ペルーのベガ兄弟の「La bronca」*サンセバスチャン映画祭2019 ⑭ ― 2019年08月23日 17:19
ホライズンズ・ラティノ第4弾――ペルー映画「La bronca」
★去る8月21日閉幕した第23回リマ映画祭PUCPでダニエル&ディエゴ・ベガ兄弟の3作目「La bronca」が、ペルー映画批評家協会APRECI賞を受賞しました。トロフィーはダニエル・ベガ監督とホルヘ・ゲーラが登壇してトロフィーを受け取りました。2014年に第2作「El mudo」が受賞して以来2回目となります。他にロドリゴ・パラシオスが主演男優賞、ペルー映画に与えられる文化省賞の第3席を受賞しました。ベガ兄弟のデビュー作「Octubre」は、カンヌ映画祭2010「ある視点」に出品され、いきなり審査員賞を受賞しました。同年のサンセバスチャン映画祭にも出品されたこともあってか、ラテンビートLBFF 2010に『10月の奇跡』として上映される予定でしたが、理由は分かりませんが土壇場で取り止めになったのでした。偶然赤ん坊を拾ったことで人生が一変してしまう独り身の質屋を営む中年男の話でした。では、二人が共同監督した第3作目「La bronca」を紹介します。
(トロフィーを披露する、ダニエル・ベガ監督と主演のホルヘ・ゲーラ、リマ映画祭にて)
(主演男優賞受賞のロドリゴ・パラシオス)
「La bronca」(「The Clash」)
製作:Maretazo Cine(ペルー)/ Tondero Films(同)/ 1976 Productions(カナダ)/
Día Fragma Fábrica de Películas(コロンビア)
監督・脚本:ダニエル・ベガ・ビダル、ディエゴ・ベガ・ビダル
撮影:ディエゴ・ロメロ・スアレス=ジャノス(リャノス)
録音:パブロ・ビジェガス(ビリェガス)
美術:マキシム・ノルマンド
編集:マルティン・グティエレス
製作者:ニコラス・Comeau(1976 Productions)、ダニエル・ガルシア(Día Fragma Fábrica de Películas)、ミゲル・ヴァリャダレス(Tondero Films)、ベガ兄弟(Maretazo Cine)
データ:製作国ペルー=コロンビア、スペイン語・英語、2019年、102分、製作発表2016年8月、2017年初めクランクイン
映画祭・受賞歴:第23回リマ映画祭2019正式出品、APRECI賞・ペルー文化省賞3席、主演男優賞受賞。第67回サンセバスチャン映画祭2019「ホライズンズ・ラティノ部門」出品
キャスト:ホルヘ・ゲーラ(ロベルト)、ロドリゴ・パラシオス(父親ボブ・モントーヤ)、ロドリゴ・サンチェス・パティニョ、イザベル・ゲラール、シャーロット・オービン、サンドリーヌ・ポワリエ=アラール Sandrine Poirier-Allard、ルナ・マセド
ストーリー:1990年始初頭のペルーは政治的混乱に陥っていた。アルベルト・フジモリが軍と警察の支持のもと、国会を解散させるためにアウトゴルペを画策していたからだ。18歳になるロベルトは人生に行き詰っていた。何年も前に無秩序なペルーを捨て、カナダのモントリオールに移住した父親ボブ・モントーヤを頼って故郷を後にする。父親はカナダ人の新しい家族と暮らしていた。誇り高い父親は、自身の先入観から北米人が理想とする考えを息子にも強要した。父と子の再会は、逃れられない激しさをもって永遠に結ばれるだろう。90年代初頭、ペルーに吹き荒れた恐怖、苦悩、痛み、裏切りは、多くのペルー人のディアスポラを生んだ。カナダで撮影された最初のペルー映画。 (文責:管理人)
(ロベルト役のホルヘ・ゲーラ、映画から)
カナダで撮影された最初のペルー映画「La bronca」
★ダニエル・ベガによると「この物語は泡のように暮らしている中流階級の家族に焦点を合わせている」と語っている。キャストの大多数は、主演者ロドリゴ・パラシオス、ホルヘ・ゲーラを含めてペルー人を起用、言語はスペイン語と英語、カナダで撮影された最初のペルー映画。舞台となるモントリオールはフランスから移住してきた人が多く、公用語は英語とフランス語、従ってキャストにもフランス映画またはTVシリーズに出ている俳優が目に付く。
(カナダの新しい家族)
★デビュー作「Octubre」は上記の他、カルタヘナFF監督賞、マル・デ・プラタFFラテンアメリカ作品賞、オデッサFF審査員特別賞などを受賞している。2作目となる「El mudo」は、サンセバスチャン映画祭の「Cine en Construcción 23」作品、BAFICI FFの監督賞、ロカルノFFに出品され、主演のフェルナンド・バシリオが男優賞を受賞するなどしている。他に第3作の製作資金のため、共同で米国TVシリーズ「El Chapo」(2017、4話のみ)の脚本執筆と監督を手掛けている。エル・チャポとはメキシコの実在の麻薬密売者の綽名、Netflix で配信された。他にダニエル・ベガは単独でコメディ「Intercambiados」(19)を撮っている。短編、ドキュメンタリーなど。
(左からディエゴ、ダニエルのベガ兄弟、2014年「El mudo」がAPRECI賞を受賞)
◎8月21日、ペルラス部門に10作が追加されました。日本からも是枝裕和監督の「La vérité / The Truth」、邦題『真実』で10月11日公開が決まっています。もう1作が100億円突破の新海誠監督のアニメーション『天気の子』が選ばれていました。他にパブロ・ララインの「Ema」と、初めてチロ・ゲーラが英語で撮った「Waiting for the Barbarians」が含まれています。
◎次回はホライズンズ・ラティノ部門は小休止して、8月19日に発表になった二人目のドノスティア賞(栄誉賞)を受賞することになったギリシャ出身の主にフランスで活動している監督コスタ・ガヴラスについてアップします。
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