オリヴィエ・アサイヤスの『WASPネットワーク』*Netflix 配信始まる2020年06月29日 05:45

       東西冷戦後のキューバ現代史の1ページ、群像劇でも主役はいます

 

       

              (スペイン語版ポスター)

 

619日から、オリヴィエ・アサイヤスWASPネットワーク』19)のNetflix 配信が始まりました。爆発的な新型コロナウイルス感染がなければ公開するはずだったかもしれない。ベネチア映画祭2019コンペティション部門でワールド・プレミアされましたが、評価が得られず賞には絡めませんでした。続いてトロント、サンセバスチャン、チューリッヒ、ニューヨーク、ロンドン他、各映画祭で上映こそされましたが似たり寄ったりの結果でした。東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門でも上映されましたが、登場人物が出たり入ったりの群像劇、ガエル・ガルシア・ベルナル目当ての観客にはなかなか本人が登場せず、やっと現れるや額がかなり広くなっていてショック、旧ソ連邦崩壊後のキューバの実情に疎いと少々分かりづらく、更に的外れのストーリー紹介も手伝って、スパイ・スリラー『カルロス』10)や『パーソナル・ショッパー』16)のアサイヤス・ファンもがっかりだったかもしれません。

 

      

   (監督、ペネロペ・クルス、エドガー・ラミレスなどが一堂に会したベネチア映画祭)

 

オリヴィエ・アサイヤス(パリ1955)、監督、脚本家。アサイヤスは生まれたときから映画に関わっている。というのも父親のレイモンド・アサイヤスはイスタンブール生れのユダヤ系フランス人の脚本家、ペンネームのジャック・レミーのほうで知られ、第2次世界大戦中は南米のチリやアルゼンチンで映画に関わり戦後フランスに戻ってきたという経歴のシネアスト。オリヴィエ自身はパリ生まれですが、アジアやラテンアメリカにシンパシーがあるのは父親の影響かもしれません。スタートは父と一緒に脚本を執筆、監督デビューは1986年と30歳を過ぎていた。長編6作目となる『イルマ・ヴェップ』(「Irma Vep96)に香港女優マギー・チャンを起用して国際的な評価を得た。1998年に結婚したが長続きせず2001年離婚、その後も『クリーン』04)のヒロインに起用するなど公私は区別するタイプ、本作はカンヌ映画祭に出品、彼女に女優賞をもたらした。

 

             

                 (オリヴィエ・アサイヤス)

 

★その後『夏時間の庭』08)、ベネズエラ生れの伝説上のテロリスト、イリイチ・ラミレス・サンチェス、別名ジャッカルを主人公にした、TVミニシリーズ『コードネーム:カルロス』10)を短縮した『カルロス』を撮った。この実在した国際テロリストを演じたのが『WASPネットワーク』出演のエドガー・ラミレスでした。彼は翌年セザール賞の新人男優賞を受賞した。4回目のパルムドールを狙った『アクトレス 女たちの舞台』14)は好評を博し、ジュリエット・ビノシュが演じる女優のマネージャー役に扮したクリステン・スチュワートが絶賛された。そして5回目のカンヌとなるサイコ・スリラー『パーソナル・ショッパー』(16)でアサイヤスは初の監督賞を受賞した。2018年の『冬時間のパリ』は、お気に入りのジュリエット・ビノシュが主演した大人のラブコメでした。コメディからスリラー・アクションまで守備範囲は広い。

    

          

         (エドガー・ラミレス、映画『カルロス』から)

 

 

 WASPネットワーク』(オリジナル「Wasp Network」、スペイン版「La Red Avispa」)2019

製作:Orange Studio / RT Features / CG Cinéma / Nostromo Pictures

監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス

原作:フェルナンド・モライス Os Ultimos Soldados da Guerra Fria2011年刊)

   英語版タイトルThe Last Soldiers of the Cold War「冷戦の最後の戦士たち」

音楽:エドゥアルド・クルス

撮影:ヨリック・ル・ソー、ドゥニ・ルノワール

編集:シモン・ジャケ

製作者:シャルル・ジルベール、ホドリゴ・テイシェイラ、(以下エグゼクティブ)シルヴィー・バルテ、ミゲル・アンヘル・ファウラ、フェルナンド・フライア、アドリアン・ゲーラ、ソフィー・マス、リア・ロドリゲス、アラン・テルピンス、セリナ・トレアルバ

 

データ:製作国スペイン=ブラジル=フランス=ベルギー、スペイン語・英語、ロシア語、実話に基づくスリラー・アクション、123分、撮影地ハバナ、グランカナリア島、他、撮影期間2019218日~54日、配給メメント・フィルムズ、公開フランス2020129日、他ハンガリー、リトアニア、エストニア、ロシア、ギリシャ、コロナ感染拡大で以下は2020619日 からのNetflix 配信となる。

映画祭・受賞歴:ベネチア映画祭2019正式出品、トロント、ドーヴィル(仏)グランプリ受賞、サンセバスチャン、チューリッヒ、ニューヨーク、釜山、ロンドン、サンパウロ、東京、リオ、各映画祭で上映された。

 

主なキャスト紹介

ペネロペ・クルス:オルガ・サラヌエバ・ゴンサレス、レネ・ゴンサレスの妻、後に娘を連れてマイアミで夫と合流する。夫逮捕後にオルガも3ヵ月間収監される

エドガー・ラミレス:レネ・ゴンサレス(シカゴ1956)パイロット、WASPのメンバー、キューバン・ファイブの1人、1990128日潜入、1998912日逮捕、2011107日仮釈放、米国市民権放棄を条件に2013422日に帰国、刑期12

ガエル・ガルシア・ベルナル:ヘラルド・エルナンデス(ハバナ1965、別名マヌエル・ビラモンテス)WASPのリーダー、キューバン・ファイブの1人、プエルトリコ人として偽パスポートで199112月潜入、1998912日逮捕、囚人交換で20141217日釈放

ワグネル・モウラ:フアン・パブロ・ロケ、パイロット、WASPのメンバー、19922月潜入、身分を偽ってアナ・マルガリータと結婚、その後秘かに帰国、1998年の逮捕を免れた4名のなかの一人。

アナ・デ・アルマス:アナ・マルガリータ・サンチェス、ロケがスパイと知らずに結婚

レオナルド・スバラグリア:ホセ・バスルト、<救助に向かう同胞> のリーダー

ノーラン・ゲーラ:ラウル・クルス・レオン、エルサルバドール人。1997年反カストロ派にリクルートされたテロリスト、ハバナの複数のホテルに仕掛けた爆薬C-4でイタリア人が犠牲になる。同日キューバ警察により逮捕され、禁固30年の刑で収監中

トニー・プラナ:ルイス・ポサーダ・カリレス、元CIAエージェント、亡命キューバ人の活動家、別名ラモン・メディナ、2018年に死去、享年90

フリアン・フリン:PUNDのパイロット、通称エル・ティグレ・ビラモンテ

オマール・アリ:CANF財団会長ホルヘ・マス・カノサ、反カストロ活動の黒幕、1997年没

カロリナ・ペラサ・マタモロス:イルマ(6歳)、オスデミ・パストラナ(10歳前後)

フリオ・ガベイ:マイアミに亡命しているロケの従兄弟、FBIに情報を提供している

アネル・ペルドモ:ヘラルド・エルナンデスの妻アドリアナ

アドリア・キャリー・ぺレス:レナード連邦裁判官

アマンダ・モラド:マイアミに移住したイルマとイベットの祖母テテ

他、WASPのメンバーのうち <キューバン・ファイブ> のメンバーなど多数

 

ストーリー1990年ハバナ、パイロットのレネ・ゴンサレスは妻のオルガ、娘のイルマをハバナに残したままアメリカに亡命、新しい人生を始める。旧ソ連邦崩壊後の90年代のキューバは、観光業による経済再建を計画していたが、フロリダに亡命したキューバ人の反カストロ勢力のテロ行為に苦悩していた。そこでキューバ政府は男性12名、女性2名からなる通称WASPネットワークを結成、フロリダに潜入させることにした。このグループを統率するのがヘラルド・エルナンデス、別名マヌエル・ビラモンテスだった。ゴンサレスが盗んだソ連製の複葉機アントノフ2で秘密裏にマイアミに飛んだのは、彼らと合流して反カストロのテロ行為を未然に封じることだった。しかし何も知らされていなかったオルガと娘は、裏切り者、売国奴の汚名を着せられていた。(文責:管理人)

 

本作を楽しむための豆知識

WASPネットワーク:マイアミを中心に反カストロ宣伝活動をする組織 <CANFFNCA> 及び <救助に向かう同胞> に送り込まれたヘラルド・エルナンデスを長とする14名のキューバのスパイ・グループ。英語WASP、西語Avispaはススメバチの意、映画では「狩蜂」とあった。

CANFFNCA:キューバ系アメリカ人財団または全米キューバ米国人財団。Cuban American National Foundation / La Fundación Nacional Cubano Americana の頭文字。1981年フロリダ州マイアミにおいて、カストロ社会主義政権の打倒を目指すホルヘ・マス・カノサらが設立した。亡命キューバ人の反カストロの組織としては最大の規模を有しているが、1997年カノサ没後は強硬路線を修正している。

救助に向かう同胞:または <救援の兄弟たち> Brothers to the Rescueブラザーズ・トゥ・ザ・レスキュー、スペイン語Hermanos al Rescate 19915月、ホセ・バスルトをリーダーにマイアミで設立された。キューバから筏などで脱出する亡命者を救助するのが目的だが、他にハバナ上空での反カストロ打倒のビラ撒き、麻薬や武器の密輸を仲介している。

キューバン・ファイブ/マイアミ・ファイブ19989月に逮捕されたWASPのメンバー10人のうち、無実を主張して司法取引に応じなかった5人を称賛して付けられた。ヘラルド・エルナンデス、レネ・ゴンサレスの他、本作には少ししか登場しなかった、エコノミストでキーウェストに移ってサルサの教師をしていたラモン・ラバニーノ、土木技師でカラテ教師アントニオ・ゲレーロ、フェルナンド・ゴンサレスの5人。彼らは全員キューバのDGI(諜報機関)に所属していた。本作の主人公レネ・ゴンサレスの2011107日仮釈放、フェルナンド・ゴンサレスの2014227日釈放、残るヘラルド・エルナンデスら3人も20141217日に囚人交換で釈放、全員キューバに英雄として帰国している。

 

     

            (自由の身になったキューバン・ファイブ)

 

       

     (左から、ラモン・ラバーニ、アントニオ・ゲレーロ、レネ・ゴンサレス、

  フェルナンド・ゴンサレス、ヘラルド・エルナンデスのキューバン・ファイブ、映画から)

 

 

                 親カストロでも反カストロでもないと言うけれど・・・

 

A: 『カルロス』の監督アサイヤスにブラジルの作家フェルナンド・モライス2011年に上梓した Os Ultimos Soldados da Guerra Fria の映画化を提案したのは、ブラジル・サイドの製作者ホドリゴ・テイシェイラだそうです。監督が政治的に特定のイデオロギーの支持者でないことが理由として挙げられるかと思います。

B: 監督の意図はどうあれ、WASPネットワークの主要メンバーの一人、レネ・ゴンサレスの妻オルガの視点で多くが語られるから、マイアミ在住の反カストロ派の亡命キューバ人は憤慨した。

 

A: どちらかに加担するプロパガンダ映画ではないにしても、まだ進行中の現代史を題材にするときには、それなりの覚悟が必要です。実際に起ったエピソードだけを公平につなげただけでは、観客を満足させることはできません。それが評価されなかった一つの理由かもしれない。

B: 本作には大雑把に3つのグループが登場する。WASPメンバー、FBIに代表されるアメリカ政府、反カストロ派の亡命キューバ人に分けられます。

 

A: CANFという組織は、レーガン時代にアメリカ政府の肝煎りで設立されているので、現在でも共和党寄りです。設立者のホルヘ・マス・カノサは亡くなりましたが、彼はブラザーズ・トゥ・ザ・レスキューにも資金を出しており、祖国キューバに民主主義をもたらすことに執念を燃やしていた人物です。

B: 強行な手段は非難されて然るべきですが、マイアミ・サイドから見れば英雄です。

 

A: フアン・パブロ・ロケは、社会主義の国から脱走するために泳いでグアンタナモ海軍基地に到着、政治亡命を求めます。マイアミに着くとアナ・マルガリータと打算的な結婚をしますが、アメリカ政府のWASP包囲網を察知すると秘かに帰国、テレビで政府とは無関係、麻薬密売やテロ活動に関与したくなかったので戻った、マイアミのキューバ人移民の不寛容さを批判、また心残りは運んでこられなかった「愛車のチェロキー」などと語り、インタビュアーを煙に巻く。

B: 持ち帰れたロレックスは、後日談としてお金に困ってネットで売りさばいた(笑)。ロケがスパイだったことを初めて知り煮えくり返るアナ・マルガリータは、後日談としてキューバ政府に損害賠償2700万ドルを請求するが、20万ドルしか手にしていない。

 

     

(挙式した教会のファサードに整列した花嫁と花婿、レネ・ゴンサレスやホセ・バスルトも出席)

 

       オルガ・サラヌエバの視点で進行するファミリー物語

 

A: マイアミの司令塔だったガエル・ガルシア・ベルナル演じるヘラルド・エルナンデスは、2度の終身刑を受けたが、オバマ時代の両国の関係正常化政策の一環として行われた囚人交換で20141217日に帰国した。スクリーンの出番も少なく、ガエルのファンは物足りなかったのではないか。

B: ペネロペ・クルス演じるオルガ・サラヌエバが主役ですが、かなり複雑な人物です。どうして裏切り者の夫とマイアミで合流しようとしたのか。映画によれば、夫に置き去りにされても、娘には父親が必要とアメリカ亡命を決心するのは少し不自然だった。ヘラルドから真相を明かされるのは、亡命直前のことでした。

  

A: 子連れでスパイの夫と合流するのはかなり危険だったはずです。しかしハバナで裏切り者の妻として後ろ指さされながら生きていくのも大変だったのではないか。劇中ではグサーノgusano という単語が使われていましたが、虫けらのように価値のない人を指す侮蔑語です。旧ソ連邦崩壊後、援助を絶たれた90年代のキューバはナイナイ尽くしで石器時代に逆戻りしたと揶揄されたほどです。 

 

B: オルガは夫レネが逮捕された後に、娘イルマから「英雄の父親より普通の父親のほうがよかった」と批判されるが、ハバナでもマイアミでも居場所のないイルマも犠牲者です。

A: 夫が逮捕されたとき、まだ赤ちゃんだった次女イベットが名女優でした(笑)。クルスの扱いも自然で本当の娘のようだった。アサイヤスはクルスが直ぐに子役たちと繋がり、それが撮影をスムーズにしたとクルスを絶賛しています。この映画はオルガとレネ夫婦、その2人の娘たちの家族物語なのです。ハバナ映画祭で鑑賞したレネ・ゴンサレスによると、実際のオルギータとは少し違うと語っていた。

  

    

                    (オルガとオスデミ・パストラナ扮する長女イルマ)

 

        

      (マイアミで生まれた次女イベットを連れて夫の面会に訪れたオルガ)

 

B: よく子供と動物には勝てないと言われますが本当です。レネ・ゴンサレスは、映画からの印象ではスパイとしては、盗聴器が仕掛けられているのにも気づかず、オルガとの私語を含めて、情報が FBI に筒抜けだった。本当にスパイとしての訓練を受けていたのかと呆れました。妻子を残して大切な小型飛行機を乗っ取っての派手な亡命劇を演じれば目を付けられるのは分かりきったこと、彼が諜報機関 DGI にいたことは直ぐバレるわけです。

     

A: シカゴ生まれで米国の市民権を持っていたこと、アントノフ 2 を操縦して潜入できることがあったからではないか。刑期も12年と一番軽く、2011107日に仮釈放されている。仮釈放中に父親が亡くなり、葬式参列のため一時帰国を許され、そのまま米国市民権放棄を条件に釈放されている。WASPのメンバー10人を一網打尽にする計画のアメリカ政府は、1998912日までわざと泳がしていた。14名のうち危険を察した4人は帰島して逮捕を免れている。

 

B: 最初カストロ議長はスパイ行為をさせていたことを否定していましたが、劇中に挿入されたように3年後のインタビューでは関与を認めている。フィデルの「スパイ行為はお互い様、そちらのほうが悪質」という主張はその通りです。

A: 冷戦中にラテンアメリカ諸国の赤化を食い止めるべく、CIAからラ米諸国に送り込まれた諜報員の破壊活動は、キューバに限らず南米全域に及んでいました。これは後の歴史が証明していることです。

B: WASPの目的は、アメリカ政府に打撃を与えるためではなく、CANF<救助に向かう同胞> などがキューバで行っていた破壊工作を未然に防ぐためだった。

   

         最初の構想ではハビエル・バルデムが出演するはずだった!

 

A: 家族の別れで幕を開ける本作のキャスト選考は、ジグザグ続きだったという。アサイヤス監督によると、最初はハビエル・バルデムを起用したくてマドリードに会いに出かけた。しかし彼のスケジュールがいっぱいでやりくりがつかない。連れ立ってディナーに現れたペネロペ・クルスと話しているうちに「主役のオルガをやれるのは彼女しかいない」と。そこでオルガとレネの夫婦、彼らの子供たちを中心に構成することにしたようです。

B: しかし、彼女は2人の子供の養育を人任せにできないタイプですよね。

A: ハバナでの撮影が予定されていたので、それがネックだった。それにバルデムは、シュナーベル監督の『夜になるまえに』というレイナルド・アレナスの伝記映画でキューバ訛りができるが、クルスは初めてだから、そこから出発しなければならなかった。

 

B: ウイキペディアによると、20185月にゴンサレス役にベネズエラのエドガー・ラミレス、ホセ・バスルト役にペドロ・パスカルがアナウンスされた。

A: しかしペドロ・パスカルが降りて、アルゼンチンのレオナルド・スバラグリアに変更、同年9月にペネロペ・クルス、メキシコのガエル・ガルシア・ベルナル、ブラジルのワグネル・モウラ(ヴァグネル)起用が発表され、翌年218日にクランクイン、54日に撮り終えた。

 

B: 夫婦役のラミレスとクルスは、既にファッションデザイナーのジャンニ・ヴェルサーチ暗殺のTVシリーズ『アメリカン・クライム・ストーリー ヴェルサーチ暗殺』(18)でヴェルサーチ兄妹役で共演している。

A: アナ・マルガリータ・サンチェス役のアナ・デ・アルマスはキューバ出身、マヌエル・グティエレス・アラゴンの『カリブの白い薔薇』(06)で映画デビューした。ICAICがアナはまだ演技の勉強中で出演はダメと反対したのを無視して出た。それで関係が悪くなり島を脱出した。その後ボンド・ガールに選ばれるなど出世街道を驀進中だが努力の人でもありますね。キューバ人の他、ベネズエラ人、アルゼンチン人、スペイン人、メキシコ人、ブラジル人がキューバ人を演じるわけです。そして監督はフランス人ですから実に国際色豊かです。

 

          

      (アナ・マルガリータ・サンチェス役のアナ・デ・アルマス、映画から)

 

B: <救助に向かう同胞> のリーダー、ホセ・バスルト役のレオナルド・スバラグリアとWASPのリーダー、ヘラルド・エルナンデス役のガエル・ガルシア・ベルナルは、当ブログでは既にキャリア紹介をしています。

 

          

        (ガエル・ガルシア・ベルナルとペネロペ・クルス、映画から)

 

A: 初登場のフアン・パブロ・ロケ役のワグネル・モウラは、ブラジル映画のジョゼ・パジーリャのアクション・クライム『エリート・スクワッド』(ベルリンFF2008金熊賞)、続編『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊』(10)で主役ナシメントを演じてブレークした。

 

B: 『ナルコス』(15)のパブロ・エスコバル役、『セルジオ:世界を救うために戦った男』(20)はNetflix で配信されている。若いファンが多いのではないでしょうか。若者に最も人気があるのが、彼とアナ・デ・アルマスかもしれない。

A: ファン・サービスのためフィットネスまがいの愛のないセックスシーンを入れた。

      

B: 最後になるが、レネ・ゴンサレス役のエドガー・ラミレスは、1977年ベネズエラのサン・クリストバル生れ、父親が駐在武官だったせいで各国で暮らす。スペイン語の他、英伊独仏語ができる。大学では社会情報学を専攻したが役者の道を選んだ。

 

         

           PUNDのパイロット役のフリアン・フリンとラミレス、映画から)

 

A: ハリウッド映画出演が多いが、上記の『カルロス』の他、ベネズエラ映画ではアルベルト・アルベロの『解放者ボリバル』(13、スペイン合作)があり、シモン・ボリバルの伝記映画とはいえ、虚実織り交ぜた、観客が望んだ英雄像を描いている。トロント映画祭2013、ラテンビート2014上映のさいラミレス&作品紹介をしています。

B: 最新作は Netflix オリジナル作品、悪評さくさくの『ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム』(20)です。オファーは脚本を吟味しないといけない。

 

ペネロペ・クルスの主な紹介記事は、コチラ20190520

ガエル・ガルシア・ベルナルの主な紹介記事は、コチラ2016091620190513

レオナルド・スバラグリアの主な紹介記事は、コチラ20200111

ラミレス&『解放者ボリバル』紹介記事は、コチラ2013091620141027

 

 

        「コロナ時代の映画製作は一変する」とアサイヤス監督

 

A: Netflix配信が始まった後のエル・パイス記者の電話インタビューで、コロナ後は「コロナ以前のような映画作りできない。撮影方法もテーマさえ違うものになる」と語っています。観客が映画館に行くことを躊躇しているからだという。

B: 映画は映画館で観る世代は減少しつづけており、それをコロナが一気に加速させてしまった。

 

A: パンデミアになってから、アサイヤスは10歳になる娘と田舎暮らしをしている。学校がない日は自分が勉強を見てやる。それに買い物、料理、掃除などをしている。パリが日常を取り戻しつつあるのでいずれ戻りたい。今は今後の映画作りのガイドになるような、ごく少数の人で作った、登場人物も2人か3人の作品、ベルイマン、ロメール、ルノワールの映画などを観ているようです。

B: 『WASPネットワーク』の対極にある作品です。

 

A: 本作のキューバでの撮影は大変だった由、先ず当時のハバナを再現するロケ地探しにも監視がついて回り、プレッシャーに苦しんだ。ここではもう撮影できないと思った日もあった。当局が圧力をかけたわけではありませんが、ストレスのかたまりだったそうです。

B: キューバ当局の実情を知らなすぎだったのではないか。スペインの監督なら先刻ご承知のことです。いくらドルを落としてくれても、反カストロ映画を作られたらお目玉食らいます。

A: コロナの収束があるのかないのか誰にも分かりませんが活路を見出さねばなりません。今後は撮影システムやテーマの変更も視野に入れると語っているので、次回作を待ちましょう。