唆したせいだと思いますね。

   

A: 構想から脚本完成まで1年半ほどかかった。ベルリンに戻ってからは、ベガとの取材や連絡は電話とかスカイプを利用し、シナリオが半分くらいにきたところで「主役を探さなくても目の前にいるじゃないか」とパチンときた。

B: つまり「ダニエラがマリーナ」だったわけですね。人との出会いは不思議ですね。

 

      マリーナに寄り添う巧みな選曲、心に沁みる「オンブラ・マイ・フ」

           

A: 本作では音楽の占める位置が重要です。邦題が「ファンタスティック・ウーマン」から「ナチュラルウーマン」になったのは、アレサ・フランクリンの名曲「A Natural Woman」の「You make me feel like a

natural woman( あなたのそばにいると、ありのままの自分でいられる)」から採られている。個人的には内容からして、ことさら「ファンタスティック」を「ナチュラル」に変える必要がどこにあったのかと思っています。

B: マリーナは「あなたがいなくなっても、ありのままの自分でいられる」自立した女性に生れ変わるのだから、これこそ「ファンタスティック・ウーマン」です。

 

A: セルヒオ・エルナンデスが演じた歌の先生の伴奏で歌う「Sposa son disprezzata(蔑ろにされている妻)」という曲は、ボーイソプラノの美声を保つために去勢したオペラ歌手(カストラート)だったファリネッリのために書かれたものだそうです。

B: ファリネッリはバロック時代に実在した有名なカストラート、『王は踊る』のジェラール・コルビオがファリネッリのビオピック『カストラート』(94)を撮っている。

A: ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞の受賞作品でした。悲劇には違いないですが最後には光がさすところなど、マリーナとファリネッリを重ね合わせている印象をもちました。

 

B: 「愛を探しにきたのかも」というマリーナに対して、先生は「君が探しているのは愛ではない」と諭す。聖フランシスコは愛をくれ平和をくれとは言わない。

A: 聖フランシスコは「私を君の愛の手段に、君の平和の手掛かりに」と言っているだけだと。浮いたセリフに聞こえるシーンですが、マリーナが心を許している数少ない登場人物の一人がこの歌の先生、常にベガを支えてくれる父親の姿が投影されているようだ。両親の支えがなかったら今日のダニエラ・ベガは存在しない。

   

B: 「私の人生は自分で決めたい。もし賛成してくれるなら、それはファンタスティックだ」と打ち明けたとき「分かったよ、一緒に進もう」と言ってくれた父親、「それで何か問題がある? ないでしょ」と応じてくれた母親、予想される世間の中傷をものともしない家族の存在は大きい。

A: 先生を演じたセルヒオ・エルナンデスはチリのベテラン、パブロ・ララインの『No』や『グロリアの青春』にも出演している。観客を一時和ませてくれる役柄でした。

 

B: 愛犬ディアブラを取り戻したマリーナがラストで歌うヘンデルの「Ombra mai fu(オンブラ・マイ・フ)」も、カストラートのために作曲された。

A: 厳しい日差しを遮ってくれるプラタナスの木陰に感謝する曲、偏見からマリーナを守ってくれた亡きオルランドへ捧げる歌になっている。エモーショナルなシーンでした。

B: 冒頭のナイトクラブでマリーナが楽しそうに歌っていた、サルサ歌手エクトル・ラボーの「Periodico de ayer(昨日の新聞)」、マリーナがディスコで踊りまくるファンタスティックなシーンで流れるのはマシュー・ハーバートのスコア、エンディングではアラン・パーソンズの別れを受け入れる「Time」など、総じて音楽が映画を魅力あるものにしている。

 

      

          (ラストで「オンブラ・マイ・フ」を歌うマリーナ)

 

         愛と寛容、レジスタンスと尊厳―「私たちは何者であるか?」

 

A: 本作はトランスの人々の権利について論争を起こしましたが、チリのエリート階級は保守派で占められ、ラテンアメリカ諸国のなかでもLGBTへの偏見の強い国と言われています。実際『家政婦ラケルの反乱』の監督セバスティアン・シルバはチリを脱出、数年前からNYのブルックリンを本拠地にして英語で映画を撮っています。

B: 5年前から議論されていた「Ley de Identidad de Géneroジェンダー・アイデンティティ法」が、やっとローマ法王フランシスコが来訪する1日前の2018115日に可決されました。

A: 310日に退任したミシェル・バチェレ政権に残された仕事の一つでした。バチェレ大統領は38日の「国際女性デー」には、女性相クラウディア・パスクアルやダニエラ・ベガと共に街頭に出て、女性の権利平等を訴えました。

セバスティアン・ピニェラ大統領が311日に就任した。

 

          

       (左から、バチェレ大統領、ベガ、パスクアル女性相、201838日)

 

B: チリ社会も変わりつつあるのでしょうが、人々の意識変革はおいそれとは進まない。オルランドの死後、家族がマリーナに見せた顔が実態でしょう。

A: オルランド役のフランシスコ・レイェス、ルイス・ニェッコが演じたオルランドの兄弟ガボ、アントニア・セヘルスが扮したレストラン主人アレサンドラなどは少数派、葬式に集まった親戚一同、特にマリーナの顔をテープでぐるぐる巻きにしてしまうニコラス・サアベドラ演じる息子ブルーノと親戚の男たちが多数派、社会の多数派はトランスをこのように見ているのだという強烈なメッセージでした。

B: 多数派の一人、警察医になったロベルト・ファリアスは、『ザ・クラブ』でクラブに突然舞い込んできて元神父たちをかき回すキーパーソン、サンドカンを演じたベテラン、元妻か別居妻か分からなかったソニアを演じたアリネ・クッペンハイムなど、本作の脇役陣は豪華版です。

  

    

           (テープで顔を巻かれたマリーナの強烈なシーン)

 

A: ブルーノは「お前はいったい何者なんだ?」とマリーナをギリシャ神話に出てくる怪物キマイラ扱いする。それは取りもなおさず「私たちは何者であるか?」という問いですね。これが本作の根源的なテーマ、愛だの反逆などは副次的なものです。自分を捨て若いトランスに走った夫を許せないソニアや家族の復讐は、メロドラマとしてサービスされた小道具です。

B: 家庭を壊された家族が、壊れた原因がなんであれ破壊者に辛く当たるのは当たり前です。マリーナの不幸はオルランドの愛にかこつけたエゴや社会認識の甘さが理由のひとつですよ。死んだ後もマリーナの幻影として登場させているが、いずれのシーンもデジャヴ、鏡の多用など多分クラシック映画への目配せ、エールですかね。好き嫌いがはっきり分かれる。

 

         「無」を描くのが好き―円環的なサスペンス

 

A: 多くのチリ人が避けてきたテーマを引きずり出したことが評価された。チリのエリート階級が保守的なのは、パブロ・ララインやアンドレス・ウッドの映画から読み取れます。映画とは関係ありませんが、古くは1945年ノーベル文学賞を受賞したガブリエラ・ミストラルは、その官能的な詩、1946年知り合って以来死ぬまで個人秘書だったアメリカ人のドリス・ダナとの親密な関係を批判された。

B: 幼年時代を歌った詩人、優れた教師、有能な外交官としてのミストラルだけでいて欲しかった。

A: ドリス・ダナは2006年に没するまでミストラルの遺言執行人だったのですね。ミストラルとダナとの関係を調べて、マリア・エレナ・ウッドがドキュメンタリーLocas Mujeres2011)を撮っています。

 

          

          (在りし日のガブリエラ・ミストラルとドリス・ダナ)

 

B: マリア・エレナ・ウッドは、最近ご紹介したTVミニシリーズ「メアリとマイク」をプロデュースしたばかりの監督、製作者ですね。

A: ウッドは「政治的立場は違っていても、エリート階級はおしなべて保守的」とコメント「ミストラルに偏見をもたずに紹介しているのは、チリ本国より外国のほうです」とも付け加えている。ピノチェト政権が17年間も長持ちしたのも、そういうエリートたちのお蔭でしょうか。

 

B: サスペンスの要素、例えば「181」というナンバーが付いた鍵、マリーナは偶然からそれがサウナのロッカーの鍵だと分かる。

A: 観客はオルランドがサウナでマッサージをうけているシーンから始まったことを思い出す。彼の体調の異変の前兆としか捉えていなかったから、サウナが伏線だったことを知る。突然逝ってしまったオルランドが、何かマリーナに残しているのではないかと前のめりになると、そこは空っぽ。

B: 何か見落としたのではないかと不安になるが、そこは「無」、哲学的です。トランスが置かれている闇かもしれない。

 

A: 「無」を言うなら、マリーナはオルランドを失っただけでなく同時に車やアパート、その他もろもろ、彼の贈り物だった愛犬さえとられてしまう。しかもディアブラは生きている、一緒に戦いたい。

B: ディアブラは単なる犬ではなく戦友なのだ。スペイン語のDiablaは「女の悪魔」という意味で、これはちょっと笑える。

 

A: オスカー像を手にチリ凱旋を果たした監督一同、国民はどんな反応をしたのでしょうか。「Ley de Identidad de Género」の可決に尽力してくれたバチェレ大統領への挨拶、ファンへの報告など多忙を極めていることでしょう。「なんてファンタスティックなの!」「ダニエラ、おめでとう!」と異口同音に迎えるだろうが、彼女はサンティアゴ空港に「ダニエラ・ベガ」で入国できたかどうか、どうでしょうか。ここから第一歩が始まる。

 

          

           (監督、ベガ、右側がバチェレ大統領、36日)

 

B: チリに初めてオスカー像がもたらされたのは、2016年の短編アニメーションだそうですね。

A: ガブリエル・オソリオHistoria de un Oso(2014、11分)というアニメーション、監督の祖父でピノチェト政権時代に亡命した社会学者だったレオポルド・オソリオの痛みを描いているそうです。「私たちが何者なのかを理解するために鏡に向き合わねばならない」と監督。テーマが本作と繋がっているようです。

   

       

   

  (左がオスカー像を手にした監督、右はアニメーターのパトリシオ・エスカラ、2016年)

          

ダニエラ・ベガDaniela Vega Herenández女優、叙情歌手。198963日サンティアゴのサン・ミゲル生れ、のち家族はニュニョアに引っ越し弟が生まれる。8歳のとき叙情歌手としての才能を見出され、サンティアゴの小さな合唱団で歌い始める。父親の理解のもとプロの声楽教師のもとで本格的に学ぶようになる。しかしその女らしさゆえ学校生活ではさまざまな偏見と差別に苦しむ。14歳のとき家族に女性にトランスすることを打ち明け、家族は直ちに共に歩むことを受け入れる。高校卒業後、美容師としての一歩を踏み出すかたわら、正式な演技指導は受けていなかったが地方の演劇団の仲間入りをする。

 キャリア

2011年、マルティン・デ・ラ・パラの演劇La mujer mariposaでオペラを歌う主役に抜擢され、チリ国内の多くの劇場で5年間ロングランした。

2014年、シンガー・ソング・ライターのマヌエル・ガルシアのビデオクリップMaríaに登場、TV出演が増えるなど話題になる。

2014年、マウリシオ・ロペス・フェルナンデスのデビュー作La visitaTSの女性エレナを演じる。本作はチリのバルディビア映画祭でプレミア、後OutFest、グアダラハラ、トゥールーズ、マルセーユ、各映画祭に出品され、マルセーユ映画祭2015の女優賞を受賞、監督が作品賞を受賞した。

201617年、セバスティアン・デ・ラ・クエスタ、ロドリゴ・レアルなどの演出で「Migrantesの舞台に立つ。

2017年、セバスティアン・レリオのUna mujer fantásticaで主役マリーナに起用される。

2017年、ビスヌ・イ・ゴパル・イバラのブラックコメディUn domingo de julio en Santiagoでストレートの女性弁護士に扮する。

 

   

        (演劇「La mujer mariposa」でのダニエラ・ベガ)

 

レリオ監督のキャリア&フィルモグラフィーについては、コチラ2017126

  

『ナチュラルウーマン』 ほか、お薦め公開作品2018年02月12日 18:09

            フェルナンド・レオン・デ・アラノア『ロープ 戦場の生命線』が公開

 

 フェルナンド・レオン・デ・アラノアA Perfect Day(「Un dia perfecto2015)が『ロープ 戦場の生命線』という邦題で既に劇場公開されています。主な言語は英語ですがゴヤ賞2016の最優秀脚色賞を受賞した作品です。パウラ・ファリアスの小説 Dejarse llover(仮訳「雨は降ったままで」)の映画化です。オリジナル・タイトルのA perfect Day は、1995年のボスニア紛争中に作られたブルックリン出身のルー・リード(19422013)の歌詞から採られているそうです。監督の最新作Loving Pabloに出演したハビエル・バルデムとペネロペ・クルスの二人は、ゴヤ賞2018主演男優・女優賞にノミネートされました。こちらも英語映画ですから公開されるでしょうか。

 

★カンヌ映画祭と併催される「監督週間」でワールド・プレミアされた折りと、ゴヤ賞2016でノミネートされたときに作品紹介をしております。1995年、停戦直後のバルカン半島の紛争地が舞台、国際支援活動家 5人の動機もさまざまです。モラトリアムの冴えない中年男ティム・ロビンス、もう嫌気がさしているベニチオ・デル・トロ、デル・トロの元カノオルガ・キュリレンコ、住民の役に立ちたいメラニー・ティエリー、早く終わりにしたいフェジャ・ストゥカンと、キャスト陣も個性豊かです。放り込まれた死体で飲めなくなった井戸と1本のロープをめぐって奔走する。目立ちたがり屋だが当てにできない国連職員をからませて、可笑しくても笑えない戦争コメディドラマ。

A Perfect Day」の作品紹介・監督キャリアの記事は、コチラ2016114

 

    

           (死体が投げ込まれている井戸を覗く5人の活動家)

 

公開2018210日、新宿武蔵野館、渋谷シネパレス、他

 

 

       ゴヤ賞2018イベロアメリカ映画賞受賞の『ナチュラルウーマン』

 

     

★これから公開が予定されている映画がセバスチャン・レリオ『ナチュラルウーマン』、自身トランスジェンダーのダニエラ・ベガがヒロインのマリナ・ビダルを演じる。既に詳細な公式サイトも立ち上がっております。34日に結果発表のあるアカデミー賞外国語映画賞5作品に踏みとどまることができました。チリとしてはパブロ・ララインの『No』以来です。受賞すれば初めてとなります。製作会社はラライン兄弟の「Fabula」が中心、『No』のときの経験を生かしてプロモーションに力を入れていることでしょうが、対抗馬には『ザ・スクエア 思いやりの聖域』など話題作が顔を揃えています。当ブログでは原題のUna mujer fantásticaでご紹介しています。

 

      

               (ダニエラ・ベガ、映画から)

 

★監督とベガはゴヤ賞のガラ(23日)に出席してトロフィーを受け取ったばかりですが、25日に行われたアカデミー賞の候補者招待昼食会にも姿を見せていました。実話を元にしたスピールバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に出演、主演女優賞ノミネートのメリル・ストリープと歓談しているフォトなども配信されていました。今年はフェミニズムが脚光を浴びているから、もしかしたら・・・期待したい。

『ナチュラルウーマン』(「Una mujer fantástica」)の主な記事は、コチラ2017126

    

   

         (ダニエラ・ベガとレリオ監督、23日のゴヤ賞ガラにて)

 

公開2018224日、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、順次全国ロードショー。

  

 *映画新情報 

ルクレシア・マルテル『サマ』が、ロッテルダム映画祭2018124日~24日)の優れたオランダとの共同製作作品に贈られるKNF 賞を受賞しました。ベネチア映画祭2017でワールドプレミアして以来、出品した国際映画祭は多数に上りますが、審査員の意見が割れるのか、なかなか受賞には結びつかないようです。

 

★ゴヤ賞助演女優賞にノミネートされ、授賞式には出席するとアナウンスされながら、次回作撮影のためパスしたロラ・ドゥエニャスですが、次回作のアウトラインが見えてきました。短編作家として活躍しているセリア・リコ・クラベリーノの長編デビュー作Viaje alrededor del cuarto de una madreです。同じゴヤ賞助演女優賞にノミネートされたアンナ・カスティーリョと母娘を演じる。他の共演者は助演女優賞受賞のアデルファ・カルボペドロ・カサブランクなど実力者が脇を固めています。

    

       

        (左から、アンナ・カスティーリョ、監督、ロラ・ドゥエニャス)