ドナルド・サザーランドにドノスティア賞*サンセバスチャン映画祭2019 ⑰ ― 2019年09月02日 11:37
3人目のドノスティア賞は今年も英語圏の俳優が受賞します!

★ホライズンズ・ラティノ部門の紹介が途切れていますが、開催が近づいてきたこともあって、サバルテギ-タバカレラ部門、メイド・イン・スペインなどの全体像が見えてきました。8月27には3人目のドノスティア賞に、カナダ出身アメリカで活躍する俳優ドナルド・サザーランド(セント・ジョン1935)受賞の発表がありました。長い芸歴から世代によって代表作も違うと思いますが、サザーランドといえば、ロバート・アルトマンのコメディ『M★A★S★H マッシュ』(70)を挙げない人は少ないでしょう。朝鮮戦争の野戦病院に配属された破天荒な3人の軍医の一人になった。笑い飛ばしながら戦争の愚かさと体制批判をしたアルトマンならではの反戦ブラックコメディでした。

(ドナルド・サザーランド『M★A★S★H マッシュ』から)
★キャリア紹介は、日本語ウイキペディアで充分と思いますが、スリラー、ホラー、コメディ、ドラマとなんでもOKのマルチ俳優なのにオスカー受賞歴はゼロ、80年代に作品に恵まれなかったことや、脇役が多かったせいかもしれない。2018年にアカデミー栄誉賞を受賞したのが初のオスカー賞だった。日本語ウイキは新しい情報を載せていないことが多く、栄誉賞の記事も見当たらなかった。オスカーとは性格も選考母体も異なるゴールデン・グローブ賞には、1971年前述の『M★A★S★H マッシュ』と、1981年のロバート・レッドフォードの『普通の人々』で主演男優賞、1999年のロバート・タウンの『ラスト・リミッツ』で助演男優賞と3回ノミネートされたが、いずれも受賞には至らなかった。2018年にチューリッヒ映画祭の栄誉賞に当たる「ライフライム・アチーブメント賞」を受賞、今年サンセバスチャンFFの栄誉賞「ドノスティア賞」を受賞する。


(チューリッヒ映画祭栄誉賞のスピーチをするサザーランド)
★2000年、クリント・イーストウッド監督・出演した『スペース・カウボーイ』、ジョー・ライトの『プライドと偏見』(05)では5人姉妹の父親役を演じた。ジュゼッペ・トルナトーレの『鑑定士と顔のない依頼人』(13)、2015年のジョン・カサーのウエスタン『ワイルドガン』では息子キーファー・サザーランドと親子を演じた。久しぶりに認知症を患う主役を演じたのが、パオラ・ヴィルズィの『ロング、ロングバケーション』、末期ガンの妻(ヘレン・ミレン)と人生最後の旅に出る。ベネチアFFでワールド・プレミアされ、SSIFFのペルラス部門でも上映された。同じくベネチアFF2019で上映されるジェームズ・グレイのSFスリラー『アド・アストラ』にも出演、ブラッド・ピットとトミー・リー・ジョーンズが父子を演じる。既に9月20日劇場公開も決定している。

(『スペース・カウボーイ』のオジサン4人、右端がサザーランド)
★9月26日メイン会場のクルサールで、栄誉賞ドノスティア賞の授与式が行われる。その後、サザーランドが出演しているイタリア系アメリカ人の監督ジュゼッペ・カポトンディのスリラー「The Burnt Orange Heresy」が上映される。チャールズ・ウィルフォードの同名小説(翻訳書『炎に消えた名画』)の映画化、ミック・ジャガー、クレス・バング、エリザベス・デビッキと共演する。サザーランドは隠遁生活をしている画家に扮し、ミック・ジャガーは彼のスタジオから作品を盗もうとするセレブな美術品コレクターになる。イタリアのコモ湖畔を舞台に、名画盗難をめぐる犯罪サスペンス、いずれ公開されるでしょう。本作はベネチアFFではコンペティション外ですが、クロージング作品として、映画祭最終日の9月7日に上映されます。舞台がイタリア、監督もイタリア系ということでクロージングに選ばれたのかもしれない。


(クレス・バングとエリザベス・デビッキ「The Burnt Orange Heresy」)
★今年のベネチア映画祭のオープニング作品は、是枝監督の『真実』で、上映後の「スタンディングオベーションが6分」など大々的に報じていました。金獅子賞受賞なら黒澤明の『羅生門』(1951)以来とか。
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