エドゥアルド・クレスポの「Nosotros nunca moriremos」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑰ ― 2020年10月04日 10:30
セクション・オフィシアル部門にノミネートされたアルゼンチン映画

★ラテンアメリカ諸国からコンペティション部門に唯一ノミネートされた、エドゥアルド・クレスポの第3作目「Nosotros nunca moriremos」は、賞には絡めませんでしたが評価の高かった作品でした。上質のロードムービーのようで、主役の母親を演じたロミナ・エスコバルがトランスセクシュアルということも話題のようでした。クレスポは撮影監督でもあり、昨年のホライズンズ・ラティノ部門のオリソンテス受賞作品ロミナ・パウラの「De nuevo otra vez」を手掛けています。新作はラテンアメリカ映画の登竜門的セクションであるホライズンズ・ラティノではなくコンペティション部門ということで、コロナ禍の状況下にしては監督以下大勢が現地入りしていました。今年は中止と諦めかけていたラテンビート2020がオンラインで開催されるということで、もしかしたらと期待してアップしておきます。
*「De nuevo otra vez」の作品紹介は、コチラ⇒2019年09月10日

(ロミナ・エスコバルとエドゥアルド・クレスポ、9月23日のフォトコール)
「Nosotros nunca moriremos」(「We Well Never Die」)2020
製作:SANTIAGO LOZA / RITA CINE / PRIMERA CASA / EDUARDO CRESPO
監督:エドゥアルド・クレスポ
脚本:エドゥアルド・クレスポ、サンティアゴ・ロサ、リオネル・ブラベルマン
撮影:イネス・ドゥアカステージャ
音楽:ディエゴ・バイネル
編集:ロレナ・モリコーニ
製作者:サンティアゴ・ロサ、エドゥアルド・クレスポ、ラウラ・マラ・タブロン
データ:製作国アルゼンチン、スペイン語、ドラマ、83分、スペイン公開2021年3月予定
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2020セクション・オフィシアル部門正式出品、スペイン協力賞ノミネート
キャスト:ロミナ・エスコバル(母)、ロドリゴ・サンタナ(次男ロドリゴ)、ジェシカ・フリッケル(消防士)、ジョヴァンニ・ぺリツァーリ(消防士)、ブライアン・アルバ(長男)、セバスティアン・サンタナ、他
ストーリー:母親はロドリゴを連れて、22歳になる長男が死んだばかりという小さな町を訪れている。息子の遺体を確認し埋葬するためである。この穏やかな土地で服喪の最初の時間が流れる。次男ロドリゴは大人たちの痛みを垣間見ながら、それとは気づかれずに子供時代に別れを告げるだろう。母親は息子の死の謎を明らかにしたいと思っているが、それは彼の過去の人生を辿ることでもあった。この透明な映画は、愛を捧げようとする孤独な人々のメランコリックで控えめなユーモアに溢れている。家族間で露わになる記憶の合流をパラレルに描くことで、それぞれが自身と向き合うことになるだろう。時が止まったような忘れられた土地を彷徨う上質のロードムービー。
★エドゥアルド・クレスポ紹介、1983年アルゼンチンのエントレ・リオス州クレスポ生れ、監督、脚本家、撮影監督、製作者。2012年、長編「Tan cerca como pueda」(マル・デル・プラタ映画祭正式出品)、2016年、生れ故郷クレスポについてのドキュメンタリー「Crespo(La continuidad de la memoria)」、サンティアゴ・ロサと共同監督したTVシリーズ「Doce casas : historia de mujeres devotas」(14)は、マルティン・フィエロ賞ほかを受賞した。撮影監督としては上記の「De nuevo otra vez」の他、サンティアゴ・ロサの「Breve historia del planeta verde」(19)、イバン・フンドの「Hoy no tuve miedo」(11)などが挙げられる。

★主役のロミナ・エスコバルとサンセバスチャンの散策も楽しんだ監督、「ここに来られることが夢でした」。その理由を言う必要はありませんね。ロミナのほうが注目されても彼女の傍らで静かに見守りながらにこやかに対応する監督、映画と同じように静謐で控えめな監督は、アルゼンチンの農村部で暮らす人々に敬意を表する映画を撮った。

(クルサール会場近辺を散策するクレスポ監督とロミナ・エスコバル)
★ロミナ・エスコバル(ブエノスアイレス1974)は、主役の母親に抜擢された。昨年のベルリン映画祭2019パノラマ部門に出品された「Breve historia del planeta verde」は、ロサ監督がテディー賞とテディー・リーダー賞の2冠を受賞した作品。本作ではロミナ・エスコバルはトランスセクシュアルのDJ役になった。アルゼンチンではかなり注目されているスターのようで、TVシリーズ「Pequeña Victoria」(19、49話)出演で人気があるようです。新作ではトランスセクシュアルでない役柄に抜擢され「トランスセクシュアルの役柄ばかりでうんざりしていました。今回の母親役で、私が尊敬し、人生で私を支えてくれたアルゼンチンのすべての女性に敬意を表します」と、サンセバスティアンで語っている。アルゼンチンのTV局ともスカイプでインタビューを受けるほどの人気ぶりです。2006年のドノスティア栄誉賞受賞者マット・デイモンのツーショットや大ファンのヴィゴ・モーテンセンにも会え、大いに映画祭を楽しんだようです。
*「Breve historia del planeta verde」の作品紹介は、コチラ⇒2019年02月19日

(母親役のロミナ・エスコバル、映画から)

(ロドリゴ役のロドリゴ・サンタナ)

(消防士に扮するなるジョヴァンニ・ぺリツァーリとジェシカ・フリッケル)

(母親とロドリゴ)

(「Breve historia del planeta verde」のポスター)
★映画祭はとっくに終了してしまいましたが、気になりながら割愛していた作品を、11月19日から開催されるラテンビートを視野に入れてアップできたらと思っています。
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