アルゼンチン映画「Karnawal」*マラガ映画祭2021 ⑱2021年06月13日 18:38

      フアン・パブロ・フェリックスのデビュー作「Karnawal

 

      

 

フアン・パブロ・フェリックスのデビュー作Karnawalは、昨年トロント、グアダラハラ、オスロなど既に国際映画祭巡りをしてマラガにやってきました。アルゼンチン映画とはいえブラジル、チリ、メキシコ、ボリビア、ノルウェーとの合作。キャストにチリのベテラン俳優アルフレッド・カストロ、ガウチョ起源のタップダンス「マランボ」のダンサーに、マランボ・ワールドチャンピオンを連覇しているマルティン・ロペス・ラッチを起用、二人は複雑な父子関係を演じます。ボリビアと国境を接するアルゼンチン最北西部の州フフイで撮影された。マラガFFでは3日めの65日に上映され、監督以下主演演者二人も来マラガしてプレス会見に臨んだ。特に過去の暗部に縛られた父親を演じたカストロは、同じセクション・オフィシアルにノミネートされているクラウディア・ピントLas consecuenciasにも主演していることから、メディアのインタビューに追われているようでした。

   


      

     

   (マルティン・ロペス・ラッチ、監督、アルフレッド・カストロ、65日)

 

Karnawal2020

製作:Bikini Films(アルゼンチン)/ Moinhos Produçoes Artisticas(ブラジル)/

   Picardia Films(チリ)/ Phottaxia Pictures(メキシコ)/

   Londra Films(ボリビア)/ Norsk Filmproduksjon(ノルウェー)

監督・脚本:フアン・パブロ・フェリックス

音楽:レオナルド・マルティネリ、Tremor

撮影:ラミロ・シビタ

編集:エドゥアルド・セラーノ、ルス・ロペス・マニェ

キャスティング:マリア・ラウラ・ベルチ

プロダクション・デザイン:セサル・モロン

美術:ダニエラ・ヴィレラ

衣装デザイン:レジナ・カルボ、ガブリエラ・バレラ・ラシアル

メイクアップ:ナンシー・マリグナク

プロダクション・マネージメント:マリア・カルカグノCalcagno

製作者:アレクシス・ロディル、フリーダ・トレスブランコ、(エグゼクティブ)エドソン・シドニー、ほか多数

 

データ:製作国アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ、ボリビア、ノルウェー、スペイン語、2020年、ドラマ、95分、撮影地アルゼンチンのフフイ州、ボリビアのビリャソン、両国の国境地帯ほか

映画祭・受賞歴:トゥールーズ映画際2020正式出品、20216月アルフレッド・カストロ栄誉賞受賞、トロントTIFF、グアダラハラ映画祭、監督賞・男優賞(アルフレッド・カストロ)受賞、オスロ映画祭、サンタバーバラ映画祭2021、マラガ映画祭など

 

キャスト:マルティン・ロペス・ラッチ(カブラ)、アルフレッド・カストロ(カブラの父エル・コルト)、モニカ・ライラナ(母ロサリオ)、ディエゴ・クレモネシ(母の恋人エウセビオ)、他

 

ストーリー:カブラはボリビアの国境近くのアルゼンチン北部で母親と暮らしている。若者の夢はガウチョのフォルクローレのタップダンス、マランボのプロフェッショナルになることである。目前に迫ったカーニバルは、マランボ・ダンサーにとって最も重要な祭り、その準備に余念がない。ところが思いがけず詐欺師の父エル・コルトが数日間の休暇をもらって刑務所から戻ってくる。エル・コルトはカブラとその母親をミステリアスな旅に誘い出す。エル・コルトの真意が分からぬまま、母と息子は既に暴力と犯罪の危険に晒されていることに気づくだろう。カーニバルはディアブロも目覚めさせてしまうのだ。カブラはカーニバルのマランボ・コンクールに間に合うでしょうか。自分の夢を実現するために父を捨てることができるでしょうか。父と息子の境界線、父と母とその恋人との三角関係、アルゼンチンとボリビアの国境線、自由の息吹きとしてのアートの役割を織り交ぜて、ドキュメンタリーの手法を取り入れたロードムービー。

 

        

                 (再会した父と息子

 

 

   自由の息吹きとしての芸術の役割――ガウチョ起源の<マランボ>の魅力

 

★タイトル「Karnawal」は、先住民語のケチュア語とスペイン語の造語でカーニバルを指す。マランボMalamboというのは、アルゼンチン伝統の男性だけのフォルクローレ、もともとはガウチョ起源のタップダンスで、ガウチョの衣装とブーツ姿で踊る。映画に見られるように毎年マランボ・コンテストがあり、カブラを演じたマルティン・ロペス・ラッチはマランボ・チャンピオンを連覇しているプロフェッショナルだそうです。当ブログでは、ベルリン映画祭2018に正式出品されたサンティアゴ・ロサMalambo, el hombre buenoを紹介しています。こちらのダンサーはプロのガスパル・ホフレです。

Malambo, el hombre bueno」の紹介は、コチラ20180225

 

  

             (マランボを踊るマルティン・ロペス・ラッチ、映画から)

 

       

   

(カブラと母ロサリオ役のモニカ・ライラナ)

  

   

        (刑務所から戻ってきたエル・コルト役のアルフレッド・カストロ

 

★監督紹介:フアン・パブロ・フェリックスは、1983年ブエノスアイレスのアレシフェス生まれ、監督、脚本家、製作者。ENERC卒業、学位取得後7年間、FXスタントチームの総プロデューサーとして特殊効果やアクション・デザインを手掛ける。TVシリーズ、短編、コマーシャル(アルゼンチン、スペイン)を製作後、2020年「Karnawal」で長編デビューした。2021年ドキュメンタリーFuerzas vivasを撮る。

 

    

     (第35回グアダラハラ映画祭2020監督賞受賞のフアン・パブロ・フェリックス)

 

★プレス会見で、「カーニバルの重要性は、人々を解放し、変革をもたらす自由の息吹きを秘めているからです。この地域の人々は普段はそっ気なく控えめですが、カーニバルがやってくると、伝統に則った象徴性とメタファーを通して自由奔放になります。それはカーニバルの数日間は悪魔から解放されるからです」と監督。また「レゲトンの商業的攻勢にもかかわらず、世代を超えてこのように文化遺産が守られていることに感動する」ともコメントした。

 

         

                (左から、ロペス・ラッチ、監督、カストロ、プレス会見)

 

★父親エル・コルト役のアルフレッド・カストロは、「この映画は女性の視点から見ると、とても優れた深遠な興味を起させる外観をもっている。この文脈からはほとんど気づかれませんが、男性のマチスモが反映されています。というのも男性は驚くほど何もしません。毎日働くのは女性たち、商いをするのも、国境を越えるのも、すべて女性です」とコメントした。

 

      

    (息子を危険に晒す父親エル・コルト、アルフレッド・カストロ)

 

★授賞発表が迫ってきていますが、カストロの男優賞受賞はかなりの確率でアリでしょうか。最優秀作品賞の金のビスナガは、スペイン映画とイベロアメリカ映画から1作ずつ選ばれます。後者は8作と作品数も少ないから、もしかしたら受賞するかもしれない。


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