ゴヤ賞はテレビ・シリーズに門戸を閉ざす2019年04月09日 14:51

      スペイン映画アカデミーは満場一致でシリーズ・ドラマ締め出しを決定

 

★スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソは、2020年のゴヤ賞は「現在のシステムを維持」して「TVシリーズには門戸を閉ざす」との声明を発表した。「テレビ局製作を含めた作品も認めない」という厳しい枠がはめられた。少なくとも当面はシリーズ・ドラマ除外のようだが、映画アカデミー執行部の「満場一致」の決定とは驚きです。しかしこの決定は、今年のゴヤ賞ガラでの恒例の会長スピーチとは反対方向に向かった印象です。

 

★現在のようなテレビ局主導になりがちな状況から「数千数百万の小さな画面を敵と見なせば、私たちは立ち行かなくなるでしょう。観客は私たちの映画を映画館で観ていますが、また他の画面で見ている人もたくさん存在します。私たちはあらゆる種類の画面を考慮したい。・・・映画はテレビと対抗すべきではないし、テレビも映画を打ち倒すべきではありません。私たちは勝利者同盟なのです」とバロッソ会長はスピーチしたのでした。映画とテレビは一種の運命共同体、どちらも生き残ろうと語っていたはずです。

 

             

       (2019年ゴヤ賞授賞式で挨拶するマリアノ・バロッソ会長)

 

★アカデミーによると、決定までには何回も会合がもたれたようで、特にゴヤ賞の対象作品にシリーズ物も受け入れる可能性を開こうというバロッソ会長提案の核心について討議したようです。エンリケ・ウルビス監督がヨーロッパ・プレスに語ったところによると、ゴヤ賞が「テレビに頼る前」に「スペイン映画がするべきこと」はたくさんある。「私たちは角突き合いするのではなく、互いに支え合わねばならない」と。バロッソのスピーチは「良かった」が、投票には「反対票」を入れたと付け加えた。全員一致も複雑だったようです。互いに助け合わねばならないが、対象作品にシリーズ作品を入れるのは目下はNoということですかね。

 

★ゴヤ賞対象作品になるには、現在ドラマとアニメーションの場合は劇場での連続上映7日間、ドキュメンタリーは3日間が義務付けられているが、これは変更なしということです。今後アカデミーは、テレビ局、プラットフォーム、制作会社、テレビ・アカデミーとの会合を模索しており、近く開催されるようです。テレビ局の資金援助なしに製作することは至難の業でしょう。やはりNetflixのようなプラットフォームの出現が大きいのではないでしょうか。将来的には『ROMA/ローマ』のようなNetflixでもオリジナル作品の増加が避けられないから、なし崩しではなくきちんと決めておくべき事案です。

 

★今から8年前の2011年、当時映画アカデミー会長だったアレックス・デ・ラ・イグレシアが「私たちはインターネットに恐怖を覚えるべきではありません。インターネットは映画の救世主になるだろう」とゴヤ賞授賞式でスピーチした。賛成反対が交錯して事態は紛糾した。嫌気がさしてデ・ラ・イグレシアは任期半ばで辞任した。あれから8年、くすぶり続けていた火種が発火したようです。テレビで映画を見る若い層が増え、映画は映画館で見ていたオールドファンが少数派になってきている。それにつれて地方都市での映画館閉鎖にも拍車が掛かってスクリーンそのものが消滅しつつある。テレビはおろか今ではスマホで映画を見る時代になりつつある。結果、映画館はガラ空きで閑古鳥が鳴いている。という状況にアカデミーは危機感を募らせている。

    

       

  (ネットは映画の救世主とスピーチしたアカデミー会長デ・ラ・イグレシア、2011年ガラ)

  

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