アランチャ・エチェバリア監督紹介*ゴヤ賞2025 ⑧ ― 2025年01月25日 15:43
「La infiltrada」で初の監督賞ノミネート――アランチャ・エチェバリア

(アランチャ・エチェバリア監督)
★アランチャ・エチェバリア(ビルバオ1968)、監督、脚本家、製作者。マドリードのコンプルテンセ大学で映像科学を専攻、同大学のCMAでオーディオビジュアル制作を学んだ。その後オーストラリアのシドニー・コミュニティ・カレッジで映画製作を学んでいる。1991年、映画と広告宣伝を両立させ、オーディオビジュアル業界でのキャリアを築いてきた。2010年、アマチュアだけを起用して撮った「Panchito」でテレマドリード賞を受賞、つづく「Cuestión de pelotas」は、スポーツの才能がありながら清掃員として雇用される女子サッカー選手に関するドキュメンタリー、これにより王立サッカー連盟は女性たちの雇用の正規化を余儀なくされた。

(主演の二人、『カルメン&ロラ』から)
★2013年、サイコスリラー「De noche y de pronto」(20分、主演ハビエル・ゴディノ)が翌年のゴヤ賞短編映画部門にノミネート、モリンズ映画祭審査員賞、ロスのイーテリア・フィルム・ナイト・フェスティバルで短編賞を受賞した。コメディ「Yo, presidenta」には、プロの俳優(チュス・ランプレアベ、ビト・サンス、サブリナ・プラガ、タバタ・セレソなど)を起用した。「El último bus」では、タバタ・セレソやハビエル・ゴディノを再び起用したホラーを撮った。エチェバリアの短編作家としてのキャリアは長く、専門家の評価は高い。そして2018年、カンヌ映画祭併催の「監督週間」に正式出品された『カルメン&ロラ』で50歳にしてゴヤ賞2019新人監督賞を受賞した。その他、例年3月に開催される「メディナ・デル・カンポ映画週間」は21世紀の監督Roel賞を授与、グアダラハラFF、トゥールーズFF、パームスプリングスFF、バジャドリードFFで授与式がある女性監督に贈られるドゥニア・アヤソ賞など受賞歴多数。
*『カルメン&ロラ』の作品紹介は、コチラ⇒2018年05月13日

(ゴヤ胸像を手にしたアランチャ・エチェバリア、ゴヤ賞2019ガラ)

(21世紀の監督Roel賞のトロフィーを手に、メディア・デル・カンポ映画週間2019ガラ)
★長編2作目「La familia perfecta」(脚本オラッツ・アロヨ)は、裕福な家族(ベレン・ルエダとゴンサロ・デ・カストロ夫婦)と労働者階級(ホセ・コロナドとペパ・アニオルテの夫婦)の子供たちが結婚したことで衝突するコメディ。カロリナ・ジュステがコロナドの娘役で出演している。階級格差の設定がいささかステレオタイプ的、不要と思われる登場人物の多さが損をしている。コメディの110分は長すぎて疲れます。Netflixで配信されていますが日本語字幕はなく、西語、英語、独語他で鑑賞できます。コロナド・ファンならお奨めかもしれない。

★3作目「Chinas」は、マドリードの中国人コミュニティのウセラ地区が舞台、中国の他ラテンアメリカやアジア、アフリカからの移民が多いバリオである。今回監督は脚本も手掛けている。ここで二つの家族、一つは中国移民の4人家族、9歳のルシアとティーンエージャーのクラウディアと両親、もう一つがレオノール・ワトリングとパブロ・モリネロの夫婦が養女にした中国生れの9歳のシャンの家族。9歳の二人の少女が学校で出合うことでドラマが始まる。監督は中国出身の3人の少女のアイデンティティを探求している。ゴヤ賞2024、新人男優賞(フリオ・フー・チェンJulio Hu Chen)、新人女優賞(Xinyi Ye、Yeju Ji)、オリジナル歌曲賞(マリナ・エルロップ)がノミネートされた。俳優賞ノミネートの3人は、スペイン俳優組合賞をそれぞれ受賞している。その他ディアス・デ・シネ賞の観客賞受賞作品。

★4作目「Polítecamente incorrectos」は、再びオラッツ・アロヨの脚本による政治風刺コメディ、次の総選挙で左派と保守派の2大政党が対決する。出演者アドリアナ・トレベハノは左派政党を応援、フアンル・ゴンサレスは保守派を応援している。二人は政治信条は異なるが惹かれあっているという設定。エレナ・イルレタ、ゴンサロ・デ・カストロが脇を固めて概ね演技は評価されたものの全体としては評価は低かった。それぞれ政治家にはモデルがいるようです。

★長編5作目「La infiltrada」でゴヤ賞2025の作品賞、監督賞、脚本賞を含む13カテゴリーにノミネートされた。『カルメン&ロラ』で新人監督賞を受賞しているが、監督賞ノミネートは初めてです。体重オーバーで健康が心配ですが、ダイエットは難しそうです。以下に主なフィルモグラフィーをアップしておきます。
*「La infiltrada」の作品紹介は、コチラ⇒2025年01月15日
◎主なフィルモグラフィー(アンソロジー、TVシリーズは除く)
2010「Panchito」短編、テレマドリード賞受賞
2010「Cuestión de pelotas」ドキュメンタリー
2012「Don Enrique de Guzmán」短編
2013「De noche y de pronto」短編、ゴヤ賞2014短編映画賞ノミネート
2015「Yo, presidenta」短編(19分)、メディナ・デル・カンポ映画週間でプロジェクト賞受賞
2015「El solista se la orquesta」短編ドキュメンタリー
2016「El último bus」短編(17分)短編ホラー
2017「7 from Etheria」(女性監督7人のアンソロジー)
2018「#SHE」
2018「Carmen y Lola」『カルメン&ロラ』長編デビュー、ゴヤ賞2019新人監督賞受賞
2021「La familia perfecta」『The Perfect Family』コメディ、長編2作目、
Netflix(日本語字幕なし)
2023「Chinas」長編3作目
2024「Polítecamente incorrectos」長編4作目
2024「La infiltrada」長編5作目
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