ゴヤ賞恒例の監督座談会*ゴヤ賞2020 ⑭2020年01月25日 22:58

        映画監督はもはや絶滅危惧種――生態系を守るため文化保護区が必要です

 

        (作品賞ノミネートの5人の監督、右端がベニト・サンブラノ) 

  

★エル・パイス恒例の監督賞にノミネートされた監督の座談会がもたれるのですが、今回は昨年末に行われました。1月はスケジュールが込み合っていることやマラガ開催だからでしょうか。年功序列で行きますとDolor y gloriaペドロ・アルモドバル70歳)、『戦争のさなかで』でのアレハンドロ・アメナバル47歳)、La trinchera infinitaを代表してホセ・マリ・ゴエナガ43歳)、『ファイアー・ウィル・カム』オリベル・ラシェ37歳)、写真右端は作品賞にノミネートされたIntemperieベニト・サンブラです。座談会は小一時間、ゴヤ賞、プラットフォーム、現実とフィクション、映画祭上映だけで公開されない映画も含めて国際映画祭が巻き起こす功罪、スペイン映画の未来について語りあいました。

 

       

(オリベル・ラシェ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アルモドバル、アメナバル、201912月末)

 

★特に今回のノミネーションでは、『戦争のさなかで』や「La trinchera infinita」のように、歴史に基づいた作品が選ばれたことで、歴史(Historia)と物語(una historia real)の違いについて意見が交わされていた。また米アカデミー作品賞にノミネートされている、スコセッシの『アイリッシュマン』や、ノア・バームバックの『マリッジ・ストーリー』がNetflix 配信の映画であることから、映画館のスクリーンで観ることの不思議な高揚感が語られました。互いに見知らぬ者同士が同じ空間で観ることの神秘的な関係性は謎だということでした。映画を映画館で観ることを前提に撮り続けている監督は減り続け、もはや絶滅危惧種で動物園の中にいるようなものだと。アルモドバルは「生態系を守るために文化保護区が必要」だし、TVシリーズやネット配信の作品を撮るだけでは「これからのスペイン映画はどうなるのか」と疑問を投げかけていました。示唆に富んだ座談会なので、いずれ個々の発言をアップするつもりです。

 

 

★ゴヤ賞2020のマラガ開催の授賞式が迫ってきました。会場となるホセ・マリア・マルティン・カルペナ・スポーツ場3200人収容)も赤絨毯の準備に追われているようです。もともとはマラガ市スポーツセンターでしたが、2000年にETAによって殺害された国民党の政治家ホセ・マリア・マルティン・カルペラを讃えて2010年に名称が変更された。今年は主演男優賞にマラガ生れのアントニオ・バンデラスやアントニオ・デ・ラ・トーレがノミネートされているので、町全体も盛り上がっている。デ・ラ・トーレは既に現地入りして生れ育った界隈を散策、旧知の知人、隣人からの「オーラ!」にハグしまわっています。また著名な映画評論家たちの下馬評も出回っておりますが、結構ばらばらです。

 

 

  (赤絨毯敷きつめに大わらわの関係者たち、ホセ・M・マルティン・カルペナ・スポーツ場)

 

         

     (あちこちからの「オーラ!」に気軽に応えるアントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

★昨年の好評につき今年も総合司会者を務める、コメディアン夫婦、シルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテのカップルも用意万端、下記の写真はスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソとのスリーショット。年々ビジュアルなフィエスタが加速しているようです。セレブたちの赤絨毯登場からテレビ放映は始まると思いますが、開会式は125日(土)2200~です。

 

    

   (左から、マリアノ・バロッソ、シルビア・アブリル、アンドレウ・ブエナフエンテ)