中堅と若手が競う主演女優賞*ゴヤ賞2020 ⑧ ― 2020年01月05日 11:16
予測が難しい主演女優賞――ベテランを追う若手の二人
(左から、ベレン・クエスタ、マルタ・ニエト、グレタ・フェルナンデス、ペネロペ・クルス)
★2020年が明けました。今年は1月中にガラ開催と早いのに未だ作品紹介が途中ですが、気分を変えてキャスト紹介から始めることにしました。4人の候補者のうち、本カテゴリーのノミネート及び受賞経験者は「Dolor y gloria」のペネロペ・クルス唯一人、他は初ノミネーションです。なかでグレタ・フェルナンデスが主演した「La hija de un ladrón」は未紹介作品ですが、簡単に触れますと、刑務所を出たり入ったりしている窃盗犯の父をもつ娘役、年の離れた弟と自身の赤ん坊の世話をして苦労する若い母親役、歯車が一つ狂うと不幸が連鎖する都会の断面が語られる。父親に実父エドゥアルド・フェルナンデスが扮していることでも話題になっている。
◎最優秀主演女優賞
ペネロペ・クルス 「Dolor y gloria」(ペドロ・アルモドバル)
〇「Dolor y gloria」に助演女優の該当者はいても主演女優はいないと考えておりますが、前者には久しぶりのアルモドバル作品出演となったベテラン女優フリエタ・セラノが控えており、クルス自身も久しぶりのアルモドバル作品、苦肉の策として主演にまわしたのではないでしょうか。ノミネーション常連の女優ですが受賞は、ゴヤ賞2009の『それでも恋するバルセロナ』(助演)を最後に受賞から遠ざかっています。本作での出番は少ないようですが彼女の演技を褒める批評家は多く好演していることは間違いない。監督自身の露出度が一番多いと言われる本作では、アルモドバルの分身をアントニオ・バンデラスが演じます。クルスは彼がまだ少年だった頃の母親役、晩年の母親をフリエタ・セラノが演じます。若くしてフランスのセザール栄誉賞、サンセバスチャン映画祭SSIFFドノスティア栄誉賞など受賞歴多数、国内外での活躍が際立っている。
*最近のキャリア紹介は、コチラ⇒2019年05月20日
*「Dolor y gloria」の記事は、コチラ⇒2019年04月22日
(ペネロペ・クルス、映画から)
(ドノスティア栄誉賞のトロフィーを手にしたペネロペ・クルス、SSIFF2019、9月28日)
ベレン・クエスタ 「La trinchera infinita」(アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、他)
〇ベレン・クエスタは、1984年セビーリャ生れの女優、マラガ育ちでマラガ高等演劇学校で演技を学んだ後、芸術コメディコース他で学びながら舞台女優としてスタート、TVシリーズ、映画の3本建てで活躍中である。映画の代表作品はラテンビート映画祭上映の、パコ・レオンのコメディ『KIKI~愛のトライ&エラー』(ゴヤ賞2017新人女優賞ノミネート)、ロス・ハビのミュージカル・コメディ『ホーリー・キャンプ!』(同2018助演女優賞ノミネート)、当ブログ紹介作品が代表作品です。主演女優賞は初ノミネーション、受賞すればゴヤ賞初受賞となります。他エミリオ・マルティネス=ラサロの『オーチョ・アペジードス・カタラーネス』(15 Netflix)にも出演しています。ゴヤ賞以外では、フェロス賞2017「TVシリーズ」部門の『パキータ・サラス』(シーズン1)で助演女優賞を受賞、2019年シーズン2ノミネート、今年2020年もシーズン3でノミネートされている。2012年からタマル・ノバスがパートナー、アメナバルの『海を飛ぶ夢』で主人公の甥に扮しゴヤ賞新人賞を受賞した若手です。
*「La trinchera infinita」の作品紹介は、コチラ⇒2019年12月20日
(フェロス賞のトロフィーを手にしたベレン・クエスタ、2017年)
マルタ・ニエト 「Madre」(ロドリゴ・ソロゴジェン)
〇1982年ムルシア生れ、2003年デビューの女優、またスペイン・ヨガの教師でもある。ゴヤ賞ノミネートは初めて。代表作品はアントニオ・バンデラスの監督第2作目『夏の雨』(ラテンビート2007)、ロドリゴ・ソロゴジェンの短編「Madre」(スペイン短編Fugaz賞2018女優賞受賞)、ベネチア映画祭2019「オリゾンティ」部門に出品された長編「Madre」で女優賞、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭2019でも女優賞を受賞するなど、有力候補でしょうか。本作でゴヤ賞の他、フォルケ賞とフェロス賞2020にノミネートされています。TVシリーズでは「Hermanos y detectives」(2007~09)に脇役で出演している他、多数。ロドリゴ・ソロゴジェン監督がパートナーです。
*「Madre」の紹介記事は、コチラ⇒2019年12月26日
(銀獅子賞のトロフィーを手にしたマルタ・ニエト、ベネチア映画祭授賞式8月28日)
グレタ・フェルナンデス 「La hija de un ladrón」(ベレン・フネス)
〇グレタ・フェルナンデスは1995年バルセロナ生れの女優。サンセバスチャン映画祭2019で銀貝賞である女優賞を受賞している。父親が今回アメナバルの『戦争のさなかで』でミリャン・アストライ役で助演男優賞にノミネートされているエドゥアルド・フェルナンデス、既にゴヤ賞主演男優賞(2001、Fausto 5.0)を受賞しているので、グレタ受賞なら父娘で受賞となる。一番の若手だが子役時代を含めると芸歴はそこそこ長い。イサベル・コイシェの『エリサ&マルセラ』のマルセラ役、ラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』、イサキ・ラクエスタの『記憶の行方』、エステバン・クレスポの『禁じられた二人』、リノ・エスカレラの『さよならが言えなくて』、など、Netflix配信が多いが字幕入りで観られる作品に出演している。
*主なキャリア紹介は、コチラ⇒2019年02月11日
(実の親子で父娘を演じた、映画から)
(銀貝賞のトロフィーを手にしたグレタ・フェルナンデス、SSIFF 2019授賞式9月28日)
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