マリアノ・バロッソに特別賞「レトロスペクティブ賞」*マラガ映画祭2021 ② ― 2021年04月22日 14:27
マラガ特別賞<レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ>にマリアノ・バロッソ
★マリアノ・バロッソの名前はゴヤ賞の度に登場させているのですが、スペイン映画アカデミーAACCE副会長に就任した折に簡単なキャリア&フィルモグラフィーを紹介しただけでした(第15代会長はイボンヌ・ブレイク)。ブレイク会長が2018年新春3日にゴヤ賞ガラの準備中体調不良で緊急入院、回復することなく鬼籍入りして、ゴヤ賞2018のガラから実質的に会長職を担ってきました。AACCE会長の正式就任は2018年7月9日、現在にいたっています(任期は3年)。
*マリアノ・バロッソのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2016年10月29日
★更に映画祭では、バロッソ映画の多くの脚本を共同執筆したアレハンドロ・エルナンデスとの広範なインタビュー記事を集めた本がパリド・フエゴによって上梓される予定ということです。その中にはバロッソ監督のキャリア&フィルモグラフィーも含まれる。アレハンドロ・エルナンデスはキューバ出身だが、今世紀初めからスペインに軸足をおいている。2005年の「Hormigas en la boca」以来、「El mejor de Eva」、TVミニシリーズ「Todas las mujeres」や「La línea invisible」などが挙げられる。彼はアメナバルの『戦争のさなかで』や、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』など、他監督ともタッグを組んでいる脚本家です。
*アレハンドロ・エルナンデスの紹介記事は、コチラ⇒2018年06月01日
(ゴヤ賞2014脚色賞を受賞したバロッソ監督と脚本家のアレハンドロ・エルナンデス)
バルセロナ派を牽引する監督、脚本家、プロデューサー
★マリアノ・バロッソ、1959年バルセロナ生れ、監督、脚本家、製作者、第16代スペイン映画アカデミー会長を2018年より務めている。ロスアンゼルスのアメリカン・フィルム・インスティテュート、インスティテュート・サンダンスで映画を学び、マドリードのスペイン・シアターやウィリアム・レイトン・ラボラトリーで演劇を学びました。キューバのサンアントニオ・デ・ロス・バニョスの映画TV学校(1997~99)、アリカンテのシウダッド・デ・ラ・ルスの映画学校、メネンデス・ペラヨ国際大学、プラハ・フィルム・スクール、コロンビア国立大学、ナッシュビルのワトキンス・カレッジで教鞭をとり、またマドリード映画視聴覚学校ECAMの監督コーディネーターも務めています。TVシリーズや広告も手掛けながら映画と舞台、かたわら後進の指導に当たっています。
(ゴヤ賞2021ガラで挨拶するマリアノ・バロッソ)
★フェルナンド・コロモに見出され、「Mi hermano del alma」(93)で長編第2作がベルリン映画祭に出品された。翌年のゴヤ賞新人監督賞を受賞、他カルロヴィ・ヴァリ映画祭1994で監督賞クリスタル・グローブやサン・ジョルディ賞を受賞した。1990年代のカタルーニャを舞台に全く性格の異なる兄弟を描く、いわゆるカインとアベルの物語、脚本はコロモとホアキン・オリストレルが共同執筆、キャストのフアン・エチャノベ(ゴヤ賞助演男優賞)、フアンホ・プイグコルベ(サン・ジョルディ男優賞)、カルロス・イポリット(ムルシアFFフランシスコ・ラバル男優賞)などがそれぞれ評価され、その演技力は後の活躍で証明されている。代表作は以下の通り(製作順)
(兄弟役を演じた左からプイグコルベとイポリットを配したポスター)
1990年Es que Inclan está loco (メキシコ映画)コメディ、長編デビュー作
1993年Mi hermano del alma
1996年Lucrecia (TVムービー)
1996年Extasis
1999年Los lobos de Washington
2000年Kasbah (アルゼンチンとの合作)
2001年In the time of the butterflies(En el tiempo de las mariposas、米=メキシコ合作)
2005年Hormigas en la boca (キューバとの合作、英題Ants in the Mouth)
2007年Invisibles(ドキュメンタリー)セグメント「Los sueños de Bianca」
2012年El mejor de Eva
2013年Todas las mujeres
*以下、TVシリーズ
1991~92年Las chicas de hoy en dia(5話)TVデビュー作
2010年Todas las mujeres(6話)2013年映画化された。
2018年El día de mañana(6話)
イグナシオ・マルティネス・デ・ピソンの小説をベースにオリオル・プラが脚色
2019年Criminal(3話)Netflix オリジナル作品、2019年9月20日より配信
2020年La línea invisible(6話)
★1996年アンテナ3 のためテレビ・ムービー「Lucrecia」をカルメ・エリアス、フアン・ディエゴ・ボトーを起用して撮る。同年国際映画祭巡りをした「Extasis」を撮る。ハビエル・バルデム、アルゼンチン出身のベテラン、フェデリコ・ルッピ、シルビア・ムントが出演、カルロヴィ・ヴァリ以下、ベルリン、ロンドン、ワシントン、マル・デ・プラタなどの映画祭で上映され、ニューヨーク批評家協会賞、ACE作品賞などを受賞した。脚本はホアキン・オリストレルと共同執筆、父と息子の関係がテーマ。
(ハビエル・バルデムを配した「Extasis」のポスター)
★1999年「Los lobos de Washington」は、脚本をフアン・カベスタニーが執筆したアクション・スリラー、バルを経営するハビエル・バルデムとエドゥアルド・フェルナンデスが金策に困り、裕福な古い友人ホセ・サンチョのマネーを横取りする。他にエルネスト・アルテリオ、アルベルト・サン・フアンなど芸達者が出演、スペイン公開後にトロント映画祭に出品された他、トゥールーズ映画祭でバロッソが監督賞を受賞した。バルデムはエグゼクティブ・プロデューサーも兼ねている。
(バルデムを中央に5人の主演者を配したポスター)
★2001年「In the time of the butterflies」は、米国のTVムービーとしてMGM&ShowTimeが製作、言語は英語、メキシコ・シティやベラクルスで撮影された。サルマ・ハエックやプエルトリコ出身の歌手マルク・アンソニーが出演している。2005年「Hormigas en la boca」は、ジャーナリストで作家の実兄ミゲル・バロッソ(サラゴサ1955)の暗黒小説「Amanecer con hormigas en la boca」(1999年刊)の映画化、脚本をキューバ出身のアレハンドロ・エルナンデスと共同執筆したクラシックなフィルム・ノワール。革命前の1950年代のハバナが舞台、エドゥアルド・フェルナンデス、アリアドナ・ヒル、キューバのホルヘ・ぺルゴリアが主演、ハバナで撮影された。マラガ映画祭で審査員特別賞を受賞した他、主役のエドゥアルド・フェルナンデスが男優賞を受賞した。
(主演3人を配した「Hormigas en la boca」のポスター)
★ドキュメンタリー「Invisibles」は、バロッソを含む5人の監督、イサベル・コイシェ、ハビエル・コルクエラ、フェルナンド・レオン・デ・アラノア、ヴィム・ヴェンダースがそれぞれセグメントを担当した。アフリカで活躍する国境なき医師団の姿を追ったドキュメンタリー。ハビエル・バルデムが製作、ゴヤ賞2008長編ドキュメンタリー賞とフォルケ賞ドキュメンタリー賞を受賞した。
★「Todas las mujeres」は、2010年のTVミニシリーズの映画化、ゴヤ賞2014脚色賞をアレハンドロ・エルナンデスと受賞、3個目のゴヤ胸像となる。他サン・ジョルディ賞、トゥリア賞、ディアス・デ・シネ賞などを受賞。キャストはバロッソ映画の常連エドゥアルド・フェルナンデス、ナタリエ・ポサ、マリア・モラレス、ペトラ・マルティネス、ミシェル・ジェンナーなど。
(ゴヤ賞2014脚色賞の「Todas las mujeres」のポスター)
★TVミニシリーズでは、「Criminal」がNetflixで2019年9月から配信されている。脚本は第1話と第3話がアレハンドロ・エルナンデス、第2話がマヌエル・マルティン・クエンカ、キャストは、エンマ・スアレスを主役に、エドゥアルド・フェルナンデス、カルメン・マチ、ホルヘ・ボッシュ、インマ・クエスタ、アルバロ・セルバンテスと当ブログ常連の演技派を揃えている。このシリーズはイギリス編、ドイツ編、フランス編と4ヵ国対決となっている。
(エンマ・スアレスとカルメン・マチを配したポスター)
★演劇では、「El hombreelefante」(B・ポメランセ、出演アナ・ドゥアルト、ペレ・ポンセ)、「Closer」(パトリック・マルベル、出演ベレン・ルエダ、ホセ・ルイス・ガルシア・ぺレス)、「Recortes」(出演アルベルト・サン・フアン、ヌリア・ガリャルド)が代表作。他にさまざまな市民団体のために「Medicos del mundo」や「Greenpeace」のようなドキュメンタリーも手掛けている。
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