第11回フェロス賞2024*結果発表 ― 2024年01月30日 09:49
映画部門『ミツバチと私』とTVシリーズ部門「Mesias」が作品賞

★1月26日、第11回フェロス賞2024の授賞式がマドリードのパラシオ・デ・ビスタレグレで開催されました。総合司会者はコリア・カスティーリョとブライス・エフェの重量級コンビが務めました。映画は「20.000 especies de abejas」(邦題『ミツバチと私』)がドラマ部門の作品賞と助演女優賞の2冠、これは想定内の受賞でしたが、「Robot Dreams」(邦題『ロボット・ドリームズ』)がコメディ部門の作品賞、オリジナル音楽賞、ポスター賞の3冠を受賞、ノミネート3個を全部ゲットして、これは少し予想外でした。セリフなしのアニメーション、その魅力的な登場人物(?)や観客の心をとらえた音楽のお蔭でしょう。

(コリア・カスティーリョとブライス・エフェ)

(『ミツバチと私』のキャストとクルー)
★TVシリーズのドラマ部門は、ロス・ハビスの「La mesías」が作品・脚本・主演男優・助演男優・主演女優・助演女優賞と6冠、もらえる賞のすべてを独占しましたが、その後遺症が気になります。コメディ部門の作品賞はぺポン・モンテロの「Poquita fe」が受賞しました。

(「La mesías」のキャストとクルー)
★ビクトル・エリセの「Cerrar los ojos」(邦題『瞳をとじて』)は、ノミネーション最多の10個でしたが、結局無冠に終わりました。勿論、日本のシネマニアはフェロス賞など眼中にないから痛くも痒くもありません。イサベル・コイシェの「Un amor」(邦題『ひとつの愛』)も7個ノミネーションで無冠、オスカー賞ノミネートに踏みとどまった「La sociedad de la nieve」(邦題『雪山の絆』)のフアン・アントニオ・バヨナが監督賞、他にハリー・イートンが予告編賞を受賞しました。受賞者欠席で共演者のサンティアゴ・バカとアルフォンシナ・カロシオが代理で受けとりました。このアルゼンチン出身の若い二人は昨年のシッチェス映画祭にも監督と参加していましたから次回作に起用するのかもしれません。既に世界の100,000,000人以上が観たということですから3月10日のオスカー賞が待たれます。脚本賞は「Upon Entry (La llegada)」の監督と脚本を手掛けたアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスティアン・バスケスの手に渡りました。
★演技部門では、管理人の予想が的中して主演女優賞に「Que nadie duerma」のマレナ・アルテリオ、主演男優賞に「Saben aquell」のダビ・ベルダゲルが受賞、助演部門では「Te estoy amando locamente」のラ・ダニ、「20.000 especies de abejas」のパトリシア・ロペス・アルナイスが受賞、彼女はゴヤ賞では主演にノミネートされています。本作の主役はベルリン映画祭2023の銀熊主演賞を受賞した当時9歳のソフィア・オテロですが、スペインでは子役はノミネートから外されることが多く、これは賢明な判断だと思います。ラ・ダニは出演映画もノーチェックでしたが、ゴヤ賞は新人男優賞にノミネートされています。
★過去のフェロス栄誉賞受賞者は、ホセ・サクリスタン、チチョ・イバニェス・セラドール、昨年はペドロ・アルモドバルが受賞して会場を盛り上げました。今年は女優でTV 司会者のモニカ・ランダル(ランドールとも表記)が受賞しました。受賞者は御年81歳、「昨年はペドロ・アルモドバル、今年は私が受賞しました。同じではありません、私たちの美は異なっていますから」とユーモアたっぷりのスピーチをしました。1963年デビュー、銀幕からは引退していましたが、ダビ・ベルダゲルが主演男優賞を受賞したトゥルエバの「Saben aquell」に本人役で出演しています。TV司会者、舞台は現役です。マカロニウエスタン全盛期には多くの作品で活躍した女優です。
第11回フェロス賞2024結果発表(*は紹介作品)
◎作品賞(ドラマ)
「Un amor」(邦題『ひとつの愛』) 同イサベル・コイシェ *
「Cerrar los ojos」(邦題『瞳をとじて』) 同ビクトル・エリセ *
「La sociedad de la nieve」(邦題『雪山の絆』) 同J. A. バヨナ *
「Upon Entry (La llegada)」 同アレハンドロ・ロハス&
フアン・セバスティアン・バスケス *
「20.000 especies de abejas」(邦題『ミツバチと私』)
製作ララ・イサギーレ、バレリー・デルピエール
監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン

(受賞スピーチをするララ・イサギーレ)

(真夜中の12時過ぎなのにソフィアも登壇、左が監督)
◎作品賞(コメディ)
「Bajo terapia」 監督ヘラルド・エレーロ *
「Las chicas están bien」 同イチャソ・アラナ
「Mamacruz」 同パトリシア・オルテガ
「Te estoy amando locamente」 同アレハンドロ・マリン
「Robot Dreams」(アニメーション、邦題『ロボット・ドリームズ』)
製作アンヘル・ドゥランデス、イボン・コルメンサナ、イグナシ・エスタペ、
サンドラ・タピア 監督パブロ・ベルヘル


(ベルヘル監督も製作に参加、右隣が音楽エディターのユウコ夫人)
◎監督賞
イサベル・コイシェ 「Un amor」
ビクトル・エリセ 「Cerrar los ojos」
エレナ・マルティン・ヒメノ 「Creatura」 *
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
J. A. バヨナ 「La sociedad de la nieve」


◎主演女優賞
ライア・コスタ 「Un amor」
キティ・マンベール「Mamacruz」
マリア・バスケス 「Matria」 監督アルバロ・ガゴ
カロリナ・ジュステ 「Saben aquell」 同ダビ・トゥルエバ *
マレナ・アルテリオ 「Que nadie duerma」 監督アントニオ・メンデス・エスパルサ *


◎主演男優賞
アルベルト・アンマン 「Upon Entry (La llegada)」
エンリク・アウケル 「El maestro que prometió el mar」 監督パトリシア・フォント
ホヴィク・ケウチケリアン 「Cerrar los ojos」
マノロ・ソロ 「Cerrar los ojos」
ダビ・ベルダゲル 「Saben aquell」 監督ダビ・トゥルエバ

(受賞者欠席のためダビ・トゥルエバ監督がトロフィーを受けとった)

(ダビ・トゥルエバ監督と主演者のカロリナ・ジュステ)
◎助演女優賞
アネ・ガバライン 「20.000 especies de abejas」
ルイサ・ガバサ 「El maestro que prometió el mar」
アイタナ・サンチェス≂ヒホン 「Que nadie duerma」
アナ・トレント 「Cerrar los ojos」
パトリシア・ロペス・アルナイス 「20.000 especies de abejas」


(昨年のTVシリーズ『インティミダ』助演女優賞に続いての受賞)
◎助演男優賞
ルイス・ベルメホ 「Un amor」
ホセ・コロナド 「Cerrar los ojos」
オリオル・プラ 「Creatura」
ウーゴ・シルバ 「Un amor」
ラ・ダニ 「Te estoy amando locamente」 監督アレハンドロ・マリン


(登壇から退場するまでエモーショナルなスピーチをした受賞者)
◎脚本賞DANA
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
イサベル・コイシェ、ラウラ・フェレロ 「Un amor」
ビクトル・エリセ 「Cerrar los ojos」
エレナ・マルティン・ヒメノ 「Creatura」
フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス 「La llegada」


(黄色の帽子がフアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス)
◎オリジナル音楽賞
フェデリコ・フシド 「Cerrar los ojos」
セルティア・モンテス 「Que nadie duerma」
マイケル・ジアッキーノ 「La sociedad de la nieve」
ニコ・カサル 「Te estoy amando locamente」
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「Robot Dreams」

(観客の心をふるわせた作曲家アルフォンソ・デ・ビラリョンガ)
◎ポスター賞
「20.000 especies de abejas」
「Cerrar los ojos」
「O corno」(監督ハイオネ・カンボルダ)*
「Hermana Muerte」(『ブラックサン』監督パコ・プラサ)
「Robot Dreams」 ホセ・ルイス・アグレダ


(イラストレーター、ホセ・ルイス・アグレダ)
◎予告編賞
「20.000 especies de abejas」
「Cerrar los ojos」
「Saben aquell」
「Te estoy amando locamente」
ハリー・イートン 「La sociedad de la nieve」

(受賞者欠席のため共演者サンティアゴ・バカとアルフォンシナ・カロシオが受けとった)

(左から、サンティアゴ・バカ、バヨナ監督、アルフォンシナ・カロシオ)
◎TVシリーズ作品賞(ドラマ)
「El cuerpo en llamamas」(Netflix)
「El hijo zurdo」(Movistar Plus+)
「Rapa 2」(Movistar Plus+)
「Selftape」(Filmin)
「La mesías」(Movistar Plus+)製作ドミンゴ・コラル、フラン・アラウホ、
スサナ・エレラス、ハビエル・カルボ、ハビエル・アンブロッシ


(6冠制覇の受賞者たち)
◎TVシリーズ作品賞(コメディ)
「Citas Barcelona」(TV3, Amazon Prime Video)
「Esto no es Suecia」(RTVE Play y 3Cat)
「El otro lado」(Movistar Plus+)
「Poquita fe」(Movistar Plus+)
製作フラン・アラウホ、イグナシオ・コラレス、ペペ・リポル
監督(クリエイター)ぺポン・モンテロ、フアン・マイダガン

(右側がぺポン・モンテロ監督)

◎TVシリーズ主演女優賞
ウルスラ・コルベロ 「El cuerpo en llamamas」
マカレナ・ガルシア 「La mesías」
エスペランサ・ペドレーニョ 「Poquita fe」
アナ・ルハス 「La mesías」
ロラ・ドゥエニャス 「La mesías」

◎TVシリーズ主演男優賞
ハビエル・カマラ 「Rapa 2」
ラウル・シマス 「Poquita fe」
パトリック・クリアド 「Las noches de Tefía」(Atresplayer)
キム・グティエレス 「El cuerpo en llamamas」
ロジェール・カザマジョール 「La mesías」(欠席)

◎TVシリーズ助演女優賞
アマイア・ロメロ 「La mesías」
タマラ・カセリャス 「El hijo zurdo」
フリア・デ・カストロ 「Poquita fe」
カルメン・マチ 「La mesías」
イレネ・バルメス 「La mesías」


◎TVシリーズ助演男優賞
アンドレウ・ブエナフエンテ 「El otro lado」
チャニ・マルティン 「Poquita fe」
ビエル・ロッセル・ペルフォート 「La mesías」
ホセ・マヌエル・ポガ 「El cuerpo en llamamas」
アルベルト・プラ 「La mesías」

(受賞者欠席のため共演者4人がトロフィーを受けとった)
◎TVシリーズ脚本賞
ラウラ・サルミエント、エドゥアルド・ソラ、カルロス・ロペス、
ホセ・ルイス・マルティン 「El cuerpo en llamamas」
ラファエル・コボス 「El hijo zurdo」
ベルト・ロメロ、ラファエル・バルセロ、エンリク・パルド 「El otro lado」
ペポン・モンテロ、フアン・マイダガン 「Poquita fe」
ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ、ナチョ・ビガロンド、
カルメン・ヒメネス 「La mesías」

(左から、カルメン・ヒメネス、ハビエル・カルボ、ハビエル・アンブロッシ)
◎フェロス感動賞(フィクション)
「Sobre todo de noche」 監督ビクトル・イリアルテ、製作バレリー・デルピエール他


(受賞者ビクトル・イリアルテ、製作者のバレリー・デルピエール)
◎フェロス感動賞(ノンフィクション)
「La Singla」 製作ナジャ・スミス、パオラ・サインス・デ・バランダ
監督パロマ・サパタ
*難聴のフラメンコダンサー、アントニア・シングラのドキュメンタリー

(受賞スピーチするパロマ・サパタと製作者たち)

◎フェロス栄誉賞
モニカ・ランダル(女優、テレビ司会者)1942年バルセロナ生れ。マラガ映画祭2018のビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞を受賞した折にキャリア&フィルモグラフィーの紹介をしています。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年03月30日


★フェロス賞はスペイン映画ジャーナリスト協会AICEが主催する映画賞、マリア・ゲーラ会長の挨拶スピーチには、カルロス・ベルムトによる3人の女性へのセクハラ告発の問題も含まれていた。これに対してAICEは全面的に被害者を支援するとの表明があった。この件については詳細が分かりませんので後にアップするとして今回は触れません。3時間にも及ぶお祭り気分も吹き飛んでしまいます。


(性被害を告発するマリア・ゲーラAICE会長)

(煌びやかなベストドレッサーたち)
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