メイド・イン・スペイン部門クロージング作品*サンセバスチャン映画祭2024 ㉒ ― 2024年09月17日 17:16
1975年2月4日、マドリードの全劇場の幕は揚がらなかった!
★メイド・イン・スペイン部門のクロージング作品、アルバ・ソトラのドキュメンタリー「Mucha mierda / Break a Leg」は、フランコ政権下末期の1975年2月4日に、スペインの俳優たちが初めてストライキに立ち上がった闘いの記録です。ストライキ参加者へのインタビュー、アーカイブ、映画の抜粋を織り交ぜ9日間の闘いが語られる。来る2025年は50周年記念の年、8名の逮捕者を出した2月8日は、奇しくも第39回ゴヤ賞2025の授賞式に当たる。フランコ将軍が七転八倒のすえ他界したのは、同じ年の11月20日の明け方でした。
「Mucha mierda / Break a Leg」
製作:David Lara Films / Quexito Films / 協賛ICAA 参画マドリード市議会、
モビスター+、RTVE
監督:アルバ・ソトラ
脚本:アルバ・ソトラ、ダビ・アルナンス
撮影:イレネ・ガルシア・マルティネス
編集:エレナ・カストロビエホ
音楽:フェルナンド・バカス・ナバロ
録音:フリアン・バケラ
製作者:ダビ・ララ、ミゲル・ゴンサレス、ファミリアル・ヒメネス・アバド、(エグゼクティブ)モンセラット・サンチェス
データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語、ドキュメンタリー、84分
映画祭・受賞歴:SSIFF2024メイド・イン・スペイン部門クロージング作品
キャスト:アナ・ベレン、ティナ・サインス、ホセ・サクリスタン、マヌエラ・ベラスコ、マリサ・パレデス、カロリナ・ジュステ、ペトラ・マルティネス、フアン・マルガーリョ、ロシオ・ドゥカル、フアン・ディエゴ
解説:1975年2月4日、マドリードのどの劇場でも幕が揚がりませんでした。ドアに貼られたポスターには「俳優が出演しないため公演は中止」と書かれていました。この日は俳優による歴史的なストライキの初日で、以来9日間国内は活動が麻痺状態になりました。彼らの要求は「法律で定められている通り、週1日の休日」というものでした。サラ・モンティエルやロラ・フロレスがストライキを支持すると、労働者の権利の要求で始まったものが、政治的挑発に変化した。報道規制にもかかわらず、このニュースは世界中に広まり、彼らは80ヵ国以上から支援の電報を受け取った。政治社会担当部署の担当者がストライキ参加者のあいだに潜入し首謀者をあぶり出し、固い団結を粉砕した。2月8日に逮捕された8人のなかには、ティナ・サインス、ロシオ・ドゥカルが含まれている。他に最前線でキャリアや自由を危険にさらした参加者には、コンチャ・ベラスコ、アナ・ベレン、フアン・ディエゴ、ホセ・サクリスタンなどがいた。本作は今まで語られることのなかった、主人公たちによって語られた物語です。勿論検閲などありません。
(アナ・ベレン)
★高い代償を払ったキャストのなかにはフアン・ディエゴ(2022年4月没)のように鬼籍入りしてしまった俳優も多い。左派の政治活動で知られる彼は、この俳優ストライキの組織化に主導的な役割を果たしている。反対にコンチャ・ベラスコの姪マヌエラ・ベラスコ(1975生れ)のようにまだ産声を上げていなかった人もいる。コンチャは2023年12月に10年前から闘っていたリンパ腫で亡くなったが、女優として2013年にゴヤ栄誉賞を受賞した人らしく最後まで現役に拘った女優でした。ゴヤ賞2022栄誉賞の受賞者ホセ・サクリスタンは86歳になっても現役を続けている。ペトラ・マルティネス、フアン・マルガーリョは夫婦揃って出演、ペトラ・マルティネスはマリア・パレデスと一緒に本作紹介のため現地入りがアナウンスされている。
(マリサ・パレデス)
(ペトラ・マルティネス)
★監督紹介:アルバ・ソトラ(カタルーニャ州タラゴナ県レウス1980)は、監督、脚本家、製作者。ドキュメンタリー「Game Over」がマラガ映画祭2015ドキュメンタリー賞、ドクスバルセロナでニュータレント賞、ガウディ賞2016ドキュメンタリー賞などを受賞、「The Return: Life After ISIS」(21)は、10代でイスラム国に入った女性たちが、その後自国への帰還を希望するが、故国は彼女たちを拒絶する背景を語るドキュメンタリー、ワルシャワFFドキュメンタリー賞、ドクスバルセロナ観客賞ほか、ガウディ賞2022受賞、ゴヤ賞2022はノミネートに終わった。製作者としては、当ブログ紹介のアレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケスのヒット作「Upon Entry」(22)、カルラ・スビラナの「Sica」(23)などを手掛けている。
(アルバ・ソトラ監督)
★本作について監督は、「ストライキがどのように捏造されたか、警察の監視、政権の暴力的な反応、ストライキの国際的側面、抵抗勢力に供給された資金の出所を伝えます」。また「女性のリーダーシップ、刑務所と過酷な報復についても語ります」とインタビューに応えている。労働者と雇用主が同じ組合に所属しており、俳優たちは劇場オーナーの言いなりにならざるを得なかった。「この闘いの遺産は生き残っていますが、もっとも重要なことは、何年も仕事が貰えなかった人もいたということで、今日でもそれは尾を引いている」と監督。
(問題作「The Return: Life After ISIS」のポスター)
*「Upon Entry」の作品紹介は、コチラ⇒2023年07月01日
*「Sica」の作品紹介は、コチラ⇒2023年03月12日
最近のコメント