アメナバル新作の評判は上々*サンセバスチャン映画祭2019 ㉕ ― 2019年09月27日 16:54
心に響く語り口で二つに分断された1936年のスペインへ私たちを連れ戻す
★開幕2日目の9月21日、アレハンドロ・アメナバルの新作「Mientras dure la guerra」が上映されました。監督以下、主役ミゲル・デ・ウナムノのカラ・エレハルデ、フランコ陣営の陸軍将官ホセ・ミリャン・アストレイのエドゥアルド・フェルナンデス、フランコ将軍のサンティ・プレゴ、ナタリエ・ポサ、パトリシア・ロペス・アルナイスなどが赤絨毯を踏みました。上映後の評価は高く、心に響く語り口、ウナムノとアストレイとのサラマンカ大学講堂での歴史的な一騎打ち、常に思慮分別をもちながらも大胆で、私たちを驚かせ楽しませてくれるアメナバル映画が何かの賞に絡むのは間違いない。
*「Mientras dure la guerra」の紹介記事は、コチラ⇒2018年06月01日
(アレハンドロ・アメナバル、SSIFFのフォトコール、9月21日)
(左からナタリエ・ポサ、エドゥアルド・フェルナンデス、監督、カラ・エレハルデ、
カルロス・セラノ、パトリシア・ロペス・アナイス、サンティ・プレゴ)
★舞台はスペインの学術都市サラマンカ、時代はスペイン内戦勃発の1936年7月17日から、ミゲル・デ・ウナムノ(ビルバオ1964)が軟禁されていた自宅で失意の最期を迎える12月31日までに焦点が当てられている。なぜアメナバルがこのカオス状態だった暗い時代を選んだのか、矛盾に満ち、辛辣で疑い深く、誠実で正直な、知の巨人の晩年に惹きつけられたのか、興味は尽きない。秋の映画祭を期待したい。
(左から、エドゥアルド・フェルナンデス、カラ・エレハルデ、監督、他)
★エル・パイスのコラムニストとして辛口批評で有名なカルロス・ボジェロによると、アメナバルの構想には、スペインが二つに分断された20世紀最大の「悲劇に誇張や善悪の二元論を持ち込まなかった。感動も強制しない。アメナバルが見せる節度は非常に考え抜かれている。フラッシュバックや夢が多用されており、なかには不必要と思われるケースもあったが」と述べている。更にウナムノのロマンスについては、哀惜を込めた描き方が平凡でお気に召さなかったようだ。観客への甘いサービスは不要ということでしょうか。
★キャスト評は、ウナムノを演じたカラ・エレハルデについては「複雑を極めたウナムノの人格をコインの裏と表のように演じ分け注目に値する出来栄えだった」と評価は高い。カラ・エレハルデ自身は「スペインはこの83年間、1ミリも前進しておりません」と手厳しい。同感する人が多いと思いますね。
(サラマンカ大学講堂で演説するミゲル・デ・ウナムノ)
(撮影中の監督とカラ・エレハルデ、2018年5月末、サラマンカでクランクイン)
★フランコ軍の陸軍将官ホセ・ミリャン・アストレイに扮したエドゥアルド・フェルナンデスについては「絶えず変化を求めてスクリーンに現れる彼は、輝いて信頼に足る役者」とこちらも高評価、アストレイはフランコの友人でスペイン・モロッコ戦争で右目と左腕を失っている。フェルナンデスは同じ金貝賞を競うセクション・オフィシアルにノミネートされているベレン・フネスの「La hija de un ladron」に実娘のグレタ・フェルナンデスと出演していて、今年は両方のフォトコール、プレス会見と大忙しである。
(フランコ役のサンティ・プレゴとアストレイ役のエドゥアルド・フェルナンデス)
★本作以外のウナムノのビオピック作品は、マヌエル・メンチョンの「La isla del viento」をご紹介しています。かなりフィクション性の高い作品ですがこちらのウナムノ役は、ホセ・ルイス・ゴメスでした。独裁者ミゲル・プリモ・デ・リベラを批判してカナリア諸島のフエルテベントゥラに追放された1924年と最晩年の1936年の2部仕立てです。
*「La isla del viento」の作品&監督紹介は、コチラ⇒2016年12月11日
★映画とはまったく関係ありませんが、アメナバルは2年半パートナーだったダビ・ブランコとの結婚を解消した由。ブランコによると、2月からは24歳の医師セサルが新恋人、3人の関係は良好だそうで、つまり幸せということです。3人揃っての写真がインスタグラムされている。時代は変わりました。
(左から、アメナバル、ダビ・ブランコ、セサル)
追加情報:ラテンビート2019で『戦争のさなかで』の邦題で上映が決定しました。
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